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2013年8月30日金曜日

65年ぶりに再び優勝した人(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる講演『経済学の強みとあやまち』の13回目です。今回もまたチャーリーからの問題が出ています。回答部分の文章は次回にご紹介します。なお、前回分の投稿はこちらです。(日本語は拙訳)

それでは、そういった問題を私がどのように解いているかお話ししましょう。言うまでも私は単純なサーチ・エンジンを心に抱き、チェックリストを順に確認していきます。さらに、大雑把なアルゴリズムをいくつか使っています。これは非常に多くの複雑なシステムにおいて、かなりうまくいきます。そういったアルゴリズムはたとえば次のように使います。著しい成功とは、それらの要因を組み合わせることでなされるものです。

A) ひとつかふたつの変数を極大化あるいは極小化すること。たとえば、コストコや当社の家具・電化製品店の例があげられます。

B) 成功要因を追加して、より大きな連携をつくることで成功を後押しすること。これは非線形的に進むことがよくあるため、物理学における破断点や臨界といった概念を思い浮かべるかもしれません。そうです、非線形的な結果がしばしばもたらされるのです。もうひと押しすることで、「とびっきりな」結果が得られます。私は生涯を通じて「とびっきりな」結果をさがし求めてきたので、それらがどのように発生するのか説明してくれるモデルには大きな関心を持っています。

C) 多くの要因において、徹底的にすぐれた成績を追求すること。トヨタやレス・シュワブがその例です。

D) ある種の大波をとらえて乗ること。オラクルが例です。なお今日の議事次第の中でオラクルのCFO(ジェフ・ヘンリー)が多くを占めていますが、オラクルのことはそれを知る前から話題にあげようと考えていました。

概して私が問題を解く際に使っており、みなさんにもお勧めなのは、急所を突くアルゴリズムを選んで、前向きだけでなく後ろ向きにもやることです。一例をあげてみましょう。私は家族にちょっとしたパズルを出して悩ませることがあります。次の問題は、それほど昔でない頃に家族へ出したものです。「この国でおこなわれる活動のひとつで、一対一のコンテスト形式によって国内チャンピオンを決めるものがあります。65年前に優勝した人が再び優勝しました。さて、その活動とは何でしょうか」(一時中断)。この問題についても、答えがひらめく人はあまりみたことはありません。私の家族でも、それほど多くはひらめきませんでした。しかし息子の一人に物理学者がいて、私好みのこの種の考え方に精通していました。ほどなく正解にたどりついた彼の説明はこうです。

Well, how did I solve those problems? Obviously I was using a simple search engine in my mind to go through checklist-style, and I was using some rough algorithms that work pretty well in a great many complex systems, and those algorithms run something like this: Extreme success is likely to be caused by some combination of the following factors:

A) Extreme maximization or minimization of one or two variables. Example, Costco or our furniture and appliance store.

B) Adding success factors so that a bigger combination drives success, often in nonlinear fashion, as one is reminded by the concept of breakpoint and the concept of critical mass in physics. Often results are not linear. You get a little bit more mass, and you get a lollapalooza result. And, of course, I've been searching for lollapalooza results all my life, so I'm very interested in models that explain their occurrence.

C) An extreme of good performance over many factors. Example, Toyota or Les Schwab.

D) Catching and riding some sort of big wave. Example, Oracle. By the way, I cited Oracle before I knew that the Oracle CFO (Jeff Henley) was a big part of the proceedings here today.

Generally I recommend and use in problem solving cut-to-the quick algorithms, and I find you have to use them both forward and backward. Let me give you an example. I irritate my family by giving them little puzzles, and one of the puzzles that I gave my family not very long ago was when I said, "There's an activity in America, with one-on-one contests and a national championship. The same person won the championship on two occasions about sixty-five years apart." "Now," I said, "name the activity." (Pause). Again, I don't see a lot of light bulbs going on. And in my family, not a lot of light bulbs were flashing. But I have a physicist son who has been trained more in the type of thinking I like. And he immediately got the right answer, and here's the way he reasoned:

何年か前にこの文章を読んだときは、答えが全く思いつきませんでした。日本人になじみのない話題を取り上げているので、どんぴしゃりの答えを出すのは困難だと思います。

2013年8月28日水曜日

尊敬できる人のもとで働こう(ウォーレン・バフェット)

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ウォーレン・バフェットが1994年にネブラスカ大学でおこなった講演その6です。今回から質疑応答ですが、どこかで読んだことのある有名な発言がつづきます。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

<質問者> ご自身の人生哲学をかいつまんで教えていただけますか。なぜそうなのか、理由もお願いします。

<ウォーレン> 立派な人生哲学かはなんとも言えませんが、人生を楽しんでいることはたしかです。自分の生き方を気に入っているという点では誰にもひけをとりません。毎日がいとおしいものです。それというのも、わたしは好きな人だけと働いているという幸せ者だからです。そのような立場にいられて非常に幸運だと感じています。仕事をしていてキリキリと締めつけられるようだったり、仕事に行くのが不安だったり、そういったことをかかえているのはそもそもがお金めあてに結婚するようなもので、どんな状況であってもひどい考えだと思います。もうすでに金持ちになっているなら、なおさら正気の沙汰ではありません。非常に幸運なことに、わたしにはなにもストレスがありません。ですから、ミセスBよりも長生きするつもりです。職場にはタップダンスをしながら向かいます。仕事をえらぶなら自分が楽しめることにするべきだ、とわたしは信じています。ハーバードで質問されて、つぎのような助言を一度したことがあります。「だれのもとで働くのがよいでしょうか」。わたしはこう答えました。「自分の尊敬する人と働くのがいいですよ。そのほうがよい結果になるのはまちがいないですから」。数週間後、その大学の学部長から連絡がありました。「あの一団になんとおっしゃったのですか。みんな自営でやりたいと決心しているのですよ」。

Q. In a sentence or less, could you please tell me what is your personal philosophy of life? And then my follow-up question, why?

A. Well, I'm not sure I have any brilliant philosophy of life. I certainly enjoy life. I like my life as much as anybody possibly could. I mean, I love every day and one reason I do is that I am fortunate in that I only work with people I like. I consider myself very lucky to be in that position. If you work in a job where your stomach churns and you find yourself dreading going to work and all that sort of thing, essentially, that is really like marrying for money, which is probably a dumb idea under any circumstances. And, it's absolute madness if you are already rich. I've been very fortunate in that I have no stress whatsoever. I'm going to try and outlive Mrs. B. I mean it. I tap dance on the way to work. I do believe in working at something you enjoy. I gave this advice one time at Harvard when somebody asked me, "Who should I work for?” I said, “Well, go work for somebody you admire. You're bound to get a good result.” A couple of weeks later, I received a call from the Dean, and he said, "What did you tell that group? They've all decided to become self-employed!"

2013年8月26日月曜日

証券の価格変動と機会費用(セス・クラーマン)

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ファンド・マネージャーのセス・クラーマンの著書『Margin of Safety』からご紹介です。今回は価格変動の話題をとりあげた一節を引用します。ひきつづき第7章「バリュー投資思想の本質をなすもの」(At the Root of a Value-Investment Philosophy)からです。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

一時的な価格変動との関わりあい

投資で起こりうる可能性には、恒久的な損失をだすだけではなく、内在的な価値とは無関係に価格が一時的に変動するものもある(ベータではこの2つを区別できない)。その価格変動を重大なリスクととらえる投資家は多い。価格が下落すれば、ファンダメンタルズがどうであろうとその投資はリスキーだとみなされる。しかし一時的な価格変動はほんとうにリスクなのだろうか。それは恒久的な価値を損なうものではないが、ある種の投資家がある種の状況に立っているときにはリスクとなる。

需給面で短期的な圧力がかかることで価格が一時的に不安定になる場合と、事業のファンダメンタルズから価格が移り変わる場合の違いを、投資家がいつでも容易に見分けられるわけではない。事実が生じてからでないと、真実は明らかにならないこともあるからだ。当然ながら投資家は投資対象へ支払う金額をおさえようとするし、業績悪化に伴って価値が減少するビジネスを買いたがらない。しかし、市場におけるランダムな短期的変動を避けることはできない。実際のところ投資家は価格変動を想定しておくべきで、その変動に耐えられないのであれば証券に投資すべきではない。

妥当な価値のあるものを割安に買うのであれば、短期的な価格変動は問題になるだろうか。長い目で見れば、大きな問題にはならない。最終的には価値が証券価格のうちに反映されるからだ。皮肉なことに、価格が変動することで長期投資が実際に向かうであろう方向は、市場における直近の影響とは逆向きになる。たとえば短期的に価格が下落しても、実際には長期投資のリターンを増加させる材料となる。しかし直近の価格変動が投資家にとって問題となるような状況もある。たとえば証券を早々に売却せざるをえない者は、市場価格にふりまわされる。投資家が成功するために肝心なことは、売りたいときに売ることであり、売らなければいけないときではない。売却を迫られるような投資家は、米国債以外の証券を保有すべきではないのだ。

やっかいごとをかかえた企業に投資している場合でも、直近の証券価格は問題になる。目先をしのぐために資金を調達せざるを得なくなると、証券を保有する投資家は、その会社の株式や債券の支配的な市場価格によって、持ち分の運命をある程度決定されてしまうからだ。(第8章では、再帰性(reflexivity)として知られるこの効果について、より徹底的な議論を展開する)

長期志向の投資家が短期的な価格変動に興味を示す第三の理由は、ミスター・マーケットが非常に魅力的な売買の機会を提供してくれることにある。その際に現金を保有していれば、機に乗じることができる。しかし市場が下落したときに資金を全額投資していると、ポートフォリオの価値が下がるだけでなく、より安い水準で株を買える機会という利益を奪われてしまう。これは機会費用と呼ばれるもので、つまり将来起こりうる機会を見送ろうとすれば必ず発生するものである。保有対象の流動性が小さかったり、市場で取引されていないものだと、機会費用はさらに増すことになる。非流動性は、より割安なものへ切り替える際の妨げとなるのだ。

投資家が機会費用を負うべきかどうか決める上でもっとも重要な要因は、ポートフォリオの一部に現金が残されているか否かである。妥当な現金を残しているか、定期的に十分な現金をもたらしてくれる証券を保有していれば、機会を見送ることが少なくなる。ある種の投資先に重きを置くことで、投資家はポートフォリオ・キャッシュフロー(現金の正味流入分のこと)を管理できる。ポートフォリオ・キャッシュフローは、(残存年数の加重平均が)短期間の証券のほうが長期間のものよりも大きくなる。投資対象の内在的価値が一部あるいはすべて満たされたことをきっかけにして、ポートフォリオ・キャッシュフローを増加させることもできる(第10章で紙面をより費やして議論する)。一般に継続企業へ株式投資をすると、 配当金の支払いの形で ごく一部の現金しかもたらしてくれない。それに対して破産したり清算中の企業の証券は、購入後の数年間のうちにポートフォリオへ十分な流動性資産を還元しうる。リスク・アービトラージを狙った投資[買収時のサヤ取り]は概して、ごく短期間つまり何週間や何ヶ月という期間で、たいていは現金や流動性の高い証券あるいはその両方の形で払い戻してくれる。リスク・アービトラージの状況や破産、清算を対象にした投資案件には、初期投資分と利益の両方が現金で戻されるという、もうひとつの魅力がある。

機会費用を抑えるには、ヘッジを使う方法もある。ヘッジとは、価格下落を緩和するために反対方向へ動くことが予想される別のポジションをとる投資だ。ヘッジ分に価値が発生すれば売却することで、新たにうまれた機会に乗じる資金となってくれる。(ヘッジングについては13章で詳細に議論する)

The Relevance of Temporary Price Fluctuations

In addition to the probability of permanent loss attached to an investment, there is also the possibility of interim price fluctuations that are unrelated to underlying value. (Beta fails to distinguish between the two.) Many investors consider price fluctuations to be a significant risk: if the price goes down, the investment is seen as risky regardless of the fundamentals. But are temporary price fluctuations really a risk? Not in the way that permanent value impairments are and then only for certain investors in specific situations.

It is, of course, not always easy for investors to distinguish temporary price volatility, related to the short-term forces of supply and demand, from price movements related to business fundamentals. The reality may only become apparent after the fact. While investors should obviously try to avoid overpaying for investments or buying into businesses that subsequently decline in value due to deteriorating results, it is not possible to avoid random short-term market volatility. Indeed, investors should expect prices to fluctuate and should not invest in securities if they cannot tolerate some volatility.

If you are buying sound value at a discount, do short-term price fluctuations matter? In the long run they do not matter much; value will ultimately be reflected in the price of a security. Indeed, ironically, the long-term investment implication of price fluctuations is in the opposite direction from the near-term market impact. For example, short-term price declines actually enhance the returns of long-term investors. There are, however, several eventualities in which near-term price fluctuations do matter to investors. Security holders who need to sell in a hurry are at the mercy of market prices. The trick of successful investors is to sell when they want to, not when they have to. Investors who may need to sell should not own marketable securities other than U.S. Treasury bills.

Near-term security prices also matter to investors in a troubled company. If a business must raise additional capital in the near term to survive, investors in its securities may have their fate determined, at least in part, by the prevailing market price of the company's stock and bonds. (Chapter 8 contains a more complete discussion of this effect, known as reflexivity.)

The third reason long-term-oriented investors are interested in short-term price fluctuations is that Mr. Market can create very attractive opportunities to buy and sell. If you hold cash, you are able to take advantage of such opportunities. If you are fully invested when the market declines, your portfolio will likely drop in value, depriving you of the benefits arising from the opportunity to buy in at lower levels. This creates an opportunity cost, the necessity to forego future opportunities that arise. If what you hold is illiquid or unmarketable, the opportunity cost increases further; the illiquidity precludes your switching to better bargains.

The most important determinant of whether investors will incur opportunity cost is whether or not part of their portfolios is held in cash. Maintaining moderate cash balances or owning securities that periodically throw off appreciable cash is likely to reduce the number of foregone opportunities. Investors can manage portfolio cash flow (defined as the cash flowing into a portfolio minus outflows) by giving preference to some kinds of investments over others. Portfolio cash flow is greater for securities of shorter duration (weighted average life) than those of longer duration. Portfolio cash flow is also enhanced by investments with catalysts for the partial or complete realization of underlying value (discussed at greater length in chapter 10). Equity investments in ongoing businesses typically throw off only minimal cash through the payment of dividends. The securities of companies in bankruptcy and liquidation, by contrast, can return considerable liquidity to a portfolio within a few years of purchase. Risk-arbitrage investments typically have very short lives, usually turning back into cash, liquid securities, or both in a matter of weeks or months. An added attraction of investing in risk-arbitrage situations, bankruptcies, and liquidations is that not only is one's initial investment returned to cash, one's profits are as well.

Another way to limit opportunity cost is through hedging. A hedge is an investment that is expected to move in a direction opposite that of another holding so as to cushion any price decline. If the hedge becomes valuable, it can be sold, providing funds to take advantage of newly created opportunities. (Hedging is discussed in greater depth in chapter 13.)

2013年8月25日日曜日

米マイクロソフト次期CEOを予想する

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広く報道されているように、米マイクロソフト(MSFT)のCEOスティーブ・バルマーが退任し、後任をむかえる準備をはじめたと発表されました(当社の報道)。以前からバルマーは特に株式市場から好かれておらず、今回の報道によって株価は7%以上上昇しました。株式市場は将来の行方を織り込もうとしていますし、各報道でも憶測がなされています。個人的には当社の一株主なので、今回は戯れながら次期CEOを一点読みで予想してみます。

当社の株式を購入した経緯を書いた際にリスクをあげましたが(過去記事)、まずは「バルマー政権がつづく」ことによるリスクを考えてみます。

・Windows 8およびSurface(特にRT)の失敗のけりがつかないこと
低迷するPCおよびタブレット市場での巻き返しをねらってこれらの製品は投入されましたが、成功と呼べる水準までは受け入れられていません。特にSurfaceは巨額の在庫評価損を計上しました。この責任を正当に問わなければ、次期大型製品(Windows9など)にむけて本質的な反省ができないと感じます。それは、巻き返しを再度試みるための礎がもろくなることにつながります。消費者向け市場でWindows OSの後退をとめないと、やがては当社の主戦場である企業向け市場を侵食されかねません。

・消費者向け市場における業績が強調され、他分野の成功に目を向けてもらえないこと
消費者向けWindowsやSurfaceは低調ですが、企業向け全般やゲーム機Xboxといった事業では成功をおさめています。現在の当社は一部の事業によって企業全体のイメージが描かれており、ひいては中長期的な企業活動全般に悪影響を及ぼすことが危惧されます。

CEOが交代することで、少なくともこれらのリスクは解消できる可能性がでてくると考えます。つぎに、次期CEO選定において重要と思われる属性をあげます。

・「マイクロソフトは変わろうとしている」という印象を、消費者や顧客に与えられるか
社内の重役が昇進するやりかたは、従来の延長ととらえられやすいと思います。この観点からみれば、新CEOには社外の人物か、あるいは社内昇進の場合には女性を登用するのがよいと考えます。

・一方で、外部登用のCEOが社内の信頼を集められるか
IBMがナビスコ社からきたルイス・ガースナーの手で復活したように、外部の血を入れることで、当社の企業文化が強力で獰猛なものに生まれかわるでしょうか。それはちがうと思います。現在の当社は財務や業績面で深刻な不安材料はなく、状況が切迫していません。低調とはいっても、業界の最大手です。そのようなときには、こまかい事情をよく知らない社外の人間に自分たちの指揮をまかせ、その言うことに従いたいとは考えないものです。もちろんCEOを選出・承認するのは取締役会ですが、トップを抱いた社員がどのような心情で動くものか考慮に入れるでしょう。現在の当社では、外様を受け入れる可能性は低いと考えます。

これらふたつのあいだを埋めるものとして考えられる案が、「当社OB」の登用です。OBであれば社内から信任を受ける可能性も高く、その一方で社外的な顔や経験も期待できます。

そこでわたしが予想する当社の次期CEOは、スティーブン・エロップ(Stephen Elop)氏です。彼は携帯電話最大手だったノキアでCEOをつとめていますが、その前には当社でバルマーの部下として働いていました。


エロップ氏は不振のノキアのCEOに抜擢されてから、携帯電話のOSとして採用していたシンビアンを脇にやり、当社製OSのWindows Phone(WP)へ移行することを決断しました。そこに陰謀を感じている報道メディアがありますが、エロップ氏をノキアに出したことはただ単に当社の戦略に基づいたものと、個人的にはとらえています。WPを採用することでノキアが成功すればそれに越したことはないですし、失敗しても別の会社のことですから当社における財務面の影響は小さくとどまります。そのため、当社はノキア社を仮想的に一事業部門として位置づけてきたと考えます。そうであれば、エロップ氏が里帰りするシナリオは当初から想定されていてもおかしくありません。エロップ氏自身もマイクロソフトびいきを側近にそろえ、自分の後を継がせる準備をしてきたと予想します。

エロップ氏を当社のCEOにむかえる案の相対的な利点は、次のとおりです。

1. 大企業ノキアのCEOをつとめた経験があること。
2. 消費者向けの最たる製品、スマートフォンの製造販売企業で奮闘した経験があること。
3. 当社Office部門のボスだったため、それら稼ぎ頭の部門に対してにらみがきくこと。
4. 年齢が若く(1963年生まれの49歳)、長期戦を戦い抜けるだけの力を備えていること。
5. 老け顔かつ声域が低く、企業トップとしてのカリスマ性を漂わせていること。

一方の弱点は次のとおりです。

1. バルマーの元部下であるため、彼と同類扱いされる恐れがあること。
2. ノキアであげた業績は華々しいものとはほど遠く、実力が疑問視されること。
3. 当社のOBだが在籍期間が短く、人望を集めていない可能性があること。
4. ノキアが彼を手放したがらない可能性があること。

自分の株式ポートフォリオのうちのそれなりの部分を、当社およびインテルの合算が占めています(両社は一体としてとらえています)。当社は昨年までに購入し、インテルは今年からの購入です。割安という点でインテルにはさらに投資したいと考えていますが、インテルの行く末は当社にもゆだねられています。そのため今回のCEO交代は個人的にもそれなりに意味を持っており、今後のなりゆきを適宜追っていくつもりです。

最後になりますが、今回の記事は検証されておらず、単なる夢想にすぎません。的中する確率は10%以下、つまり一候補にすぎない程度とお考えください。

2013年8月24日土曜日

余計な不利をまたひとつ背負いこむ(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの(再考)世知入門、2回目です。おなじみの話題が登場しますが、ここでは具体的な説明がされている箇所を引用します。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

まずはベン・グレアムの話題です。

ご存じのように、ウォーレンにはベン・グレアムという先生かつ指導者がいて大きな影響を受けました。グレアムは学問向きの人だったので、コロンビア大学を卒業したときに3つの学部学科から博士課程へと声をかけられました。その一環として教鞭をとることも要請されていました。その3つとは、文学、ギリシャ・ラテン古典、数学でした。

グレアムはとても学術的な性格を持った人でした。彼とは面識がありましたが、まるでアダム・スミスのような人物でした。先を見通すのがうまく、非常に頭のいい人でした。学者のようにさえ見えたものです。その上、グレアムは良き人間でした。いつも寛大で、30年間にわたってコロンビアで教鞭をとり、自分の分野における教科書を著したり共著したりしながらも、本腰を入れて自己資産を最大化しようとはせずに、裕福なまま亡くなりました。

ここで私が申し上げたいのは、学術界というのは世知について多くを教えてくれる場所だということです。そして学問のもたらす最高に値打ちあるものは、本当にうまく働きます。

Of course, Warren had a professor/mentor - Ben Graham - for whom he had a great affection. Graham was so academic that when he graduated from Columbia, three different academic departments invited him into their Ph.D. programs and asked him to start teaching immediately as part of the Ph.D. program: (those three departments being) literature, Greek and Latin classics, and mathematics.

Graham had a very academic personality. I knew him. He was a lot like Adam Smith - very preoccupied, very brilliant. He even looked like an academic. And he was a good one. And Graham, without ever really trying to maximize the gaining of wealth, died rich - even though he was always generous and spent thirty years teaching at Columbia and authored or coauthored the best textbooks in his field.

So I would argue that academia has a lot to teach about worldly wisdom and that the best academic values really work.


つづいて複数のモデルを使い分ける意義を、トランプのゲームであるコントラクトブリッジを例にして説明しています。

すべてを知り尽くす必要はありません。そういった中から極めて重要なものだけ習得すればよいのです。それだけなら、それほどむずかしいことではありません。

トランプを使うゲームのひとつコントラクトブリッジを例に、この点を説明してみましょう。コントラクトはご存知でしょうから、ディクレアラーとしてうまくやるには何をすべきかはおわかりだと思います。自分のハイ・カードと最強の切り札スートをレイダウンすることで、ハンドにある確実な勝ち札をかぞえることができます。

しかしトリックがひとつかあるいは2枚のショートならば、必要な分のトリックを勝つにはどうすればいいでしょうか。定石が6つほどあります。ロング・スート・エスタブリッシュメントか、フィネスか、スローイン・プレイか、クロスラフか、スクイズか、はたまたディフェンスを惑わせて失敗させるような手をえらぶか。非常に限られた数のモデルしかありません。

しかしそういったモデルを1つか2つしか知らなかったら、ディクレアラーとして「おばかさん」な手しかとれないでしょう。

さらにそれらのモデルはお互いに関わりあっているので、モデル同士がどのように関連するのか知らないと、ハンドを正しくプレイできません。

また、何かを考えるときには順方向と逆方向のどちらからも考えるように、という話もしました。優れたディクレアラーはこう考えます。「確実に勝てるトリックをどうやって手に入れられるだろうか」。しかし逆にも考えるのです(おそらくですが)。「もしまちがって、トリックをたくさん負けてしまったらどうなるだろうか」。どちらの考え方も有用なものです。ですから、人生というゲームで勝利を収めるには、必要なモデルを頭に叩き込み、それを使って順逆の両方向に考えることです。ブリッジでうまくいくことが人生でもうまく働くでしょう。

コントラクトブリッジが廃れてしまったのは、みなさんの世代にとって悲しむべきことだと思います。ブリッジについては、中国はわが国よりも賢明です。いまや、かの国ではブリッジを小学校で教えています。資本主義的な文明が始まれば中国人はうまくやるだろうと、神はご存じです。ブリッジをよく知る人がたくさんいる国と、そうでない我が国が競争することになれば、我々は余計な不利をまたひとつ背負いこむことになるでしょう。

You don't have to know it all. Just take in the best big ideas from all these disciplines. And it's not that hard to do.

I might try and demonstrate that point by (using the analog of) the card game of contract bridge. Suppose you want to be good at declarer play in contract bridge. Well, you know the contract - you know what you have to achieve. And you can count up the sure winners you have by laying down your high cards and your invincible trumps.

But if you're a trick or two short, how are you going to get the other needed tricks? Well, there are only six or so different, standard methods. You've got long suit establishment. You've got finesses. You've got throw-in plays. You've got crossruffs. You've got squeezes. And you've got various ways of misleading the defense into making errors. So it's a very limited number of models.

But if you only know one or two of those models, then you're going to be a horse's patoot in declarer play.

Furthermore, these things interact. Therefore, you have to know how the models interact. Otherwise, you can't play the hand right.

Similarly, I've told you to think forward and backward. Well, great declarers in bridge think, "How can I take the necessary winners?" But they think it through backwards, (too. They also think,) "What could possibly go wrong that could cause me to have too many losers? And both methods of thinking are useful. So (to win in) the game of life, get the needed models into your head and think it through forward and backward. What works in bridge will work in life.

That contract bridge is so out of vogue in your generation is a tragedy. China is way smarter than we are about bridge. They're teaching bridge in grade school now. And God knows the Chinese do well enough when introduced to capitalist civilization. If we compete with a bunch of people that really know how to play bridge when our people don't, it'll be just one more disadvantage we don't need.