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2016年1月10日日曜日

米国は日本と同じ状況になるのか(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーが2000年にフィランソロピー円卓会議で行った講話の2回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

金融面で数々の腐敗があった日本では、非常に長期間にわたって株価や不動産価格が著しく上昇しました。その間、米国と比較して極端なまでの実質経済成長を果たしましたが、その後は資産価値が暴落し、日本経済は最上からは大きく離れた水準で立ち往生しました。その後の日本は経済立て直しを期待してケインズ経済学や金融上の施策をことごとく学び、強力かつ長期間推進しました。政府部門では莫大な赤字を何年間も続けただけでなく、金利をゼロ近辺の位置まで引き下げて維持しました。にもかかわらず、日本経済はいつまでたっても手詰まりのままだったのです。日本人消費者の意識は経済学者が繰り出すあらゆる術策に頑固として逆らいましたし、株価も低迷しつづけました。日本が経験したこの事態は、だれにとっても憂慮すべき例ですね。それと似たことがこの国で起きたとしたら、収縮した慈善基金は運命に打ちのめされたと感じることでしょう。日本で起きた惨めな状況のかなりの部分は、おそらくそうだとは思いますが、日本固有の心理面における社会的影響や腐敗によって起こされたものだったと願いましょう。そうだとしたら我が国は、広く考えられている程度の半分は大丈夫かもしれません。

In Japan, with much financial corruption, there was an extreme rise in stock and real estate prices for a very long time, accompanied by extreme real economic growth, compared to the United States. Then, asset values crashed, and the Japanese economy stalled out at a very suboptimal level. After this, Japan, a modern economy that had learned all the would-be-corrective Keynesian and monetary tricks, pushed these tricks hard and long. Japan, for many years, not only ran an immense government deficit but also reduced interest rates to a place within hailing distance of zero and kept them there. Nonetheless, the Japanese economy, year after year, stays stalled, as Japanese proclivity to spend stubbornly resists all the tricks of the economists. And Japanese stock prices stay down. This Japanese experience is a disturbing example for everyone and, if something like it happened here, would leave shrunken charitable foundations feeling clobbered by fate. Let us hope, as is probably the case, that the sad situation in Japan is caused in some large part by social psychological effects and corruption peculiar to Japan. In such case, our country may be at least half as safe as is widely assumed.

2016年1月8日金曜日

3割下がっても、油断は禁物(セス・クラーマン)

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数回前の投稿でとりあげたセス・クラーマンの講演記事から、つづく部分を引用します。(日本語は拙訳)

<質問> 30%下落した後に、次はどれだけどうなるのか、わかる人がいるのでしょうか。

<クラーマン> 市場が下落している最中に参入する時期が早すぎると、当然ですがどんな投資家にも大きなリスクとなります。それはバリュー投資家も同じです。上昇相場が継続中の間であっても、割安な証券がみつかればバリューに飢えた投資家は前進して買いに出るのはまちがいないでしょう。しかしほどなくして、その多くはまるでバーゲンでなかったことが明らかになります。世界全体が悪化するにつれて、それゆえに強気筋が拒絶していた欠陥がますます明白となるからです。株式市場が30%下落した時点で、今後どうなるのかを言い当てる術はありません。「あらゆる下落相場は大恐慌につながる」と予想するのは愚かしいことですが、「割高な水準から下落してずっと妥当な水準に達すれば、そこからはひどく激しい下落が起こるなどありえない」と期待するのも、同じようにまちがったことだと思います。(p. 2)

After a 30% drop, who knows how much further it might go?

Klarman: Of course, getting in too soon as the market falls involves great risk for all investors, including value investors. Certainly, when a few securities start to get cheap even as the bull market continues, a valuestarved investor will step up and buy them. Soon enough, many of these prove to be no bargain at all, as the flaws that caused them to be rejected by the bulls become more glaringly apparent when the world gets worse. After a stock market has dropped 30%, there's no way to tell how much further it might have to go. It'd be silly to expect every bear market to turn into the Great Depression. But it would be equally wrong to expect that a fall from overvalued to more fairly valued couldn't badly overshoot on the downside.

2016年1月6日水曜日

フィランソロピー円卓会議での朝食会(チャーリー・マンガー)

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本ブログでは、チャーリー・マンガーの講演・講話を集めた『Poor Charlie's Almanack』に収録されている原文を、当方の和訳付きでご紹介してきました。今回からは講演その7(Talk Seven)を全訳でご紹介します。2000年3月にITバブルが弾けて、株式市場が下落しはじめた時期の講話です。いつものように、インターネット上に原文がアップロードされているサイトがありますので、お急ぎの方はたとえば以下のサイトをご参照ください。

The Philanthropy Round Table (Mungerisms)

なお本シリーズを以って、同書に収録されている全11話をひとまず取りあげたことになります。

フィランソロピー円卓会議での朝食会
2000年11月10日

今日は、米国普通株の価格が上昇したことで生じた、いわゆる「資産効果」について話をします。

まずは早々に申し上げますが、「資産効果」が経済学における学問的原理の一部であることは、認めざるを得ません。それから、私自身は経済学に関する講義をひとつも履修していませんし、マクロ経済的な変化を予測して儲けようとしたことはビタ一文ない点も付け加えておきます。

それにもかかわらず、「現在の極端な状況下で普通株が『資産効果』に対してもたらす影響力を、博士号を取得した経済学者のほぼ全員が過小評価している」と私は判断しています。

次の2点は異論がないと思います。第一に、消費の傾向は株価が上がれば上向きへ、株価が下がれば低迷する方向へと影響を受ける点。第二に、消費という傾向がマクロ経済学的に著しく重要な要素である点。しかしながら、「資産効果」の規模や発生時期だったり、それが他の効果とどのように相互作用するかについては、その分野の専門家同士でも見解が一致していません。たとえば、消費が拡大することで株価を押し上げる傾向が生じる一方、株価自身の上昇につられて消費が押し上げられる、といった明らかに複雑な相互作用についてです。もちろんですが消費が横ばいであっても、株価上昇によって企業があげる利益を増加させることができます。たとえば株価がひきつづき上昇傾向の際に、年金費用の計上を減額するやりかたです。つまるところは、物理学の理論のように鮮やかなものとはほど遠く、まるでうまく解けないかもしれない。「資産効果」は、そのような数学的パズルを伴っているのです。

Breakfast Meeting of the Philanthropy Roundtable
November 10, 2000

I am here today to talk about so-called “wealth effects” from rising prices for U.S. Common stocks.

I should concede, at the outset, that “wealth effects” are part of the academic discipline of economics and that I have never taken a single course in economics, nor tried to make a single dollar, ever, from foreseeing macroeconomic changes.

Nonetheless, I have concluded that most Ph.D. economists underappraise the power of the common-stock-based “wealth effect”, under current extreme conditions.

Everyone now agrees on two things. First, spending proclivity is influenced in an upward direction when stock prices go up and in a downward direction when stock prices go down. And, second, the proclivity to spend is terribly important in macroeconomics. However, the professionals disagree about size and timing of “wealth effects”, and how they interact with other effects, including the obvious complication that increased spending tends to drive up stock prices while stock prices are concurrently driving up spending. Also, of course, rising stock prices increase corporate earnings even when spending is static, for instance, by reducing pension cost accruals after which stock prices tend to rise more. Thus, “wealth effects” involve mathematical puzzles that are not nearly so well worked out as physics theories and never can be.

2016年1月4日月曜日

2015年の投資をふりかえって(1)全般について

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2015年にとった投資上の行動も一昨年(2014年)とほぼ同じようなものでした。要約すると次のとおりです。

・シルバー関連の銘柄を買い増しした。
・従来からの主力銘柄を売却して持ち分を減らした。
・その他の銘柄は現状維持。

価格水準の観点からみれば、価格下落がつづいたコモディティー関連の銘柄を買い増しした一方、割高あるいは割高気味となった日本株を売却し、価格水準がそれほど過熱していない銘柄は現状維持のままとしたのが、基本的な方針でした。

ただしシルバー関連銘柄は価格変動に応じて持ち株数を調整したり、損失を確定させることで、平均購入単価を下げました。また現状維持などの銘柄では、つなぎ売りをして価格下落時に買い戻したものもありました。

銘柄ごとの売買概況は以下のとおりです(各分類での並び順は、持ち株の評価額が大きなものから)。

<新規購入(New Buy)>
・メック(4971); 9/29に購入したのみで、全ポートフォリオ中の割合は微小です。

<買増し(Add)>
・シルバー・ウィートン(SLW)
・iSharesシルバーETF(SLV)
・モザイク(MOS)

<現状維持(Hold)>
・マイクロソフト(MSFT)
・バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)
・クラレ(3405)
・インテル(INTC)
・任天堂(7974)
・サンリオ(8136); ただし1単元だけ売却しました。
・日精エー・エス・ビー機械(6284)
・しまむら(8227)
・日東電工(6988)
・マニー(7730)

<一部売却(Reduce)>
・従来からの主力銘柄
・日進工具(6157)

2016年1月2日土曜日

早すぎることと誤っていることが区別できないとき(セス・クラーマン)

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金融危機の影響で株式市場が底をつけた2009年3月に、OID誌(Outstanding Investor Digest)がセス・クラーマンの記事を掲載した号を発行していました。インターネット上を検索したところ、同記事のPDFファイルがアップロードされていたため、一部を引用してご紹介します。なお同誌はバリュー投資家に人気のある投資雑誌で、インタビューや講演をとりあげた記事が秀逸です。(日本語は拙訳)

seth-klarman-oid-interview-march-2009 [PDF] (Above Average Odds Investing)

はじめは、2008年初めの頃にセス・クラーマンが抱いていた市場全般に対する見方です。
彼は[2008年の早い時期に書かれたアニュアル・レポートの]最後でこう触れていた。「いわゆる『2008年1月のバーゲン』が本当に割安だったのか、それともバリューに飢える投資家を誘う単なる危険な誘惑だったのだろうか。それが明らかとなるには、かなりの時間がかかると思います」。そして彼が記した判断は、言うまでもなく正しかったのである。

and finally, that, “We will not be certain until much later whether the so-called bargains of January, 2008 were truly undervalued or merely dangerous temptations to value-starved investors.” Well, needless to say, that verdict is in.

次は、2008年10月にセス・クラーマンが講演した際の発言からです。
<クラーマン> 何年も前からですが、「自分のポートフォリオを運用する投資家として、いちばん恐れることは何か」との質問を受けることがありました。それに対して、「よくある非常に割高な水準から下落する際に、早すぎる時点で買いに踏み切っていること」と答えました。市場が崩壊する可能性はわかっていました。しかし「市場が頂点を付けた1年後、つまり30%下落した1930年に私がいたらどうなっただろうか」と何度か想像してみました。その当時、魅力的なバーゲンがあったのはまちがいないでしょう。しかしそれからの3年間に市場が大きく下落したことで粉々にされたのも確実だと思います。1929年を100%とすると、20%を下回る水準まで下落したからです。70が20に下落する場合と100が20に下落する場合をくらべても、20に落ちたときにはほぼまったく同じように感じられるでしょう。早すぎることと誤っていることは、ときとして区別できなくなるわけです。(p. 2)

For years, when someone asked me what my biggest fear was as an investor in managing my portfolio, my answer was that it was buying too soon on the way down from often very overvalued levels. I knew a market collapse was possible. And sometimes, I imagined that I was back in 1930 after the market had peaked the year before, and then dropped 30%. Surely, there would've been some tempting bargains then. And just as surely, you'd have been crushed by the market's subsequent plunge over the next three years - down to below 20% of 1929 levels. A fall from 70 to 20, and from 100 to 20, would feel almost exactly the same by the time you hit 20. Sometimes being too early becomes indistinguishable from being wrong.

なお「早すぎることと誤っていることの区別」については、以前取り上げたハワード・マークスの記事「連続正解数1回」でも触れられています。