ot

2012年8月7日火曜日

投資の世界で生き残る公式(ハワード・マークス)

ハワード・マークス氏(Howard Marks)というマネー・マネージャーのことを最近知りました。彼が立ち上げて会長を務めているOaktree Capital Managementは、預かり資産5兆円超のオルタナティブ・ファンドです。顧客向けに書いたメモが一般にも公開されており、これが話題となっていたのに目がとまった次第です。

ウォーレン・バフェットも彼の文章を読んでいるようですが、実はそれだけの関係ではありませんでした。本ブログでよくとりあげる『Poor Charlie's Almanack』のWebサイトに同氏の著作『The Most Important Thing』が並んでいたのです。

今回ご紹介するのは、少し前のメモWhat Can We Do For You?からの引用です。なお、Oaktreeの主な投資先はDistressed Debt(「債務不履行債券」あたりが近い訳)などの債券ですが、彼の見識は株式投資にもそのまま通じるものと感じています。(日本語は拙訳)

不確実なことを試みるときには、その先になにがあるのかわからなくても、わからないのにわかっていると考えるのと比べれば、全然悪いことではありません。知らない道を使ってドライブに行くときのことを考えてみてください。地図を調べて、GPSの指示に従い、コースどおりか目印を確かめたり、方角を確かめたりしながら慎重に進むでしょう。一方、よく知っている道であれば、そういう作業は省略するものです。しかし、そう思っていたのに実はよくわかっていない道だったとしたら、どうでしょうか。目的地に着くのはもっと難しくなるでしょう。

In any endeavor involving uncertainty, not knowing what lies ahead isn't nearly as bad as thinking you know if you don't. If you're setting out for a drive and recognize that you don't know the way, you're likely to check a map, follow your GPS, ask directions and drive slowly, watching for indications you've gone off course. But if you're sure you know the way, you're more likely to skip these things, and if it turns out you didn't know, that'll make it much harder to reach your destination.


次は、マーク・トウェインの一文を借りてきています。

未来のことがわかると考える人と、わからないと考える人では、かなり違った行動をとる可能性があります。ここで大切なのは、正しいほうの道を選んで進むことです。マーク・トウェインもこう言っています。「わからないのはたいしたことじゃない。絶対わかっていると思っているのに実はわかっていないほうがやっかいだ」。投資の世界には生き残る公式というものがありますが、これはそこに含まれる要素の一つなのです。

The difference in behavior between those who think they can know the future and those who don't is potentially enormous. It's essential to be on the right side of this choice because, as Mark Twain said, "It ain't what you don't know that gets you into trouble. It's what you know for sure that just ain't so." That's an essential component of the formula for investment survival.


最後に、ハワード・マークスが顧客にむけて「できませんよ」と宣言している箇所です。

世界経済がどうなるのか、わかりません。
市場はいつどれだけ上がるのか下がるのか、わかりません。
どの市場あるいは市場の一部がいちばん成績をあげるのか、わかりません。
市場でどの証券が成績上位になるのか、わかりません。

we can't know what the economics of the world will do,
we can't know whether markets will go up or down, and by how much and when,
we can't know which market or sub-market will do best, and
we can't know which securities in a given market will be the top performers.


はっきりとものが言える、気持ちのいい5兆円のボスですね。

4 件のコメント:

is さんのコメント...

== No title ==
こんにちは。
最近、ウォーレンが大絶賛したという「投資で一番大切な20の教え」という書籍を買って読んだのですが、これがもう素晴らしい内容で、今年一番のヒットでした。
私の永久保有書籍の仲間入りです。
Howard Marksはどこかで聞いたような・・と思っていたらbetseldom様のサイトでもご紹介されていたからでしたね^^; いやーそれにしてもこの本は素晴らしかったです。翻訳版なので既にご覧になられているかもしれませんが、一読の価値は十分あると思いました。 それでは失礼いたします。

betseldom さんのコメント...

== isさん、たびたび情報ありがとうございます ==
isさん、こんにちは。
いつも情報をありがとうございます。『The Most Important Thing』の翻訳がでたのですね。わたしもなるべく早いうちに読んでみたいと思います。日本語で読めるのは幸せなことです。
そういえば、同氏のインタビュー記事を先日読みました。URLは以下のとおりです。
Howard Marks established Oaktree as a leader in distressed debt
http://www.pionline.com/article/20121029/FACETOFACE/310299994/howard-marks-established-oaktree-as-a-leader-in-distressed-debt
それではまたよろしくお願いします。
失礼致します。

is さんのコメント...

== No title ==
こちらこそいつもありとうございます。
英語に拙い私としましては、いつも感謝の念と、翻訳後のbetseldomさんのコメントも非常に有益であり楽しみにしております。
バリュー投資では、海外の方の思想を取り入れる事が多くなりますが国内向けという意味で最近は以下のラジオNIKKEI ひふみ投信の藤野さんのお話は為になりました。へーと思える箇所が何箇所かありました。15分程ですので是非お暇な時にでも。
http://podcasting.radionikkei.jp/podcasting/plusyou/plusyou-121107.mp3

betseldom さんのコメント...

== 藤野さんの座談会、いいですね ==
isさん、こんにちは。
ご紹介いただいた藤野さんの話を早速きいてみました。
意外性のある数字をわかりやすく取り上げていて、いろんな意味で参考になりました。話し方もおちついていて、聞き手の心に届きますね。
どうもありがとうございました。それでは失礼致します。