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2013年2月28日木曜日

グリーンスパンの失敗(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによるハーヴァード・ウェストレイク高校での講話、その6です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

学術界の失敗にふれたので、次は規制当局のほうに目を転じましょう。FRBのアラン・グリーンスパン、彼はアイン・ランドの読みすぎです。自由市場では何が起きても、たとえ殺人であったとしても基本的には許されるべきだ、と彼は考えたのです。頭のいい善良な人でしたが、勘違いをしていました。概してひとつのイデオロギーにとりつかれていると、度が過ぎた予測は身を滅ぼします。経済学がその道を歩み、アラン・グリーンスパンは誤った認知をしてしまいました。その原因は、いたって単純なことです。かれらは、自由市場は他のものよりもずっと予想しやすい手段だと考えていました。資本主義システムがある程度進展すれば、たとえば企業の資本を拠出した人が持ち分を売ったとしても、再び投資にまわすだろうと論じたのです。やめたければ退出する道も選べるのだから、誤った立地のレストランを買ったのとはわけが違うだろう、と。それが正論ならば、本当に自由で流動性の高い証券市場のほうが望まれるものだろうし、大きくてすごいほど文明の進展という意味でもいっそう望ましいことだ、と経済学者たちは結論づけたのです。

私がまだハーバードのロースクールに通っていたころは、1日に取引される株式が百万株に達することは稀でした。今ではそれが数十億株になっています。アラン・グリーンスパンのような経済学者の予想では、いずれ数兆株になると見込まれています。毎日数兆株も取引される世の中では 、我々の文明はうまくいっているとは言えないでしょう。このような愚の骨頂こそ、もっと本気になって将来を予測すべき問題です。もちろん30億とか40億株というのも多すぎですよ。今ではコンピュータプログラム同士で取引しており、本来は工学の分野で働くべき賢い人たちが大挙して、ヘッジファンドや投資銀行やアルゴリズム・トレーディングを手がけるようなところで働くようになりました。これがGDPの大きな割合を占めています。しかし、GDPの計算方法自体も奇天烈なものですね。犯罪がひどくて夜警を雇わざるをえなくなっても、GDPに数え上げられるのですから。経済学では、深く突きつめて考えようとする人はいません。というのも、より正確に現実に迫ろうとすれば、問題は混沌とし、複雑さを増していくからです。

With academia failing us, now we turn to what happened with our regulators. Well, Alan Greenspan at the Federal Reserve overdosed on Ayn Rand. Basically he kind of thought anything that happened in the free market, even if it was an axe murder, had to be ok. He’s a smart man and [a] good man, but he got it wrong. Generally, an over-belief in any one ideology is going to do you in if you extrapolate it too hard, and that’s what happened in economics. What happened in economics that caused Alan Greenspan’s cognitive failure is very simple. They reasoned correctly that a free market would be way more predictive than anything else, and they reasoned correctly that once you had a fairly advanced capitalist system - if the people that were putting up the capital could sell their pieces of ownership in the company to other people, they’d be more inclined to invest because it gave them an option to get out if they wanted to leave. It’s not like buying a restaurant in the wrong place. Then they reasoned that if that was true, if you had a really free, liquid, wonderful market in securities, that would be wonderful, and the bigger and more wonderful it was, the better it was for the wider civilization.

When I was at Harvard Law School, seldom did a million shares trade in a day. Now billions of shares trade everyday, and economics professors like Alan Greenspan presumably are looking forward to trillions. Our civilization is not going to work better if we have trillions of shares traded everyday. It’s the most asinine idea you could ever have to extrapolate so vigorously, and of course three or four billion shares is way too many. We have computer programs that are trading with other computer programs. We have many of the bright people who ought to be doing our engineering going to work at hedge funds and investment banks and algorithmic trading places and so on and so on. We’ve got this big share of the GDP - and by the way, the way GDP is calculated is peculiar. If the crime is so bad that I have to hire a night watchman, that adds to the GDP. Nobody in economics wants to look very deeply because it makes their problem messier and more complicated as you make it more correctly approaching reality.

2013年2月26日火曜日

コンサル会社のご託宣(ウォーレン・バフェット)

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今回ご紹介するのは、ウォーレン・バフェットの1995年度「株主のみなさんへ」からの引用で、企業買収の話題です。原文を読んでしばらくは意味がつかめなかったのですが、言わんとすることがわかって一笑してしまいました。おもしろい一節なので、既に翻訳がひろまっているものかもしれません。(日本語は拙訳)

買収に関するちょっとした論考をしめくくるにあたり、ある企業の重役が昨年わたしにうちあけてくれた小話をご紹介せずにはいられません。彼が歩んできたビジネスは優れており、業界において長らく主導的な地位を占めていました。しかし主力製品は悲惨なまでに魅力を失うようになり、数十年前のことですが、経営コンサルタントにみてもらうことにしました。当然ながら、多角化するように助言をうけました。それが当時の流行だったからです。(「集中」はまだ流行っていませんでした)。ほどなく同社は、コンサルティング会社の取りまとめた長大で費用のかかった分析結果をうけて、いくつかのビジネスを買収しました。さて、その結果どうなったかですが、その重役氏は力なく語ってくれました。「最初のころは、もとからのビジネスが儲けの100%をあげていました。それが10年後には、150%分になりました」。

Concluding this little dissertation on acquisitions, I can't resist repeating a tale told me last year by a corporate executive. The business he grew up in was a fine one, with a long-time record of leadership in its industry. Its main product, however, was distressingly glamourless. So several decades ago, the company hired a management consultant who - naturally - advised diversification, the then-current fad. ("Focus" was not yet in style.) Before long, the company acquired a number of businesses, each after the consulting firm had gone through a long - and expensive - acquisition study. And the outcome? Said the executive sadly, "When we started, we were getting 100% of our earnings from the original business. After ten years, we were getting 150%."


さて、予定どおりにいけば今週末にはウォーレンの新しいレターが公開されるはずです。ご参考までに、去年の分を過去記事でご紹介しています。

2013年2月24日日曜日

2012年の投資をふりかえって(3)新規・追加投資編(クラレ)

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前回(マイクロソフト)に続いて4件目の企業です。

<当社の概要>
当社は投資雑誌などで取り上げられており、個人投資家にも知られている企業と思われますが、事業内容を概括しておきます。社名そのものやランドセルでおなじみだった「クラリーノ」から繊維系を想像させますが、現在の当社の主力製品はプラスチック(合成樹脂)です。ただしそれらは大手化学メーカーの汎用品とくらべると独自性を有しているため、価格競争力を維持し高収益につながっています。

事業セグメント毎の営業成績は次のような割合になります。樹脂事業(プラスチック)が利益の大半をあげています。


部品や部材を扱う優良企業として、日東電工がよく知られています。同社は液晶パネル向け製品を展開したことで、大きく飛躍しました。たとえば偏光版は、市場の多くを住友化学と占めています。偏光板を生産するそれらの企業に対して、当社はプラスチック原料(ポバールフィルム)を提供しています。これは工学的特性が優れていることで、現在でも代替品を排除しています。当社はさらに上流の原料(ポバール)の業界リーダーでもあるため、供給面においても競争力が高く、ポバールフィルムは80%のシェアを確保しています。

もうひとつの主力製品エバール(EVOH樹脂)は、他の一般的なプラスチックよりも空気などの気体をよく遮断する特徴を持っています。従来の代表的な採用先は食品包装材でしたが、最近は自動車の燃料タンクでの採用が増えています。

これらのプラスチック以外にも、独自な特性を持つ製品を展開しています。主なものとして、液状ゴム<クラプレン>、透明で柔軟なアクリル系熱可塑性エラストマー(ゴム)<クラリティ>、高耐熱性樹脂<ジェネスタ>があり、いずれも売上拡大が期待できます。

<投資に至った背景>
日本企業の中では、当社は今後もまずまずの成長が期待できる一社と捉えていたのですが、市場も妥当な評価をしていたため、株式を買うには至っていませんでした。しかし昨年(2012年)は株価が低調に推移したため、割安な金額に達したと判断し、投資することにしました。

1. 主力製品の継続的成長
当社が成長できると考える理由は、主力製品ポバールやエバールがいくつかの観点で利益拡大が期待できるからです。個別にみると第一にあげられるのが、地域的な市場の拡大です。直近の動向としては北米において、生産拠点を拡大したり、川下の企業を買収して展開を進めています。

第二に、適用製品の拡大です。これは、日常的なマーケティングで進められる一般的なものです。が、以前に信越化学の回でも感じたのですが(過去記事)、上流に近い素材製品は市場での認知が進むと代替品への切り替えが起こりにくく、製品ライフサイクルが長期にわたる傾向があります。ポバールやエバールといった製品も、性能を顧客に認知してもらい、既存材料からの切り替えがまだ進行している段階です。軽薄短小化の進展も追い風となっています。マーケットシェアの面でもリードしており、優位な立場にあります。いずれはより高性能な素材に置き換えられたり、価格面で譲歩を余儀なくされるのでしょうが、顧客や適用先が多様で、シェア全体が浸食されるには時間がかかります。

第三が、コスト増に伴う製品価格改定、つまり値上げです。独占・寡占的な地位を活かせる製品については、ナフサ価格の上昇を製品価格へ転嫁することができます。

最後が、生産性向上によるコスト低減です。投資を検討した時点ではこの観点には気づいていませんでした。少し前に読んだ本から受けたアイデアですが(過去記事)、ふりかえってみると当社の説明会で経営陣が「コンパクトな新規設備」と発言していたことが思い出されます。効率化によって利益をしぼりだせるというのは、別の意味で魅力のある事業だとみています。

2. シーズ志向の好循環
研究開発の観点で成功している素材や部品メーカーを観察すると、2つのやりかたがみえます。ひとつは少し先の市場動向を的確にとらえ、すじのよい製品を開発して提供すること。これにあてはまる企業には日東電工やJSRなどが考えられます。マーケティングと研究開発がうまくかみ合った上で経営陣が機動的な采配を発揮することが要求されるため、総合力という意味で模倣しにくい競争力を持つ企業だと評価できます。

もうひとつは、独自の基礎的材料の研究開発や量産化に成功し、応用製品に展開するやりかたです。当社はこちらに当てはまると考えます。このやりかたの評価できる点は、2つの個人的な仮説に基づいています。第一が「独自な基礎材料は、応用の際にも独自の性質をあらわしやすい」とするものです。新規の適用先を探究する際に、独自な特性を持つ材料はそもそも化学組成や構造に特徴があるため、応用したあとでもそれが引き継がれ、思わぬ特性を導き出すのではないかと想像します。第二に「シーズをみきわめて育てる好循環が、企業内のDNAに刻み込まれる」とするものです。一般に、最初の成功を収めて財務的な安定が得られると、ふたたび同じやりかたを志向しやすくなるものです。成功体験に酔って転落することは少なくないので、このサイクル自体は両刃の剣として働きます。しかし第一の仮説が成り立つとしたら、良いサイクルとして働く可能性が高まります。独自性やニッチに生きる道を大切にするようになれば、より自律的な企業文化をはぐくむ可能性を秘めているからです。ただし、現在の当社に対して楽観視しているわけではありません。あくまでも「望ましい可能性が期待できる」という程度です。

3. 好財務
2011年度末の時点で総負債控除後の現金等流動資産がおよそ1,000億円あり、自社株買いや買収に使える点で魅力を感じました。なお当社の有形固定資産純額(除く建設仮勘定)は、約1,300億円です。

<リスク>
1. 次の大型製品がみえないこと
上の図で示したように、利益の大半を樹脂事業(ポバールやエバール)に依存しており、多岐な採用が見込まれる他の基礎的製品は顕在化していません。市場の開発は日々の地道なマーケティングを踏まえたものであり、将来の市場の幅や深さを予想するのは難しいものです。さらに投資家の視点で当社の次世代製品を占うには、専門知識と洞察力が要求されます。その意味で、個人的には次の大型製品の可能性はまったくみえていません。

2. ディスプレイ市場における、液晶から新技術への急速な変化
上記と関連する話題ですが、液晶パネルの偏光板の材料であるポバールフィルムにおいて当社は市場を寡占しており、高水準の利益率を維持していると思われます。そのためディスプレイの市場や技術動向が当社の利益に大きく影響するとみるべきです。直近のニュースで「超複屈折フィルム」を採用した新型液晶パネルがとりあげられていました。これは液晶技術を延命させるのに寄与すると思われる新技術です。しかし、有機ELのような非液晶技術においても革新を目指した研究がすすめられているでしょうから、遠くない時点(たとえば10年以内)で液晶が新技術に置き換えられる可能性は大きいと考えます。

3. 生産拠点の災害リスク
主力生産拠点の岡山事業所は規模が大きく、川上製品を生産していることもあり、災害が発生したときには当社全体でみた製品出荷が滞る恐れがあります。しかし地震リスクの小さい地方であるとともに、国内外に他生産拠点が展開されており、大きなリスクではないと捉えています。

<売買記録>
2012年7月下旬から10月上旬にかけて購入しました。平均購入単価は900円弱で、予想PER9倍程度の金額でした。株価がもっと下落するのに備えていたこともあり、本格的な買い付けには至りませんでした。割安な水準になれば、今後も買い増ししたい銘柄です。

2013年2月22日金曜日

既婚者だったらわかること(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの講話『実用的な考え方を実際に考えてみると?』の第5回目です。今回は人生における教訓がさりげなくほのめかされており、いかにもチャーリーらしい文章です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

オペラント条件付けのほうは容易に解決できます。必要なのは次の2つだけで、まずは我々の飲料を飲むことで得られる報酬をできるだけ増やしてあげること。もうひとつは、「我が社の製品を飲みたい」とする反射行動がせっかく形成されたのに、競合製品を擁する他社が「オペラント条件づけ」を仕掛けてくることで帳消しにされないよう、手を尽くすことです。

実際のところ、「オペラント条件づけ」として得られる報酬とは次の数種にとどまります。

(1) カロリーに代表される、食物としての価値
(2) 感触、味わい、香り。これらは消費者に飲みたいと感じさせる働きをするもので、ダーウィン言うところの自然選択を通じて、人間の神経にあらかじめ組み込まれています。
(3) 砂糖やカフェインが刺激として働くこと
(4) 暑い時には体を冷やし、寒い時には体を温めてくれる効果

とびっきりの結果を望む以上、当然ながらこれらの報酬すべてが得られるようにしましょう。

はじめに、我々が温冷どちらの飲料を手がけるかは、かんたんに決められます。冷たいほうです。寒さをしのぐのに比べて暑さに対応するには、飲み物以外には打つ手があまりないからです。そのうえ、暑ければ暑いほどますます水分をとる必要がありますが、寒いときにはそうはなりません。次の課題ですが、砂糖とカフェインを両方入れることにするのも、すぐに決まります。紅茶やコーヒー、レモネードといった飲み物が広く飲まれているのをみれば、明白です。次の件も言うまでもありません、われらの供する砂糖とカフェイン入り飲料の風味やその他の特性を決定するには、飲んだ人が最高の喜びを得られるように、何度も試行錯誤をくりかえして徹底的に取り組むべきです。最後に、我々にとって好都合となるように創りだされたオペラント条件付けによる反射行動が、これまたオペラント条件付けを採用している競合製品によって打ち消される可能性を引き下げる件ですが、これも答えはわかりきっています。我が社の飲料が世界中のあらゆる場所でいつでも手に入るように、できる限りすばやく、しかも営々と取り組みつづけることです。競合製品のほうがそうしなければ、報酬を得るためにわざわざ習慣をくつがえそうとは、実際のところ考えないものです。伴侶を持つ人なら誰でも知っていることでしょう。

The operant conditioning part of our problem is easy to solve. We need only (1) maximize rewards of our beverage's ingestion and (2) minimize possibilities that desired reflexes, once created by us, will be extinguished through operant conditioning by proprietors of competing products.

For operant conditioning rewards, there are only a few categories we will find practical:

(1) Food value in calories or other inputs;
(2) Flavor, texture, and aroma acting as stimuli to consumption under neural preprogramming of man through Darwinian natural selection;
(3) Stimulus, as by sugar or caffeine;
(4) Cooling effect when man is too hot or warming effect when man is too cool.

Wanting a lollapalooza result, we will naturally include rewards in all the categories.

To start out, it is easy to decide to design our beverage for consumption cold. There is much less opportunity, without ingesting beverage, to counteract excessive heat, compared with excessive cold. Moreover, with excessive heat, much liquid must be consumed, and the reverse is not true. It is also easy to decide to include both sugar and caffeine. After all, tea, coffee, and lemonade are already widely consumed. And, it is also clear that we must be fanatic about determining, through trial and error, flavor and other characteristics that will maximize human pleasure while taking in the sugared water and caffeine we will provide. And, to counteract possibilities that desired operant-conditioned reflexes, once created by us, will be extinguished by operant-conditioning-employing competing products, there is also an obvious answer: We will make it a permanent obsession in our company that our beverage, as fast as practicable, will at all times be available everywhere throughout the world. After all, a competing products, if it is never tried, can't act as a reward creating a conflicting habit. Every spouse knows that.

2013年2月18日月曜日

ウォッカの大瓶を買ってきてあげる(ミセスB)

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以前にとりあげた『最高経営責任者バフェット』は、バークシャ・ハサウェイ傘下のそれぞれの子会社を率いるCEOの横顔を描いた著作です。その一人であるミセスBといえば、ウォーレン・バフェットとやりあった頑固者として有名ですね。今回は、彼女の生い立ちを引用します。ずっと印象に残っている文章です。

1998年8月11日火曜日、ローズ・ブラムキン(104歳)は、故イザドーの未亡人として、ルイ、フランシス、シンシア、シルビアの母として、12人の孫、21人のひ孫のいるおばあちゃんとして、そしてネブラスカ・ファニチャー・マート(NFM)の創業者としてオマハのゴールデン・ヒル共同墓地に埋葬された。家族、友人、隣人から非常に尊敬されていたこともあり、葬儀に参列した人の数は1000人を超えた。しかし、このころすでに孫のアーブとロンによって経営されていたオマハの店は、その日も休まず営業している。「店を閉めることなど母は望まないと思いますから」と、娘のフランシス・バットがオマハ・ワールド・ヘラルド紙の記者に対して答えている。

1937年、ローズ・ブラムキンが44歳の時、兄弟から500ドル借りて創業したネブラスカ・ファニチャー・マートは、彼女の忍耐力のおかげで、今やネブラスカ州オマハの中心部に77エーカー(約9万4000坪)の事業用地を所有し、1500人の従業員を抱え、家具・カーペット類・家電製品・電子機器等の年間売上高は3億6500万ドルに上る。利幅を業界平均より10ポイント下に抑えることで、市場を完全に支配し、家具の売り上げではオマハで約4分の3のシェアを獲得している。しかも、数量ベースでは全米最大の家具小売業者となっているのである。NFMの60年間の歴史を通して売上高は常に増加傾向をたどり、毎年記録を更新している。従業員1人当たりの売上高は他の国内小売業者よりも40%多く、純利益率はほぼ2倍。年間売上高にいたっては、平均的なウォルマートの店舗の8倍以上もある。特に何がすごいかというと、1平方フィート(約0.09平方メートル)当たりの売上高は865ドルで、これはホールセールクラブ(会員制倉庫型安売り店)最大手でディスカウント業界首位のコストコよりも100ドルも多いのである。帝政ロシア時代、まだつつましかったミセスBの駆け出しのころからは、とても想像できないことだ。

1893年12月3日、ローズ・ゴーリックはロシア帝国(現ベラルーシ共和国)のミンスク市に近いユダヤ人村シドリンで生まれた。父ソロモンと母チャシアの間に生まれた8人の子どものうちの一人だった。家は2部屋しかない掘っ立て小屋で、わら製のマットの上で寝ていた。当時のユダヤ人居留地ではよくあることだが、父は研究に明け暮れ、母は家計を支えるために食料品店を営んでいた。ローズは正式な教育を一度も受けたことがない。グラマースクール(小学校)にさえ行ったことがなかった。わずか6歳のころから店の手伝いをしていたと、のちに回想している。あるとき、「夜中に目を覚ましたら、母がパンをこねていた」のを覚えているという。「で、そのとき、こう言ったのさ。『ママがこんなに一生懸命がんばってるなんて、なんか悲しいよ。あたしが大きくなるまで、待ってて。あたしがお仕事見つけてアメリカに行く。そしたら、ママをアメリカに呼んであげる。大きな町に行ったら、きっとお仕事見つかると思うの。ママをお姫様にしてあげるね』って」

13歳になるころには、もう村を離れる覚悟を決めていたという。靴底を減らさないように靴を肩に背負い、最寄りの駅まで約30キロの道のりをはだしで歩いた。汽車に乗り、仕事を求めて訪ねた店は25軒。そしてついに仕事をくれる店を見つけた。衣料品店だった。それから3年もたたないうちに、店をやりくりするようになり、男性従業員6人を従えるようになった。

1913年、20歳のとき、靴の販売をしていたイザドー・ブラムキンと結婚。しかし翌年、第一次世界大戦が勃発。皇帝のために戦う気のなかったイザドーは兵役を逃れるためにロシアを離れた。それから3年後の1917年、ローズは夫のあとを追ってアメリカに行こうと決意し、シベリア鉄道に乗った。シベリアまで来た彼女は、ロシアと中国の国境付近で兵士に呼び止められた。兵士には「軍のために革製品の買い付けに行くところだ」と答え、「帰りにウォッカの大瓶を買ってきてあげるから」と言ったら通してくれたそうだ。

船で太平洋を渡り、ワシントン州シアトルに着いた。英語も分からず、入国ビザも所持していなかったが、幸い、ユダヤ人移民援助協会とアメリカ赤十字の計らいで、移民帰化局(INS)のお役所手続きをパスし、アイオワ州フォートドッジで夫と合流することができた。彼女は亡くなるその日まで、この町の名を「フォートドッチビー」と発音している。おそらくロシアを離れたおかげだろう。彼女はここで命拾いすることになる。生まれ故郷の村ではユダヤ人2000人のうち「1900人が新年祭の当日、ヒトラーに殺された」そうだ。彼女いわく、「村人たちは自分たちの墓を掘らされた揚げ句、ナチスに灯油をかけられて葬られたのさ。あいつらに皆殺しにされたんだ。村中の人たちが」(p.140)

2013年2月15日金曜日

物陰に潜んでいる愚劣(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによるハーヴァード・ウェストレイク高校での講話、その5です。心理学の有用性を熱心に説くチャーリーですが、一方で心理学者の不手際に対しては厳しい視線を向けています。なお、前回分はこちらになります。(日本語は拙訳)

たしかに、優秀な教授陣を抱えた心理学部では、彼らの専門用語でいうところの「自己奉仕バイアス」[成功は自分のおかげ、失敗は他人のせい]に陥らないよう、若者に対して指導しています。しかし、そういう自分たちときたら、男の子がチョウを収集するかのように、心理学の実験結果をあつめるだけの人ばかりです。成果を披露したり、他のチョウ蒐集家と知り合いになるのを楽しんでいるだけで、実験結果同士を総合することはほとんどなされていません。リスクに直面したときには、心理学によって得られた知見を使い、それらを合成することで、複雑で雑然とした状況下で正しい答えを導きだしてくれる強力なしくみを構築することが望まれるでしょう。しかし心理学の先生にそうお願いしても、助けてはくれません。他の学問分野のこともいろいろ調べ、心理学を使ってそれらを流麗に合成したいなどと言い出せば、心理学部から脱落したりするのが現実です。かつてホワイドヘッドが学術分野における宿命的な非連携について話していたことを、思い出します。まったく、あの馬鹿どもときたら、重要なアイデアをあらゆる分野から学び取ったり、学際的に合成した上で現実をみつめる義務などない、と考えているのだ。高いIQの持ち主でありながらも、井の中の蛙で満足しているのだ。このような過ちをすっかり犯しているのは、そもそも心理学のイロハを教える時点で、うまくやる方法をわかっていないからです。非常に重要な発明や発見を数多くなした心理学の教授でも、文明を推し進めるという意味では、それほどには寄与していません。ないよりかあったほうがましですが、学術界が果たしうる最高の水準からみれば、ひどい失敗にとどまっています。認知の面で薬学は最上級ですし、生物学もよい傾向にあると考えますが、自然科学や工学から外れて社会科学に足を踏み入れるときには、くれぐれも用心することです。あらゆる物陰に潜んでいる愚劣が襲いかかり、打ちのめそうとしてくるからです。

We have psychology departments with distinguished professors, surely they can teach our young to avoid - the psychology term for this is ‘self-serving bias.’ Surely the psychology department is teaching our children to avoid this. Well, it’s not so. The psychology department is full of people who collect psychology experiments the way a boy collects butterflies. They just like listing them and knowing the other people who collect the butterflies and so forth. Very little synthesis is done from one experiment to another, and if you ask them to synthesize - where you use the findings of psychology against the risks of reality, and through synthesis create a powerful machine that will get the right answer in a complex mess - the psychology professors are not going to help you. In fact, you’d be sort of dropped out of a psychology department if you purported to know a lot of non-psychology and integrate it beautifully with psychology. It goes back to what Whitehead said. He talked about the fatal unconnectedness of academic disciplines. Those bastards feel no duty to master the big ideas in all the disciplines and get synthesis and reality across the disciplines. They are rewarded in their own little shop for being silly and monomaniacal and with their high IQs. They do all this terrible mischief because they don’t know in a functional way what they teach in Psychology 101. The psychology professors who invented and discovered a lot that is very important, they are not really helping the wider civilization all that much. We’re better off having them than not having them [but] in terms of what is the best that can be in academia, it has failed us horribly. With hard science and engineering excepted - [and] I think the cognition of medicine tends to be quite good in the best places and biology also tends to be good - but boy, you get into the rest of the social sciences and you have to be very wary because there is an asininity trying to clobber you up behind every rock.

2013年2月13日水曜日

チェーンソーでバターを切る(エイモリー・B・ロビンス)

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エネルギー問題に正面からとりくんだ意欲作『新しい火の創造』を読み終えました。エネルギーや気候問題となると悲観的な予測がつきものです。しかし本書の著者は、あくまでも人間の知恵を頼りに総力戦で立ち向かうことで、希望のある未来を手にできる可能性を示しています。具体的には、エネルギー利用効率を大幅に改善させ、一方で再生可能エネルギーへの移行を政策面から推進するために、多岐にわたる手段やアプローチを提案しています。安全余裕をとりたいために、個人的にはものごとを悲観的にみることが多いのですが、著者の前向きな姿勢には随所で励まされました。本書で描いたシナリオのような楽観的な世界がそのまま実現するとは、著者自身も考えてはいないでしょう。ですが、それを承知で書き物にし、実現可能性の裏をとり、各界に働きかけていく行動力には、すなおに拍手をおくりたくなります。アメリカという国の、健全で壮健な一面をみせてくれる著作です。

本書には印象に残る文章がいくつもありますが、今回は株式投資の観点で直接参考になりそうな箇所を引用します。第4章「工業」からです。

ダウケミカル社は、数百トンものプラスチックから太陽電池の屋根用パネルまでの全てを製造するのに、途方もない量のエネルギーを使う。巨大な原子力発電所まるまる3基分に相当する3.7ギガワット(370万キロワット)を超える電力を必要とするのだ。これは、オランダが使う量を超えるほどの石油を燃やす。その結果として、効率を僅かでも向上させるだけで、最終利益に大きなプラスが出てくる。そこで、ダウ社はエネルギー消費削減策を執拗に追い求めている。同社は、テキサス州フリーポートにあるエチレン炉を取り替えたり、精製設備を効率の高いものにするという簡単なものや、アントワープでプロピレンオキサイド(ポリウレタン樹脂の原料)製造プロセスに、エネルギー消費が35%少ないまったく新しいプロセスを開発するという複雑なことを実施している。

数千件に上るこのようなプロジェクトを経て、ダウ社は1990年と2005年の間で、そのプロセスのエネルギー強度を38%引き下げ、効率と利益をともに押し上げている。同社は、1994年と2010年の間で、10億ドルを要したエネルギー効率向上策によって94億ドルを削減できたと計算している。2008年にエネルギー価格が急騰した時に、ダウ社は、効率のもっと低い競争相手に対して決定的なコスト優位性を示したのだった。

実のところ、エネルギー効率がダウ社にとってこれほど優れた事業戦略であることが実証されたため、さらに効率を上げようと懸命である。現在2015年までにエネルギー強度をさらに25%引き下げることを狙っているのだ。そして、2011年2月に、幹部は効率向上に向けた新しい活動をいくつも実施するのに、1億ドルを投資すると発表した。この投資プロジェクトは、並外れた財務的リターンをもたらしてくれると、ダウ社のエネルギーと気候変動担当副社長であるダグ・メイは述べている。

エネルギー効率に焦点を当てているのはダウ社に限ったものではない。もう一つのパイオニアは製造コングロマリットであるユナイテッド・テクノロジー社だ。エネルギー消費に狙いを定めて、2003年と2007年の間で、会社全体でのエネルギー強度を45%、2006年と2010年の間の地球温暖化ガス排出を62%切り下げている。その一方で、販売量は13%伸び、1株当たりの収益は28%上がり、1株当たりの配当は67%上昇した。また、保護フィルムやポストイット付箋など、全てにわたるイノベーターである3Mを検討してみよう。同社は、エネルギー効率を大きく改善したチームを認定するプログラムを開発することで、効率を22%上げ、2005年から2009年の間に1億ドルを超えるコスト削減を実現した。

とは言うものの、これと同じ期間に、3Mは200億ドルを超える累積利益を計上しており、それからすると、同社のエネルギー効率化プロジェクトはまだ総投資額のほんの一部(約0.1%)でしかない。このギャップが示唆しているのは、3Mは効率向上機会の表面をちょっとこすっただけだということだ。しかし、3Mをはじめとする他の多くの起業家精神豊かな会社は、効率化の追求を急速に深めつつあり、エネルギーの削減量を増やすだけでなく、さらにもっと効率を上げる新技術を開発販売できることに気づき始めている。(p.283)


米国の経済社会では、ほんの13%ほどのエネルギー効率しかなく、世界の経済社会では大体10%ほどしかない。現在もっともエネルギー効率が高い工業プロセスですら、理論的に必要なエネルギーの2-3倍は消費している。従って、エネルギー節減の潜在可能量は、巨大なものとなる。

工業部門はなぜ理論的に必要なものよりもこのように大きなエネルギーを使うのだろうか。必要なものより高い温度や圧力で稼働させているからだ。低品質のエネルギーで十分間に合う時に高度な品質のエネルギーを使う--量的には100%使うが質的には6%だけになる--ため、ある建築家が表現したように、まるで"チェーンソーでバターを切るようなものだ"。多くのプロセスで同様なことが行われている工場がほとんどである。(p.309)


こちらはおまけです。第5章「電力」からの引用です。

よく引用される統計によると、90マイル四方の広さがあって、太陽電池パネルなり太陽光集光設備でそこを覆うとすれば、米国がいま必要としている年間総電力量を発電できるという。だが、それは全体の話の一面にすぎない。国立再生可能エネルギー研究所(NREL)と米国エネルギー省による研究では、米国は、豊かで地域的に広く分布した風力、バイオマス、水力、太陽、地熱に恵まれている。設備が置けて、そこそこの風が吹くところでの陸上風力発電だけで、米国が2010年に消費した電力の9.5倍を発電できる。全部合わせると、このような再生可能エネルギー資源は、現時点で商用化されている技術を使って、年に7万5000TWhの発電をする力がある。これは全米で2010年に消費された電力の20倍に相当する。(p.390)


文中にでてきた研究の報告書と思われるファイルが、Web上に公開されていました。

20% Wind Energy by 2030 (米国エネルギー省 国立再生可能エネルギー研究所)
(2030年までにエネルギー供給の20%を風力発電でまかなうシナリオの研究報告)

2013年2月8日金曜日

デイリージャーナル株主総会(チャーリー・マンガー)

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twitterではご案内しましたが、先日行われたデイリージャーナル社の株主総会で会長チャーリー・マンガーが発言した内容がWeb上にアップロードされています。ここでは興味を引いた箇所を引用します。質疑形式に脚色しています。(日本語は拙訳)

チャーリー・マンガー質疑応答(於デイリージャーナル株主総会2013/2/6) (togetter)

チャーリー「株を買えば誰でもすばらしい成果を手にできるなんて、そんな考えは根っこからイカれてますね。ポーカーだったら、そうは思わないでしょう」

質問「なぜ他の会社のCEOは、バークシャーの経営を真似しないのでしょうか?」
チャーリー「58歳でCEOになって、やめるのが63歳ですからね」

質問「ご自分のポートフォリオで、昨年に株式取引をしたのは何回ですか?」
チャーリー「ゼロ」

"I think the idea that everyone can have wonderful results from stocks is inherently crazy. Nobody expects everyone to succeed at poker."

"They came to power at 58 and they're gone at 63." -- Munger, on why other CEOs can't copy the $BRK operating model

"I made zero transactions in my PA last year." -- Munger


チャーリーが最近読んだ本で推薦するものとしては、次の2冊があげられていました。

The Outsiders: Eight Unconventional CEOs and Their Radically Rational Blueprint for Success (著者: William N. Thorndike, Jr.)

レッグ・メイソンのマイケル・モーブッサンも賛辞を寄せていることから、投資に携わる人からは評価されている本なのでしょう。勝手な見立てですが、この本が翻訳される確率は5割未満とみました。

A Universe from Nothing (著者: Lawrence M. Krauss)

こちらの著者ローレンス・M. クラウス氏は、以前とりあげた『ファインマンさんの流儀』も書いた方です(過去記事)。訳書もいろいろ出ていますので、この本は翻訳されるだろうと思います。

上記のtweetとは別ですが、総会に参加した方のこちらのメモでは、過去に失敗した投資をチャーリーがふりかえった話がでています。投資先はベルリッジ・オイルで、以前にも本ブログでとりあげています(過去記事)。

Corner of Berkshire & Fairfax Message Board

(ふたつめの例) 楽勝だとわかっているのに、十分に投資しないでいること。チャーリーはベルリッジ・オイルへ投資したときのことを話した。株価は原油埋蔵量の20%に過ぎませんでしたが、持ち株を劇的に増やせる機会がやってきました。ですが、そうしませんでした。その後、同社の株は35倍になりました。教訓、臆病すぎでした。損が出る可能性はないと考えていたにも関わらず、[現在価値にして]何億円もの利益をみすみす見逃してしまいました。本当に楽勝な機会は、そうそうありません。そんなときに大きく勝負に出ないのは間違いですね。

Example 2 - Not investing enough when you know you have a no brainer. He spoke about his investment in Bell Ridge Oil, where "the stock price was 20% of the value of the oil in the ground" and he had a chance to significantly increase his position - and he did not. Subsequently Bell Ridge was a 35X bagger. Lesson was - he was too timid. He could see not possibility for a loss - and he left many, many millions on the table. The really no brainers don't come around very often - and you make a mistake by not hitting them hard.


ウォーレン・バフェットが書いていた文章で、「バットを振らなければストライクはとられない」という類のものがあったかと記憶しています。ここでチャーリーは「最高の絶好球ならば、見逃してはならない」と説いていますが、肝心なのは来た球が絶好球なのかどうか、きちんと判断できる見識です。上昇相場で投資機会がみつからないと嘆いているのではなく、次の好球必打を果たせるよう、「備えよ常に」の姿勢を忘れてはならない、と改めて感じました。

2013年2月6日水曜日

コカ・コーラを飲みたくさせる(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの講話『実用的な考え方を実際に考えてみると?』の第4回目です。前回分はこちらです。(日本語は拙訳)

そうとなれば次は、世界中にアピールするものをどうやって発明するかという問題を解決する必要があります。目の前には、互いに関連した2つの巨大な課題が立ちはだかっています。ひとつは、新たに立ち上がる飲料市場が150年のあいだに、全世界の水分摂取量の4分の1もの量に対応できるようになること。もうひとつは、この新市場の半分を我々の手中におさめ、残りの半分を競合他社でわけあってもらうよう、経営していくことです。これぞ、「とびっきりな」成果といえるものです。ですから、我々にとって有効に働くと思われる要因は総動員して、我らが問題と対峙しなければなりません。いいかえれば、我々が望むような「とびっきりの」結末をおこすには、多くの要因を固く結びつける必要があります。幸運なことに、初級レベルの教科の内容をきちんと覚えていれば、この関連しあう2つの問題は、そこそこ容易に解決できます。

それではまず、「強力な商標に頼らなければならない」とした、肝心でわかりきったことから取り組んだ理由をさぐってみます。この結論をふりかえる際に、基礎的な教科にでてくる用語を適切に使うと、我々の事業の本質がそのまま理解できます。入門レベルの心理学からみると、我々が携わる事業の本質は、条件反射を作り出して維持するものだと言うことができます。「コカ・コーラ」という商標名とイメージ商標[原文ではtrade dress]が人の感覚を刺激することで、我々の提供する飲料を買って飲みたいと思わせる、つまり反応させるわけです。

では、どうやれば条件反射をつくりだし、そのまま維持できるでしょうか。心理学の教科書では2つの答えを示しています。ひとつは「オペラント条件づけ」によるもの。もうひとつは「古典的条件づけ」で、こちらは偉大なるロシアの科学者を讃えて「パブロフ型条件付け」ともよばれています。我々は「とびっきりな」結果を求めているので、どちらの条件付けテクニックも使うべきですし、より大きな効果を得るために考えられるあらゆるものを使うべきです。

That decided, we must next solve the problem of invention to create universal appeal. There are two intertwined challenges of large scale: First, over 150 years, we must cause a new-beverage market to assimilate about one-fourth of the world's water ingestion. Second, we must so operate that half the new market is ours while all our competitors combined are left to share the remaining half. These results are lollapalooza results. Accordingly, we must attack our problem by causing every favorable factor we can think of to work for us. Plainly, only a powerful combination of many factors is likely to cause the lollapalooza consequences we desire. Fortunately, the solution to these intertwined problems turns out to be fairly easy if one has stayed awake in all the freshman courses.

Let us start by exploring the consequences of our simplifying “no-brainer” decision that we must rely on a strong trademark. This conclusion automatically leads to an understanding of the essence of our business in proper elementary academic terms. We can see from the introductory course in psychology that, in essence, we are going into the business of creating and maintaining conditioned reflexes. The “Coca-Cola” trade name and trade dress will act as the stimuli, and purchase and ingestion of our beverage will be the desired responses.

And how does one create and maintain conditioned reflexes? Well, the psychology text gives two answers: (1) by operant conditioning and (2) by classical conditioning, often called Pavlovian conditioning to honor the great Russian scientist. And, since we want a lollapalooza result, we must use both conditioning techniques - and all we can invent to enhance effects from each technique.

2013年2月5日火曜日

中国における信用システムの危うい現状(GMO)

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新聞を読まないので、自分の興味からはずれた情報があまり入ってきません。最近になって中国の金融情勢に関するGMOのレターを読み、「もしかして相当に置いてきぼりか」と感じました。今回はそのレターから、印象に残った箇所を引用します。今回は、自分の浦島ぶりをご披露しただけかもしれません。なおGMOは、何度か取り上げてきた「慎重派」ファンド・マネージャーのジェレミー・グランサムが率いるファンド会社です。(日本語は拙訳)

Feeding the Dragon: Why China's Credit System Looks Vulnerable (GMO)

はじめは、問題視されている債務について。
2009年の中国の非金融部門における信用は巨大な津波といえるもので、前年のGDPの45%にまで達した。最近の信用拡大はそれに続くものである。その時以来、中国経済は信用漬けとなり、同じペースで成長し続けるために債務の額を増加させてきた。2007年から2012年には、対GDPでみた信用残高が60%増加し、190%超にのぼった。これは1980年代末の日本やリーマンショック前の米国とくらべても、相当大きな割合である。(図1参照)



ほとんどの中国の評論家は、中国における急激な信用増加は案ずるものではないと信じている。債務の主な担い手は国内の貯蓄であり、国外からの資金ではない、というのがその理由だ。しかし歴史をふりかえると、信用が急拡大している経済では、経常収支が赤字だからといって財政破たんの可能性が高まるわけではない(たとえば日本で1980年代におきた「バブル経済」は国内の資金で賄われていた)。

危惧するに足らないとする別の理由としては、中国の非金融部門における信用を合計してもGDPの200%程度で、米国や他の先進国経済と比較しても小さいことが指摘されている。しかし将来の問題を占う上で、信用の増加率ではなく総額をみるのは、あまり適切でない。そして、成熟した経済圏には債務に頼れるだけの大きな余力がある。経済学用語でいう「金融深化」とは、経済発展の度合いと互いに関連するものなのだ。

実際のところ、中国は他の新興国とくらべて大きく借入に依存しており、1980年代後半に日本が謳歌した債務と同じ程度になっている(ただし日本の一人当たりGDPは、図2に示されているようにずっと大きなものだった)。 (p.2)


The latest surge of credit follows the great tsunami of 2009, when China's non-financial credit expanded by the equivalent of 45% of the previous year's GDP. Since that date, China's economy has become a credit junkie, requiring increasing amounts of debt to generate the same unit of growth. Between 2007 and 2012, the ratio of credit to GDP climbed to more than 190%, an increase of 60 percentage points. China's recent expansion of credit relative to GDP is considerably larger than the credit booms experienced by either Japan in the late 1980s or the United States in the years before the Lehman bust (see Exhibit 1).

Most China commentators believe that rapid credit growth in China is not worrying because the debt is funded by domestic savings rather than by foreigners. The historical record, however, suggests that current account deficits don't increase the likelihood of a financial debacle in an economy where credit has been growing rapidly (for instance, Japan's "bubble economy" of the 1980s was funded domestically).

It has also been argued that China has nothing to fear because total non-financial credit, at roughly 200% of GDP, is relatively low by comparison with the U.S. and other developed economies. Yet the total stock of credit is less predictive of future problems than its rate of growth. Furthermore, mature economies appear to have a greater capacity to shoulder debt. In economists' parlance, "financial deepening" is correlated with the level of economic development.

In fact, China is rather heavily indebted relative to other emerging markets and has roughly the same amount of debt as Japan sported in the late 1980s (even though Japan's per capita income at the time was much higher, as shown in Exhibit 2).(p.2)

次の文章は、サブプライム危機を思い起こさせます。
ウェルスマネジメント商品(WMP)とは、高金利を求める中国の貯蓄者がえらぶ圧倒的に人気のある投資先である。これらの証券の平均的な利回りは、銀行預金より2%ほど高い。銀行では、低リスクの投資商品として個人投資家へ販売されている。格付け会社のフィッチによれば、WMPは2012年末までに13兆元[180兆円]分が発行された。前年比で50%以上増加している。

この商品の性質には、SIV(投資ヴィークル)やCDO(債務担保証券)と同様のものが含まれている。それらは、2008年以前に米国の銀行が貸出しをオフバランス化するために使ったものだ。この商品の特徴は、投資家の資金をひとまとめに集約させる組成をとっていることである。別々のWMPから集められた資金はいったん一つにプールされ、そこから異なるリスクの性格を持つ様々な資産購入に使われる。たとえば信託商品や前述したLGFV(地方政府債務ヴィークル)だったり、よりリスクの小さいインターバンク・ローンなどが挙げられる。(p.7)


Wealth management products (WMPs) have been by far the most popular investment for Chinese savers looking for higher returns. These securities yield on average around 2 percentage points more than bank deposits, and are sold by banks to retail investors as low-risk investments. Ratings agency Fitch estimated that around RMB 13 trillion of WMPs were outstanding by the end of 2012, an increase of over 50% on the year.

WMPs share some of the characteristics of both the Structured Investment Vehicles (SIVs) and Collateralized Debt Obligations (CDOs), which were used by U.S. banks before 2008 to keep loans off balance sheet. Central to the structure is the pooling of investor funds. Money raised from the sale of several different WMPs is aggregated into a general pool (see Exhibit 4). The general pool then funds a variety of assets, investing across the risk spectrum. Some money goes into trust products and LGFV bonds described earlier in this paper, and some is invested in less risky interbank loans. (p.7)

こちらもおなじみの、連鎖反応を生み出す構造です。
中国における信用慣行上のおもしろい点は、住宅バブルを焚き付けた様々な要素が、貸出しの担保とされていることだ。これには、鉄鋼や銅といったコモディティーや建設機械も含まれる。例を挙げると、銀行から運転資金を借入れしようとする生コン業者が、担保とするために、有利な信用供与条件のついた機械を買うよう示唆されている。操業に必要な台数以上の機械が購入されているわけだ。(p.9)

A curious feature of Chinese credit practices is that various inputs to the residential housing bubble - including commodities, such as steel and copper, and construction equipment - are often used as collateral to back loans. Concrete producers have been noted to purchase equipment on easy credit terms in order to use the machines as collateral against bank loans to finance their working capital. More machines have been purchased than were needed for purely operational reasons. (p.9)

2013年2月1日金曜日

白いものでも、黒に見える方法(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによるハーヴァード・ウェストレイク高校での講話、その4です。前回はこちらです。今回の話題は、身に覚えのある人も少なくないかと思います。しかし話の聞き手として、高校生も参加しているのでしょうか。(日本語は拙訳)

経済学のことはいろいろ話しましたので、企業財務の話題に戻りましょう。こちらも、てんでお話になりません。価格変動の大きな株式を買えば、年間7%の超過利益が得られる。そんなことを信じている人には、こう聞いてみたいですね。子供のころに教えられた歯の妖精をいまだに信じているのですか、と[抜けた歯の始末のこと]。そのボクちゃんたちですが、7%を達成するために、それ以上精を出そうとしない。これではまるで[不思議の国のアリスの]「いかれ帽子屋のお茶会」です。しかし実際に、頭のいい人たちがたいそう馬鹿げたことをしているのです。その手の人たちの多くが、強力な慣習の下で働いていることも関係しているでしょう。法務に携わるろくでなしが、新グレシャムの法則に直面するのと同じです。同じような圧力に負けてアホなことをやらかしている例は、他でもみられます。よくあるのが学術界ですね。シカゴ大学の例をあげてみましょう。この学校では、自由市場を奉じるオーソドックスな経済学を教えています。ある友人の子供さんがその経済学部で先生をやっていますが、市場というものは大学が教えているほどには完璧ではない、と彼は信じていました。しかし、その見方は隠さざるを得ませんでした。わざとたわごとを信じているならばともかく、この高名な大学の経済学部で[音声不明]できるチャンスは皆無だったからです。たしかに雇用関係というのは、こういったことばかりですね。雇われて働くということは食い扶持のために必要なことですが、これは一般的にいって他のどんなものよりもお粗末な認識を招きかねない要因です。作家のアプトン・シンクレアによる発言が白眉です。「食っていくには黒だと信じなきゃならない人を、実は白なんだよと覆すのはすごくむずかしい」。こうなってしまうのは、潜在意識の段階で脳が自分自身をだまし、かわいい自分にとって良いことならば、それは信じるべきと考えてしまうからです。誤った認識を起こしているのは、人の心の中にある目には見えない現実であって、悪意があってやっているわけではありません。それゆえ、この問題は対処するのが非常に難しいのです。

Well, I've done enough for economics, let's go on. Corporate finance is beneath contempt. Believing just by buying volatile stocks you make an extra 7 percentage points per annum, I mean those people still believe in the tooth fairy and yet it is taught to the children. On the other hand, the children don't have to work very hard to get there so it's a Mad Hatter's tea party -- but this is the real world as [it] exists. You have these extremely dumb things being done by these smart people. But a lot of them are under big institutional pressure like the poor bastard in the law department who has to face the new Gresham's Law. Of course, that kind of pressure is on all these other people that are doing these dumb things, many in academia. I had a friend who had a child in the economics department at Chicago, very free market orthodox economics, and [the child] didn't believe the markets were quite as perfect as they thought at the University of Chicago and he had to hide his views. There wasn't the slightest chance he could do [audio unintelligible] at the economics department at a really great university unless he pretended to believe twaddle. Of course, employment is full of this sort of thing. Generally, the employment relationship - the need for money - causes more terrible cognition than any other single factor. Upton Sinclair said it best of all. He said, ‘It is very hard to get a man to believe non-X when his way of making a living requires him to believe X.' On a subconscious level, your brain plays tricks on you and you think [that] what is good for the true little me is what you should believe. Of course, it's very hard to deal with since it's not conscious malevolence that's causing the bad cognition -- it's the subconscious reality of the human mind.