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2012年4月4日水曜日

底値で株を売却する投資家をばかにはできない(ロバート・ルービン)

引続き、ロバート・ルービンの『ルービン回顧録』です。この本は投資家にとっても学ぶところのある一冊ですが、特に第12章の「上げ相場の終焉をめぐって」には忠告や助言が多くみられます。どれもまっとうなものばかりで、ウォーレン・バフェットが「よく書けている」と推薦するだけのことはあります。今回も同書からの引用です。

私自身のこれまでの投資を振り返ってみると、市場というのは予想や勘や期待どおりにはいかないものだと痛感する。したがって、常に株式投資には危険がつきものだと心にとどめ、多額の投資をしないように心がけている。ゴールドマン・サックス時代の投資経験から、市場の性質を思い知らされたためでもある。しかし、1973年に市況がかなり悪かった頃、私が基礎的条件を熟知している企業の株が下落し、その長期的な経営見通しに比べてかなり割安になった。買い時だと判断し、そうした企業の株を購入したのだが、その後も株価は下落し続け、翌1974年の底値の時には購入時から50パーセントも下がっていた。

この話は、熟練した手堅い投資家にとっても、市場の底やピークを見きわめるのは難しいことを物語っている。もう少し幅広い観点から言うならば、目先の市場の動きは予測不可能なので、投資家は長期的なリスクやリターン、リスクに対するみずからの忍耐力に基づいて、資産運用を行うべきである。しかしながら、かく言う私もこのささやかな教訓を忘れ、短期的な市場の動きに関心を奪われがちである。1998年から2000年にかけてのように好調だった時期だけに目を向ければ、私はすばらしい投資実績を記録していると言える。しかし、これまでの投資判断を正直にすべて振り返ると、おそらく短期市場予測の正答率は、せいぜい五分五分であり、それ以上の判断のできる投資家はいないと思う。1973年の経験は、何事にも絶対主義は禁物だというよい警告となるだろう。それは反対思考の株式投資運用者にも言えることだ。ある方向の長期的なトレンドを目にしたときには、それが賢明な判断であるかどうか常に疑念を持つべきである。とくに1973年に私がしたように、市場全体の動きに反する判断を下す場合には、総崩れした際には長い間痛手を負うこともあると覚悟するべきである。かつてゴールドマン・サックスのパートナーだったボブ・ヌーチンがよく口にしていたように、底値で株を売却する投資家をばかにはできない。問題は現実に目の前にあるが、結果はどうなるかわからないからだ。あとから振りかえってみて初めて、最悪の事態がすぎたことがわかるものなのである。 (p.457)

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