ot

2012年1月8日日曜日

誤判断の心理学(2)愛好・愛情がもたらすもの(チャーリー・マンガー)

0 件のコメント:
2回目の今回はわかりやすい話題で、日本語でもことわざになっています。例えば「あばたもえくぼ」あたりでしょうか。前回と同じように、人間の行動をつかさどる根源的な力となるものです。メンタルモデルに加えるべき、重要な概念でしょう。

人間の心理学的傾向その2
愛好/愛情の傾向
Liking/Loving Tendency

殻をやぶったばかりのガチョウのひなどりは、遺伝子に組み込まれた教えに導かれて、初めに目にする生き物に愛情をよせ、付き従います。普通は自分の母親なのですが、殻をやぶるときに母親のかわりに人間が立ち会っていると、ひなどりはその人間を付き従うようになってしまいます。代理母、というわけです。

A newly hatched baby goose is programmed, through the economy of its genetic program, to “love” and follow the first creature that is nice to it, which is almost always its mother. But if the mother goose is not present right after the hatching, and a man is there instead, the gosling will “love” and follow the man, who becomes a sort of substitute mother.


両親や配偶者や子供を除いたら、人は何を好んだり、愛したりするのでしょうか。答えは、自分を好んだり愛してくれるものを、好み、愛するといったところでしょう。ですから、求婚に勝ち残るのはきわめて献身的な人のことが多いですし、本人と直接関係がない大勢の人から愛されたり、認められようと、人は営々と努力するものです。

And what will a man naturally come to like and love, apart from his parent, spouse and child? Well, he will like and love being liked and loved. And so many a courtship competition will be won by a person displaying exceptional devotion, and man will generally strive, lifelong, for the affection and approval of many people not related him.


愛好/愛情傾向が何を引き起こすかというと、わかりやすいものとして自身の行動を調節してしまうことが挙げられます。第一に、好意を持っている対象が間違ったことをしても無視したり、願いに沿ってあげたりします。第二に、好意の対象と単に関係があるだけの人・モノ・行動に対しても、好ましい感情を持つようになります(「単に関係ありのもたらす影響」は後述します)。第三に、他の事実を曲げてでも、その愛情を支えようとする点です。

One very practical consequence of Liking/Loving Tendency is that it acts as a conditioning device that makes the liker or lover tend (1) to ignore faults of, and comply with wishes of, the object of his affection, (2) to favor people, products, and actions merely associated with the object of his affection (as we shall see when we get to “Influence-from-Mere-Assosiation Tendency,”) and (3) to distort other facts to facilitate love.


私も、製品が好きだという理由から投資した企業がありましたが、失敗におわりました。その事例は、近いうちにご紹介します。

2012年1月7日土曜日

驚くほど突然に訪れる(水が世界を支配する)

0 件のコメント:
読んでいる本『水が世界を支配する』で示唆的な文章に目がとまったのでご紹介します。

歴史では何度も繰り返されてきたことだが、昔からの水工学に安住するだけの社会は、水問題に立ち向かって画期的な解決策を見つけた国家や文明にかならず追い越される。イスラムは、まずは中国の帆船に、ついで中国が海から退却したあと、ポルトガルの探検家バスコ・ダ・ガマがインド洋に乗り入れた一四九八年以降のヨーロッパ船に、対抗できなかった。イスラム教徒がビザンチン帝国とペルシャを転覆させたときもそうだが、一つの文明がほかの文明を追い越す瞬間は、驚くほど突然に訪れる。力の蓄積はひそかになされ、やがてあらゆるところで一気に表面化するからだ。ヨーロッパの航海技術や造船業、海上兵器の発達は、安価で速く安全な海上輸送と貿易の機会を着々と広げてはいたのだが、バスコ・ダ・ガマの船団が喜望峰をまわりインド洋を横切ってインドのカリカットの港に入るまでは、公然と知れわたることがなかっただけなのだ。
(p.147)

株式投資で考えると、これから勢いを増す企業を見つけたいのは人情ですが、ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガーであれば反対で、逆転されにくい企業を見つけるほうに力を注ぐでしょうね。

2012年1月6日金曜日

TOPIX Core30ひとかじり(1)ファナック

0 件のコメント:
市場で適切に評価されていない銘柄を探して投資対象としているので、有名だったり大きな日本企業はあえて避けていました。ですから、それらの企業については表面的な知識しか持っておらず、分析はほとんどしていません。しかし、思うところがあり、日本を代表する企業も少しずつ勉強したいと考えるようになりました。まずは浅く事実を知る程度ですが、TOPIX Core30から順に触れていくつもりです。

TOPIX Core30とは東証TOPIXのサブインデックスで、東証市場第一部に上場する内国普通株式のうち、時価総額、流動性の特に高い30銘柄が含まれています。現時点の構成銘柄はここに一覧されています。アメリカのDow Jones Industrial Average(DJIA)と雰囲気が少し似ていますね。

世間でも注目されている会社ばかりですので、屋上屋を架して各社を説明する必要はないかと思います。印象に残った点を記述していきます。

今回取り上げるのは、その中でもROAが最高水準の企業、ファナックです。当社のことは以前に一度だけ簡単に調べたことがありますが、今回は有価証券報告書に一通り目を通しました。優良企業は何かしらの特徴が目につくものですが、当社も独特な強い匂いがします。以下、感じた点を3点ほど。

1.自己株式取得の判断がよい
もともと自己株式を13%保有していましたが、2009年8月の取締役会で追加取得を決議しています。890億円で1,200万株(約5%分)取得ですので、1株平均7,500円程度で買っています。底値では買っていませんが、業績が悪かった年度(当期純利益375億円)に決断したのは見事です。

2.一味違うリスク認識
「事業等のリスク」で自然災害を挙げることが多いものですが、当社は富士山噴火を明記しています。富士山周辺に本社を抱える大企業は少ないと思いますが、小さな確率でも壊滅的な影響を及ぼすリスクです。最悪時の対応は検討済かもしれません。

3.現時点での割安度は?
(現預金+売掛金+有価証券)から負債合計をひいた残額は、1株あたり3,000円弱。それを考慮すると、現在のPERはそこそこ妥当に見えます。2009年のような自社株買いができる企業であれば、内部留保の使い方に安心感を覚えます。もっと分析を行って、Moatが長続きするか検討する価値のある企業だと感じました。

蛇足ですが、当社の有価証券報告書の「役員の状況」も一味違います。NTTや三菱UFJでもしていない略歴の書き方です。

2012年1月5日木曜日

(メンタル・モデル)熱力学の法則

0 件のコメント:
チャーリー・マンガーは戦時中にカルテックで熱力学を専攻しました。熱力学の教義は彼のメンタル・モデルに当然含まれているはずです。最近読んだ『サイエンス入門〈1〉』では爆発や温度などの話題がわかりやすく取り上げられており、楽しめました。今回は熱力学の法則を同書から引用します。

(第0法則)
接するもの同士は同じ温度になろうとする。

(第1法則)
エネルギーは保存される。

(第2法則)
熱エネルギーを取り出すには、温度差が必要である。
ある物体のエントロピー(無秩序さ)は増えたり減ったりするが、宇宙のエントロピーの総量はつねに増えつづけている。

(第3法則)
何物も絶対零度に達することはできない。

2012年1月4日水曜日

バリュー投資とは(セス・クラーマン)

0 件のコメント:
カルト的な人気を集めているヘッジファンド・マネージャーに、セス・クラーマン(Seth Klarman)がいます。著書Margin Of Safetyはamazon.comで高値で取引されています。今回は同書から、年頭にあたっての自戒として引用します。(日本語は拙訳)

バリュー投資の信条は、次の3つの主要な考えから成り立っています。まず一つ目は、ボトムアップ戦略です。つまり、やるべきことは特定の割安な投資対象をみつけることです。二つ目は、投資成績は純損益をみること。[他と比べる]相対的な成績は追いかけません。最後の三つ目は、損失を避けるよう努めることです。うまくいく場合(儲け)だけを考えるのではなく、間違えている場合(損失)のことも同じように検討するべきです。

There are three central elements to a value-investment philosophy. First, value investing is a bottom-up strategy entailing the identification of specific undervalued investment opportunities. Second, value investing is absolute-performance-, not relative-performance oriented. Finally, value investing is a risk-averse approach; attention is paid as much to what can go wrong(risk) as to what can go right(return).