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2012年2月7日火曜日

専門家の予測能力は高いのか?

今回も「競争優位で勝つ統計学---わずかな差を大きな勝利に変える方法」からの引用です。専門家の意思決定の質に関する孫引きになります。

専門家の直感が未来を予測する力については、これまで多くの研究がなされてきた。その結果は、専門家の直感に大きな信頼を寄せる人々にとっては少しばかり期待はずれなものだ。カリフォルニア大学バークレー校組織行動学教授だったフィリップ・テトロックは著書『専門家の政治判断、その真価を問う』で、専門家は一般的に思われているほど予測能力が高いわけではないと示唆している。彼は、専門家は自己の見解を述べたりプレゼンテーションをする方法には長けているが、それはどちらかというと表面的な要素にすぎず、客観的に見ると意思決定の質の面では往々にして物足りないと述べる。多くの場合その原因は、過剰な自信から目の前の問題に対する十分な検討を怠っていることにある。つまり、データを軽視し、綿密な調査よりも似たような場面での経験に依存する傾向にあるというのだ。

これが本章の教訓だ。優れた意思決定の根底には、例外なく何らかのデータと、特定の状況についての綿密な調査結果が存在する。その工程はスプレッドシートやコンピューターの分析結果としては残らないかもしれないが、あくまでも科学であって技ではない。(p.272)


この一文は専門家の持つ知見やテクニックを疑うものではなく、人間の脳に潜む落とし穴を指摘したものと捉えられます。特定の分野に特化するほど接する情報が見慣れたものになり、意思決定が短絡になる。チャーリー・マンガーが言うところの「疑念を払う傾向」の一面であり、また「自意識過剰の傾向(Excessive Self-Regard Tendency)」でもあります。ファインマンのやりかたも思い出されます。

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