<追記>2017/7/17(月)
コメント欄で「匿名」さんからご指摘を受けたように、本記事では主題に関わる翻訳ミスがあったと判断しました。訂正箇所を具体的にまとめると、「ウォーレン・バフェットが主張した指標は"ROE的なもの"であって、当初の訳文にあげた"ROCE"ではない」となります。
本来であれば、訂正した訳文だけを残してその他の筋ちがいな文章(ROCEの説明など)を抹消すべきだとは思います。一方で、訂正に至るまでの経緯が見て取れることにも何らかの意味があると考え、ひとまずは翻訳ミスの言葉(抹消線付き)や当初の文章を残すこととしました。
企業分析の指標の一つとして、以前にROIC(投下資産利益率)をとりあげましたが(過去記事)、今回はそれと似ているようで少し違うROE(自己資本利益率)
なおウォーレンが営業上の成績をみるときには、以下の訳では「営業利益率」としていますが、保有証券を簿価評価した上で、期初の純資産を分母とする方式をあげています。これによって、証券の時価が変動するのを無視しています。
この基準によれば、1979年度の営業利益率は年初の純資産ベースで18.6%と、1978年度ほどではありませんが、十分な成績を収められました。EPSも20%ほど増加しましたが、この指標は注目すべきものではないとわたしどもは捉えています。1978年とくらべて1979年には使用できる資産が大幅に増加しました。しかしEPSは増加した一方で、資産を活かすという観点では前年ほどの成果は挙げられませんでした。EPSというものは、固定金利の利息を生む休眠口座や貯蓄債券ならば着実にあがります。得られた「利益」(ここでは利率)が継続的に元本に組み込まれて再投資されるからです。そのため「壊れた時計」でさえ、低配当率の成長株のようにみえてくるのです。
経営成績をはかる上で一番重要なのは、株主資本に対して高い利益率[ROE的な指標]高いROCE[使用資本利益率]が達成されていることであって(過度な借入や会計操作などは除きます)、EPSが一貫して上昇していくことではありません。もし経営者や金融アナリストが、EPSやその年次変化ばかりを気にする姿勢を変えれば、株主だけでなく一般の人にも、いろんなビジネスのことをうまく理解してもらえるだろう、とわたしどもは考えています。
On this basis, we had a reasonably good operating performance in 1979 ‐ but not quite as good as that of 1978 ‐ with operating earnings amounting to 18.6% of beginning net worth. Earnings per share, of course, increased somewhat (about 20%) but we regard this as an improper figure upon which to focus. We had substantially more capital to work within 1979 than in 1978, and our performance in utilizing that capital fell short of the earlier year, even though per‐share earnings rose. “Earnings per share” will rise constantly on a dormant savings account or on a U.S. Savings Bond bearing a fixed rate of return simply because “earnings” (the stated interest rate) are continuously plowed back and added to the capital base. Thus, even a “stopped clock” can look like a growth stock if the dividend payout ratio is low.
The primary test of managerial economic performance is the achievement of a high earnings rate on equity capital employed (without undue leverage, accounting gimmickry, etc.) and not the achievement of consistent gains in earnings per share. In our view, many businesses would be better understood by their shareholder owners, as well as the general public, if managements and financial analysts modified the primary emphasis they place upon earnings per share, and upon yearly changes in that figure.
ROICとROCEの計算式は、分子はほぼ共通の(営業利益) - (各種税金)ですが、分母が以下のように異なっています。(引用元: Wikipedia)
ROIC; (有利子負債) + (株主資本) - (業務上、余剰な現金及び資産) (2012/11/11訂正)
固定負債が少ない企業では、ROCEはROEに収束していくことになります。一方、ROEを向上させようとして株主資本の代わりに固定負債を増やしても、ROCEの値は変わりません。この2点については、ROCEはよくできた指標だと思います。ただし自己株式の取得が絡む場合、ひと工夫する必要があるかと思います。ROCEも、万能の指標というわけではありませんね。蛇足ですが、個人的にはROICとROCEを同じものだと思い込んでいました。