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2014年4月2日水曜日

世界が終わるか、私が生き残るか(アーノルド・ヴァンデンバーグ)

アーノルド・ヴァンデンバーグ氏はわたしの好きなマネー・マネージャーです。彼の投資先をうのみにすることはありませんが、実直かつ正統的で情熱ある説明には好感をいだいています。彼が業界誌のインタビューに応じた記事がファンドのWebサイトに転載されていますので、今回はその記事から創業した頃の話題をご紹介します。(日本語は拙訳)

Bottom-Up Investing with an Absolute-Value Focus [PDF] (原文はThe Wall Street Transcript)

<質問者> あなたが設立したセンチュリー・マネジメント[ファンド]の歴史を読者に対してお話しください。

<ヴァンデンバーグ> 私が投資の仕事に就いて投資信託を売り始めたのは1968年で、ちょうど市場が頂点に達した頃でした。投資信託こそ資産を築くのに役立つ究極の方法だと信念を持っていました。そこから株式市場は大恐慌以来最悪の下落をむかえ、ほとんどの投資信託は個別銘柄と同じように値下がりしました。このことは市場や資産運用ビジネスに対する私の信念を揺らがせることとなりました。

投資業界で成功するには、たぶん自分の会社を始めるのが一番だと考えずにはいられなくなりました。そこで次の数年間はウォール街や市場やさまざまな投資哲学を学ぶのに費やしました。そして、ファンド・マネージャーやプロの投資家の中にはその嵐をうまく切り抜けた人がいることに気がつきました。彼らは皆、ベンジャミン・グレアムの思想つまりバリュー投資のやりかたを学んだ人たちでした。結局私は、バリューに基づいた投資戦略をとるマネージャーは他の投資戦略をとるマネージャーよりも顧客の資本をうまく守り、より一貫した投資成績をもたらすと判断しました。

私は1974年の9月にセンチュリー・マネジメントを開業しました。私が見いだしたやりかたで投資すれば悪い市場環境下でも良い成績をおさめられる、と確信していたからです。当時の市場はダウ平均が45%ぐらい下落し、平均的には75%ぐらい下落したどん底付近で、投資に興味を持つ人はほとんどいませんでした。もはや世界の終わりだと告げる記事ばかりでした。しかし私は、世界が終わりになるか、それとも私が顧客の資産を大きく増やすか、そのどちらかだと判断しました。そして40年ちかくが経ち、今ここに私たちがいます。

TWST: Introduce our readers to the firm by telling us about Century Management's history.

Mr. Van Den Berg: I began my investment career in 1968, right at the top of the market, selling mutual funds. I had put my faith in mutual funds as the ultimate way to help people make money. Then as the stock market began what would eventually be its worst decline since the Great Depression, most mutual funds went down as much as individual stocks. This really shook my faith in the market and money management business.

I could not help thinking that maybe the best way to be successful in the investment industry would be to start my own firm, so I spent the next several years studying Wall Street, the market and various investment philosophies. I noticed there were fund managers and investment professionals who had weathered the storm fairly well, and they all came from the Benjamin Graham school of thought, which is the value-investing approach. I concluded that managers who used a value-based investment strategy protected their clients' capital better and provided more consistent investment results than managers using other investment strategies.

I started Century Management in September of 1974, because I believed I had found the investment approach that could do well even in bad market environments. At this time, the market was nearing the bottom of what would be a 45% decline in the Dow Jones Industrial Average and a 75% decline in the average stock. As a result, very few people were interested in investing. Also, there were so many articles talking about how it was the end of the world. Yet, I reasoned that either the world was going to end, or I was going to make a lot of money for my clients - here we are, almost 40 years later.


備考として同ファンドの成績にふれておきます(同社サイトの掲載内容を参照しました)。1974年の創設から2013年末までみると、S&P500の年率12.19%に対して13.16%(報酬控除後の純額ベース)と健闘している成績です。その差が1%と小さいようにみえますが、40年分が累積するので当初の資産がS&P500の約1.4倍に増えた計算になります。またS&P500はあくまでも指標値(+配当)であり、実際には運用者が入って報酬等を差し引くことになります。

一方で、直近10年間の成績はS&P500などのインデックスより低い結果となっています。これは2つの要因が大きく影響していると思われます。ひとつめは現金比率です。同ファンドにおける昨年末の現金比率は22%で、上昇相場がつづく局面ではハンデとなります(ウォーレン・バフェットのバークシャーも、この5年間はS&P500に1勝4敗です)。ふたつめがポートフォリオの内容です。投資額の3割近くを占める上位9社をみるとなるほどと感じさせるバリュー的な銘柄が多く、成果が出るまで辛抱がつづく投資スタイルだと感じました。しかしいずれは果実を手にする日がきて、納得のいく数字を残せるものと想像します。

長期間にわたってバリュー投資を実践し、成功してきた彼です。だからこそ一時的に生じるであろう相対的な優劣差は気にせずに、自分が正しいと考える道を歩き続けられるのだと思います。

[アーノルド・ヴァンデンバーグ氏による顧客向け説明会より(2013年10月26日開催)]

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