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2015年12月28日月曜日

動物はパターンを見つけずにはいられない(『「偶然」の統計学』)

前々回に取り上げた本『「偶然」の統計学』から、もう一か所引用します。本ブログでたびたび取りあげる「確証バイアス」の話題です。

記憶が外からの影響を受けやすいことは、2章で取り上げた確証バイアスと関連がある。確証バイアスとは、自分の信条(科学であれば仮説)を支持する証拠にはなぜか気づくのに、それらに反する証拠には気づかない、という無意識の傾向のことである。たとえばこんな状況を考えてみよう。

私が数の並びを作るルールを考えた。それに基づく最初の3個は2,4,6だ。それに対してあなたがこれに続く3個を予想し、私はそれが合っているかどうかを言う。そして同じことを繰り返す。つまり、あなたは先ほどの数に続く数を3個予想し、私はそれが合っているかどうかを言う。私たちはこれを、私のルールがわかったとあなたが確信するまで続ける。

この例のような状況において、人間はえてして数の並びに関する自分の仮説に沿った3つ組を次々と探す。なので、この例においてあなたが私のルールを「偶数を挙げること」だと予想したなら、あなたは続く3個として8,10,12と言うだろう。そして、それが正しいと言われたら、それに続く3個として14,16,18を挙げる。それも正しいと言われたら、あなたは自信をもって、数が単純に2ずつ増えていくというのが私のルールだと思うに違いない。

あなたの挙げた並びが私のルールを満たしていることは確かだが、実はあなたが予想したルールは私が考えていたものではない。私のルールは、順次大きくなる整数からなる任意の集合だった。この例では、自分の仮説に沿う数の3つ組ばかりを探し、反証となりうるほかの3つ組で仮説を検証しようとしない、というバイアスが働いている。

興味深いことに、科学の理想像においては、科学者は仮説を思い付いたらそれを反証すべく実験をする。反証に耐えるほど、その仮説が正しい可能性は高まる。だが、科学的な評価はうまくいく仮説――そうした反証に耐える仮説――を思いついたことが基になるので、人間はおのずと自説の検証をあまり難しくしないようにしがちだ。

(中略)

2,4,6,8,10,12……という並びの背後にあるルールを探す例における関心の的は、人間が(そして動物も)パターンを見つけずにはいられないこと、そして現に見つけるのがうまいことである。すでに何度か触れたが、これは進化の自然な産物である――トラが近づいてくる兆しを見つけられれば、近隣の好戦的な部族の何人かが忍び寄ってきたのがわかれば、あるいは果実が食用に適していることを示す特徴を掴めれば、あなたが生き残って遺伝子を次の世代に伝えられる可能性は高まる。だが、迷信を取り上げたときに見たように、出来事のパターンは背後に何の原因もなく偶然生まれることもある。実際には何の関係もない2つの出来事に相関がある(片方の発生がもう片方の発生と関連がある)と信じることは、よく「錯誤相関」効果と呼ばれている。そして、ここに統計的な推論の出番がある。その目的は、偶然生じたパターンと背後に何らかの原因が本当に存在するパターンとを区別することだ。(p. 225)

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