ot

2014年9月30日火曜日

貧しくてもハッピーだった(起業家イーロン・マスク)

0 件のコメント:
EV(電気自動車)のテスラ・モーターズや米国西海岸の超高速交通システム構想などで名を馳せているイーロン・マスク氏の特集記事が、最新号の日経ビジネス(2014/9/29号, No.1759)で掲載されていました。もしかしたら日本の一般紙では彼をよくとりあげていて、世間のみなさんはすでにご存じのことかもしれません。しかし個人的には彼に関するまとまった文章をはじめて読んだので、いろいろと響くものがありました。今回は、彼にインタビューした記事から印象に残った箇所を引用します。

なお引用元の記事は、日経ビジネスのWebサイトでも公開されていました。登録ユーザーの方は無料で読めるはずです。(2014/9/29 21:30現在)

世界に役立たないなら、会社の存在意義はない (日経ビジネスONLINE)

はじめに、ベンチャーを立ち上げていた頃の生活や心持ちについてです。

本当に貧乏だったんです。私が学生時代に弟と最初のベンチャーを起業した当時は、文字通り無一文でした。学費をローンで借りており、むしろ借金があったほどです。家を借りるよりも安かったので、小さなオフィスを借りました。そこで寝泊まりして、シャワーを浴びるのは、歩いて数ブロック先にあった「YMCA」でした。

すごく貧しかったのですが、私はそれを恐れたりはしませんでした。なぜなら私は貧しくても不幸ではなかったからです。1999年に住んでいたアパートは2人の友人とシェアしていました。大人数で住むと家賃や光熱費はとても安上がりになります。貧しくてもハッピーであることは、リスクを取る際に非常に大きな助けになります。


つぎは問題の火星移住計画について。

スペースXでは、人類が複数の惑星で生存できる道があるかどうかを確かめたいと思っています。人類の文明と技術が高いレベルにあるうちに、宇宙を探検し、火星に恒久的な基地を建設したいのです。

私は悲観主義者ではなく、未来に関して楽観的です。終末論が好きなわけでもありません。しかし歴史は、技術が波のように進歩したり、後退したりすることを示唆している。歴史上の多くの文明はそのような経験を繰り返してきました。そうならないことを願いますが、技術の後退が起きる前に火星に基地を作ることは重要だと思います。


今までは彼の狙いを知らなかったため、とんでもない話だと思っていました。しかし、この発言を読んで印象が変わりました。わたしも自分なりに似たような想いを抱いていたからです(ずっと先のことだと考えていましたが)。

最後の引用です。こちらもいいです。

私は単純な成長だけを目的に企業を成長させようとは思っていません。会社の成長よりもEVをもっと普及させることの方がはるかに重要です。それが世界にとって良いことだからです。株価うんぬんは関係ありません。「私たちは世界に役立つことをしている」。それが一番大事で、それこそが私のモットーです。(p.49)


もうひとつ、こちらはイーロン・マスクの言葉ではなく、少し前にチャーリー・マンガーが彼を評した言葉です。(日本語は拙訳)

Munger Hosts Groupies, Mocks Wall Street, Praises Buffett (Bloomberg)

「イーロン・マスクは天才だと思います。私はその言葉を軽々しくは使いませんが」。彼らが会話をしたかどうか質問されて、マンガーはそう答えた。「その上、この世に現れた最高に大胆で果敢な人間の一人でもあります。私は『IQが190なのに自分では250だと考えている人間は誰であろうと、いかにも危ないと思うね』と言ってきたので、その件は非難してくれてかまいません」。

"I think Elon Musk is a genius, and I don't use that word lightly," Munger said in response to a question about whether they'd talked. "He's also one of the boldest men who ever came down the pike. So put me down as saying I've always been afraid of the guy whose IQ is 190 and he thinks it's 250."

2014年9月28日日曜日

慈善財団における資産運用の現状(チャーリー・マンガー)

0 件のコメント:
本ブログではチャーリー・マンガーの講演を翻訳付きでご紹介しています。今回から始まるこのシリーズでは、1998年の秋に行われた講演を取りあげます。『Poor Charlie's Almanack』に収録されている講演その6(Talk Six)で、慈善財団における投資慣行を話題にしたものです。(日本語は拙訳)

講演その6

代表的な慈善財団における資産運用の現状
財団財務責任者の会合における講演
開催日: 1998年10月14日
場所: カリフォルニア州サンタモニカ、ミラマー・シェラトン・ホテル
協賛者: コンラッド・ヒルトン財団、アマチュア・アスレチック財団、J・ポール・ゲッティー信託、リオ・ホンド記念財団

今日ここで私がお話しするに至ったのは、友人のジョン・アーギューに依頼されたからです。式次第にあげられている他の話し手とは違って、私にはみなさんのどなたにも売り込む必要がないことを、ジョンはよく理解しています。私の話は、慈善財団を含んだ大組織で現在行われているさまざまな投資慣行に対して無礼になるかもしれません。しかし、湧き上がった敵意はジョン・アーギュー氏に対して向けるのが筋でしょう。彼は法律のプロですので、そのことをあえて楽しみにしているかもしれません。

さて、大規模な慈善財団での運用として長らく通例となっていたのは、借入れはほとんど行わずに、市場で流通している米国の証券、それもほとんどは株式に投資することでした。株式の銘柄選択は、単一あるいは非常に限定された数の、投資顧問を業とする組織が実行していました。しかし近年になると、より複雑な方向へと偏ってきました。イェール大学のような組織の先例に従うことで、バーニー・コーンフェルドが売り出した「ファンド・オブ・ファンズ」の優れた形態になろうと試みてきた財団が見受けられます。これはなんとも驚くべき事態ですね。コーンフェルドが面目を失ったずっと後になって、まさか有名大学がコーンフェルドの企んだカラクリへと他の財団を導くことになろうとは、だれにも予想できなかったことです。

今では投資顧問の数がわずかでとどまらず、多数となっている財団もあります。そこでは1階層追加された投資顧問が別の投資顧問を選抜しています。追加の階層として雇われた投資顧問が実施する仕事とは、どの投資顧問が最高かを判断したり、資金をさまざまな分野に配分する手助けをしたり、自国内の証券にこだわって外国の証券を無視すべきでないことを確証させたり、[選び出した投資顧問へ]要望した投資結果が妥当か否か確認したり、要請した投資スタイルが入念に踏襲されるように保証したり、さらには企業財務の学者が近年になって使っているボラティリティーやベータといった概念に適合するやりかたを以って、すでに広く分散されている投資先をさらに分散させる手伝いをすること等です。

しかし、このような驚くほどに活動的で博学たろうとする顧問、つまり普通株を選択するための別個の投資顧問を選ぶための階層が加わっても、第3の階層に位置する顧問をかなりの程度頼ることになります。その第3階層とは、投資銀行によって雇われている証券アナリストで構成されています。それらの証券アナリストは莫大な給料を受け取っており、ときには競り合いの末に億円単位の金額に達しています。雇用者である投資銀行には、それらの給料を埋め合わせるために2つの資金源があります。ひとつめは証券の買い手が支払う手数料及び売買時の利ざやです(そのいくらかは、[顧客の]運用マネージャーへ「ソフト・ダラー」として渡されています[非公式の礼金])。そしてもうひとつは、アナリストによって熱狂的なまでに証券を推奨された企業が、感謝を込めて投資銀行へ支払う代金です。

Talk Six

Investment Practices of Leading Charitable Foundations
Speech to the Foundation Financial Officers Group at Miramar Sheraton Hotel, Santa Monica, California, October 14, 1998, sponsored by the Conrad Hilton Foundation, the Amateur Athletic Foundation, the J. Paul Getty Trust, and Rio Hondo Memorial Foundation.

I am speaking here today because my friend, John Argue, asked me. And John well knew that I, who, unlike many other speakers on your agenda, have nothing to sell any of you, would be irreverent about much current investment practice in large institutions, including charitable foundations. Therefore any hostility my talk will cause should be directed at John Argue, who comes from the legal profession and may even enjoy it.

It was long the norm at large charitable foundations to invest mostly in unleveraged, marketable, domestic securities, mostly equities. The equities were selected by one or a very few investment counselling organizations. But, in recent years, there has been a drift toward more complexity. Some foundations, following the lead of institutions like Yale, have tried to become much better versions of Bernie Cornfeld's "fund of funds." This is an amazing development. Few would have predicted that long after Cornfeld's fall into disgrace, major universities would be leading foundations into Cornfeld's system.

Now, in some foundations, there are not few but many investment counselors, chosen by an additional layer of consultants who are hired to decide which investment counselors are best, help in allocating funds to various categories, make sure that foreign securities are not neglected in favor of domestic securities, check validity of claimed investment records, ensure that claimed investment styles are scrupulously followed, and help augment an already large diversification in a way that conforms to the latest notions of corporate finance professors about volatility and "beta."

But even with this amazingly active, would-be-polymathic new layer of consultant-choosing consultants, the individual investment counselors, in picking common stocks, still rely to a considerable extent on a third layer of consultants. The third layer consists of the security analysts employed by investment banks. These security analysts receive enormous salaries, sometimes set in seven figures after bidding wars. The hiring investment banks recoup these salaries from two sources: (1) commissions and trading spreads borne by security buyers (some of which are rebated as "soft dollars" to money managers) plus (2) investment banking charges paid by corporations that appreciate the enthusiastic way their securities are being recommended by the security analysts.

2014年9月26日金曜日

評価方法の選択について(セス・クラーマン)

0 件のコメント:
マネー・マネージャーのセス・クラーマンの著書『Margin of Safety』から、価値評価の話題がつづきます。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

評価方法の選択について

投資家はどのようにしてそれら複数の評価方法から選びだすべきだろうか。ある方法が明らかに好ましいのは、どのようなときだろうか。また、ある方法だけが非常に異なった価値を示しているときに、それと他の方法のどちらを信用すべきだろうか。

ある特定の方法が突出して適切だと思われることが少なからずある。たとえば、安定したキャッシュフローを生み出す消費財製造会社のような高いリターンを得られる企業を評価するには、正味現在価値(NPV)分析がもっとも適切である。清算価値だと低すぎるだろう。同様に、公益事業のような資産利益率が規制された企業でも、正味現在価値分析を使うのが最適だろう。一方、評価方法として清算価値分析がもっとも適切だと思われるのは、株価が簿価を大幅に下回っている赤字企業を評価する場合である。そしてクローズ・エンド型のファンドや有価証券しか保有しない企業は市場価値分析によって評価すべきであり、それ以外は適切ではない。

複数の評価方法を同時に適用すべき状況はよくあることだ。たとえば、大きく異なった複数の事業を営むコングロマリットのような複雑な企業体を評価するには、資産の一部を評価するにはある方法が最適だが、残りは別の方法を使う、という具合になる。またある企業を評価する際に、価値にどれだけ幅があるかを知ろうと複数の方法を使いたがる例もよくみられる。この場合、強力な理由がある場合を除いて、低い評価のほうを採用して保守的な見方をとるべきだ。保守的に取り組むと、結果的には成功していた投資でも踏み切らずにとどまる可能性がある。しかしそれと同時に、あまり保守的でない事業評価方法を採用していれば結局は被うことになる大きな損失を、たびたび防ぐことにもなるのだ。

Choosing Among Valuation Methods

How should investors choose among these several valuation methods? When is one clearly preferable to the others? When one method yields very different values from the others, which should be trusted?

At times a particular method may stand out as the most appropriate. Net present value would be most applicable, for example, in valuing a high-return business with stable cash flows such as a consumer-products company; its liquidation value would be far too low. Similarly, a business with regulated rates of return on assets such as a utility might best be valued using NPV analysis. Liquidation analysis is probably the most appropriate method for valuing an unprofitable business whose stock trades well below book value. A closed-end fund or other company that owns only marketable securities should be valued by the stock market method; no other makes sense.

Often several valuation methods should be employed simultaneously. To value a complex entity such as a conglomerate operating several distinct businesses, for example, some portion of the assets might be best valued using one method and the rest with another. Frequently investors will want to use several methods to value a single business in order to obtain a range of values. In this case investors should err on the side of conservatism, adopting lower values over higher ones unless there is strong reason to do otherwise. True, conservatism may cause investors to refrain from making some investments that in hindsight would have been successful, but it will also prevent some sizable losses that would ensue from adopting less conservative business valuations.

2014年9月24日水曜日

チャーリー・マンガーの炉辺談話(1)

0 件のコメント:
米ウォール・ストリート・ジャーナルのブログで、ジェイソン・ツヴァイク氏がチャーリー・マンガーにインタビューした記事が載せられています。チャーリーが会長を務めるデイリー・ジャーナル社の株主総会が開催された際に実現したとのことです。質疑応答が10件ほどの短い記事ですが、和訳のほうはゆっくり(味わいながら?)進めることをご了承ください。お急ぎの方は、リンク先に原文記事があります。

A Fireside Chat With Charlie Munger (The Wall Street Journal)

<質問> ウォーレン・バフェットから受けた影響について

<マンガー> ウォーレンは私に法律稼業をやめるよう持ちかけてきました。それは私にとって非常に大きな影響を及ぼしました。フルタイムの投資家になろうとは以前から考えていましたが、そのほうがすごく合っているとウォーレンが言ってくれたのです。彼の言うことは正解でした。いずれ自分で踏み切ったとは思いますが、彼が背中を押してくれました。しかし、かなりの経歴を築くために何年間も賢明に働いてきたあげく、その経歴をあえて葬るというのは容易なことではないですよ(マンガー氏は自らが設立した法律事務所マンガー・トーレス・アンド・オルソンを1965年に離れ、バークシャーでバフェット氏の右腕として仕えるとともに、非公開の投資組合を運営した)。ウォーレンの影響がなければ、そうするのはひどく難儀だったでしょうね。

その選択は、まちがいではなかったですよ(笑)。我々のどちらにとっても驚くほどうまく働きましたし、他の大勢の人たち(バークシャーの株主)にもそうですよ。

On how Warren Buffett influenced him:

Warren talked me into leaving the law business, and that was a very significant influence on me. I was already thinking about becoming a full-time investor, and Warren told me I was far better suited to that. He was right. I would probably have done it myself, but he pushed me to it. I have to say, it isn't an easy thing to work very hard for many years to build up a significant career, as I had done, and then to destroy that career on purpose. [Mr. Munger left the law firm he founded, Munger, Tolles & Olson LLP, in 1965 to serve as Mr. Buffett's right-hand man at Berkshire and to run a private investment partnership.] That would have been a lot harder to do if not for Warren's influence on me.

It wasn't a mistake. [Laughter.] It worked out remarkably well for both of us and for a lot of other people as well [the investors in Berkshire].

2014年9月22日月曜日

2013年度バフェットからの手紙 - (付録)企業年金制度について(1)

0 件のコメント:
半年前に発表された2013年度「バフェットからの手紙」では、企業年金や公的年金の問題についてウォーレン・バフェットは短いながらも警告を出しています。そして年金問題を理解する材料としてワシントン・ポストのキャサリン・グラハムに書いた文章のコピーを掲載し、一読するように勧めています。今回から始まるこのシリーズでは、キャサリン向けの文章を全訳します。

なお原文が再掲されているのは、いわゆる「バフェットからの手紙」のみのPDFファイルではなく、アニュアル・レポートPDFファイル(ページ数:140ページ)のほうになります。

BERKSHIRE HATHAWAY INC. 2013 ANNUAL REPORT [PDF]

まずは2013年度「バフェットからの手紙」に書かれている文章から引用します。

地方自治体や州政府の財政問題は加速しています。その原因の多くは、年金制度において維持できないほどの保証をしてきたからです。財政に寄生する巨大なサナダムシのことを、市民も役人もたいていは過小評価してきました。それが生まれたのは、資金を手当てしたいとする意思と対立する約束がなされたときでした。残念なことに、今日の年金数理はほとんどの国民には謎のままとなっています。

それと同じように、投資におけるポリシーもそれらの問題において重要な役割を果たしています。1975年にわたしは、ワシントン・ポスト社の会長だったキャサリン・グラハムのために文章を書きました。企業年金における落とし穴と、投資上のポリシーの重要性を説明したものです。その文章は118-136ページに添付しています。

次の10年間は、公的年金制度に関するニュースをみなさんもいろいろと目にすることでしょう。それも悪いニュースです。問題の存在する箇所において速やかに対応策を講じる必要性があることを理解する上で、わたしの書いた文章がお役に立てれば幸いです。 (p.21)

Local and state financial problems are accelerating, in large part because public entities promised pensions they couldn't afford. Citizens and public officials typically under-appreciated the gigantic financial tapeworm that was born when promises were made that conflicted with a willingness to fund them. Unfortunately, pension mathematics today remain a mystery to most Americans.

Investment policies, as well, play an important role in these problems. In 1975, I wrote a memo to Katharine Graham, then chairman of The Washington Post Company, about the pitfalls of pension promises and the importance of investment policy. That memo is reproduced on pages 118 - 136.

During the next decade, you will read a lot of news - bad news - about public pension plans. I hope my memo is helpful to you in understanding the necessity for prompt remedial action where problems exist.


つづいて、ここからが本文になります。

年金について

企業年金の費用において、経営者が重大な影響を及ぼし得る課題には2つの側面があります。ひとつめは従業員に提供する年金制度上の保証内容を、冷静に統制しつづけることです。もうひとつは、年金資産があげる投資リターンを増大させることです。

年金における保証内容の不可逆的性質について

保証内容を合理的に統制するには、年金計画を支配する基本的な算術や実際的な規則を理解する必要があります。

年金給付について何を決定する際でも、最初に認識しておくべきことがあります。それは、この問題がほぼ間違いなく、真剣に取り組むことになる点です。つまり水準以下の利益しか出せなくても、決定した内容は今後取り消すことができなくなります。

現実的な問題として、利益の出ている大企業で年金給付を削減することはほぼ不可能です。なんとか利益を出している大企業でも、これは同じことです。制度の決まりでは、会社側にはいかなる時点でも打ち切る権利があり、拠出の有無を選択できるのは会社側だけであると、非常に強調して明文化しているかもしれません。しかしながら法律は、そのような"時代遅れの"条項が持つものと見做されていたさまざまな意義を浸食してきました。そして実際的な慣習として、非現実的な施策を終結するためのあらゆる残余的権利がもたらされています。

そのため年金費用に関する第一の掟は、契約を締結する前にこれからどこへ足を踏み入れようとしているのかを知っておくことです。飛びつく前によく見ておいてください。経営者がよくわかっていないという点では、重要性の面でほど遠いどんな費用よりも、おそらく年金費用のほうがひどい状況です。これは国民にとって将来高くつくのが明白なことと同じです。公的年金費用に対して、有権者はますます理解しなくなっています。数理計算上の考え方自体が、ほとんどの人には直観的に理解できません。使われている用語は難解ですし、数字が現実離れしています。ですから契約を締結しようとする際でも、小切手を切るときに思い起こされるような、体の中から湧き上がる反応が起きないのです。

年金債務では年次費用や現金の支出が累進的に増加していくため、合計すると非常に大きくなる債務です。しかしそれはたやすく作られながらも、直近では財務上の痛みがほとんど生じません。このような債務は、経営上の他の領域ではみられないものです。プレスルームにおける労働慣習のように、小さなあやまりが大きく膨らんでいきます。配慮や注意が望まれます。 (p.118)

PENSIONS

There are two aspects of the pension cost problem upon which management can have a significant impact: (1) maintaining rational control over pension plan promises to employees and (2) increasing investment returns on pension plan assets.

The Irreversible Nature of Pension Promises

To control promises rationally, it is necessary to understand the basic arithmetic and practical rules governing pension plans.

The first thing to recognize, with every pension benefit decision, is that you almost certainly are playing for keeps and won't be able to reverse your decision subsequently if it produces subnormal profitability.

As a practical matter, it is next to impossible to decrease pension benefits in a large profitable company - or even a large marginal one. The plan may embody language unequivocally declaring the company's right to terminate at any time and providing that contributions shall be solely at the option of the company. But the law has eroded much of the significance such "out" clauses were presumed to have, and operating practicalities render any residual rights to terminate moot.

So, rule number one regarding pension costs has to be to know what you are getting into before signing up. Look before you leap. There probably is more managerial ignorance on pension costs than any other cost item of remotely similar magnitude. And, as will become so expensively clear to citizens in future decades, there has been even greater electorate ignorance of governmental pension costs. Actuarial thinking simply is not intuitive to most minds. The lexicon is arcane, the numbers seem unreal, and making promises never quite triggers the visceral response evoked by writing a check.

In no other managerial area can such huge aggregate liabilities - which will be reflected in progressively increasing annual costs and cash requirements - be created so quickly and with so little immediate financial pain. Like pressroom labor practices, small errors will compound. Care and caution are in order.