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2017年8月20日日曜日

2017年バークシャー株主総会(1)投資先の現状確認について

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今回からは、5月に開催されたバークシャー・ハサウェイ年次株主総会の質疑応答を、訳文付きで少しずつご紹介します(順不同)。引用元のテキストとしては、2年前と同じようにイングリッド・ヘンダーショット女史によるメモを主体にする予定です。

Berkshire Hathaway 2017 Annual Meeting Notes BY INGRID R. HENDERSHOT, CFA [PDF] (Hendershot Investments, Inc.)

またYahoo! Financeで公開されている映像も適宜参考にします。

Berkshire Hathaway 2017 Annual Shareholders Meeting Livestream (Yahoo! Finance 放映時間:7時間30分16秒)

なお引用元のテキストは長文のパラグラフ構成になっているので、読みやすさを目的として、適当と思われる意味段落ごとに改行を追加しました。

株式投資先の現状確認について

<質問> [バークシャーの投資先である]ウェルズ・ファーゴ(営業面でのスキャンダル)、アメリカン・エクスプレス(コストコ社向け事業の契約解除)、ユナイテッド航空(顧客サービス[暴力による乗客の強制降機])、コカ・コーラ(炭酸飲料の売上増の鈍化)の各社は問題を抱えていますが、バークシャーが株式投資をしている企業の現状確認にはどれだけ時間をかけていますか。

<バフェット> それらの企業の株は大量に保有しています。アメリカン・エクスプレスやウェルズ・ファーゴは、数百億ドル以上の時価総額へと見事に登りつづけています。それら各社は、わたしたちがとても好んでいる事業を手がけています。ただし、その性質はそれぞれ異なっています。

ユナイテッド航空の件ですが、実は4大航空会社全体に対する株式保有者として当社は最大ですが、4社はそれぞれ問題がありますし、反対にとても大きな優位を持った会社もあります。

アメリカン・エクスプレスの話をされましたが、第一四半期の報告書を読むとプラチナ・カードの話題が出ており、非常にうまくやっています。

そういった各社には、どれも競合他社がいます。株を買った際には、「会社に問題がまったくないだろう」とか「競争相手は全然いないだろう」とは考えていませんでした。各社を買ったのは、それぞれが非常に強力な力を持っていると考えたからです。業界で占めている地位も気に入っていました。持続可能な競争優位がどこにあるのか、わたしたちは調べることにしています。非常に良い事業を手にすることができたとしても、それを奪おうとする競合他社がたくさんいます。そこで、競合他社を撃退できるかどうか、その企業や製品や経営陣が持つ能力について判断をくだすわけです。それらの企業が消え去ることはないでしょう。特定の会社名は出しませんが、そういった各社は非常によい位置にあります。

もしすばらしい事業を手にできれば、たとえシーズ・キャンディー社のような小さな会社であっても、基本的には経済的な城をもっていると言えます。しかし資本主義の社会では、他者がその城をうばいとろうとします。城を護るために、さまざまな方法でその周りに濠(moat)を築きたいと考えるでしょう。そして城内には、襲撃者を撃退する際にひどく頼りになる騎士にいてほしいと望むでしょう。しかし、襲撃者が立ち消えることもないでしょう。

コカ・コーラ社は西暦1886年に創業しました。アメリカン・エクスプレス社の始まりは1851年か1852年です。ウェルズ・ファーゴが何年の創業だったかわかりませんが、アメリカン・エクスプレスはウェルズ・ファーゴによって事業が開始されました。それらの企業は長い間にわたってたくさんの挑戦がありました。当社の保険事業にも挑戦がありました。しかし当社にはトニー・ナイスリーとアジート・ジェインのようなリーダーがいます。彼らはバークシャーの価値を何百億ドルも増やしてくれました。保険業界でも競争は常にあります。襲撃者を撃退するために、さまざまな手を打つ必要があります。

たしかご質問の本題は、「投資先の現状を確認するためにどれだけ時間をかけるか」というものでしたね。わたしは毎日やっていますし、チャーリーもそうです。

<マンガー> 言い加えることは何もないですね。(笑)

<バフェット> 話に加わらないようですから、今度から給料を減らしましょう。(笑)

(PDFファイルのp.6。Yahoo! Finance映像では50:00過ぎ)

REVIEWING STOCK INVESTMENTS

Q. Given issues at Wells Fargo (sales scandal), American Express (loss of business with Costco), United Airlines (customer service) and Coca-Cola (slowing soda sales), how much time is spent reviewing Berkshire stock investments?

Warren Buffett: Those are very large holdings. American Express and Wells Fargo, you are getting up well into the high tens of billions of dollars. Those are businesses that we like very much - they have different characteristics.

United Airlines, we are the largest holder of the four largest airlines, but all businesses have problems and some of them have very big pluses.

You mentioned American Express. If you read their first quarter report, they talk about their platinum card, it is doing very well.

There's competition in all of these businesses. We didn't buy them with the idea that they would never have problems or never have competition. We bought them because we thought they had very strong hands. We liked their position. We do look to see where they have durable competitive advantages. If you've got a very good business, you will have plenty of competitors who will try to take it away from you. Then you make a judgment as to the ability of your particular company and product and management to ward off the competitors. They won't go away. I'm not going to get into the specific names. Those companies are very well positioned.

If you have a wonderful business, even if it's a small one like See's Candies, you basically have an economic castle. In capitalism, people are going to try to take away that castle from you. You want a moat around it protecting it in various ways, and you want a knight in the castle that's pretty darn good at warding off marauders. There will be marauders that will never go away.

Coca Cola was established in 1886, American Express was started in 1851 or 1852, Wells Fargo, I don't know what year they started -- American Express was started by Wells Fargo as well. These companies had lots of challenges over the decades. Our insurance business had challenges, but we have leaders like Tony Nicely and Ajit Jain, who has added tens of billions of dollars of value to Berkshire. There will always be competition in insurance. There are various things to do to ward off the marauders.

The specific question was how much time is spent reviewing our investments? I do it every day.

Charlie Munger: I don't think I have anything to add to that either.

Warren Buffett: We will cut his salary if he doesn't participate.

2017年8月16日水曜日

インデックス投資も同じ道を帰る(ハワード・マークス)

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前回につづいて、ハワード・マークスによるパッシブ投資に関する話題です。(日本語は拙訳)

パッシブ投資が低額の手数料や経費ゆえに魅力的であるということは、つまりファンドの組成者は規模の大きさを強調しなければなりません。インデックス・ファンドよりも高い手数料を得るとともに利益のあがる規模に到達させようとして、ETFのスポンサーは「さらにスマート」で、しかも厳密にはパッシブでない媒体へと変更することを考えました。それゆえにETFを組成する際に、株式の分類(バリュー型か成長型か)や特性(ボラティリティーが低いか高いか)、あるいは業種や地理的な位置といった、諸々の特殊な切り口による領域からの要求を満たすようにしたのです。「成長型でいてバリューがあり、投資先として優良な企業で、株価のボラティリティーは小さく、モメンタム志向である」、これらすべてを求める人に応じたパッシブ型ETFも複数存在します。極端なところでは、次のような企業へパッシブに投資するファンドから選べるようにもなりました。経営陣の男女比に偏りが少ない企業、「聖書的責任投資」に適合した企業[=聖書の教えを遵守した企業への投資]、そして医療マリファナ、肥満解消、ミレニアル世代向け、ウィスキー及び蒸留酒といった分野に注力する企業、です。

しかし、投資を実行する媒体がそれほど狭い領域に焦点を当ててしまうと、「パッシブ」という言葉にはどのような意味があるのでしょうか。広汎な領域にわたるインデックスから逸脱すれば、まず定義の上で支障がありますし、さらに非パッシブな個別の判断が必要になってきます。個別要因を反映した保有株式を誇張するパッシブなファンドは、「スマート・ベータ・ファンド」と呼ばれています。しかし今日ではてんで尊敬されないアクティブ志向の運用者よりも、それらの株式を選択する規則を決めた人のほうが若干でもスマート(賢い)とは、一体だれが言えるのでしょうか。これはすなわち、先述したブレグマン言うところの「語義的投資」です。つまり、「株式を選択する理由は、貼り付けられたラベルをもとにしており、定量的分析によるものではない」という意味です。上述した特性のうちの多くを株式が有しているかどうか判断する絶対的基準はないことになります。

「スマートな」商品が商業的規模に達してほしいと組成者が考えている場合、「時価総額が最大規模であり、かつ流動性がもっとも高い諸々の株式」に大きく依存しがちな点が重要です。たとえばETF内にアップル社の株式が含まれていれば、実に大きな規模のファンドとなり得ます。それゆえに今日では、テクノロジー株や成長株、バリュー株、モメンタム志向、大型株、優良企業株、低ボラティリティー、配当株、レバレッジ株を看板に掲げている各種のETFには、アップル株が含まれています。

以下の文章は、バロンズ誌が今月(7月)早々の記事で触れねばならなかった見解です。

時価総額加重平均型のインデックスでは、買い手は個別の選択をせずに、すでに比重過多な(そして割高であることも多い)銘柄で満たしている。一方、比重の小さい銘柄は無視されたままである。これでは「安く買って、高く売る」の反対だ。

このところ上位の成績をおさめている銘柄は、時価総額を増大させながら、ファンドの大きなポジションを占めるようになっています。このことは、「ETFに資本が集まった際にはそれらの銘柄を大量に買い付けねばならず、株価上昇をさらに煽る」ことを意味します。それゆえに現在つづいている上昇局面では、パッシブ投資を実行する媒体の一部が自動的に買い付けるがために、構成比率が大きくて流動性の高い大型銘柄がその恩恵を受けてきました。単に割高だからといって株式購入をとどめる選択肢を有していないからです。

西暦2000年のテクノロジー株と同様、永久機関のようにみえるこの現象が、永久に働き続けることはないでしょう。もし[インデックス・]ファンドがそれらの株式をまさに放出すれば、それゆえにETFでも同じことが起こり、過度なまでに買われてきた銘柄は、過度なまでに売られる定めとなります。そして、市場が収縮する時期に売却しなければならないとしたら、過度なまでに保有している大人気銘柄を買ってくれる相手を見つけるには、インデックス・ファンドやETFは一体どこを探せばいいものでしょうか。このようにパッシブな買い付けによって生じた価格上昇は、結局は循環的なものであって永続しないだろうと思います。

最後にもうひとつ、株式市場におけるシステミックなリスクを考慮せねばなりません。ブレグマン言うところの「インデックス真っ盛りの、大規模かつ大混雑したモメンタム売買」です。S&P指数上昇に寄与する割合をますます増加させているのは、一握りの銘柄、つまりFAANG銘柄とその他若干です。つまり、株式市場の健全さが過大評価されている可能性があります。

上述したすべての要因が、パッシブな媒体、特にスマート・ベータETFが持つと考えられている有効性に対して疑問を投げかけています。

・「アップル社の株は安全株なのか。それとも、このところ好調な成績をおさめている株なのか」。その違いについて、きちんと思案している人がいるのでしょうか。
・異なるやり方を標榜している種々のパッシブな媒体に対して資金を投じている人は、自身の期待している分散効果や流動性や安全性を確保できているのでしょうか。
・個々の保有銘柄やポートフォリオ構成について慎重に分析することもなく、意思決定の対象にもせず、さらには価格によらず買い付けを実行する。そのようなプロセスへ投資家がこぞって手持ちの資金を投じる実態について、何を考えたらよいのでしょうか。

The low fees and expenses that make passive investments attractive mean their organizers have to emphasize scale. To earn higher fees than index funds and achieve profitable scale, ETF sponsors have been turning to "smarter," not-exactly-passive vehicles. Thus ETFs have been organized to meet (or create) demand for funds in specialized areas such as various stock categories (value or growth), stock characteristics (low volatility or high quality), types of companies, or geographies. There are passive ETFs for people who want growth, value, high quality, low volatility and momentum. Going to the extreme, investors now can choose from funds that invest passively in companies that have gender-diverse senior management, practice "biblically responsible investing," or focus on medical marijuana, solutions to obesity, serving millennials, and whiskey and spirits.

But what does "passive" mean when a vehicle's focus is so narrowly defined? Each deviation from the broad indices introduces definitional issues and non-passive, discretionary decisions. Passive funds that emphasize stocks reflecting specific factors are called "smart-beta funds," but who can say the people setting their selection rules are any smarter than the active managers who are so disrespected these days? Bregman calls this "semantic investing," meaning stocks are chosen on the basis of labels, not quantitative analysis. There are no absolute standards for which stocks represent many of the characteristics listed above.

Importantly, organizers wanting their "smart" products to reach commercial scale are likely to rely heavily on the largest-capitalization, most-liquid stocks. For example, having Apple in your ETF allows it to get really big. Thus Apple is included today in ETFs emphasizing tech, growth, value, momentum, large-caps, high quality, low volatility, dividends, and leverage.

Here's what Barron's had to say earlier this month:

With cap-weighted indexes, index buyers have no discretion but to load up on stocks that are already overweight (and often pricey) and neglect those already underweight. That's the opposite of buy low, sell high.

The large positions occupied by the top recent performers - with their swollen market caps - mean that as ETFs attract capital, they have to buy large amounts of these stocks, further fueling their rise. Thus, in the current up-cycle, over-weighted, liquid, large-cap stocks have benefitted from forced buying on the part of passive vehicles, which don't have the option to refrain from buying a stock just because its overpriced.

Like the tech stocks in 2000, this seeming perpetual motion machine is unlikely to work forever. If funds ever flow out of equities and thus ETFs, what has been disproportionately bought will have to be disproportionately sold. It's not clear where index funds and ETFs will find buyers for their over-weighted, highly appreciated holdings if they have to sell in a crunch. In this way, appreciation that was driven by passive buying is likely to eventually turn out to be rotational, not perpetual.

Finally, the systemic risks to the stock market have to be considered. Bregman calls "the index universe a big, crowded momentum trade." A handful of stocks - the FAANGs and a few more - are responsible for a rising percentage of the S&P's gains, meaning the stock market's health may be overstated.

All the above factors raise questions about the likely effectiveness of passive vehicles - and especially smart-beta ETFs.

- Is Apple a safe stock or a stock that has performed well of late? Is anyone thinking about the difference?
- Are investors who invest in a number of passive vehicles described in different ways likely to achieve the diversification, liquidity and safety they expect?
- And what should we think about the willingness of investors to turn over their capital to a process in which neither individual holdings nor portfolio construction is the subject of thoughtful analysis and decision-making, and in which buying takes place regardless of price?

2017年8月12日土曜日

インデックス投資において考慮すべき点(ハワード・マークス)

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ハワード・マークスの最新レターからもうひとつ、インデックス・ファンドなどのパッシブ投資に関する話題をご紹介します。今回は、彼の示す小気味よい考察に啓発されました。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

パッシブ投資及びETFについて

50年前になりますが、シカゴ大学の[経営]大学院に到着してすぐに、「市場効率性」のおかげで次のことを教わりました。第一に、資産価格はリスク調整後の利回りが妥当となるように決定されること。第二に、それに対する例外を一貫して見つけ続けられる者はいないこと、です。言い換えれば、「市場に勝つことはできない」とするものでした。私たちを教える先生たちはさらに、「各銘柄を少数ずつ買い付けることで、銘柄選定の専門家を上回る負けしらずの低コストな手段ができる」というアイデアを考え出しました。

その示唆を実践に移した人がジョン・ボーグルです。前年にバンガードを創設していた彼は、1975年に「ファースト・インデックス投資信託」を始めました。これが、商業ベースの大きさに達した最初のインデックス・ファンドです。S&P500を模倣するように設計されたその媒体は、のちに「バンガード・500・インデックス・ファンド」と改名されました。

インデックス連動あるいはパッシブ投資の考えはその後40年の間に徐々に成長し、2014年には株式投資信託における預かり資産の20%を占めるまでになりました。この10年間ほどはアクティブ運用者が概して劣った成績に甘んじていることや、ETFつまり売買の手間をより簡素にしてくれた上場投資信託が創設されたことを考慮すれば、アクティブ投資からパッシブ投資への移行は加速してきました。今日では強力な潮流となり、株式投信における全資産の37%を占めるまで拡大しています。この10年間にインデックス・ファンドやETFに流入した資金は、1兆4千億ドルでした(それに対して、アクティブ運用型の投資信託からは1兆2千億ドルが流出しました)。

投資におけるあらゆる流行と同様、パッシブ投資は次のような長所ゆえにあたたかく歓迎されています。

・ここ10年間前後をみると、パッシブなポートフォリオの成績がアクティブ投資を上回っていたこと。
・パッシブ投資であれば、インデックスに負けないことが保証されていること。
・パッシブな仕組みにかかる手数料や経費はずっと安価であり、アクティブ型の運用に対して永続的な優位を確立できること。

こういったことは、パッシブ投資やインデックス・ファンドやETFが不敗を企図したものだと述べているのでしょうか。いいえ、まったくもって違います。

・パッシブ投資家は「引けを取る」リスクからは保護されるものの、それと同時に「上回る」可能性を放棄することになる。
・アクティブ投資家の一部で近年の成績が平均に届かなかったことが、永続的ではなくて循環的なものだったことが明かされるかもしれない。
・この数年間の所産としてETFが約束している流動性は、特に高利回り債のような流動性の低い領域に投資するものほど、大規模な弱気相場での試練を受けていない。

さらに何点か、考慮に値することがあります。

まず、パッシブ投資という知恵がどこから生じたものなのか、思い出してほしいと思います。それは、「アクティブ投資家のとる行為が、妥当な資産価格を導いている」ことに信を置く点からです。だからこそ、割安なものが見当たらないことになります。しかし、株式投資の過半数がパッシブな運用によるものとなったら、一体どうなるでしょうか。おそらく価格は自由になって「妥当な水準」から発散し、割安銘柄(及び割高銘柄)が現在よりもありふれたものとなるに違いありません。それがすなわち「アクティブ運用者が勝利できる」約束とはならないものの、彼らの努力が実を結ぶために必要な条件を明らかに満たすことでしょう。

当社の顧客である年金基金で投資担当役員を務めている方から、次の質問を受けました。「うちの財務担当役員が提案してきたのですよ。アクティブ運用者はみんな放り出して、全資産をインデックス・ファンドやETFに投じようと。どうしたものですかね」。私からは単純な返答をしました。「ではその方に質問してみてください。投資する資産がどれだけの金額であれば、それを分析検討する者が皆無であっても、安心していられますか、と」。

「バスケット方式による機械的投資」によって、数兆ドルの資金が盲目的に動かされています。この呼び名は、ホライゾン・キネティクス・ファンドの[共同創業者である]スティーブン・ブレグマンが付けたものです。銘柄に対する価値評価に関してETFが疑問を抱くことはありません。すなわちファンダメンタルを分析する者がいないため、価格発見の面でなにも寄与しません。パッシブ投資へ資金がさらに移動するようであれば、アクティブ運用者のもとで働くアナリストの数は減少するでしょう。しかし同時に、パッシブ型ファンドのポートフォリオ構成を司るルールをだれが決めるのか、それについても思いを巡らせるべきです。

(この項つづく)

Passive Investing/ETFs

Fifty years ago, shortly after arriving at the University of Chicago for graduate school, I was taught that thanks to market efficiency, (a) assets are priced to provide fair risk-adjusted returns and (b) no one can consistently find the exceptions. In other words, "you can't beat the market." Our professors even advanced the idea of buying a little bit of each stock as a can't-fail, low-cost way to outperform the stock-pickers.

John Bogle put that suggestion into practice. Having founded Vanguard a year earlier, he launched the First Index Investment Trust in 1975, the first index fund to reach commercial scale. As a vehicle designed to emulate the S&P 500, it was later renamed the Vanguard 500 Index Fund.

The concept of indexation, or passive investing, grew gradually over the next four decades, until it accounted for 20% of equity mutual fund assets in 2014. Given the generally lagging performance of active managers over the last dozen or so years, as well as the creation of ETFs, or exchange-traded funds, which make transacting simpler, the shift from active to passive investing has accelerated. Today it's a powerful movement that has expanded to cover 37% of equity fund assets. In the last ten years, $1.4 trillion has flowed into index mutual funds and ETFs (and $1.2 trillion out of actively managed mutual funds).

Like all investment fashions, passive investing is being warmly embraced for its positives:

- Passive portfolios have outperformed active investing over the last decade or so.
- With passive investing you're guaranteed not to underperform the index.
- Finally, the much lower fees and expenses on passive vehicles are certain to constitute a permanent advantage relative to active management.

Does that mean passive investing, index funds and ETFs are a no-lose proposition? Certainly not:

- While passive investors protect against the risk of underperforming, they also surrender the possibility of outperforming.
- The recent underperformance on the part of active investors may well prove to be cyclical rather than permanent.
- As a product of the last several years, ETFs' promise of liquidity has yet to be tested in a major bear market, particularly in less-liquid fields like high yield bonds.

Here are a few more things worth thinking about:

Remember, the wisdom of passive investing stems from the belief that the efforts of active investors cause assets to be fairly priced - that's why there are no bargains to find. But what happens when the majority of equity investment comes to be managed passively? Then prices will be freer to diverge from "fair," and bargains (and over-pricings) should become more commonplace. This won't assure success for active managers, but certainly it will satisfy a necessary condition for their efforts to be effective.

One of my clients, the chief investment officer of a pension fund, told me the treasurer had proposed dumping all active managers and putting the whole fund into index funds and ETFs. My response was simple: ask him how much of the fund he's comfortable having in assets no one is analyzing.

As Steven Bregman of Horizon Kinetics puts it, "basket-based mechanistic investing" is blindly moving trillions of dollars. ETFs don't have fundamental analysts, and because they don't question valuations, they don't contribute to price discovery. Not only is the number of active managers' analysts likely to decline if more money is shifted to passive investing, but people should also wonder about who's setting the rules that govern passive funds' portfolio construction.

2017年8月8日火曜日

投資家が見せる、ある種の楽観(ハワード・マークス)

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前回ご紹介したハワード・マークスのレターの続きです。(日本語は拙訳)

強気相場を牽引するそれら最強銘柄の株価は、必ずや完璧な金額にまで到達します。しかし多くの場合、やがてはその企業の完璧さが幻想あるいは儚い(はかない)ものだったことがわかります。ニフティー・フィフティーに含まれていた「不敗銘柄」とされた企業のなかには、市場で生じた巨大な変化によって最終的には機能不全となった会社もありました。コダック、ポラロイド、ゼロックス、シアーズ、シンプリシティー・パターン(当時は自分の衣服を自身で裁縫する人が多かったのですが、わかりましたか)の各社です。それはまさしく、投資家の出した資金を蒸発させるためにも完璧でした。またそれだけではなく、成功していた企業の株価のほうも、より標準に近い倍率へと回帰しました。その結果、株式から得られる利益率は平均未満となったのです。

高い倍率へと株価が力強く上昇すると、少数の銘柄が強気相場における牽引役となります。しかしそのあとには価格の反転訂正がつづき、最大の損失を背負うことになる例がよくみられます。肯定的な雰囲気の中でものごとがうまく進んでいると、そのような展開になる可能性が難なく見逃されてしまうのです。

最後になりますが、「市場におけるテクニカルな要因のおかげで、牽引者たる株式を猛烈に買う行為が、終わることなく継続する」現象を説明する解釈がたびたび生じています。つまり「最高上昇率の銘柄がその座を保ち続ける」という意味です。たとえば1990年代終盤のテクノロジー銘柄のバブルの際には、投資家の間で次のような結論が下されました。

・株価が好調なため、その企業はこれからも資本を惹きつける。
・テクノロジー業界の企業及びその株式は最高の成績をあげているため、今後もまちがいなく新規購入資金における不釣り合いなまでの割合を惹きつける。
・テクノロジー株が際立った上昇率をみせたことで、さらに多くのテクノロジー銘柄が株式インデックスへ追加される。
・それによってインデックス・ファンドや隠れインデックス実践者は、購入資金のなかからこれまで以上の割合をテクノロジー株へと振り向ける必要が生じる。
・インデックスの利回りに遅れまいとして、ベンチマーク主導型のアクティブ運用者はテクノロジー株の保有割合を増やさざるを得なくなる。
・それゆえに、テクノロジー株が購入資金のなかで占める割合は増える一方で止むことをしらず、さらには平均成績を上回り続けることも確実である。

これをして、「好循環」あるいは「永久機関」と呼ぶ人がいるかもしれません。強気相場にあって、投資家の想像力を焚きつける種類の考えです。しかし「永遠に続く」と謳う論理は、ときにはそれ自身の重みゆえに、崩壊する定めにあります。西暦2000年がそうだったように。

投資において考慮すべき最も重要な点には、直観に反するものがたくさんあります。そのひとつが、「他のものを永久に上回りそうな市場やニッチやグループは存在しない」ことを理解できる力です。人間の性質から言って、「最高」とされるものはなんであれ、輝かしいファンダメンタルを有していることを考慮しても、行き過ぎた高値になる定めにあります。それゆえにファンダメンタルが現状維持であっても、高すぎる金額に達している株価の成績は平凡な数字になります。そして実は最高ではなかったことがわかったり、あるいは事業が失速し始めれば、ファンダメンタルの低下と株価倍率の減少が二重に襲いかかり、ひどく痛ましい事態がやってくるかもしれません。

"FAANG"の各社が抜群ではないとか、上にあげたような結末を迎えるであろうと言っているわけではありません。ただ、そういった企業が現在高い地位にあることが、「投資家が見せる、ある種の楽観」を示す兆候だと言っているだけです。これは、私たちが注視すべき点です。

The super-stocks that lead a bull market inevitably become priced for perfection. And in many cases the companies' perfection turns out eventually to be either illusory or ephemeral. Some of the "can't lose" companies of the Nifty Fifty were ultimately crippled by massive changes in their markets, including Kodak, Polaroid, Xerox, Sears and Simplicity Pattern (do you see many people sewing their own clothes these days?). Not only did the perfection that investors had paid for evaporate, but even the successful companies' stock prices reverted to more-normal valuation multiples, resulting in sub-par equity returns.

The powerful multiple expansion that makes a small number of stocks the leaders in a bull market is often reversed in the correction that follows, saddling them with the biggest losses. But when the mood is positive and things are going well, the likelihood of such a development is easily overlooked.

Finally, a rationale often arises to the effect that, thanks to market technicals, investors' powerful buying of the leading stocks is sure to continue non-stop, meaning they can't help but remain the best performers. In the tech bubble of the late 1990's, for example, investors concluded that:

- stocks were doing so well that they would continue to attract capital,
- since tech companies and tech stocks were the best performers, they were sure to continue attracting a disproportionate share of the new buying,
- the superior performance of the tech stocks would cause more of them to be added to the stock indices,
- this would require index funds and closet indexers to direct a rising share of their buying to tech stocks,
- in order to keep up with the returns on the indices, benchmark-conscious active managers would have to respond by increasing their tech stock holdings, and,
- thus tech stocks couldn't fail to attract an ever-rising share of buying, and were sure to keep outperforming.

You can call this a virtuous circle or a perpetual motion machine. It's the kind of thing that fires investors' imaginations in a bull market. But the logic that says it will work forever always collapses, sometimes just under its own weight, as was the case in 2000.

Many of the most important considerations in investing are counterintuitive. One of those is the ability to understand that no market, niche or group is likely to outperform the others forever. Given human nature, "the best" will always come eventually to be overpriced, even for their stellar fundamentals. Thus even if the fundamentals hold up, the stocks' performance from those too-high prices will become ordinary. And if they turn out not really to have been the best - or if their business falters - the combination of fundamental decline and multiple contraction can be really painful.

I'm not saying the FAANGs aren't great, or that they'll suffer such a fate. Just that their elevated status today is a sign of the kind of investor optimism for which we must be on the lookout.

2017年8月4日金曜日

最強銘柄が選出されるとき(ハワード・マークス)

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ハワード・マークスが新しいメモを7月末に公開していました。彼は2冊目の著作を現在執筆中で、来年刊行の予定だそうです。新刊で扱うテーマは「周期」で、今回のメモでもその種になる話題が含まれているとのことです。そのこともあったのでしょう、「いつもの2倍」ほどの長さになったメモは正味22ページあり、現状に対して彼が感じている想いやその元となる事実が、さまざまな観点から書き連ねてあります。彼は「未来を予測するものではなく、きざしを示すだけ」だと表明していますが、個人的にはそのほうがありがたいです。今回のメモは通読する価値があります。

さて今回からの投稿では、メモの一部をご紹介します。はじめに、"Super-Stocks"(最高の株式銘柄)と題した一節を取り上げます。原文は以下のリンク先にあります。(日本語は拙訳)

There They Go Again... Again [PDF] (Oaktree Capital Management)

最高の株式銘柄

強気相場というものは、株式のなかから「最強の銘柄」とされる一群が選出されることによって特徴づけられることがよくあります。一群の周囲をただよう魅惑的な伝説は、他の要因と相まって株価上昇の機運を支えます。その現象が極端な段階にまで達すれば、毎度のことながらも4ページ目に列挙したようなブームの際にみられる要素を、ある程度満たすようになります。たとえば以下のようなものです。

・「中断する術を持たない好循環」を信用すること。
・「企業の持つ本質的な強みを考慮すれば、株価が高すぎることはない」と確信すること。
・そのような肯定的見解を無制限に外挿することに対して、投資家みずからが疑念を抱かないこと。

現在起こっている循環をみると、"FAANG"(フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、社名を変更してアルファベットとなったグーグル)によって代表されるテクノロジー企業の小集団へそれらの特徴が当てはまります。どの企業も秀でたビジネス・モデルを誇示し、市場では比類なきリーダーシップを露わにしています。ここでもっとも重要なのは、「各社は未来を手中にしており、それゆえにこれからも勝者たること必至」とみなされている点です。

好循環が続いている間は、たしかにその通りです。まさしく1960年代のニフティー・フィフティー銘柄がそうだったように。はたまた70年代の石油株や80年代のハードディスク会社、90年代のテクノロジー・メディア・通信会社がそうだったように。しかしそれらの時代には、次のようなことが生じました。

・予期せぬ形で環境が変化した。
・ビジネス・モデルの新規性ゆえに隠れていた欠陥が明らかになった。
・競争が激化した。
・卓越したコンセプトが事業運営上の弱さを招いた。
・企業のファンダメンタルがいかに優れていても、株価が割高となって巨額の損失をもたらした。

FAANGの各社は実にすばらしい企業で、急速に成長しています。また(競合が存在する領域では)、敵を粉砕しています。しかしながら、なかには利益率の高くない企業がありますし、売上高と比較して利益の伸びが鈍化している企業もあります。「明日の超優良企業」と断言できる会社もありますが、各社すべてがそうだと言えるでしょうか。向かうところ敵なしで、成功するのは絶対確実なのでしょうか。

そういった企業の株を投資家が購入する際の株価は、当該企業が現在あげている利益の30年分以上になるのが普通です。明らかな理由があるからこそ、少し先までの成長見通しに胸躍らせるのでしょうが、それでは長期的に見たときにその利益水準は持続するものでしょうか。利益に対して高い倍率の値段がついている株式の場合、その価値の多くは必然的に「長期」の位置を占めるわけです。[息子の]アンドリューの指摘では、iPhoneが世に出てからちょうど10年ですし、インターネットが広く使われるようになってから20年は経過していません。このことから次の疑問が浮かび上がります。「テクノロジーに資金を投じる投資家は、本当に未来を観通せるのか。それゆえに、長期的な収益力に関して抱いている楽観的な各種の仮定、それらが総合された購入金額に対してどれだけの幸福を感じたらよいのか」。もちろんですが、まだまだ若いそれらの企業にとって最上の時はこれからやってくることを、単純に意味しているだけなのかもしれません。

この話題に関する一節を、ある企業が株主向けに書いた1997年度のレターから引用します。

私たちは、数多くの重要な戦略的パートナーと長期的な提携関係を結びました。そのなかには、アメリカ・オンライン、ヤフー、エキサイト、ネットスケープ、ジオシティーズ、アルタビスタ、アット・ホーム、プロディジーの各社が含まれています。


上の文に出てくる「重要な戦略的パートナー」のうち、現在も意味のある形で存在している企業は何社あると思われますか(重要なのか、あるいは戦略的なのか、という疑問は別として)。正解は0社です(ヤフー社はその条件を満たしていないはずだと考えるのであれば、正解は1社となるでしょう)。この文章は、アマゾン社の1997年度の年次報告書から抜粋したものです。つまるところ、将来とは予測できないものであり、小さな欠陥に無縁なものや企業なぞ存在しないのです。(p. 6)

(この項つづく)

Super-Stocks

Bull markets are often marked by the anointment of a single group of stocks as “the greatest,” and the attractive legend surrounding this group is among the factors that support the bull move. When taken to the extreme - as it invariably is - this phenomenon satisfies some of the elements in a boom listed on page four, including:

- trust in a virtuous circle incapable of being interrupted;
- conviction that, given the companies’ fundamental merit, there’s no price too high for their stocks; and
- the willing suspension of disbelief that allows investors to extrapolate thse positive views to infinity.

In the current iteration, these attributes are being applied to a small group of tech-based companies, which are typified by “the FAANGs”: Facebook, Amazon, Apple, Netflix and Google (now renamed Alphabet). They all sport great business models and unchallenged leadership in their markets. Most importantly, they’re viewed as having captured the future and thus as sure to be winners in the years to come.

True as far as it goes … just as it appeared to be true of the Nifty-Fifty in the 1960s, oil stocks in the '70s, disk drive companies in the '80s, and tech/media/telecom in the late '90s. But in each of those cases:

- the environment changed in unforeseen ways,
- it turned out that the newness of the business model had hidden its flaws,
- competition arose,
- excellence in the concept gave rise to weaknesses in execution, and/or
- it was shown that even great fundamentals can become overpriced and thus give way to massive losses.

The FAANGs are truly great companies, growing rapidly and trouncing the competition (where it exists). But some are doing so without much profitability, and for others profits are growing slower than revenues. Some of them doubtless will be the great companies of tomorrow. But will they all? Are they invincible, and is their success truly inevitable?

The prices investors are paying for these stocks generally represent 30 or more years of the companies' current earnings. There are clear reasons to be excited about their growth in the near term, but what about the durability of earnings over the long term, where much of the value in a high-multiple stock necessarily lies? Andrew points out that the iPhone is just ten years old, and twenty years ago the Internet wasn't in widespread use. That raises the question of whether investors in technology can really see the future, and thus how happy they should be paying prices that incorporate optimistic assumptions regarding long-term earnings power. Of course, this may just mean the best is yet to come for these fairly young companies.

Here's a passage from one company's 1997 letter to shareholders:

We established long-term relationships with many important strategic partners, including America Online, Yahoo!, Excite, Netscape, GeoCities, AltaVista, @Home, and Prodigy.


How many of these "important strategic partners" still exist in a meaningful way today (leaving aside the question of whether they're important or strategic)? The answer is zero (unless you believe Yahoo! satisfies the criteria, in which case the answer is one). The source of the citation is Amazon's 1997 annual report, and the bottom line is that the future is unpredictable, and nothing and no company is immune to glitches.

2017年7月28日金曜日

逃げることが英雄的だった(『進化は万能である』)

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英国の著述家マット・リドレーの作品は楽しみにしており、昨年翻訳された『進化は万能である』をようやく読了しました。

題名が示すように、本書では「進化」現象が生物に限定されるものではなく、さまざまな領域でみられることを論じています。たとえば、経済・教育・政府・宗教・通貨といったソフト・サイエンスの章が登場します。過激な論調あり、やや飛躍的(に感じられるよう)な論理もありますが、リチャード・ドーキンスの系譜を感じさせるスタイルや主張は、個人的には十分に楽しめました。

ところで、同氏は興味の対象がハード・サイエンスにとどまらず、拡散するタイプの人なのだろうかと感じて少し調べてみたところ、いまさらながら納得しました。そもそも貴族の家系で世襲議員でもあり、金融危機前の一時期には銀行の取締役会会長も務めていたのですね。元気のいい、一介のサイエンス・ライターかと思っていましたが、大違いでした。

さて今回ご紹介する文章は、本題からはずれた内容です。「逃げる」話題について、2つの章から引用します。まずは、第10章「教育の進化」からです。

経済史学者のスティーヴン・デイヴィスは、現代の学校形態はナポレオンがプロイセン王国を破った1806年にその起源を有すると考えている。苦汁をなめたプロイセンは、同国でも並ぶ者のない知識人のヴィルヘルム・フォン・フンボルトに意見を乞い、厳格な義務教育プログラムを策定した。おもな目的は、若者を戦争中に逃亡しない従順な兵士に育成することにあった。現在の私たちが当然と受け止めている学校教育の特徴の多くは、これらのプロイセンの学校で導入されたものだ。

(中略)

『教育の再生』という著書でラント・プリチェットは、19世紀日本の文部大臣の次のようなあからさまな発言を引用している。「あらゆる学校の管理において、なすべきことは生徒のためではなく、国家のためであることを忘れてはならない」(訳注 初代文部大臣、森有礼の言葉。原文は「学政上に於ては生徒其人の為にするに非ずして国家の為にすることを始終記憶せざるべからず」)。(p. 233)

改めて考えてみれば、自由を尊重するリベラルな人々が、5歳の子供を12-16年にわたって一種の刑務所のような場所に送り出すというのも少々おかしな話だ。そこでは罰をほのめかして教室という監獄に児童を収容し、罰を匂わせて椅子にすわって指示に従うよう強いる。もちろん、現在はディケンズの時代とは違うし、多くの児童がすばらしい教育成果を上げるが、それでも学校は人を教化しようとする、いたって全体主義的な場所だ。私の場合、刑務所のたとえはまさにぴったりだった。私が8歳から12歳のあいだを過ごした寄宿学校は規則が厳しく、苦痛を伴う体罰が頻繁に用いられ、ナチス・ドイツの戦争捕虜がトンネルを掘り、食べ物を貯め込み、鉄道の駅まで田園地帯を逃亡するルートを計画した話に、生徒は共鳴したものだった。逃亡はしょっちゅうで、厳しい罰が与えられたが、周囲からは英雄扱いされた。(p. 233)

もうひとつ、こちらは第11章「人口の進化」からです。

イギリス、フランス、そしてアメリカ政府はドイツからのユダヤ人移民の受け入れに強く抵抗し、それを正当化する理由として、あからさまな優生学的主張を使った。既存の定員に加えて、ユダヤ人の子どもたちをさらに2万人アメリカに受け入れることを認める法案は、1939年初頭、ハリー・ラフリンが組織した移民排斥主義者と優生学的圧力団体の連合によって連邦議会で否決された。1939年5月、ドイツを逃れた930名のユダヤ人を乗せた客船セントルイス号がアメリカにたどり着いた。船が入港許可を待つそのさなかにラフリンは、アメリカはその「優生学的、人種的水準」を下げるべきでないと主張する報告書を提出している。結局乗客のほとんどがヨーロッパに戻され、そこで大勢が殺されてしまった。(p. 268)

2017年7月24日月曜日

負けぬが勝ち(スティーブン・ローミック)

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ファンド・マネージャーであるスティーブン・ローミックの文章を久しぶりに取り上げます。バリュー志向の投資家の代表格であるウォーレン・バフェットと同じように、市場全般が好調な現在は相対的な成績という意味で彼も遅れをとっています。今回引用する文章は、そんな彼を信じて資金を託してくれている投資家に向けた経過報告であり、啓蒙の言葉でもあります。引用元の文章は以下のリンク先にあります。(日本語は拙訳)

Two Decades of Winning by Not Losing by Steven Romick [PDFファイル]

本質的にパッシブ投資(受動的投資)とは、長期間継続する上昇相場の間は常にすばらしく見えるものです。

もし市場なみの収益率を望んでおり、なおかつ上下変動に抵抗できるのであれば、パッシブ投資は効率的で低コストな道具としても働きます。下落相場から離れるほど、「市場が下落しても対応できる」と自負する人の数は増す一方です。もちろん、次がやってくるまでの話ですが。

同時に、指数の成績が好調なときは、「上昇に乗れるものなら何でも実行すべき」という圧力を感じる投資家が、個人であれプロであれ大勢いるのは相違ないでしょう。

他者と違うことを恐れるわけです。他者から逸脱するのはまずいわけです。ですから、あらゆるセクターにわたる証券を過度なまでに多数保有しておけば、他者と違うことでクビになる事態を確実に回避できます。しかし、そのような投資をしなければいけないとしたら、わたしならばサーフィンに出かけて時間をつぶします。

パッシブ投資は加速的に増加し、今や米国市場で40%前後を占めるようになりました。しかしそれゆえに、「ベンチマークを上回るのは実に容易だ」と思える時期ができる一方、そうは思えない時期が続いてやってくるのは間違いないと思います。

先ほど触れたアクティブ投資に対する学術的な反論は、根本的な部分で間違っています。というのも、誤った前提に基づいているからです。「最高の成績をあげる株式だけが投資成績を左右する」とありましたが、別の面を考慮していません。わが心に刻んでいる格言をです..。

つまり、成績が最低の株式を避けることでも良い数字をつくれる点です(わたしが自分自身の成績を話しているとすれば、結論がどうなのかはみなさんにお任せしましょう)

さらに、そういった批判者は単年度の成績を重視しすぎています。そして市場サイクル1周分にわたる成績を無視しています。そのような見方は短期志向につながります。変節して群衆に加わることで、頭のいい人たちがあらゆる類の認知的不協和の犠牲となりますが、短期的な見方がそういった認知的不協和を生み出す土壌になっています。

1990年代末期におけるインターネットは、破壊的な変革者として急成長するとみられていました。たしかにそうなりましたが、当時のインターネット株の大半は、みなさんもご存知の通り、まったくもって不合理な水準の値段が付けられていました。

しかし、それを見送ることのできなかった頭のいい人たちが大勢いました。おそらく彼らは、友人のように儲けられないことを心配したのでしょう。あるいは、クビになるのが怖かったのでしょう。理由はどうであれ、参加した人たちは概して大きな損失を出しました。

2008年は恐慌の瀬戸際に立たされた年でした。悪化する経済と共に株も下落し続けると信じて、多くの投資家が早々に持ち株や債券を処分しました。その行動が正しかったように見えたものの、それはしばらくの間だけでした。

市場を離れたものの自分の過ちを認識し、後になってから、つまり経済の足取りが堅実だとわかってから市場へ戻ってきた人もいました。しかしまた、価格はすでに反発していました。

これらは短期的な見方と言えます。

投資で成功するためにはカギがあります。辛抱すること、長期的視点を持つこと、流行りものを避けることです。この数十年間において米国でもっとも成功した株式投資家のなかには、最新・最高を探し当てたわけではない人もいます。

少しばかり名前を挙げてみましょう。ウォーレン・バフェット、セス・クラーマン、ジャン=マリー・エベヤール、そして20年間にわたって私のパートナーだったボブ・ロドリゲスです。それらの人たちは、あらゆる種類の投資家から尊敬される成績を長期間築いてきました。

彼らは大きな成功をおさめました。しかし、うらやむほどの成績をあげるために、ある年に最高だった数少ない銘柄を保有していた人は、皆無です。ホームランを打つことではなく、三振をとられないことで彼らは成功したのです。言い換えれば「負けないことで勝った」わけで、これはわたしたちのやりかたを象徴する言葉でもあります。(p. 2)

Fundamentally, passive investment is always going to look great during a long-lasting bull market.

If someone wants market rates of return and can withstand some volatility, then it can also serve as an efficient, low-cost tool. The further you get away from a bear market, the greater the number of people who have convinced themselves they can handle the downside - until the next time, of course

In the interim, if the indices are performing well, then you can bet that many investors - individuals and professionals, alike - are going to feel pressure to do whatever they can to ride the bull.

They fear being different. Tracking error is bad. Owning too many securities in every sector is a sure way to avoid being fired for being different. I’d rather spend my time surfing than to have to invest like that.

Thanks to the accelerated increase of passive investing - now around 40% of the U.S. market - I’m confident that there will be a period when it will look really easy to beat a benchmark - followed by another time when, again, it won’t.

This academic argument against active investment is fundamentally flawed because it’s built on a false premise, which holds that only the best performing stocks will drive returns. The argument doesn’t consider the other side…. A maxim I’ve taken to heart….

If you avoid the worst performing stocks, you can still put up good numbers. (I’ll leave it to you to conclude if I’m just talking my book.)

Further, these critics place too much weight on performance in each year… and ignore performance over a full-market cycle. This leads to short-termism. And short-termism is a breeding ground for all sorts of cognitive dissonance to which smart people fall prey when trying to adapt and join the crowd.

People viewed the internet as a fast-growing disruptive game changer in the late 1990s. And so it was, but as you know, internet stocks of that era were largely priced at wholly illogical levels.

Yet, many smart people couldn’t handle not participating. Maybe they were worried about not making as much as their friends. Or maybe they were worried about being fired. Whatever the reason, if they participated they generally lost badly.

In 2008, we sat on the precipice of a depression and many investors quickly liquidated their stocks and bonds, believing the economy would get worse, and stocks would continue to decline. It appeared correct to do so… for a time.

Some of those who exited the market realized their mistakes and came back to the market… down the road… after the economy found firmer footing… but also after prices had already rebounded.

Short-termism.

Patience, a long-term focus, and avoiding the fads are key for successful investing. Some of the most successful stock investors of the last few decades in the United States aren’t known for finding the latest and greatest.

I give you as just a few examples: Warren Buffett, Seth Klarman, Jean-Marie Eveillard, and my former partner of two decades, Bob Rodriguez. Each compiled a long track record respected by investors of all types.

Each had their share of winners, but none created their enviable performance by owning those few golden stocks of a given year. They won by not striking out, rather than by hitting grand slams. In other words, they won by not losing - emblematic of our approach.

2017年7月20日木曜日

『日進工具のニッチトップ戦略』(元会長、後藤勇氏(故人))

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震災後の2011年から投資している企業に、日進工具(6157)という小さな会社があります(過去記事の一例はこちら)。同社の会長だった後藤勇氏は、先月開催された株主総会の直前に69才でお亡くなりになりました。過去に一度総会に参加した際に、細々とした質問にも気軽に答えてくださったことを覚えています。「カラッとした陽気な性格の、たたき上げの創業者一族経営者」という印象の方でした。

同氏は2年前に『日進工具のニッチトップ戦略』という本を出版されていました。その中から印象に残った箇所をご紹介します。ひとつめの引用は、製造を担当していた同氏が営業の最前線も担当することになった頃の話です。

飛び込み営業を始めた初期においては、訪問先から「エンドミルは大手メーカーのもので間に合っているから、テストカットなどしなくてよい」とか、「今、忙しいから、帰れ」-など、罵声に近い言い方を何度もされた。

"営業担当として、訪問先からのお断りをいかにして乗り越えるか"-追い詰められていた私は、いろいろ考えた。

こうした局面においては、他社の営業担当は、サンプル品を置いて、後日、再訪問して売り込むケースが見られた。お客様からも「サンプルを置いていけ」とよく言われた。

私はこれをやらず、訪問先から材料と機械を借りて、私が自ら段取りを行い、切削加工してみせた。すると、お客様は関心を示し、加工で困っていることなどを話し始めてくれた。入社以来、地道に製造に携わり、培ってきた知識とノウハウが役立ったのだ。嬉しかった。いわゆる"実演販売"である。

同時に、大切なことを学んだ。それは、顧客は製品の価値を理解して購入して下さるのだから、絶対に、大幅な値引き販売、安易なサンプル品提供などは行わないことである。あわせて、常に、顧客のニーズを探求し、これをベースに製品開発する重要性も学んだ。これを怠ると、他社製品との差別化が進まず、過当競争を招き、その結果、価格の維持が困難になる。大事なことは、使い手と作り手双方に利益をもたらす"価値の等価交換"である。(p. 29)

"実演販売"の部分は心理的なうまいやりかたが何重にも組み込まれていて、つくづく感心しました。

もうひとつは株式投資家にはおなじみの概念、「逆張り」についてです。

中小企業にとって、優秀な人材を確保することは、至難の業に近い。このため、私は、常に、世の中が不景気な時に、意欲的に、社員を採用するようにしている。不景気になると、大企業は採用を必要最小限に止める。この時こそ、中小企業にとってはチャンスとなる。

また、機械を設備する時も同様で、不景気の時に行うようにしている。不景気になると、売り手市場から買い手市場になるので、納期が早まり、手間の掛かる特別仕様に対しても柔軟に対応してくれる。それに、価格交渉も有利となる。

工場用地の取得や工場建設に関しても、事情は同じ。土地の価格交渉でも有利だし、建設資材は値下がりし、工期も早まる。

私は、こうした不景気での対応を"逆張り経営"と称し、これを実践してきた。この結果、大きな成果を生み出すことができた。

ただし、常に、思い切った"勇気"と"決断"を要した。社内では、「人は不足していないのに、なぜ、不景気な時に社員を採用するのか」といった反対の声が聞かれた。機械を設備する時も同じで、「今は間に合っているのだから、わざわざ、不景気な時に設備することはない」など、ブーイングに近い声が私の耳に届いた。

そうした時、私は、「責任はすべて社長にある」とし、信念を持って、実行した。(p. 155)

よくあるエピソードなのかもしれませんが、厳しい時期に投資に踏み切れる経営者こそ、視点を共有できるという意味で投資家が探すべき経営者だと思います。

2017年7月18日火曜日

予測に関する5つの警句(ハワード・マークス)

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ハワード・マークスが1月に書いたレターから、最後のご紹介です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

最後に特別付録です。予測のことを話題にした引用文ばかりを、私は40年来収集して(再利用もして)きましたが、その中から珠玉の5本をご紹介します。全体としてみれば、今回の主題について語るべき内容が事実上すべて盛り込まれています。

未来を予測する者たちは、2つの種族に分けられる。物事をわかっていない者たちと、自分が物事をわかっていないことを理解していない者たちだ。
(ジョン・ケネス・ガルブレイス[経済学者])

どれだけ洗練させようとも、「みずからが持つあらゆる知識は過去についてであり、みずからが下すあらゆる判断は未来についてである」という事実の重みを減じることはない。
(GE社の元重役イアン・ウィルソン)

予測をすると、未来がわかるという幻想が生まれる。
(ピーター・バーンスタイン[著述家、経済学者])

予測というものは、未来よりも予測者について語ってくれることが多い。
(ウォーレン・バフェット)

未来のことなど考えないですよ。すぐにやってきますから。
(アルバート・アインシュタイン)


Bonus section: I’ve been collecting (and recycling) quotations for almost forty years, more of them concerning forecasts than anything else. Here are five of the very best. Together they say virtually everything that has to be said on the subject:

We have two classes of forecasters: Those who don’t know – and those who don’t know they don’t know.
– John Kenneth Galbraith

No amount of sophistication is going to allay the fact that all of your knowledge is about the past and all your decisions are about the future.
– Ian Wilson (former GE executive)

Forecasts create the mirage that the future is knowable.
– Peter Bernstein

Forecasts usually tell us more of the forecaster than of the future.
– Warren Buffett

I never think of the future – it comes soon enough.
– Albert Einstein

2017年7月16日日曜日

自分を向上させたいのであれば(ハワード・マークス)

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オークツリーのハワード・マークスが1月に書いたレターから引用が続きます(前回分はこちら)。常識感覚に富んでいて、良い文章です。(日本語は拙訳)

第一に、1年前にウォーレン・バフェットと夕食を共にしたとき、彼が次のように指摘した件です。「そういった情報に追い求める価値があるとしたら、それが重要なものであり、さらに[客観的に]認知できるものでなければいけませんよ」。今日の投資家はマクロ的な未来に対する識見をかつてないほど要求しています。それが重要だからです。つまり市場を動かすからです。ところが、ここで待ったがかかります。私もそうですが、「その手のものはかなりの部分が認知できない」とウォーレンはみているのです。それらに基づいて彼が投資の行動を起こすことは稀ですし、オークツリーでも同様です。

第二に、先ほど取り上げたメディアに関するObserver[ウェブサイト]の記事にあった極めつけの段落をここに含めたいと思います。圧巻です。

「自分を向上させたいのであれば」、とエピクテトス(1世紀のギリシャ人哲学者)がかつて言った。「畑違いのことについては、無知か愚鈍に見えるよう、みずから進んで振る舞うこと」。現代のような相互接続おびただしい24時間休日なしのメディア漬けの世の中では、「私にはわかりません」と答えるのが、我々の取り得る最強の一手だろう。あるいはもっと挑発的に、「それがどうかしましたか」と。もちろん全てというわけではないが、ほとんどはそうだと言える。なぜならば、ほとんどのことは問題とは言えないし、ほとんどのニュースには追いかける価値がないからだ。(強調部は原著者ハワード・マークスによるもの)(p. 11)


First, I had dinner with Warren Buffett about a year ago, and he pointed out that for a piece of information to be worth pursuing, it should be important, and it should be knowable. These days, investors are clamoring more than ever for insights regarding the macro future, because it’s important: it moves markets. But there’ s a hitch: Warren and I both consider these things largely unknowable. He rarely bases his investment actions on them, and neither does Oaktree.

Second, I want to include a final paragraph from the Observer article about the media that I mentioned earlier. I think it’s golden:

“If you wish to improve,” Epictetus [first-century Greek philosopher] once said, “be content to appear clueless or stupid in extraneous matters.” One of the most powerful things we can do as a human being in our hyperconnected, 24/7 media world is say: “I don’t know.” Or more provocatively, “I don’t care.” Not about everything, of course – just most things. Because most things don’t matter, and most news stories aren’t worth tracking. (Emphasis added)

2017年7月14日金曜日

電子が感情を持ち合わせていたら(ハワード・マークス)

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前回につづいて、ハワード・マークスのレターから短い文章ですが引用します。「予測」に関する話題です。(日本語は拙訳)

未来については、事実というものは存在しません。あるのは、ただの見解です。自分が予想したマクロ的な将来を心底から断言する人は、無知ゆえの発言なのか、それとも自信過剰か、あるいは嘘をついているのか、いずれもみずからの先見性を誇張しています。

経済や金利や通貨や市場の動向は、科学的なプロセスに従った結果として進展するものではありません。そこには感情や弱さや偏向をいだいた人間が介在するので、大幅に予測不能なものが形成されます。物理学者のリチャード・ファインマンは、かつて次のように述べました。「それぞれの電子が感情を持ち合わせていたら、物理学はどれだけ難しくなるんだろうね」と。

不確実なことに対する予測に基づいて大胆な行動に出るのは、単に筋ちがいなだけではなく、危険なやりかたです。マーク・トウェインは次のように言っています。「やっかいごとになるのを知らないのが問題ではない。確信していたのに当たらないのが問題なのだ」。(p. 9)

There are no facts about the future, just opinions. Anyone who asserts with conviction what he thinks will happen in the macro future is overstating his foresight, whether out of ignorance, hubris or dishonesty.

Developments in economies, interest rates, currencies and markets aren’t the result of scientific processes. The involvement in them of people – with their emotions, foibles and biases – renders them highly unpredictable. As physicist Richard Feynman put it, “Imagine how much harder physics would be if electrons had feelings!”

Taking bold action based on forecasts of things that are uncertain isn’t just misguided; it’s dangerous. As Mark Twain said, “It ain’t what you don’t know that gets you into trouble. it’s what you know for certain that just ain’t true.”

蛇足ですが、とんちんかんな発言を見聞きしたときには、わたし自身も上記のような二者択一(無知あるいは嘘つき)でとらえているので、上の文章には共感できました。

2017年7月12日水曜日

時間の無駄かもしれない(ハワード・マークス)

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Oaktreeのハワード・マークスが1月に書いたレターは、「専門家の見解(Expert Opinion)」と題したものでした。「専門家による予測は、あまり当てにならない」とする主旨が、彼らしい実際的な視点から説明されていました。そのなかで気に入ったいくつかの箇所を、少しずつ引用してご紹介します。原文のリンク先は以下のとおりです。(日本語は拙訳)

memo from Howard Marks: Expert Opinion [PDF] (Oaktree Capital Management)

息子アンドリューの助力を得て、メディアが及ぼす効果を解き明かしてみました。

・あるできごとに関心を持ち続ける人は、「その件へ積極的に関わっていると共に十分な情報を得ている」と感じるようになります。
・情報を得ていると自覚する人は、自信をもって考えたり、行動したりするものです。
・しかしメディアに登場する評論家であっても、他の人と同程度の洞察力しかないことがよくあります。
・それはともかく人間とは、自分の考えに逆らう内容ではなく、自分の信念を支持する内容を発するメディアへと関心を寄せがちです。
・それがために、メディアに登場する専門家に耳を傾けるのは、楽しいひとときではあるものの、知性の点からすると時間の無駄と言えるかもしれません。(p. 4)

My son Andrew has helped me dope out the media effects:

- Following events makes people feel they're actively involved in them and well informed.
- People think and act with more confidence when they consider themselves informed.
- But the media pundits often are no more insightful than the rest of us.
- And anyway, people tend to follow media outlets that confirm their beliefs rather than challenge them.
- Thus following the media experts, while entertaining, can be a waste of time intellectually.

参考となる過去記事としては、確証バイアスの話題になったときによくご紹介している「ダーウィンの『逆ひねり』」があります。さらに今回は別の記事、「動物はパターンを見つけずにはいられない」も挙げておきます。

2017年7月10日月曜日

2016年度バフェットからの手紙(12)譲渡益や受取配当金の所得税率

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2016年度「バフェットからの手紙」から、譲渡益と配当金のそれぞれにかかる税金の話題です。(日本語は拙訳)

配当と税金について学んでおいたほうがよい事柄がいくつかありますので、それらを取り上げたうえで、投資に関する本章をおわりにしたいと思います。ほとんどの他社と同じようにバークシャーでも、譲渡益として稼ぐ金額よりも受け取る配当金のほうがかなり多額になります。「譲渡益こそ、税金面で有利なリターンが得られる手段だ」とふだんから考えておられる株主のかたは、たぶん驚かれるかと思います。

しかしここで、企業における金勘定を説明しておきます。ある会社が譲渡益を1ドル発生させると、35セントの連邦所得税が課されます(同様に、所得税を課す州も多いです)。しかし内国企業から受け取る配当金に課される税率のほうは、受取り側の状況によって異なりますが一貫して低い値です。

非保険会社の場合、つまり親会社であるバークシャー・ハサウェイのことですが、連邦税の実質税率は受け取った配当金1ドルにつき10.5セントです。さらには、投資先を20%超保有する非保険会社の場合、その配当金1ドルにつき7セントしか課税されません。たとえば当社はクラフト・ハインツ社の27%を、親会社自身ですべて保有しています。そのため同社から受け取る多額の配当金には、その税率が適用されます。(配当金に対する法人税率が低いことの理由は、配当金を支払う側である投資先企業が、配分することになる損益に対してすでに自社の段階で法人税を支払っているためです)

バークシャーの保険子会社では、非保険会社に適用されるよりもいくぶん高い税率が配当金にかかっています。しかしそれでも譲渡益に課税される35%よりもかなり低い税率です。損害保険会社には、受取配当金のほとんどに対して14%の税金が課されます。もし投資先が米国籍であり、なおかつその20%超を保有している場合は、税率が11%前後へ下がります。

税金に関する今回の勉強はここまでです。

Before we leave this investment section, a few educational words about dividends and taxes: Berkshire, like most corporations, nets considerably more from a dollar of dividends than it reaps from a dollar of capital gains. That will probably surprise those of our shareholders who are accustomed to thinking of capital gains as the route to tax-favored returns.

But here’s the corporate math. Every $1 of capital gains that a corporation realizes carries with it 35 cents of federal income tax (and often state income tax as well). The tax on dividends received from domestic corporations, however, is consistently lower, though rates vary depending on the status of the recipient.

For a non-insurance company - which describes Berkshire Hathaway, the parent - the federal tax rate is effectively 10.5 cents per $1 of dividends received. Furthermore, a non-insurance company that owns more than 20% of an investee owes taxes of only 7 cents per $1 of dividends. That rate applies, for example, to the substantial dividends we receive from our 27% ownership of Kraft Heinz, all of it held by the parent company. (The rationale for the low corporate taxes on dividends is that the dividend-paying investee has already paid its own corporate tax on the earnings being distributed.)

Berkshire’s insurance subsidiaries pay a tax rate on dividends that is somewhat higher than that applying to non-insurance companies, though the rate is still well below the 35% hitting capital gains. Property/casualty companies owe about 14% in taxes on most dividends they receive. Their tax rate falls, though, to about 11% if they own more than 20% of a U.S.-based investee.

And that’s our tax lesson for today.

今年分の拙訳付きご紹介も、ひとまずは終わりです。

2017年7月8日土曜日

2016年度バフェットからの手紙(11)永久に保有?

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2016年度「バフェットからの手紙」から、証券の保有方針に関する話題を引用します。「ウォーレン後」に備えた布石のようにも読める文章です。(日本語は拙訳)

ときに株主の方やメディアからのコメントで、「当社には『永久に』保有しつづけると決めている株式がある」とほのめかすものがあります。たしかに保有株式のなかには、目の見えている間に(視力のことですよ)売却するつもりがないものもあります。しかしわたしどもは、「バークシャーには永久に保有する証券がある」とは確約していません。

この点について混乱を招いているのは、本書[2016年度の年次報告書;PDFファイル]の110-111ページに載せている「事業経営上の原則その11」の読みかたが大まかすぎるせいかもしれません。当社の年次報告書にその文章を含めるようになったのは1983年でした。その原則は支配下の事業に対しては適用されますが、保有する市場流通証券に対してはそうではありません。今年からは「その11」の最後に一文を付け加えました。わたしどもがいかなる市場流通証券も売却可能なものとみなしていることを、株主のみなさんが確実に理解できるようにするためです。とは言うものの現段階では、そのような売却は起こりそうにありません。(PDFファイル22ページ)

Sometimes the comments of shareholders or media imply that we will own certain stocks “forever.” It is true that we own some stocks that I have no intention of selling for as far as the eye can see (and we’re talking 20/20 vision). But we have made no commitment that Berkshire will hold any of its marketable securities forever.

Confusion about this point may have resulted from a too-casual reading of Economic Principle 11 on pages 110 - 111, which has been included in our annual reports since 1983. That principle covers controlled businesses, not marketable securities. This year I’ve added a final sentence to #11 to ensure that our owners understand that we regard any marketable security as available for sale, however unlikely such a sale now seems.

2017年7月6日木曜日

2016年度バフェットからの手紙(10)バークシャーの保有資金について

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2016年度「バフェットからの手紙」から、短めの文章をいくつか引用します。今回はバークシャーが連結ベースで保有する現金資産の話題です。バークシャーの現状を把握する「いろは」のひとつにあたると思います。(日本語は拙訳)

当社の貸借対照表における「現金及び等価物」860億ドルのうち(わたしとしては米国財務省証券T-Billも含めています)の95%が、米国内に籍をおく事業体によって保有されています。つまりどのような資金還流税であっても、その課税対象にはなりません。このことを理解しておくのは大切です。さらには、それ以外の資金を米国内へ還流させる場合でも、わずかな税金しか発生しません。それら資金の多くは、かなりの法人税が課されている国であげた益金だからです。資金を本国へ送金する際には、そういった既払い分と連邦税が相殺されることになります。

このような説明は重要です。というのも、現金が潤沢な多くの米国企業は、その資金の大きな割合を非常に小さな税率しかかからない法的管轄域で保有しているからです。そういった企業は、それらの資金を米国へ持ち込む際に課される税金が大幅に削減されるよう望んでいますし、それが適切な行動だったとなるかもしれません。しかしそれまでの間は、その資金をどのように使えるかという点において、そういった企業は行動を制限されています。言い換えれば、海外にある現金は本国にある現金とは「単純に同じ価値とは言えない」わけです。

バークシャーは地理的にみて好ましい場所で現金を保有していますが、それを部分的に相殺している点があります。現金の多くを当社の保険子会社が保有している点です。それらの資金を投資目的で使う方策はいろいろと考えられますが、もし親会社であるバークシャーが保有していたら堪能できたはずの無制限な選択肢ほどではありません。また子会社の各保険会社から親会社へと多額の現金を毎年配分する能力もありますが、こちらも同じように限界があります。結局のところ、各保険会社の手元にある現金は非常に有用な資産ではあるものの、親会社の階層で保有する現金にくらべると、若干ながら価値が落ちるきらいがあります。(PDFファイル19ページ)

It’s important for you to understand that 95% of the $86 billion of “cash and equivalents” (which in my mind includes U.S. Treasury Bills) shown on our balance sheet are held by entities in the United States and, consequently, is not subject to any repatriation tax. Moreover, repatriation of the remaining funds would trigger only minor taxes because much of that money has been earned in countries that themselves impose meaningful corporate taxes. Those payments become an offset to U.S. tax when money is brought home.

These explanations are important because many cash-rich American companies hold a large portion of their funds in jurisdictions imposing very low taxes. Such companies hope - and may well be proved right - that the tax levied for bringing these funds to America will soon be materially reduced. In the meantime, these companies are limited as to how they can use that cash. In other words, off-shore cash is simply not worth as much as cash held at home.

Berkshire has a partial offset to the favorable geographical location of its cash, which is that much of it is held in our insurance subsidiaries. Though we have many alternatives for investing this cash, we do not have the unlimited choices that we would enjoy if the cash were held by the parent company, Berkshire. We do have an ability annually to distribute large amounts of cash from our insurers to the parent - though here, too, there are limits. Overall, cash held at our insurers is a very valuable asset, but one slightly less valuable to us than is cash held at the parent level.

2017年7月4日火曜日

2016年度バフェットからの手紙(9)金持ちが熟練者と出会うとき

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2016年度「バフェットからの手紙」から、「ロング・ベッツ」の話題は今回で終わりです。(日本語は拙訳)

公務員が加入している年金基金に、多額の金銭的損害が生じました。それら基金の多くは痛々しいまでに積み立て不足ですが、「巨額の手数料を払ったあげく、投資の成績はお粗末」という往復ビンタをくらったことも、その原因の一部です。運用資産に生じた不足分は、地元の納税者が何十年もかけて埋め合わせなければいけないでしょう。

人間の行動とは変わらないものです。裕福な個人や年金基金、財団などは、「投資上の『特別な』助言を受ける資格がある」と、これからも感じ続けることでしょう。そのような期待を抜け目なく利用できる助言者は、大金持ちになれると思います。今年の秘薬はヘッジ・ファンドになるかもしれない。あるいは来年は別のものかもしれない。その手の約束が目白押しに続くとどんな結末になりそうか、ある警句が次のように予言しています。「金のある者が経験のある者と出会えば、ついには経験のある者に金がわたり、金のある者の手元には経験が残る」と。

昔のことですが、オマハの市場で卸売業者として働いていた義理の兄であるホーマー・ロジャーズに尋ねたことがあります[スーザンの姉ドッティーの配偶者]。「農家や畜産家をどう説得したら、食肉業界大手4社(スウィフト、クダヘイ、ウィルソン、アーマー)の買い付け人へ豚や牛を売りさばく仕事を任せてもらえるのですか」。結局は豚は豚であって、どの動物にどれだけの価値があるか、専門家である買い手はきっかり知り尽くしているわけです。さらに、もうひとつ質問しました。「他の人よりも良い成績をあげる代理人がいるのは、一体どういうわけですかね」。

残念そうなまなざしを向けながら、ホーマーはこう答えました。「ちがうんだ、ウォーレン。彼らにどうやって売るかではなくて、どう話すかなんだよ」。市場で使えたその技は、今もなおウォール街で使えています。

* * * * * * * * * * * *

最後になりますが、ウォール街には良き友人も多くいますので、このあたりで仲直りできればと思います。買収案件を持ってきてくれる投資銀行には、たとえ膨大な金額であってもバークシャーは喜んで手数料をお支払いします。さらに言いますと、当社に在籍している2名の投資マネージャーには、好成績をおさめた際に多額の報酬を支払っており、かなうならばもっと多額を払いたいと望んでおります。

新約聖書の言葉に倣えば(エフェソ書3:18)、「手数料」という単純な3文字の言葉をウォール街へ投げかけたときに、その言葉から流れ出すエネルギーの「高さ、深さ、長さ、広さ」がどのようなものか承知しています。そのエネルギーがバークシャーへ価値をもたらしてくれるのでしたら、よろこんで高額の小切手を切りたいと思います。

(この章おわり)

Much of the financial damage befell pension funds for public employees. Many of these funds are woefully underfunded, in part because they have suffered a double whammy: poor investment performance accompanied by huge fees. The resulting shortfalls in their assets will for decades have to be made up by local taxpayers.

Human behavior won’t change. Wealthy individuals, pension funds, endowments and the like will continue to feel they deserve something “extra” in investment advice. Those advisors who cleverly play to this expectation will get very rich. This year the magic potion may be hedge funds, next year something else. The likely result from this parade of promises is predicted in an adage: “When a person with money meets a person with experience, the one with experience ends up with the money and the one with money leaves with experience.”

Long ago, a brother-in-law of mine, Homer Rogers, was a commission agent working in the Omaha stockyards. I asked him how he induced a farmer or rancher to hire him to handle the sale of their hogs or cattle to the buyers from the big four packers (Swift, Cudahy, Wilson and Armour). After all, hogs were hogs and the buyers were experts who knew to the penny how much any animal was worth. How then, I asked Homer, could any sales agent get a better result than any other?

Homer gave me a pitying look and said: “Warren, it’s not how you sell ‘em, it’s how you tell ‘em.” What worked in the stockyards continues to work in Wall Street.

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And, finally, let me offer an olive branch to Wall Streeters, many of them good friends of mine. Berkshire loves to pay fees - even outrageous fees - to investment bankers who bring us acquisitions. Moreover, we have paid substantial sums for over-performance to our two in-house investment managers - and we hope to make even larger payments to them in the future.

To get biblical (Ephesians 3:18), I know the height and the depth and the length and the breadth of the energy flowing from that simple four-letter word - fees - when it is spoken to Wall Street. And when that energy delivers value to Berkshire, I will cheerfully write a big check.

2017年6月28日水曜日

2016年度バフェットからの手紙(8)金持ちはどう感じているのか

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2016年度「バフェットからの手紙」から「ロング・ベッツ」の話題を引用します。この章は、今回も含めてあと2回です。(日本語は拙訳)

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アメリカの投資家に対してもっとも貢献した人を讃えて彫像を建てるとすれば、すぐに思い当たるのはジャック・ボーグルでしょう[前述したヴァンガード・ファンドの創始者]。「きわめて費用の安いインデックス・ファンドへ投資すべきだ」とジャックは何十年間もずっと投資家へ訴えてきました。革新をめざす運動をつづける間、ふつうであればマネージャーへと流れていく富のうち、わずかなパーセントしか彼は収集しませんでした。ちなみに、そういったマネージャーは投資家に対して大きな見返りを約束するものの、付加価値をまったく提供できなかったり、あるいはわたしが始めた勝負のようにマイナスにすることもあります。

初期のころのジャックは、資産運用業界から再三コケにされていました。しかし今日では、「自分の蓄えから出したお金が、他のことよりもずっとすぐれた成績をあげている」と認めてくれる投資家が何百万人もいて、自分はその手助けをしていることに彼は満足しています。そういった投資家にとってジャックはヒーローですし、わたしにとっても彼はヒーローです。

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これまでにわたしは、「投資について助言してほしい」とたびたび求められてきました。それに対して答える過程で、人間というものについて山のように学ぶことができました。わたしがよくお薦めするのは、費用の安いS&P500インデックス・ファンドでした。まあまあの食い扶持しか持たない友人たちはたいてい、わたしの助言に沿ってくれました。見事なことだと思います。

しかし一方で、超裕福な人や機関投資家や年金基金がわたしからの同じ助言に従ったことは一度もなかったはずです。そのかわりに彼らは、わたしの考えに対して丁重な礼を返すと、高額の報酬を要求するマネージャーがうたう魅惑の歌に惹かれて立ち去っていきました。あるいは機関投資家の場合、「コンサルタント」という名の別の種類の「超」助言者を求めることも、よくありました。

しかしそのようなプロの助言者には、ある問題が待っています。顧客に対して「S&P500を模倣するインデックス・ファンドへの投資を毎年追加しつづけるように」と指導する投資コンサルタントなぞ、想像できますか。それは彼らにとって職業的な自殺行為です。反対に、運用先を小幅に動かすようにと毎年のように推奨すれば、多額の手数料が超助言者へ流れ込むことになります。そのとき「流行している投資『スタイル』や現在の経済的動向を考慮すると、なぜそのように変更することが適切なのか」を説明する際に、彼らは内輪で通用する業界用語を使うことがよくあります。

裕福な人たちというものは、「最上の食べものや教育、娯楽、住居、美容外科、スポーツ観戦のチケット、その他諸々を得ることは、持って生まれた定めである」と感じて生きてきました。「大衆が入手できるものよりもはるかに優れたものを、手に入れるために金銭を使うべき」と感じているのです。

実際のところ金持ちは、生活上のさまざまな局面において最上級の製品やサービスを要求しています。それがために、裕福な個人や年金基金や大学基金といったたぐいの資産的「エリート」は、数千ドルしか投資資金のない人たちにも利用できる金融商品やサービスを粛然と契約する際に、大きな問題を抱えることになります。たとえ渦中の商品が期待値ベースで最良の選択肢だとはっきりしていても、金持ちの場合はふつう、そのような拒否反応のほうが勝つのです。非常に大まかな計算ではありますが、わたしの見積もりでは、投資に関する卓越した助言を求めるエリートたちを全体としてとらえると、過去10年間で1千億ドル以上も無駄にしています。計算してみてください、数兆ドルに対して手数料がわずか1%であっても十分でしょう。もちろんですが、10年前にヘッジ・ファンドへ資金を投じた人すべてが、S&Pの成績からおくれを取ったわけではないと思います。しかしわたしが見積もった「全体としてとらえたときの不足分」は、まちがいなく保守的な計算だと思っています。

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If a statue is ever erected to honor the person who has done the most for American investors, the handsdown choice should be Jack Bogle. For decades, Jack has urged investors to invest in ultra-low-cost index funds. In his crusade, he amassed only a tiny percentage of the wealth that has typically flowed to managers who have promised their investors large rewards while delivering them nothing - or, as in our bet, less than nothing - of added value.

In his early years, Jack was frequently mocked by the investment-management industry. Today, however, he has the satisfaction of knowing that he helped millions of investors realize far better returns on their savings than they otherwise would have earned. He is a hero to them and to me.

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Over the years, I’ve often been asked for investment advice, and in the process of answering I’ve learned a good deal about human behavior. My regular recommendation has been a low-cost S&P 500 index fund. To their credit, my friends who possess only modest means have usually followed my suggestion.

I believe, however, that none of the mega-rich individuals, institutions or pension funds has followed that same advice when I’ve given it to them. Instead, these investors politely thank me for my thoughts and depart to listen to the siren song of a high-fee manager or, in the case of many institutions, to seek out another breed of hyper-helper called a consultant.

That professional, however, faces a problem. Can you imagine an investment consultant telling clients, year after year, to keep adding to an index fund replicating the S&P 500? That would be career suicide. Large fees flow to these hyper-helpers, however, if they recommend small managerial shifts every year or so. That advice is often delivered in esoteric gibberish that explains why fashionable investment “styles” or current economic trends make the shift appropriate.

The wealthy are accustomed to feeling that it is their lot in life to get the best food, schooling, entertainment, housing, plastic surgery, sports ticket, you name it. Their money, they feel, should buy them something superior compared to what the masses receive.

In many aspects of life, indeed, wealth does command top-grade products or services. For that reason, the financial “elites” - wealthy individuals, pension funds, college endowments and the like - have great trouble meekly signing up for a financial product or service that is available as well to people investing only a few thousand dollars. This reluctance of the rich normally prevails even though the product at issue is -on an expectancy basis - clearly the best choice. My calculation, admittedly very rough, is that the search by the elite for superior investment advice has caused it, in aggregate, to waste more than $100 billion over the past decade. Figure it out: Even a 1% fee on a few trillion dollars adds up. Of course, not every investor who put money in hedge funds ten years ago lagged S&P returns. But I believe my calculation of the aggregate shortfall is conservative.

2017年6月24日土曜日

2016年度バフェットからの手紙(7)あのサルのように運が良ければ

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2016年度「バフェットからの手紙」から引用します。前回のつづきです。(日本語は拙訳)

上に記したわたしの主張を単純な方程式へ入れてみたいと思います。もし投資の世界全体がグループA(アクティブ投資家)とグループB(不動な投資家)で構成されているとしたら、グループBの費用控除前の成績は平均点そのものとなる定めにあります。これはグループAも同じです。つまり、費用の安いグループのほうが勝者となるわけです(理論的なこだわりがあってささいながらも触れておきたいのですが、この公式にはわずかに修正すべき点があります。詳細に触れるほどのものではありませんが)。グループAの費用が不当なほど高いとしたら、大幅に差をつけられてしまうでしょう。

もちろんですが、腕利きの人たちのなかにはS&Pをしのぐ成績を長期間にわたってあげることが明白な人もいるでしょう。ただしこれまでわたしが見てきたなかで、この難題を成し遂げるだろうと早い段階から期待できたプロは10名程度にとどまりました。

わたしが知らない人のなかには、わたしが見出したそのような人たちと同じ能力を持つ人が、数百人あるいはたぶん数千人にのぼるのは間違いないはずです。けっきょくは、不可能でも何でもない仕事だからです。ただし問題なのは、好成績をあげようとするマネージャーの大多数が失敗におわる点です。「資金を出してほしい」とみなさんへ要求する人はどうでしょうか。やはり、「うまくやり遂げられる例外的な人」ではない可能性がかなり高いと思います。ビル・ルーアン[=セコイア・ファンドの創業者]は実にすばらしい人物でした。それだけではなく、60年前に「まずまちがいなく長期間にわたって卓越した投資成績をもたらす」と思えた人物でした。その彼が、ここで取り上げている話題についてうまく言い表しています。「資産運用の世界では、ものごとは革新者から始まって、模倣者が引き継ぎ、やがてヘボの大群へと伝わっていくのだ」と。

「高給取りのマネージャーで、なおかつ報酬に見合った価値を提供してくれる」という稀な人物をさがす作業がなおさら複雑になるのは、「素人で起こるのとまさしく同じように、投資のプロにおいても短期的にみると運が良かっただけ」という事実があるからです。たとえば年のはじめに1,000人のマネージャーが市場の予測をしたとします。するとかなりの確率で、9年間連続して正解を出す人が少なくとも一人はいます。もちろんサルが1,000匹いても同じように、知恵をたたえた預言者のように見える1匹を輩出するでしょう。しかし違う点がひとつあります。幸運なサルのほうには、投資を任せようと列をなす者の姿がみられない点です。

最後になりますが、「投資で成功したがために失敗を産み出す」、そのような働きをする3つのつながり合った現実があります。はじめに「成績が良いと早々に資金の奔流を呼び集める点」です。次に「投資資金が山と積みあがることで、かならずや成績の重しとなる点」です。数百万ドルならばたやすくても、数十億ドルでは手を焼くようになります(涙)。3つめに「それにもかかわらず、ほとんどのマネージャーが新規の追加資金を求める点」です。これは彼ら個人の方程式のせいです。つまりは、「運用資産が増えれば、受取り手数料も増える」わけです。

わたしにしてみれば、その3点に何ら新しいところはありません。1966年1月に、わたしは4,400万ドルの資産を運用していました。そのときに有限責任パートナーに向けて次のように書きました。「規模が大きくなることは、今後の成績にとって有益ではなく有害になりやすい。そう強く感じています。わたし個人の成績ではそうならないかもしれませんが、みなさんの成績ではおそらくそうなるでしょう。そのようなわけで、バフェット・パートナーシップ・リミテッド(BPL)の新たなパートナーは今後は迎え入れないつもりです。妻のスージーにはすでに言ってあります。『次の子供ができたとしても、その子たち用のパートナーシップは他をあたってほしい』と」。

締めくくりましょう。ウォール街の住人が何兆ドルもの資産を管理していて高額な手数料をとっているのであれば、とびぬけた利益を刈り取れるのはふつうはマネージャーのほうであって、顧客のほうではありません。規模が大きかろうが小さかろうが、どちらの投資家も低コストのインデックス・ファンド一筋でやったほうがいいと思います。

So that was my argument - and now let me put it into a simple equation. If Group A (active investors) and Group B (do-nothing investors) comprise the total investing universe, and B is destined to achieve average results before costs, so, too, must A. Whichever group has the lower costs will win. (The academic in me requires me to mention that there is a very minor point - not worth detailing - that slightly modifies this formulation.) And if Group A has exorbitant costs, its shortfall will be substantial.

There are, of course, some skilled individuals who are highly likely to out-perform the S&P over long stretches. In my lifetime, though, I’ve identified - early on - only ten or so professionals that I expected would accomplish this feat.

There are no doubt many hundreds of people - perhaps thousands - whom I have never met and whose abilities would equal those of the people I’ve identified. The job, after all, is not impossible. The problem simply is that the great majority of managers who attempt to over-perform will fail. The probability is also very high that the person soliciting your funds will not be the exception who does well. Bill Ruane - a truly wonderful human being and a man whom I identified 60 years ago as almost certain to deliver superior investment returns over the long haul - said it well: “In investment management, the progression is from the innovators to the imitators to the swarming incompetents.”

Further complicating the search for the rare high-fee manager who is worth his or her pay is the fact that some investment professionals, just as some amateurs, will be lucky over short periods. If 1,000 managers make a market prediction at the beginning of a year, it’s very likely that the calls of at least one will be correct for nine consecutive years. Of course, 1,000 monkeys would be just as likely to produce a seemingly all-wise prophet. But there would remain a difference: The lucky monkey would not find people standing in line to invest with him.

Finally, there are three connected realities that cause investing success to breed failure. First, a good record quickly attracts a torrent of money. Second, huge sums invariably act as an anchor on investment performance: What is easy with millions, struggles with billions (sob!). Third, most managers will nevertheless seek new money because of their personal equation - namely, the more funds they have under management, the more their fees.

These three points are hardly new ground for me: In January 1966, when I was managing $44 million, I wrote my limited partners: “I feel substantially greater size is more likely to harm future results than to help them. This might not be true for my own personal results, but it is likely to be true for your results. Therefore, . . . I intend to admit no additional partners to BPL. I have notified Susie that if we have any more children, it is up to her to find some other partnership for them.”

The bottom line: When trillions of dollars are managed by Wall Streeters charging high fees, it will usually be the managers who reap outsized profits, not the clients. Both large and small investors should stick with low-cost index funds.

2017年6月20日火曜日

2016年度バフェットからの手紙(6)アクティブ勢VSパッシブ勢

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2016年度「バフェットからの手紙」からの引用です。「ロング・ベット」が続きます。(日本語は拙訳)

今回の勝負でヘッジ・ファンドへ投資していた人たちは残念な成績を被りましたが、これが将来も繰り返されるのは、ほぼまちがいないだろうと思います。勝負開始の際にロング・ベッツのウェブサイトへ寄せた説明のなかで、なぜそのような持論を抱いているのか理由を表しました(今でもまだ載ったままです)。わたしが力説した内容は次のとおりです。

2008年1月1日に開始してから2017年12月31日までの10年間におけるS&P500の成績は、手数料・原価・経費を除いて計算すると、ヘッジ・ファンドに投資するファンド群よりも良い結果をおさめるでしょう。

証券市場では、非常に優秀な多くの人が平均を超える結果をあげようと考えて、行動を始めます。ここでは彼らのことを「アクティブ投資家」と呼ぶことにします。

彼らの反対になるのが「パッシブ投資家」で、その性質からすると平均前後の成績をあげることになります。彼らのポジションを総体としてみれば、多かれ少なかれインデックス・ファンドの成績と同じ程度になるでしょう。ですから、アクティブ投資家たち全体における損益も、同じように平均前後になるはずです。ただし、アクティブ投資家にははるかに多額の費用がかかってきます。そのためすべてを考慮すると、それらの費用を引いた後のアクティブ投資家全体としての成績は、パッシブ投資家の成績よりも悪くなるでしょう。

多額の年間手数料、多額の成功報酬、そして頻繁に発生する売買の費用といった要素すべてがアクティブ投資家の方程式に加えられることで、コストは飛躍的に増加します。ヘッジ・ファンドに投資するファンドでは、この費用の問題がなおさら強烈です。というのも、投資先のヘッジ・ファンドが要求する多額の手数料の上に、ファンド・オブ・ファンズの手数料が積み重なるからです。

ヘッジ・ファンドの運営には、優秀な人たちが何名もかかわっています。しかし自分自身の労苦がみずからを無力化する側面が大きい以上、彼らの有するIQをもってしても、投資家へ課す費用を打ち破ることはできないでしょう。投資家を平均して考えれば、ある程度の期間でみたときに良い成績をあげるのは、低コストのインデックス・ファンドへ投資したときであって、一群のファンド・オブ・ファンズへの投資ではないと思います。


In my opinion, the disappointing results for hedge-fund investors that this bet exposed are almost certain to recur in the future. I laid out my reasons for that belief in a statement that was posted on the Long Bets website when the bet commenced (and that is still posted there). Here is what I asserted:

Over a ten-year period commencing on January 1, 2008, and ending on December 31, 2017, the S&P 500 will outperform a portfolio of funds of hedge funds, when performance is measured on a basis net of fees, costs and expenses.

A lot of very smart people set out to do better than average in securities markets. Call them active investors.

Their opposites, passive investors, will by definition do about average. In aggregate their positions will more or less approximate those of an index fund. Therefore, the balance of the universe - the active investors - must do about average as well. However, these investors will incur far greater costs. So, on balance, their aggregate results after these costs will be worse than those of the passive investors.

Costs skyrocket when large annual fees, large performance fees, and active trading costs are all added to the active investor’s equation. Funds of hedge funds accentuate this cost problem because their fees are superimposed on the large fees charged by the hedge funds in which the funds of funds are invested.

A number of smart people are involved in running hedge funds. But to a great extent their efforts are self-neutralizing, and their IQ will not overcome the costs they impose on investors. Investors, on average and over time, will do better with a low-cost index fund than with a group of funds of funds.

2017年6月16日金曜日

2016年度バフェットからの手紙(5)手数料は眠らない

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2016年度「バフェットからの手紙」からの引用です。ウォーレンが始めた「ロング・ベット」のつづきです。(日本語は拙訳)

インデックス・ファンドの現在までの成績は、複利ベースで年率7.1%増でした。過去の株式市場をみれば、これがふつうの数字だと容易にわかることでしょう。ここで重要な事実を述べておきます。この勝負の期間となった9年間において市場がきわめて低調に推移したとすると、相対的な成績でみればヘッジ・ファンドのほうが有利になるでしょう。彼らの多くが「空売り」のポジションを大きくとるからです。反対に、株式がきわめて高いリターンをあげれば、9年の歳月はインデックス・ファンドの追い風となるでしょう。

ところが実際はそのどちらとも異なり、わたしとしては「ニュートラル」と呼びたい運用環境になりました。2016年までに5本のファンド・オブ・ファンズが達成した複利ベースでのリターンは、平均すると年率2.2%にとどまりました。つまりそれらのファンドに100万ドル投資すれば、22万ドルの利益が得られたことになります。しかしインデックス・ファンドに投資していれば、85万4千ドルの利益が得られていたでしょう。

ここで念頭においていただきたいのは、基盤になっている100本以上のヘッジ・ファンドを運営するすべてのマネージャーが、最善を尽くすことに対して巨額の金銭的な見返りを得られることになっていた点です。さらに、テッドが選んだ5本のファンド・オブ・ファンズのマネージャーも同様です。彼らも、最高のヘッジ・ファンドを運営するマネージャーを選ぶよう動機づけられていました。選んだヘッジ・ファンドの成績によって手数料を受ける決まりにしていたからです。

どちらの階層のマネージャーも、ほとんどが正直で頭のいい人ばかりだったのはまちがいないと思います。しかし彼らに対して投資した人にとっての成績は散々でした。まさに散々の一言です。ところがなんとも、関わっていたすべてのファンド及びファンド・オブ・ファンズが課していた多額の固定手数料は、ファンドの成績からすればまるで見合っていないのですが、過ぎ去った9年間を通じてマネージャー諸氏の報酬として降り注ぐためのものとなったのです。ゴードン・ゲッコーであればたぶん、「手数料が眠ることはない」と言い表すでしょう。[映画Wall Street: Money Never Sleepの主人公。演者はマイケル・ダグラス]

わたしたちの勝負において基盤となった投資先ヘッジ・ファンドのマネージャーが有限責任のパートナーから受ける報酬を平均としてみると、ヘッジ・ファンド標準として広まっている「2と20」をやや下回る程度でした。この「2と20」の意味ですが、まずは年間2%の固定手数料がかかります。これは損失が巨大であっても取られる金額です。そして利益が出た場合はその20%分が取られます。(成績が良い年の後に悪い年が来たとしても)返金されることはありません。このような不均衡な構成のもとで、運用対象となる資産を積み上げるだけの能力がヘッジ・ファンドの運用者にあれば、投資成績がお粗末だったとしてもマネージャーの多くは途方もない金持ちになれます。

手数料の話はまだ終わっていません。ファンド・オブ・ファンズのマネージャーにも同じような支払いが必要でしたね。ここまでの金額に追加して、たいていは資産額の1%と定めた固定手数料が取られます。さらには、ファンド・オブ・ファンズ5本全体の成績がひどいものだったとしても好調な年が続いたファンドもあったので、好成績に見合った手数料が徴収されます。それらの結果、9年間を合計すると5本のファンド・オブ・ファンズが達成した利益全体のうち、私の計算ではおよそ60%が(ごくごくごっくん!)、2階層にわたるマネージャーへと振り向けられていました。何百名もの有限責任パートナーが苦労することなく、さらには実質的に費用をかけることもなしに自分自身で達成できたかもしれない成績をはるかに下回った対価としては、いただけないものでした。

The compounded annual increase to date for the index fund is 7.1%, which is a return that could easily prove typical for the stock market over time. That’s an important fact: A particularly weak nine years for the market over the lifetime of this bet would have probably helped the relative performance of the hedge funds, because many hold large “short” positions. Conversely, nine years of exceptionally high returns from stocks would have provided a tailwind for index funds.

Instead we operated in what I would call a “neutral” environment. In it, the five funds-of-funds delivered, through 2016, an average of only 2.2%, compounded annually. That means $1 million invested in those funds would have gained $220,000. The index fund would meanwhile have gained $854,000.

Bear in mind that every one of the 100-plus managers of the underlying hedge funds had a huge financial incentive to do his or her best. Moreover, the five funds-of-funds managers that Ted selected were similarly incentivized to select the best hedge-fund managers possible because the five were entitled to performance fees based on the results of the underlying funds.

I’m certain that in almost all cases the managers at both levels were honest and intelligent people. But the results for their investors were dismal - really dismal. And, alas, the huge fixed fees charged by all of the funds and funds-of-funds involved - fees that were totally unwarranted by performance - were such that their managers were showered with compensation over the nine years that have passed. As Gordon Gekko might have put it: “Fees never sleep.”

The underlying hedge-fund managers in our bet received payments from their limited partners that likely averaged a bit under the prevailing hedge-fund standard of “2 and 20,” meaning a 2% annual fixed fee, payable even when losses are huge, and 20% of profits with no clawback (if good years were followed by bad ones). Under this lopsided arrangement, a hedge fund operator’s ability to simply pile up assets under management has made many of these managers extraordinarily rich, even as their investments have performed poorly.

Still, we’re not through with fees. Remember, there were the fund-of-funds managers to be fed as well. These managers received an additional fixed amount that was usually set at 1% of assets. Then, despite the terrible overall record of the five funds-of-funds, some experienced a few good years and collected “performance” fees. Consequently, I estimate that over the nine-year period roughly 60% - gulp! - of all gains achieved by the five funds-of-funds were diverted to the two levels of managers. That was their misbegotten reward for accomplishing something far short of what their many hundreds of limited partners could have effortlessly - and with virtually no cost - achieved on their own.

2017年6月12日月曜日

2016年度バフェットからの手紙(4)S&P500ファンドの威力

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2016年度「バフェットからの手紙」からの引用で、ウォーレンが始めた賭けの話題がつづきます。(日本語は拙訳)

さて、ここからはわたしが行った賭けとその後についてです。バークシャーの2005年度年次報告書で、「ある程度の年月でみると、プロが運用するアクティブ投資を全体としてみたときのリターンは、ズブの素人がじっとしたまま達成する数字に及ばない」と論じました。顧客全体としてみると、さまざまな「助力者ら」の課す巨額な手数料のおかげで、単に自動運用されていて費用の安いインデックス・ファンドへ素人が投資するよりもむずかしい状況に置かれていると説明したのです。(2005年度の報告書にのせた論述を、今回の年次報告書[PDFファイル]の114~115ページにそのまま再掲しましたので、ごらんください)

そのあとに続けて、賭け金50万ドルの勝負を公けに募りました。その内容は、「かなりの長期間でみたときに、おしるし程度の手数料で済む管理者不要なS&P500のインデックス・ファンドの成績に匹敵できる『少なくとも5本以上のヘッジ・ファンドで構成される一群』を、投資業界のプロの方で選び出せる人はいない」とするものです。高額の手数料がかかりますが、ヘッジ・ファンドはすごく人気がある投資用のヴィークルです。そして勝ち負けを決める時期は10年後とし、わたしの勝負札には手数料の安いヴァンガードS&Pファンドを選びました。「さあ、ファンド・マネージャーのみなさんがこぞってあらわれて、自分たちの仕事を擁護するだろう」と腰を落ちつけて待ち望みました。彼らは、5つのファンドの中に自分のものも含めることができるわけです。結局のところ、マネージャーである彼らの腕前に何十億ドルを賭けるようにと他人を焚きつけてきたのですから、その彼らが自分の資金から少しばかりを危険にさらすことになっても、こわがる必要はないはずです。

ところが聴こえてきたのは、しんとした静寂ばかりでした。みずからの銘柄選定の技量を売り込むことで、めまいがするほどの富を集めてきた、そんな数千名ものプロの資産運用者がいるはずです。しかし、わたしの出した挑戦に挑んできたのはただ一人でした。彼の名はテッド・サイディーズ、プロテジェ・パートナーズの共同マネージャーを務める人物でした。彼は有限責任のパートナーから集めた資金をもとにファンド・オブ・ファンズ、言いかえれば「複数のヘッジ・ファンドへ投資するファンド」を設立した資産運用者でした。

賭けの前には、テッドのことは知りませんでした。しかし彼には好感を持っていますし、自分の資金を自分の信じるものへと投じる気構えは見事だと思います。わたしに対して正直でしたし、賭けの状況を監視するために両者が必要なあらゆるデータを提供してくれる点でも細密周到でした。

プロテジェ・パートナーズ側の10年間にわたる勝負札として、テッドはファンド・オブ・ファンズを5本選びました。そしてそれらの成績の平均をとり、わたし側のヴァンガードS&Pインデックス・ファンドと比較しました。5本のファンドは100本以上のヘッジ・ファンドへと投資していました。これはつまり、「ひとつのマネージャーがあげる成績の良しあしによって、5本全体としての成績がねじ曲げられることがない」という意味になります。

もちろんですが、投資先のヘッジ・ファンドで手数料がかかっていましたし、それぞれのファンド・オブ・ファンズでもその上に積み重なる形で手数料をとって運営していました。この二重構成では、基礎部分にあたるヘッジ・ファンドのほうで、より大きな手数料が課されていました。そしてそれぞれのファンド・オブ・ファンズでは、「ヘッジ・ファンドのマネージャーを選び抜く」という暗黙の了解を得た技量の代金として、追加の手数料を要求したわけです。

以下に、開始後9年間の勝負の経過を挙げました。わたしの勝ち分すべてを受けられる慈善先として、[NPO法人]ガールズ・インクのオマハ事務所を設定してありますが、この数字からすればまちがいなく、かの団体は来年の正月に勇んで通知の手紙を開けるだろうと思います。

暦年 ファンドA ファンドB ファンドC ファンドD ファンドE S&Pファンド
2008 -16.5% -22.3% -21.3% -29.3% -30.1% -37.0%
2009 11.3% 14.5% 21.4% 16.5% 16.8% 26.6%
2010 5.9% 6.8% 13.3% 4.9% 11.9% 15.1%
2011 -6.3% -1.3% 5.9% -6.3% -2.8% 2.1%
2012 3.4% 9.6% 5.7% 6.2% 9.1% 16.0%
2013 10.5% 15.2% 8.8% 14.2% 14.4% 32.3%
2014 4.7% 4.0% 18.9% 0.7% -2.1% 13.6%
2015 1.6% 2.5% 5.4% 1.4% -5.0% 1.4%
2016 -2.9% 1.7% -1.4% 2.5% 4.4% 11.9%
累計 8.7% 28.3% 62.8% 2.9% 7.5% 85.4%

(注)プロテジェ・パートナーズとの合意によって、ファンド・オブ・ファンズの名称は非公開としました。ただしわたし自身は、年次の監査報告を確認しています。

Now, to my bet and its history. In Berkshire's 2005 annual report, I argued that active investment management by professionals - in aggregate - would over a period of years underperform the returns achieved by rank amateurs who simply sat still. I explained that the massive fees levied by a variety of “helpers" would leave their clients - again in aggregate - worse off than if the amateurs simply invested in an unmanaged low-cost index fund. (See pages 114 - 115 for a reprint of the argument as I originally stated it in the 2005 report.)

Subsequently, I publicly offered to wager $500,000 that no investment pro could select a set of at least five hedge funds - wildly-popular and high-fee investing vehicles - that would over an extended period match the performance of an unmanaged S&P-500 index fund charging only token fees. I suggested a ten-year bet and named a low-cost Vanguard S&P fund as my contender. I then sat back and waited expectantly for a parade of fund managers - who could include their own fund as one of the five - to come forth and defend their occupation. After all, these managers urged others to bet billions on their abilities. Why should they fear putting a little of their own money on the line?

What followed was the sound of silence. Though there are thousands of professional investment managers who have amassed staggering fortunes by touting their stock-selecting prowess, only one man - Ted Seides - stepped up to my challenge. Ted was a co-manager of Protege Partners, an asset manager that had raised money from limited partners to form a fund-of-funds - in other words, a fund that invests in multiple hedge funds.

I hadn’t known Ted before our wager, but I like him and admire his willingness to put his money where his mouth was. He has been both straight-forward with me and meticulous in supplying all the data that both he and I have needed to monitor the bet.

For Protege Partners’ side of our ten-year bet, Ted picked five funds-of-funds whose results were to be averaged and compared against my Vanguard S&P index fund. The five he selected had invested their money in more than 100 hedge funds, which meant that the overall performance of the funds-of-funds would not be distorted by the good or poor results of a single manager.

Each fund-of-funds, of course, operated with a layer of fees that sat above the fees charged by the hedge funds in which it had invested. In this doubling-up arrangement, the larger fees were levied by the underlying hedge funds; each of the fund-of-funds imposed an additional fee for its presumed skills in selecting hedge-fund managers.

Here are the results for the first nine years of the bet - figures leaving no doubt that Girls Inc. of Omaha, the charitable beneficiary I designated to get any bet winnings I earned, will be the organization eagerly opening the mail next January.

[The performance chart is omitted by the blog author.]

Footnote: Under my agreement with Protege Partners, the names of these funds-of-funds have never been publicly disclosed. I, however, see their annual audits.

2017年6月8日木曜日

2016年度バフェットからの手紙(3)100歳になっても生きているだろうか

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2016年度「バフェットからの手紙」からの引用です。今回から取り上げる部分が、一般(=非株主)向けのメイン・テーマと言えると思います。まずは、ウォーレンが好む軽いジョークの連発からです。(日本語は拙訳)

「賭け」(あるいは、自分の資金がウォール街へおさまることになる経緯)

この章のはじめのほうでは、わたしが9年前に勝負にのったある投資の話をします。それから次に、わたしが投資に対して強く抱いている見方を挙げています。しかしその前に、「ロング・ベッツ」(Long Bets; 長期的予測)という異色の組織がその賭けの中で果たす役割について、かいつまんで記したいと思います。

「ロング・ベッツ」はアマゾン社のジェフ・ベゾスの資金提供を受けて設立・運営されてきた非営利の団体で、長期的な予測がどうなったのか、その顛末を処理運営するものです。この予測に参加する「提案者」は、かなり先の日付になってから是非が明らかになる自分自身の見解を、Longbets.orgのサイトへ提出します。そして、それと反対の見解を抱く、つまり自分の反対側に賭けてくれる参加者を待ちます、その「疑義者」が申し出てくれた時点で、両者は自分の側が勝ったときに賭け金の受取人となる慈善先を指名します。そして「ロング・ベッツ」へ賭け金を預け入れると共に、自分側の立場を擁護する小論文を提出します。勝負が決まった時点で、「ロング・ベッツ」は勝った側の慈善先へ賭け金を支払います。

それでは、「ロング・ベッツ」が運営している興味津々なサイトで見受けられる事例を、いくつか挙げてみましょう。

2002年には、ミッチ・ケイパーという起業家[1-2-3で有名なLotusの創業者]が「チューリング・テストを合格するコンピューターや『機械知能』は、2029年までは登場しない」と宣言しました。チューリング・テストとは、コンピューターが人間[の受け答え]を模倣できるどうかを試すテストです。一方、発明家であるレイ・カーツワイル[A.I.の領域で活躍]は反対の見方を示しました。彼らは各々の見解を支持する金額として1万ドルを用意しました。どちらがこの賭けに勝つのかは、わたしにはわかりません。しかし「チャーリー・マンガーをそっくり真似できるコンピューターは登場しない」という見方には、自信をもって賭けられます。

それと同じ年にマイクロソフト社のクレイグ・マンディー[元最高研究戦略責任者]が、「パイロットの不要な旅客飛行機の定期便が、2030年までに出現する」と宣言しました。これに反対したのがグーグル社のエリック・シュミット[元CEO]です。この勝負での賭け金は1,000ドルずつでした。巨額な費用負担を被るかもしれないエリックの胸焼けをやわらげたいと思い、彼がしたことの一部を受け持とうと先日わたしから提案しました。すると彼は即座に500ドル分をわたしに回してくれました。(もしわたしたちの側が負けることになったときに、「負担分を支払わなければならない西暦2030年前後に、わたしがまだ生きている」と彼が想定してくれた点が、うれしいですね)

“The Bet” (or how your money finds its way to Wall Street)

In this section, you will encounter, early on, the story of an investment bet I made nine years ago and, next, some strong opinions I have about investing. As a starter, though, I want to briefly describe Long Bets, a unique establishment that played a role in the bet.

Long Bets was seeded by Amazon's Jeff Bezos and operates as a non-profit organization that administers just what you'd guess: long-term bets. To participate, “proposers" post a proposition at Longbets.org that will be proved right or wrong at a distant date. They then wait for a contrary-minded party to take the other side of the bet. When a “doubter" steps forward, each side names a charity that will be the beneficiary if its side wins; parks its wager with Long Bets; and posts a short essay defending its position on the Long Bets website. When the bet is concluded, Long Bets pays off the winning charity.

Here are examples of what you will find on Long Bets' very interesting site:

In 2002, entrepreneur Mitch Kapor asserted that “By 2029 no computer - or ‘machine intelligence' - will have passed the Turing Test," which deals with whether a computer can successfully impersonate a human being. Inventor Ray Kurzweil took the opposing view. Each backed up his opinion with $10,000. I don't know who will win this bet, but I will confidently wager that no computer will ever replicate Charlie.

That same year, Craig Mundie of Microsoft asserted that pilotless planes would routinely fly passengers by 2030, while Eric Schmidt of Google argued otherwise. The stakes were $1,000 each. To ease any heartburn Eric might be experiencing from his outsized exposure, I recently offered to take a piece of his action. He promptly laid off $500 with me. (I like his assumption that I'll be around in 2030 to contribute my payment, should we lose.)

2017年6月4日日曜日

2016年度バフェットからの手紙(2)自社株買いについて(続)

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2016年度「バフェットからの手紙」からの引用です。前回のつづき、自社株買いの話題です。(日本語は拙訳)

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バークシャー自身の自社株買いの方針をおさらいしますと、大量のバークシャー株を買う際の価格としてわたしが認めているのは、簿価の120%以下です。これは「その水準で買えば、意味のある利益が即座に残存株主にもたらされること明白である」と当社の取締役会が結論づけたからです。わたしどもの見立てによれば、簿価の120%とはバークシャーの本源的価値から大幅に割安ですが、その割安分は妥当と考えております。というのも、本源的価値を精確には算出できないからです。

しかしわたしが認めているからといって、当社の株価を120%の割合へとわたしどもが「支える」という意味ではありません。もしその水準に達したら今度は替わって、「価値を生みだせる価格で有意義な買い物をしたい」という望みと、それと関連した「市場に対して大きな影響を及ぼさない」という狙いを共存させようとすると思います。

現在の当社は、自社株買いを実施するのがむずかしくなりました。自社株買いの方針を明確に記したことによって、「バークシャーの本源的価値が簿価の120%よりも大幅に大きい」とするわたしどもの見方を開陳したわけですから、そうもなるでしょうし、それはそれでいいことです。チャーリー共々、本源的価値周辺のそこそこ狭い範囲でバークシャー株が売買されていてほしいと思っています。正当化できない高値ですと、その株を買った株主には不満を抱く人がでてきますので、それは愉快ではないですから、わたしどもが望む価格ではありません。あるいは低すぎる価格でもそうです。さらには、「パートナー諸氏」から割安に買い付けることは、金をもうける方法として、ことさらに満足できる方法ではありません。しかしですが、継続株主及び株を売却したいと考えている株主の両者に対して、自社株買いが便益をもたらせる環境が市場に生まれるかもしれません。そうであれば、わたしどもは行動に移す準備をします。

もうひとつ所見を申し上げて、この章を終わりにします。自社株買いの話題が沸き立った際にその人たちを指して、「生産的な取り組みに必要とされる資金をそらす企業版不法者」だと決めつける人がいます。「非国民」扱いするも同然の言い方です。これはまるで当たっていません。今日の米国における企業や投資家は、賢明に利用される場所を探し求める資金を大量に抱えています。近年になって資本不足で息絶えた魅力的なプロジェクトがあったなど、聞いたことがありません(そうなりそうな案件があれば、ぜひわたしどもへご一報ください)。

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To recap Berkshire’s own repurchase policy: I am authorized to buy large amounts of Berkshire shares at 120% or less of book value because our Board has concluded that purchases at that level clearly bring an instant and material benefit to continuing shareholders. By our estimate, a 120%-of-book price is a significant discount to Berkshire’s intrinsic value, a spread that is appropriate because calculations of intrinsic value can’t be precise.

The authorization given me does not mean that we will “prop” our stock’s price at the 120% ratio. If that level is reached, we will instead attempt to blend a desire to make meaningful purchases at a value-creating price with a related goal of not over-influencing the market.

To date, repurchasing our shares has proved hard to do. That may well be because we have been clear in describing our repurchase policy and thereby have signaled our view that Berkshire’s intrinsic value is significantly higher than 120% of book value. If so, that’s fine. Charlie and I prefer to see Berkshire shares sell in a fairly narrow range around intrinsic value, neither wishing them to sell at an unwarranted high price - it’s no fun having owners who are disappointed with their purchases - nor one too low. Furthermore, our buying out “partners” at a discount is not a particularly gratifying way of making money. Still, market circumstances could create a situation in which repurchases would benefit both continuing and exiting shareholders. If so, we will be ready to act.

One final observation for this section: As the subject of repurchases has come to a boil, some people have come close to calling them un-American - characterizing them as corporate misdeeds that divert funds needed for productive endeavors. That simply isn’t the case: Both American corporations and private investors are today awash in funds looking to be sensibly deployed. I’m not aware of any enticing project that in recent years has died for lack of capital. (Call us if you have a candidate.)

2017年5月28日日曜日

2016年度バフェットからの手紙(1)自社株買いについて

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バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットが2月末に公開した2016年度の「バフェットからの手紙」から、いくつか拙訳にてご紹介します。

SHAREHOLDER LETTER 2016 [PDF] (Berkshire Hathaway)

自社株買いについて

投資の世界では、自社株の買戻しは熱い議論になりがちです。しかしこの論争に加わるみなさんは、おちついて一息ついてみるのがよいかと思います。自社株買いの良し悪しを判定するのは、それほど複雑ではないからです。

株主から抜けようとする人にしてみれば、自社株買いには絶対の長所があります。買戻しが日々与える影響は些細な程度が普通ですが、買い手に加わる者が市場にいたほうが売り手からすれば好ましい点です。

しかし、これからも株主であり続ける者にとって有意義な自社株買いとは、本源的価値より低い値段で買い戻せる場合に限られます。この決まりに従っていれば、「本源的価値が即座に上昇する」という恩恵が残存の発行済株式にもたらされます。似たような単純な例を思い浮かべるとわかります。たとえば3,000ドルの価値を持つ事業を、3名が等分に保有しているとしましょう。その場合、ある1名の持ち分を900ドルで買い取ることになれば、残りの2名はその時点で50ドルずつ得をしたことになります。しかし抜けるパートナーに対して1,100ドル支払うことになれば、残り2名は各々50ドルの損になります。この計算は、企業やその株主の場合でも同じです。すなわち自社株買いにふみきることで、継続株主にとっての価値が拡大するのか、それとも喪失するのか。これは、まったくもって買い戻し価格次第なのです。

しかしながら企業が自社株買いを発表する際に、価格が買戻しを差し控える以上の水準となっている点には、ほとんど触れられていません。これは考えものです。経営陣が社外の事業を買収する場合には、そうはならないからです。その際に価格は、常に買収の是非を決める要因となります。

ところが自社の一部を買い戻すとなると、CEOや取締役会のみなさんは価格のことを意に介さないのがお決まりのようです。しかし、保有者がわずかしかいない非公開企業を経営していて、ある保有者の持ち分を買い取る際の見識から学んでいたとすれば、彼らは同じような行動をとるでしょうか。もちろん違います。

たとえその企業の株価が割安であっても自社株買いを実施すべきでない場合が2つあります。これを覚えておくのは重要です。ひとつめは事業の運営を保護・拡大するために、使用可能な全資金が必要ながらも、債務をこれ以上増やすのは不快な場合です。これはつまり、「社内で資金を必要としているときはそちらを優先すべき」という意味です。もちろんこの例外は、事業が必要とするその支出がなされた後に満足できる未来が待っていることが前提です。

2つめの例外はそれほど一般的ではないですが、過小評価されている株を買い戻すよりも事業を買収する(あるいは別の投資をする)ほうがずっと大きな価値をもたらしてくれる場合に生じます。かなり以前には、バークシャー自身がそれらのどれを選ぶか判断に迫られることが度々ありました。しかし現在の会社の規模では、この問題が生じることはかなり小さいと思います。

わたしからおすすめしたいのは、こうです。CEOと取締役会諸氏は、まさに自社株買いを議論しようとする前であっても、立ち上がって円陣を組んで手を重ね、次のように唱和しましょう。「うまく思える値段というのは、他から見ればまずい決断だ」と。(PDFファイル6ページ目)

Share Repurchases

In the investment world, discussions about share repurchases often become heated. But I’d suggest that participants in this debate take a deep breath: Assessing the desirability of repurchases isn’t that complicated.

From the standpoint of exiting shareholders, repurchases are always a plus. Though the day-to-day impact of these purchases is usually minuscule, it’s always better for a seller to have an additional buyer in the market.

For continuing shareholders, however, repurchases only make sense if the shares are bought at a price below intrinsic value. When that rule is followed, the remaining shares experience an immediate gain in intrinsic value. Consider a simple analogy: If there are three equal partners in a business worth $3,000 and one is bought out by the partnership for $900, each of the remaining partners realizes an immediate gain of $50. If the exiting partner is paid $1,100, however, the continuing partners each suffer a loss of $50. The same math applies with corporations and their shareholders. Ergo, the question of whether a repurchase action is value-enhancing or value-destroying for continuing shareholders is entirely purchase-price dependent.

It is puzzling, therefore, that corporate repurchase announcements almost never refer to a price above which repurchases will be eschewed. That certainly wouldn’t be the case if a management was buying an outside business. There, price would always factor into a buy-or-pass decision.

When CEOs or boards are buying a small part of their own company, though, they all too often seem oblivious to price. Would they behave similarly if they were managing a private company with just a few owners and were evaluating the wisdom of buying out one of them? Of course not.

It is important to remember that there are two occasions in which repurchases should not take place, even if the company’s shares are underpriced. One is when a business both needs all its available money to protect or expand its own operations and is also uncomfortable adding further debt. Here, the internal need for funds should take priority. This exception assumes, of course, that the business has a decent future awaiting it after the needed expenditures are made.

The second exception, less common, materializes when a business acquisition (or some other investment opportunity) offers far greater value than do the undervalued shares of the potential repurchaser. Long ago, Berkshire itself often had to choose between these alternatives. At our present size, the issue is far less likely to arise.

My suggestion: Before even discussing repurchases, a CEO and his or her Board should stand, join hands and in unison declare, “What is smart at one price is stupid at another.”