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2012年8月31日金曜日

株価があちこちで下がってきたら思い出すこと

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株価があちこちで下がってくると、いろいろよそ見をしたくなります。そんな自分を戒める意味で、ウォーレン・バフェットの1989年「株主のみなさんへ」から引用します。以前にも同じことを書きましたが、何度も繰り返さないと忘れる性質なのです。

まあまあの企業を破格の値段で買うよりも、すばらしい企業をまあまあの値段で買うほうがずっとよい選択です。チャーリーは昔からこのことがわかっていましたが、わたしのほうは時間がかかってしまいました。ですが現在は、企業を買収したり株式を買うときには、最上の経営陣が率いる最高の企業を探すようにしています。

It's far better to buy a wonderful company at a fair price than a fair company at a wonderful price. Charlie understood this early; I was a slow learner. But now, when buying companies or common stocks, we look for first-class businesses accompanied by first-class managements.


過去記事はこちら、「長続きする競争優位性を見極める」です。

2012年8月29日水曜日

経営陣がなすべき責務(チャーリー・マンガー)

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前回に続いて経営者の話です。今回はチャーリー・マンガーがWescoの株主総会で語った内容から引用します。引用元はSeeking Alphaの以下の記事です。(日本語は拙訳)

2008 Wesco Shareholder Meeting: Detailed Notes (Seeking Alpha)

企業の経営陣がなすべき責務はただひとう、Moat[経済的な堀]を広げることです。それをめざして毎日のように力を尽くさなければなりません。競争上の優位を有している以上、Moatを築かなければならない。そうするのが難しい時期もあるでしょうが、Moatを広げることこそ、やるべき仕事なのです。世間では、それと違うことをやっている例がいくつもみられますが、自らの持つ競争優位を守れるようにMoatを広げることに集中すべきです。かつてイングランドのある将軍は、こう言いました。「きみらの父の息子に劣らぬ息子を残せ、それでこそ神は女王を守り給う」。ヒューレット・パッカードでは、自分の後任になれる人を育てあげることが要求されています。これは全然複雑なことではなくて、ちちんぷいぷいといったところでしょう。今日のテキサスでは、メソポタミアのころと同じやりかたでレンガをつくっています。大切なのは少しばかりのエートス、とくに工学上のエートスを体得することです。システム全体の観点から考え、安全余裕をとること。この予備用マイクのように、です。

The only duty of corporate executive is to widen the moat. We must make it wider. Every day is to widen the moat. We gave you a competitive advantage, and you must leave us the moat. There are times when it is too tough. But duty should be to widen the moat. I can see instance after instance where that isn’t what people do in business. One must keep their eye on ball of widening the moat, to be a steward of the competitive advantage that came to you. A General in England said, ‘Get you the sons your fathers got, and God will save the Queen.’ At Hewlett Packard, your responsibility is to train and deliver a subordinate who can succeed you. It is not all that complicated - all that mumbo jumbo. We make bricks in Texas which use the same process as in Mesopotamia. You need just a few bits of ethos, and particularly engineering ethos. Think through the system, and get a margin of safety. Like this backup microphone.


文中で登場する「予備用マイク」とは有線マイクのことです。当初使う予定だった無線のものが壊れたため、使うことになりました。ここでもチャーリーは教訓を引き出しています。「システムは複雑にしないこと」(有線のほうが信頼性が高い)、「バックアップを用意すること」。あえてもうひとつ加えるとしたら「バックアップには異なる種類のものを選ぶこと」でしょうか。

また工学については過去記事「最も信頼できるモデルとは(チャーリー・マンガー)」でも取り上げています。

なおイングランドの将軍の言葉の和訳は、以下の作品からお借りしました。
ハウスマン全詩集』「シュロプシァの若者 一番 1887年」森山泰夫・川口昌男 訳、沖積舎

2012年8月28日火曜日

経営者の能力をみるには(ウォーレン・バフェット)

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今回は、ウォーレン・バフェットが1991年にEmory Business Schoolで行ったスピーチから「経営者の能力をみわける方法」のくだりをご紹介します。この話題は「投資家が見極めるべき5項目」の2番目と関係するものです。『Seeking Wisdom』からの孫引きです。(日本語は拙訳)

経営者の力量があるかどうか判断するには、どんな発言をしているかではなく、過去の実績をしらべてみるのが一番です。バークシャー・ハサウェイではビジネスを買収しても引き続き経営をお願いしているので、平均打率は保証されたようなものです。例えばファニチャー・マートを経営するブラムキン夫人の場合、500ドルの元手から始めて50余年、今では税引前で1,800万ドルの利益をあげるようになりました。彼女が有能かどうかは一目瞭然ですね。つまりは過去の成績こそ一番あてになる、これに尽きるわけです。

The best judgment we can make about managerial competence does not depend on what people say, but simply what the record shows. At Berkshire Hathaway, when we buy a business we usually keep whoever has been running it, so we already have a batting average. Take the case of Mrs. B. who ran our Furniture Mart. Over a 50-year period, we'd seen her take $500 and turn it into a business that made $18 million pretax. So we knew she was competent...Clearly, the lesson here is that the past record is the best single guide.


実績を重視するウォーレンの方針については、過去記事「かなりの世間知らずですね」でも取り上げています。

2012年8月27日月曜日

(映像)UCLA経済学部卒業生への祝辞(マイケル・バーリ)

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以前取り上げた投資家マイケル・バーリは、サブプライム・ローン危機を予想して大きな利益をあげたファンド・マネージャーです(過去記事)。学生時代にはメディカルを専攻していたその彼が、UCLA経済学部の2012年卒業生へ祝辞を述べていましたので、ご紹介します。

どこか初々しさの残る話しぶりに好感が持てましたが、14分ごろからの話題が特に印象に残っています。短くまとめると、金融当局が危機を未然に防げなかったことを指摘した記事をニューヨーク・タイムズに投稿したところ、まもなくFBIの捜査が入ったとのこと。その後の裁判で時間もお金も費やしたと付け加えています。


2012年8月25日土曜日

チャーリー・マンガーの自宅

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アメリカの経済誌Fortune(2012/8/22)にウォーレン・バフェットとチャーリー・マンガーの記事がありましたので、今回はチャーリーの部分をご紹介します。チャーリーの自宅を訪ねてのインタビューです。引用元の記事は以下の通りです。(日本語は拙訳)

Warren and Charlie and the chocolate factory(Fortune)
(ウォーレンとチャーリーとチョコレート工場)

チャーリー・マンガーに対して電子メールでインタビューを正式に依頼したところ、彼のアシスタントから次のような簡潔な返信があった。
「明日の8時半であれば、チャーリーはお会いできると申しております」

そうなるとは予想していなかったし、また私にとってはいささか早い時刻だった。L.A.の交通事情には慣れていない上、前日はずっとL.A.にあるシーズ・キャンディーの工場見学をしてきたので疲れてもいた。労力を要する仕事だったが、そういったものに立ち向かわなければならないライターもいるのだ。5月の水曜日の朝にL.A.の自宅で待っているとだけ伝えられて、全然形式張らないのだなと感じた。ウォーレン・バフェットとの約束はその次の日になっていたが、ずっと前から予定を組んでいたのだ。実のところ、その晩には飛行機でオマハへ移動するつもりだった。

水曜日の朝は7時に起きた。かばんに荷物をつめ、ホテルをチェックアウトし、レンタカーに飛び乗った。ハーツで借りた白の三菱ギャランだが、GPSは調子が悪かった。道は混んでいたものの、なんとか8時31分にはマンガー家の前に到着できた。彼の自宅は大きかった。大豪邸ではないが、カリフォルニアではよくある高級住宅だった。屋根は一面の赤色、車寄せにはヤシの木が並んでいた。玄関の前まで進むと、魔法のように扉が開いた。執事(兼給仕だろうか)が小さな読書室へ私を案内してくれた。そこには88歳になるマンガーが安楽椅子に腰かけていた。本業は弁護士だが、長きにわたるバフェットの同僚かつ投資上のパートナーでもある彼は、大きな虫眼鏡を手にハードカバーの本を読んでいた。彼は貪欲な読書家で、のちほどバフェットはこう語ってくれた。「私の知るかぎりでは、チャーリーほどたくさんの本を読んでいる人はいません。いまは88歳ですが、98歳になっても読んだことを全部覚えているでしょう。そこがわたしと違うことで、わたしは本を読んで楽しみますが、ささいなことは覚えていません」。

それからチャーリーと私は食堂へ移動した。そこで私は録音機のスイッチを入れ、時をおかずシーズ・キャンディーの話題を始めた。1972年に2500万ドルをだしてこの会社を買うようにバフェットを説きふせたのが彼なのだ。マンガーと話をしてすぐわかったのは、彼はビジネスに限らず、誰のことでも知っているし、どんなことでも覚えていた。本題と関係するような買収や破産の話題について、よく知られていない逸話をその都度詳しく思い出してくれた。例えば、ハーシーズがはじめてカナダに進出しようとしたことを話してくれた。またコダックの話に及ぶと、こう語った。「あの会社はまるごと失敗したものと考えて忘れていると思いますが、実は破産していなかったのです。イーストマン・ケミケルというスピンオフした会社のほうは、今も健在で成功をおさめていますよ」。P&Gの話題になるとこうだ。「P&Gはボディケア製品でいろいろうまくやっていますね。肌の具合がほんとうによくなるのであれば、そういうブランドは大当たりでしょう。その手のことになると、人はなかなかあきらめないですからね」。バフェットのようなわかりやすくて愉快なユーモアの感覚はないかもしれない。しかし、とことんドライで実際的な話題をするときでも笑わせてくれる能力を彼は持っている。

家の中に案内してくれた男が、今度は朝食を出してくれた。スクランブル・エッグ、ポテトの炒め物、焼きたてのベーコンだ。マンガーは長年にわたるシーズの強さを話してくれた。彼の見立てでは、バークシャーが買収する前と同じようにその後もシーズは正しい方向へ進んできた。「箱詰めチョコの会社は数多くあります。この小さな一粒ずつが、いにしえから続く人間の欲求にこたえるものですからね」。しかし、シーズは自社製品同士が競合しないよう懸命に努めてきた。そして、いつも慎重にことを進める体質が長期にわたる成功に寄与してきた。彼はつけくわえた。「もちろん我々はシーズの業務に基本的には関わっていませんよ」。また彼はシーズ製品のギフトとしての重要性を指摘した。「大安売りをみつけた云々、と言って贈り物を渡したがる人なんていないですからね」

In response to a formal email about setting up a sit-down interview with Charlie Munger, his assistant simply wrote: "Charlie says to come over tomorrow at 8:30."

It wasn't what I had expected. And it was a bit early for me, being new to Los Angeles traffic and tired from the long previous day of touring the See's Candies plant in L.A. (it was a grueling task, but some intrepid writer had to do it.) Being told to simply show up at Munger's private home in Los Angeles on a Wednesday morning in May felt starkly casual compared to my meeting with Warren Buffett, which would be the next day and had been scheduled far in advance. I would be flying to Omaha for it that night.

got up at seven on Wednesday, stuffed my bag, checked out of the hotel and hopped into my rental car, a white Mitsubishi Gallant with dysfunctional Hertz GPS unit. Traffic was bad, but I made it, pulling up outside Munger's address at 8:31. His house is big, but not a mansion; it looks like your standard upscale California home, complete with red roof and a wealth of palm trees around the driveway. When I walked up to the door, it opened, as if by magic. A butler (or waiter, or maybe both) led me into a small reading room where the 88-year-old Munger, a lawyer by trade and longtime colleague and investing partner of Buffett, was seated in an easy chair, using a large magnifying glass to read a hardcover book. The man is a voracious reader. ("Charlie has read about as much as anybody I know, Buffett later told me. "He's 88 now, and when he's 98, he'll remember everything he read. That's the difference; I read it, and I enjoy it, but I don't remember a damn thing.")

Charlie and I went to his dining room, where, with my recorder on, we began talking immediately about See's Candies, the brand he convinced Buffett to buy in 1972 for $25 million. The first thing immediately apparent about Munger is that in business and beyond, he knows everyone and remembers everything. At each turn he is able to recall specific and obscure anecdotes about buyouts and bankruptcies that relate in some way to the subject at hand. He talked about when Hershey's (HSY) first tried to expand into Canada. He waxed about Kodak ("People think the whole thing failed, but they forget that Kodak didn't really go broke, because Eastman Chemical did survive as a prosperous company and they spun that off") and about P&G ("Procter & Gamble, they just make a fortune on some of the body products. Some of these brands, I mean, if you can make something that actually improves the skin, wow. That's the last thing people will give up"). He may not possess the obvious, gleeful sense of humor of Buffett, but Munger has the ability to make you laugh even as he's discussing something completely dry and practical.

As the same man who had led me into the house served up breakfast (scrambled eggs, home fries, and delicious bacon), Munger talked about the strengths of See's over the years. In his estimation, it has made all the right decisions, both before Berkshire got there and since. "There are a lot of boxed chocolate companies; it's an old human desire," he said. "People like those little pieces." But See's worked hard, he said, to prevent cannibalizing its own stores, and has always had a cautious nature that helped it succeed in the long run. "And of course," he added, "We haven't basically touched it at all." He pointed out the significance of See's as a gift item. "Who wants to give a gift that announces 'I'm a cheap ... ' You know."


俗物根性丸出しで恐縮ですが、チャーリーのご自宅の写真をはじめてみました。おそらくこちらの物件だと思います。あるいは航空写真ではGoogle Mapsのこちらの画像です。そういえばチャーリーは建築が好きな人でしたね。ちなみにチャーリー個人の純資産は10億ドル。日本円で約800億円です。

2012年8月24日金曜日

ポートフォリオの現金比率(ウォーレン・バフェット、1957年)

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今回はウォーレン・バフェットのパートナーシップ時代のレター(1957年度)からの引用です。おなじみになってきましたが、ポートフォリオの資産配分の話題です。(日本語は拙訳)

わたしたちのポートフォリオの価値は、1956年末よりも1957年末のほうが高いことは間違いありません。全般的に価格が安く、辛抱した末でないとお目にかかれないような破格の値段で証券が買える機会を、さらに享受できたからです。先に申し上げたようにポートフォリオ中の最大の銘柄は、パートナーシップによっては資産の10%から20%を占めています[バフェットは複数のパートナーシップを組んでいた]。いずれすべてのパートナーシップで資産の20%を占めるようにするつもりですが、急ぐべきではないと考えます。当然のことですが値段が上がっていくときよりも、横ばいか、下げているときに株を買うのがわたしたちにとっては一番だからです。そんなわけですのでポートフォリオのある程度の割合は、いついかなるときでも利益を出さないままかもしれません。辛抱することになりますが、この方針をとれば長い目でみたときにもっとも利益が得られるに違いないからです。

I can definitely say that our portfolio represents better value at the end of 1957 than it did at the end of 1956. This is due to both generally lower prices and the fact that we have had more time to acquire the more substantially undervalued securities which can only be acquired with patience. Earlier I mentioned our largest position which comprised 10% to 20% of the assets of the various partnerships. In time I plan to have this represent 20% of the assets of all partnerships but this cannot be hurried. Obviously during any acquisition period, our primary interest is to have the stock do nothing or decline rather than advance. Therefore, at any given time, a fair proportion of our portfolio may be in the sterile stage. This policy, while requiring patience, should maximize long term profits.

2012年8月22日水曜日

(答え)地球温暖化が進むと、南極はどうなるのか?

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前回とりあげた話題「地球温暖化によって南極の氷は増加すると科学者たちが予想する」、その理由の部分になります。

その理由は簡単です。摂氏0.5~1度気温が上昇したとしても、南極の大部分の気温はまだかなりの低温です。氷の質量が減少した原因は、氷が融解したことではなく、氷が崩壊して海に流れ出したことだったのです。温暖化が進行した場合の主な影響は、(科学者の計算によると)水蒸気の増加です。温度の上昇によって、海水が蒸発するからです。この水蒸気が南極大陸の上空に流れていくと、降雪量が増え、固まって氷になり、氷河が発達します。そのため、地球温暖化によって南極の氷の質量は増えるという予想が出ました。 (p.153)


自分の直感が正しい結論と反する場合、どうしたら正しい道へ進むことができるでしょうか。今回の問題では、わたしは氷の質量が「減る」という直感に引きずられて、上のようなメカニズムが思いつきませんでした。気象に関する知識は必要ですが、この程度であれば想像できてもよかったと感じました。あとづけになってしまいますが、逆から考えれば解くことができたかもしれません。

ところで本書の筆者リチャード・ムラー(UCバークレー校物理学教授)は、上のような結果がでたからといって地球温暖化が進んでいないとは言っていません。その逆で、人間の活動によって気温が上昇している可能性はとても高いと考えています。

でも、温暖化は確かにおきています。そして、最近の50年間の温暖化の一部が、化石燃料の使用を主とする人間活動によるものである可能性がひじょうに高いのです。(p.155)

2012年8月21日火曜日

(問題)地球温暖化が進むと、南極はどうなるのか?

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以前読んだ『サイエンス入門〈1〉』の続き『サイエンス入門〈2〉』が出ていましたので、読んでいます。そのなかでおもしろい文章がありましたのでご紹介します。

南極の氷は、融けていると言われます。グレース衛星が、衛星軌道上から南極の氷の重力効果を測定し、氷の質量の正確な測定を行いました。その結果、南極の氷が毎年約36立方マイル(150立方キロメートル)ずつ減少していることがわかったのです! これは、地球温暖化の重大さを証明する深刻で際立った事実のように思えます。

驚くべきことに、この一見それらしい証拠は、事実を反映しているわけではないのです。2000年に、IPCCは、グレース衛星による観測に先立って、地球温暖化によって予想される氷の変化がどれほど大きなものになるかを計算するように、何人かの科学者に依頼しました。その結果、驚くべきことに、すべての科学者が一致して、地球温暖化によって南極の氷は、減少するのではなく、「増加する」と予想したのです。(p.153)


つづきの文章は次回にご紹介します。個人的には自分の直感にひきずられて、科学者たちがどういった論理で予想を出したのか思いつきませんでした。チャーリー・マンガー言うところの「疑いを持たない傾向」(過去記事)が強く働いているようです。

2012年8月20日月曜日

規模の不経済(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる世知入門、規模の経済の第3回目ですが、今回は規模が大きいほど効率が悪くなる話です。(日本語は拙訳)

規模が大きいからといって常に勝てるわけではないのがこのゲームの面白いところで、大きくなると官僚的になってしまうという重大な欠点があります。官僚主義はなわばり争いを生み出します。またもや登場しましたが、これも人の本性に根ざすものです。

ここでも動機付けが悪い方向に働いています。たとえば私が若かった頃のAT&Tは巨大な官僚主義の職場で、株主のような存在のことを考える人はいませんでした。官僚主義ときくと、みなさんはこう考えるかもしれません。自分の未処理かごに仕事が入ってきたら、別の人の未処理かごに進めればおしまいだろうと。ところがAT&Tはそうではありませんでした。やるべき仕事とは、自分たちがやりおわった仕事のことをさしたのです。膨張して巨大になり、おろかで意欲を失った官僚主義がはびこっていたのです。

実のところ、いくぶん腐敗していたとも言えます。たとえば私がある部門の責任者で、あなたが別の部門の責任者だとします。あることをやるのに必要な権限を両者で共有していたとしたら、そこには不文律がありました。「あなたが厄介なことをしなければ、私のほうもしません。それでお互い満足ですよね」。そんなわけで、管理上の階層が積み重なり、不要な間接費が積み上げられていったのです。そういった階層を正当化する人もいますが、それではいつまでたっても何も終わりません。とにかく決断するのが遅すぎます。機敏な人たちは、もっとうまくやっています。

The great defect of scale, of course, which makes the game interesting - so that the big people don't always win - is that as you get big, you get the bureaucracy. And with the bureaucracy comes the territoriality - which is again grounded in human nature.

And the incentives are perverse. For example, if you worked for AT&T in my day, it was a great bureaucracy. Who in the hell was really thinking about the shareholder or anything else? And in a bureaucracy, you think the work is done when it goes out of your in-basket into somebody else's in-basket. But, of course, it isn't. It's not until AT&T delivers what it's supposed to deliver. So you get big, fat, dumb, unmotivated bureaucracies.

They also tend to become somewhat corrupt. In other words, if I've got a department and you've got a department and we kind of share power running this thing, there's sort of an unwritten rule: “If you won't bother me, I won't bother you, and we're both happy.” So you get layers of management and associated costs that nobody needs. Then, while people are justifying all these layers, it takes forever to get anything done. They're too slow to make decisions, and nimbler people run circles around them.


バークシャー・ハサウェイが買収した企業には似たような業種同士のものがありますが、チャーリーやウォーレン・バフェットはそれらを合併統合してシナジーを求めようとはしません。その理由のひとつが、無益ななわばり争いを避けることなのかもしれませんね。

2012年8月18日土曜日

誤判断の心理学(13)楽観的になりすぎる傾向(チャーリー・マンガー)

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今回の文章では、過去にもとりあげたおなじみの話題が登場します。原文が短いので全文をご紹介します。(日本語は拙訳)

誤判断の心理学
The Psychology of Human Misjudgment

(その13)楽観的になりすぎる傾向
Thirteen: Overoptimism Tendency

キリストが生まれた頃より300年前のこと。かの高名なるギリシャの弁論家デモステネスは、こう言いました。「人は自分が望むものを、やがて信念とするものだ」。

デモステネスの言ったことを解釈すれば、人は単に痛みを避けようと否定するだけでなく、うまくやりとげた後でも楽観的過ぎる姿を見せるとも言えます。

苦しんでいなかったり、あるいは苦しくなる心配がないときでも、たいていの人は楽観的過ぎるものです。みてください、くじを買って喜んでいる人たちを。あるいは、つけ払いできるうえに配達もしてくれる食料品店が、超効率的な巨大量販スーパーにとってかわると満足げに信じている人たちを。ギリシャの弁論家が正しかったのは言うまでもないですね。

このおろかな楽観に対処するには、私のころには高校2年で教わったフェルマーとパスカルの初歩的な確率計算を、反射的に使えるようになるまで練習するのが定石です。リスクに対処しようとして経験則に頼るのは、進化の末に我々人間が手にしたやりかたであって、適切とはいえないものだからです。ゴルフのグリップがこれと似た例でしょう。ゴルフ教室に通わずに、人として進化した体のつくりのまま自然に握るやりかたをとるのは、結局は役に立たないのです。

About three centuries before the birth of Christ, Demosthenes, the most famous Greek orator, said, “What a man wishes, that also will he believe.”

Demosthenes, parsed out, was thus saying that man displays not only Simple, Pain-Avoiding Psychological Denial but also an excess of optimism even when he is already doing well.

The Greek orator was clearly right about an excess of optimism being the normal human condition, even when pain or the threat of pain is absent. Witness happy people buying lottery tickets or believing that credit-furnishing, delivery-making grocery stores were going to displace a great many superefficient cash-and-carry supermarkets.

One standard antidote to foolish optimism is trained, habitual use of the simple probability math of Fermat and Pascal, taught in my youth to high school sophomores. The mental rules of thumb that evolution gives you to deal with risk are not adequate. They resemble the dysfunctional golf grip you would have if you relied on a grip driven by evolution instead of golf lessons.


何度かご紹介していますが、「フェルマーとパスカルの初歩的な確率計算」とは順列と組み合わせを使ったものです。以下の過去記事で取り上げています。


以前に「個人的には、組み合わせを全く使えていない」と書きましたが、肩肘張らずにやってみれば、ごく普通に使えるし、使うべき考え方ですね。

2012年8月17日金曜日

(映像)投資先を見極めるためのチェックリスト(チャーリー・マンガー)

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2009年にチャーリー・マンガーがBBCのインタビューに応じていたのを、いまさらですがみています。6分ごろの会話でチャーリーは、「投資先を選ぶためのチェックリスト」に答えていました。毎度のことでなんだかわたしのほうが恐縮気味なのですが、ウォーレン・バフェットとぴったり同じことを答えています。



チャーリーが挙げているのは以下の4つです。「ビジネスを理解できること」「長続きする競争優位性を持っていること」「有能な経営陣がいること」「安全余裕をとった価格であること」。二人とも昔から同じことを主張しているということは、きわめて大切な教訓なのだと捉えています。なお、ウォーレンの発言は以下の記事でも取り上げています。

10秒ください(ウォーレン・バフェット)
投資家が見極めるべき5項目(ウォーレン・バフェット1993年)

2012年8月16日木曜日

GDP成長率と株式リターン率の関係(GMO)

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拝見しているブログ『賢明なる投資!バフェる!グレアムる!フィッシャる!』で取り上げられていた「GDPの伸びと株価の相関性」の話題が気になっていました。この話題は過去にも各所で登場していますが(梅屋敷さま等)、たまたまジェレミー・グランサムのファンドGMOでも似たような話題に触れていたので、要点を引用します。(日本語は拙訳)

引用元PDFファイル
Reports of the Death of Equities Have Been Greatly Exaggerated: Explaining Equity Returns

「GDP成長率と株式からのリターン率には相関がない」
株式からのリターンを理解するために初めにみるのが、GDPの成長との関係である。一言でいえば、正の相関はない。株式からリターンをあげるのに、ある程度のGDPの成長が必要というわけではない。同様に、ある程度のGDP成長が株式市場でのリターンを示唆するものでもない。このことは実証されており、例えばディムソン=マーシュ=スタウントンによる1900年から2000年までの研究結果が示している。GDPが力強く成長することは、その国の株式市場が他の国よりも好成績をあげる最大の理由であると、多くの投資家はかたく信じている。しかし図1のように、20世紀をみればこの信念はあてはまらない。




The first point to understand about stock returns is their relationship with GDP growth. In short, there isn’t one. Stock returns do not require a particular level of GDP growth, nor does a particular level of GDP growth imply anything about stock market returns. This has been true empirically, as the Dimson-Marsh-Staunton data from 1900-2000 shows. Many investors are utterly convinced that strong GDP growth is the primary reason why one country’s stock market will outperform another. As we can see in Exhibit 1, this was certainly not the case in the 20th century. (p.1)

「企業利益の成長とGDPの成長には相関がある」
もし相関があるとすれば、道理に合わなくなる。ほかの条件がすべて同じだとすると、GDPの高成長率と株式市場からの低リターンが相関することになってしまうからだ。これはどういうことだろうか。企業があげる利益はGDPに連動して成長し、そして株価は利益に連動して上昇するものではないか。企業全体でみれば利益はGDPに連動して成長するとみて然るべきだし、株式市場の時価総額は利益に連動して成長すると期待されて当然だ。図4で示すアメリカ合衆国の例ではそうなっている。


Insofar as there is any relationship here, it’s a perverse one. All else equal, higher GDP growth seems to be associated with lower stock markets returns. How could this possibly be? Don’t earnings grow with GDP and stock prices with earnings? Aggregate corporate profits should indeed be expected to grow with GDP. And overall market capitalization of the stock market should be expected to grow along with aggregate earnings, as can be seen in the U.S. (Exhibit 4). (p.1)

「急成長がゆえに、株主へのリターンをある程度減じる」
急成長を望むのであれば、それに見合った投資が必要となる。この投資の原資は、配当せずに留保した利益か、株主利益を希薄化することによって作られる(注)。実際のところ、急成長をとげる国の企業では一般的に低配当率と株主利益の高希薄化の両方がみられる。そのどちらも、急激な成長にともなう増益効果を減じ、必要以上に株主リターンを引き下げている。

The faster you want to grow, the more you will need to invest, but this investment must either come from retained earnings (forgone dividends) or dilution of shareholders. In practice, companies in fast-growing countries generally exhibit both low dividend payout ratios and high rates of dilution of shareholders, both of which hurt shareholder returns enough to more than counteract the higher aggregate profit growth associated with fast growth. (p.4)

(注)
ここでは、新株発行と同様に借入金も株主利益の希薄化とみなしている。その理由として、資金の貸し手は公式には企業の所有者ではないが、キャッシュフローに対する権利だけでなく、破産や契約違反といった状況下で適用される期待権を有していることを考慮した。

(footnote)
For this purpose, I’m counting borrowing money as well as equity issuance as dilution of shareholders. Lenders may not officially have an ownership stake in the company, but they do have a right to some of its cash flow as well as having contingent rights under certain circumstances, i.e., bankruptcy or covenant breach.

「株式からのリターンの多くを占めるのは配当である」
株式市場からのリターンをみると、全体で見て大きな影響を与えるのは配当金だ。配当は過去のほとんどにおいて、株式投資家へのリターンの多くを担ってきた。図5は複利ベースで見た実質リターン及び実質EPSの成長を、実質GDPと比較する形で示している。全企業利益の総額や株式市場での時価総額の場合とは異なり、リターンやEPS成長はGDPと連動していないことが明確にあらわれている。


When we look at stock market returns, dividends have a very large impact on the total, providing the bulk of equity investor returns for most of history. Exhibit 5 shows the compound growth of real returns and real earnings per share against real GDP. Unlike aggregate profits and market capitalization, it is fairly clear that neither returns nor EPS grow in line with GDP. (p.4)

「全体として見ると、企業収益とEPSの相関が小さい理由」
全企業利益の総額や株式の時価総額は、EPSや株主に対する複利ベースのリターンとはほとんど相関していない。新会社設立、既存企業による増資、自己株式取得、M&Aといった企業活動が行われると、EPSは総計ベースの値から乖離したものになり得るからだ。

Total corporate profits and total stock market capitalization have very little to do with earnings per share or the compound return to shareholders because new companies, stock issuance by current companies, stock buybacks, and merger and acquisition activity can all place a wedge between the aggregate numbers and per share numbers. (p.4)

2012年8月14日火曜日

歴史からなにを学ぶのか

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いま読んでいる本『戦後史の正体』にあった一節を引用します。月並みといえばそのとおりですが、注意していないと心から離れやすい教訓と感じています。

英国の外交官として20年つとめたあと、高名な歴史家となったE・H・カーは『歴史とは何か』(岩波書店)のなかで「歴史は、現在と過去との対話である」とのべています。翻訳者の清水幾太郎はこの言葉を「歴史は過去のゆえに問題なのではなく、私たちが生きる現在にとっての意味ゆえに問題になる」と解説しています。
つまり歴史は過去を知るために学ぶのではなく、現在起こっている問題を理解するために学ぶのだということです。(P.103)


そういえば2004年に開催されたバークシャー・ハサウェイの株主総会で、ウォーレン・バフェットが別の言い方をしていたのを思い出しました。引用元はティルソンのメモです。

「わたしどもが歴史から学んだこと、それは人は歴史から学ばないということです」

What we learn from history is that people don't learn from history.


蛇足ですが、この本『戦後史の正体』は、個人的には本年度読書の筆頭にあげたい一冊です。今日の段階でも、amazon.co.jpの本のベストセラー第6位につけていますね。

2012年8月11日土曜日

10年先を見越した投資をしている人たちへ(ジェレミー・グランサム)

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マネー・マネージャーのジェレミー・グランサムのレター(2012年第2四半期)が少し前に公開されていました(こちらのファイル)。あいかわらずの弱気路線ですが、食料を中心とした資源問題をとりあげており、個人的には興味深く読みました。

今回は投資の対象として資源関連をどうみているのか、彼の意見が示されている一節をご紹介します。(日本語は拙訳)

私の考えを一行でまとめると、こうなります。「人類が直面する問題には弱気。悲しいかな、それゆえに資源投資には強気」。当然ですが資源価格の高騰は今後避けられないと、1年前のときよりも確信しています。また残念なことに、それに端を発して社会的国際的な不安定さも増していくことでしょう。だからこそ、1年前に申し上げた「生き残るための投資方針」になおさら自信がもてるのです。10年以上先を見越した投資をしなければならない人たちは、これからは資源関係を主力投資先に加える道を進んでいくべきです。私の財団はあくまでも個人的なものなので、10年超の投資期間を顧客に強いるのが難しい機関投資家とは異なっていますが、ゆくゆくは資源関係に30%を投資するよう方針を定めています。もしかしたらまるで見当違いなのかもしれないと感じつつも、最近の大幅な価格下落を注視し、買い単価を少しずつ下げてきました。その結果、私の財団のポートフォリオのうち、20%の2/3に達しています。

The one-line summary is this: I am very bearish on the problems we humans face and, sadly, very bullish on resources. Not surprising, I am even more convinced than I was a year ago of the inevitability of rising resource prices (and, unfortunately, associated societal and international instability). Therefore I am more confident in my suggested investment battle plan of a year ago. For any responsible investment group with a 10-year horizon or longer, one should move steadily to adopt a major holding of resource-related investments. For my Foundation (i.e., personally as opposed to institutionally where, reasonably enough, we cannot impose 10-year plus horizons on our clients) I had adopted 30% in resources as my eventual target and was slowly averaging in, nervous of near-term substantial price declines, but even more nervous of completely missing my own point. In my Foundation, I have currently reached about the two-thirds point of 20%.


別の投資方針としてグランサムは、資源価格高騰の影響を受けにくかったり、利益率が十分に大きな「質の高い」銘柄を勧めています。

2012年8月10日金曜日

かっぱの川流れ(チャーリー・マンガー)

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バークシャー・ハサウェイの子会社Wesco Financialの会長はチャーリー・マンガーが務めています。そのチャーリーが書く「株主のみなさんへ」は全体的に事務的な雰囲気の記述が多く、ウォーレン・バフェットとは趣きが違うと個人的には感じていました。古い年度のものも含まれたファイルがScribdにアップロードされているのを最近になって知り、「昔はどうだろうか」と期待して読み始めたところ、それっぽい文章が書かれていました。

今回は、Wescoの1989年度「株主のみなさんへ」からご紹介します。ウォーレンが常々説いている内容と基本的に同じですが、それは彼らが「一卵性双生児」である証拠なのだと思います。(日本語は拙訳)

当社の方針としては、奥義をきわめようとするよりも、わかりきったことを忘れないようにすることで利益をあげるやりかたに従っていきたいと考えています。賢く立ち回ろうとするのではなく、ばかげたことをしないよう一貫して気をつけることで、我々のような長期でみたときに優位な者がどれだけ多くを得てきたでしょうか。これは注目に値することです。「かっぱの川流れ」ということわざには知恵がこめられているに違いありませんね。我々のやりかたでは、退屈だったり、行動を制限するがゆえに不利になる時期がまちがいなくやってきます。しかし、これまでのところは平均的にみればまずまずうまくやってきましたし、これから長期にわたってもおそらくうまくいくでしょう。

Wesco continues to try more to profit from always remembering the obvious than from grasping the esoteric. It is remarkable how much long-term advantage people like us have gotten by trying to be consistently not stupid, instead of trying to be very intelligent. There must be some wisdom in the folk saying: "It's the strong swimmers who drown". Our approach, while it has worked fairly well on average in the past and will probably work fairly well over the long-term future, is bound to encounter periods of dullness and disadvantage as it limits action.


このところ、決算発表の数字が少しでも悪いと株価が暴落する傾向が見られます。売り買いどちらの立場にせよ、賢い立ち回りなのかどうか私にはよくわからないものばかりです。ただし、時には自分でも何かしら判断できるものがあり、そういうときには株式を少しずつ買うようにしています。

2012年8月8日水曜日

脊椎動物はひっくり返った昆虫なのだ(動物学者サンティレール)

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少し前にとりあげた本『ビジュアル版 科学の世界』で(過去記事)、逆に考えることで成果を挙げた科学者が二人登場していたのでご紹介します。

有機化学すなわち炭素の科学に真の突破口が切り開かれたのは、1960年代、ハーヴァード大学の教授でノーベル賞も受賞したイライアス・J・コーリーが、「逆合成解析」という手法を考案したときのことだ。この技術は、化学者が大きくて複雑な分子を小さくて手に入りやすい-そして通常はずっと安価な-出発物質から作り出すのに使える、もっとも強力なツールの1つとなった。
この手法は、合成のターゲットとする分子をジグソーパズルのように考えることでうまくいく。ターゲットから逆に考えることによって、一緒に反応させると触媒や反応物の手引きによって組み合わさり、パズルが完成するような構成要素を探し出せるのだ。(p.152)


フランスの動物学者ジョフロワ・サンティレールは、すべての動物が同じ基本的な体制をもつと考えていた。だが昆虫の場合、主要な神経索は内臓の腹側にあるのに対し、脊椎動物の場合、脊椎は背中側にある。それでもサンティレールはひるまず、このことから脊椎動物は基本的にひっくり返った昆虫なのだと推論した! そんなはずはないように思えるが、この考えも最近の発見によって裏づけられている。(中略)脊椎動物は昆虫をひっくり返したものだというサンティレールの奇抜な推測も、正しいことが立証されている。無脊椎動物ではどちら側が腹になるかをきめているホメオティック遺伝子が、脊椎動物ではどちら側が背になるかを決めているのだ。(p.222)


こうして過去をふりかえってみると、逆に考えることで成功した例はいろいろ見つかるものですね。

2012年8月7日火曜日

投資の世界で生き残る公式(ハワード・マークス)

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ハワード・マークス氏(Howard Marks)というマネー・マネージャーのことを最近知りました。彼が立ち上げて会長を務めているOaktree Capital Managementは、預かり資産5兆円超のオルタナティブ・ファンドです。顧客向けに書いたメモが一般にも公開されており、これが話題となっていたのに目がとまった次第です。

ウォーレン・バフェットも彼の文章を読んでいるようですが、実はそれだけの関係ではありませんでした。本ブログでよくとりあげる『Poor Charlie's Almanack』のWebサイトに同氏の著作『The Most Important Thing』が並んでいたのです。

今回ご紹介するのは、少し前のメモWhat Can We Do For You?からの引用です。なお、Oaktreeの主な投資先はDistressed Debt(「債務不履行債券」あたりが近い訳)などの債券ですが、彼の見識は株式投資にもそのまま通じるものと感じています。(日本語は拙訳)

不確実なことを試みるときには、その先になにがあるのかわからなくても、わからないのにわかっていると考えるのと比べれば、全然悪いことではありません。知らない道を使ってドライブに行くときのことを考えてみてください。地図を調べて、GPSの指示に従い、コースどおりか目印を確かめたり、方角を確かめたりしながら慎重に進むでしょう。一方、よく知っている道であれば、そういう作業は省略するものです。しかし、そう思っていたのに実はよくわかっていない道だったとしたら、どうでしょうか。目的地に着くのはもっと難しくなるでしょう。

In any endeavor involving uncertainty, not knowing what lies ahead isn't nearly as bad as thinking you know if you don't. If you're setting out for a drive and recognize that you don't know the way, you're likely to check a map, follow your GPS, ask directions and drive slowly, watching for indications you've gone off course. But if you're sure you know the way, you're more likely to skip these things, and if it turns out you didn't know, that'll make it much harder to reach your destination.


次は、マーク・トウェインの一文を借りてきています。

未来のことがわかると考える人と、わからないと考える人では、かなり違った行動をとる可能性があります。ここで大切なのは、正しいほうの道を選んで進むことです。マーク・トウェインもこう言っています。「わからないのはたいしたことじゃない。絶対わかっていると思っているのに実はわかっていないほうがやっかいだ」。投資の世界には生き残る公式というものがありますが、これはそこに含まれる要素の一つなのです。

The difference in behavior between those who think they can know the future and those who don't is potentially enormous. It's essential to be on the right side of this choice because, as Mark Twain said, "It ain't what you don't know that gets you into trouble. It's what you know for sure that just ain't so." That's an essential component of the formula for investment survival.


最後に、ハワード・マークスが顧客にむけて「できませんよ」と宣言している箇所です。

世界経済がどうなるのか、わかりません。
市場はいつどれだけ上がるのか下がるのか、わかりません。
どの市場あるいは市場の一部がいちばん成績をあげるのか、わかりません。
市場でどの証券が成績上位になるのか、わかりません。

we can't know what the economics of the world will do,
we can't know whether markets will go up or down, and by how much and when,
we can't know which market or sub-market will do best, and
we can't know which securities in a given market will be the top performers.


はっきりとものが言える、気持ちのいい5兆円のボスですね。

2012年8月5日日曜日

諸戸家遺訓(日本有数の大地主 諸戸清六)

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以前とりあげた『商家の家訓』から再び引用します(過去記事)。今回は明治維新前後に活躍した諸戸清六氏による家訓です。同氏は父親の残した莫大な借金2000両をかかえての出発でした。「時は金なり」を信条として「人が10時間働けば自分は15時間、人が3杯飯を食べれば自分は1杯で辛抱する、人が不用だと捨てたものは自分が利用する」という生きかたで財を成しました。明治21年(当時42歳)のころには、東京の恵比寿から渋谷、駒場に至る住宅地30万坪を買い捲り、一時は渋谷から世田谷まで、他人の地所を踏まずに行けたとあります。

第1条「時は金なり」
時は金なりである。時間は有効に使うべきである、決して忘れてはならない。

第3条「銭のない顔」
いつもお金がないという顔をすべきである。お金があるという顔をしていると、余分な出費が多くなる。仮に、お金がないという顔をしていて人様に笑われることがあっても、後々成功した暁には、流石だと褒められるものである。

第4条「質素」
派手な暮らしぶりはよくない。できるだけ質素な生活をすべきである。着物は垢が付きにくく、すぐに洗える木綿の服で十分であるので、無駄なことはするな。

第5条「人を選ぶ」
自分の財産を減らさないようにするには、平素の付き合いをする人は誰でもよいというものではない。質素倹約をして地道に生活をしている人がよいので、そのような人を交際相手に選ぶべきである。

第9条「知恵を得る」
いろんな人に会って、その人々から多くのことを教えてもらうように心掛けるべきである。

第10条「馬鹿になる」
賢い人は、いつでも馬鹿になれる人である。このような人になれば、頭を下げて色々な人に質問もでき、商売もできるのである。気位が高いだけの人間になってはいけない。

第13条「2年先を見よ」
2年先の予測、見極めができるようにすべきである。また、たまたま儲かったお金は労働の対価でないので、他人のお金を預かったのと同じことであると、心得るべきである。(p.271)


質素倹約を旨としていますが、かといって商機は逃さなかったようです。商用で汽車に乗るときは、必ず1等か2等の切符を購入し、3等には乗らなかったとあります。当人いわく「1等や2等の乗客は学識があり、実力のある人が乗り合わせている。このような人と乗り合わせるのは、商機が多く、自分のためになる。いたずらに少しのお金をケチって、チャンスを失うことは大きな利益を失うことになり、大きな損失である」としています。

2012年8月3日金曜日

シルバーの需要動向(2011年)

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最近は値動きが小さいかあまり注目されていないシルバー(銀)ですが、その動向は適宜追いかけるようにしています。シルバーの著名なアナリストであるテッド・バトラーによると、シルバーの相場はごく少数のJPモルガン・チェースのような大銀行によって操作されているとされています。そのため短期的な価格を推し量りたければ、それらの動向を考慮する必要があるかもしれません。一方、中長期の値動きとなると、他の商品と同様に需給の力関係がきいてくるようです。今回は、その需要動向に関する話題です。

シルバーの生産者等による業界団体The Silver Instituteが、2011年度の概況を最近公開しました(World Silver Survey 2012 A Summary)。それによれば、シルバーの加工用需要(つまり純投資用を除いたもの)は前年比で1.5%減になったとのことです。


今回同書から引用するのは、比率の最も大きい産業向け需要に関する一節です。(日本語は拙訳)

産業用途における需要は、通年で2.7%減の48,650万オンスとなった。第4四半期になって想定以上に需要が後退したため、第1四半期での増加分は帳消しになった。2011年末にみられた需要後退の原因は、主として最終ユーザーである需要家が欧州財政危機による[ユーロ]離脱を懸念して発注を控えたことによるものだった。また一部の用途では価格高騰に伴う節減や他材料による代替もいくぶんみられ、需要減の一因となった。セクター別に見ると、太陽光関連の減少がもっとも目を引いた。ただし潜在的な需要が減少したことよりも、在庫過剰の問題が大きかった。アメリカにおける昨年の需要減の大半がこれに起因するものだったが、絶対額ベースでは日本での減少が大きかった。とくに第4四半期にはエンドユーザーからの受注減がひどかった。絶対額の変動が3番めに大きかったのは中国だが、これは5%にのぼる増加であり、過去最高を記録した。

A largely unexpected slump in industrial demand during the fourth quarter outweighed strong first half gains, generating a full year loss of 2.7% to 486.5 Moz (15,132 t). The weakness seen late in 2011 was chiefly the result of industrial end-users slashing orders due to fears over the fallout from the Eurozone’s sovereign debt crisis. There was also a degree of pressure on offtake from price-led thrifting and substitution in some areas of industrial use. On a sectoral basis, the main feature last year was a fall in photovoltaic demand, which resulted from inventory mismatches, rather than a drop in underlying demand. That also explains much of US losses last year, although its absolute fall was just eclipsed by Japan, which suffered more from the fourth quarter drop in end-user orders. The third largest absolute change related to China but in this instance it was a rise of nearly 5% to a new record.

蛇足になりますが、個人的な見解としては、エネルギー消費が増大しつつも二酸化炭素の排出を抑えることが強く要求される時代においては、シルバーの有用性が下がることはないと考えています。その上で価格がどこまで許容できるのかは、使用用途によって異なってくると捉えています。

2012年8月1日水曜日

そもそも口は、きわめて個人的な場所である(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる世知入門、規模の経済の第2回目です。今回は心理学的な要因も関わっていて、チャーリーらしいモノの見方となっています。(日本語は拙訳)

また規模の経済は、情報面での優位にもつながります。どこか見知らぬ街へ行ったときにチューインガムを買おうとしたところ、リグリー[日本で言えばロッテに相当]の横にグロッツというブランドが並んでいたとします。リグリーの製品が満足に値することは知っていますが、グロッツのことは全然知りません。さて、リグリーが40セントでグロッツが30セントだとしたら、わずかな金額を節約するために知らないほうを買って口の中に入れるでしょうか。そもそも口というのは、きわめて個人的な場所ときているものです。

ですから、実のところリグリーは単に有名だからというだけで規模の経済を有しているのです。これは「情報優位」と呼ぶべきかもしれません。

他の規模の経済としては心理学的なものがあります。心理学者が「社会的証明」と呼ぶもので、あらゆる人は無意識に、あるいは意図してやることもありますが、他人がすることや認めることに影響されるものです。ですから他人が買ったもの、すなわちそれはよいものだと考えるわけです。ひとは外れ者になりたくないですからね。

重ねていいますが、これは潜在意識下で働く場合とそうでない場合があります。ときには意識しながら合理的に考えるのです。「ええと、自分にはよくわからないけれど、あの人たちのほうが知っているから、そっちに従うことにしよう」

まさに心理学からきているこの社会的証明とは、たとえば容易には構築できないような大規模の流通網を持つものに、莫大な優位をもたらしてくれる現象です。世界中のほとんどどこでも買えるということは、コカ・コーラが有利な理由の一つに挙げられるでしょう。

いま手にしているジュース、これが世界中どこでも手に入れられるようにするには、どうすればよいか正確に答えられるでしょうか。大企業は世界規模の流通網を培うのに時間をかけてきました。これは莫大な優位を与えてくれるものです。そうです、そのような大きな優位をいったん手にした人を他の者が追い落とすのは、とても難しいのです。

And your advantage of scale can be an informational advantage. If I go to some remote place, I may see Wrigley chewing gum alongside Glotz's chewing gum. Well, I know that Wrigley is a satisfactory product wheres I don't know anything about Glotz's. So if one is forty cents and the other is thirty cents, am I going to to take something I don't know and put it in my mouth - which is a pretty personal place, after all - for a lousy dime?

So, in effect, Wrigley, simply by being so well known, has advantages of scale - what you might call an informational advantage.

Another advantage of scale comes from psychology. The psychologist use the term "social proof." We are all influenced - subconsciously and, to some extent, consciously - by what we see others do and approve. Therefore, if everybody's buying something, we think it's better. We don't like to be the one guy who's out of step.

Again, some of this is at a subconscious level, and some of it isn't. Sometimes, we consciously and rationally think, "Gee, I don't know much about this. They know more than I do. Therefore, why shouldn't I follow them?"

The social proof phenomenon, which comes right out of psychology, gives huge advantages to scale - for example, with very wide distribution, which of course is hard to get. One advantage of Coca-Cola is that it's available almost everywhere in the world.

Well, suppose you have a little soft drink. Exactly how do you make it available all over the Earth? The worldwide distribution setup - which is slowly won by a big enterprise - gets to be a huge advantage.... And if you think about it, once you get enough advantages of that type, it can become very hard for anybody to dislodge you.