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2012年12月28日金曜日

ビジョナリー・カンパニーのその後(ダニエル・カーネマン)

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前回に続き、カーネマンの『ファスト&スロー』から引用します。今回は「たぐいまれな」能力を持つCEOの話題です。

多かれ少なかれ成功した企業同士の比較は、要するに、多かれ少なかれ運のよかった企業同士の比較にほかならない。読者は運の重要性をすでに知っているのだから、めざましい成功を収めた企業とさほどでない企業とを比較して、ひどく一貫性のあるパターンが現れたときには、眉に唾をつけなければならない。偶然が働くケースで出現する規則的なパターンは、蜃気楼のようなものである。

運が大きな役割を果たす以上、成功例の分析からリーダーシップや経営手法のクオリティを推定しても、信頼性が高いとはいえない。たとえCEOがすばらしいビジョンとたぐいまれな能力を持っているとあなたがあらかじめ知っていたとしても、その会社が高業績を挙げられるかどうかは、コイン投げ以上の確率で予測することはできないのである。『ビジョナリー・カンパニー』で調査対象になった卓越した企業とぱっとしない企業との収益性と株式リターンの格差は、おおまかに言って調査期間後には縮小し、ほとんどゼロに近づいている。トム・ピーターズとロバート・ウォータマンのベストセラー『エクセレント・カンパニー』で取り上げられた企業の平均収益も、短期間のうちに大幅減を記録している。(p.302)


最近取り上げたチャーリー・マンガーの言葉「平均してみれば、ビジネスの質にかけるほうが、経営者の質にかけるよりもよいでしょう」が思い返されますね。(過去記事)

2012年12月26日水曜日

自信を持つなど言語道断である(心理学者ダニエル・カーネマン)

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以前とりあげた心理学者ダニエル・カーネマンの新刊『ファスト&スロー』が翻訳されていました。過去記事では、題名の訳を『ぱっと考える、じっくり考える』としてご紹介したものです。現在は上巻を読み終えた段階ですが、内容の充実ぶりに圧倒されています。一般向けの心理学の本は少しずつ読むようにしていますが、本書はチャーリー・マンガーの推薦書『影響力の武器』にならぶバイブル級の一冊になると思います。

重要な意思決定をしなければならない人にとって、参考になるところが多い作品です。投資家のみなさんにも、一読されることを強くおすすめします。

今回は同書から、自信や信念に関する話題を引用します。

あなたはどうしても、手持ちの限られた情報を過大評価し、ほかに知っておくべきことはないと考えてしまう。そして手元の情報だけで考えうる最善のストーリーを組み立て、それが心地よい筋書きであれば、すっかり信じ込む。逆説的に聞こえるが、知っていることが少なく、パズルにはめ込むピースが少ないときほど、つじつまの合ったストーリーをこしらえやすい。世界は必ず筋道が通っているという心楽しい信念は、盤石の土台に支えられている。その土台とは、自分の無知を棚に上げることにかけて私たちはほとんど無限の能力を備えている、という事実である。(p.293)


システム1[瞬発的に判断する機能]は、ごくわずかな情報から結論に飛躍し、しかも飛躍の幅がどの程度かがわからないようにできている。「見たものがすべて」なので、手元にある情報しか問題にしない。それに基づく結論のつじつまが合っていさえすれば、自信が生まれる。私たちが自分の意見に対して抱く主観的な自信は、システム1とシステム2[熟考する機能]がこしらえ上げたストーリーの一貫性に裏付けられているのである。情報は少ないほうがつじつま合わせをしやすいので、情報の量と質はほとんど考慮されない。私たちは、人生で信じていることのうち最も重要ないくつかについては、何の証拠も持ち合わせていない。ただ愛する人や信頼する人がそう信じている、ということだけが拠りどころになっている。自信を持つことはたしかに大切ではあるが、私たちが知っていることがいかに少ないかを考えたら、自分の意見に自信を持つなど言語道断といわねばならない。(p.304)


自信は感覚であり、自信があるのは、情報に整合性があって情報処理が認知的に容易であるからにすぎない。必要なのは、不確実性の存在を認め、重大に受け止めることである。自信を高らかに表明するのは、頭の中でつじつまの合うストーリーを作りました、と宣言するのと同じことであって、そのストーリーが真実だということにはならない。(p.309)


蛇足ですが、字数が多くてうれしいと感じた本は久しぶりでした。

2012年12月25日火曜日

2012年の投資をふりかえって(2)一口投資で撤退編

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ピーター・リンチが投資する際に、「気になった企業はひとまず少し買い付ける」という文章をどこかで読んだ記憶があります。この1年はわたしも同じやり方をとってしまい、リンチさんには申し訳ありませんが、あまり誉められたものではないと自省気味に感じています。

今回は、昨年や今年に少額を投資したものの、早々にひきあげた銘柄を振り返ります。基本的には、昨年の投稿で注目銘柄としてあげた企業が対象となります。

6140 旭ダイヤモンド工業
6157 日進工具
3891 ニッポン高度紙工業
6988 日東電工
5201 旭硝子
5333 日本ガイシ
2178 トライステージ

上記のうち、最終的に本格的に投資した銘柄は1社のみとなりました。各銘柄について、以下に売却した理由等を若干記します。

■旭ダイヤモンド工業(6140)
当社は、機械加工で使用する工具のうち、主にダイヤモンドを刃材とするものを製造しています。ニッチで利益率がまずまずだったのですが、近年になってシリコンウエハー切断用のワイヤー「エコメップ」が大ヒットし、利益水準を押し上げました。また財務や配当方針の面でも、株主のほうを向いているように見受けられます。このように、自分の投資方針と合致している会社なのですが、どこか腑に落ちない点が残り、投資をひきあげました。購入は1000円強、売却は1077円で若干の売却益ですが、時期がたまたまよかったようです。その後、昨年来の太陽電池の需給バランスが悪化したことで主力のエコメップの販売が伸び悩み、それに同調して株価も低迷気味で、現在は780円前後です。

何がひっかかっているのか自分でもよくわからないのですが、きちんと納得できないときは、じっとするか手を引くことを旨としています。

■日進工具(6157)
当社は今年の主要投資先となったので、別の回でとりあげます。

■ニッポン高度紙工業(3891)
当社は、主にコンデンサ用セパレータを製造しており、製造技術や素材に特徴があることで、それなりの利益率を確保してきました。地方に本拠地をかまえていることもあり、個人的には応援したい企業なのですが、投資はやめとしました。購入は1400円前後、売却は1250円前後で損失を出しました。現在の株価は650円前後です。

投資をやめた主な理由は2つです。まずは製造拠点の立地についてです。株式投資を始めたころから、リスク管理の中心テーマとして巨大地震のリスク回避を念頭においてきました。今回は東日本でしたが、東海地方を最大のリスクと捉え、同地域周辺を中心拠点とする企業への投資は避けてきました。当社の主要拠点は高知県ということで、当初は確認していませんでしたが、拠点の地図をみると海岸沿いに立地しており、津波の直撃を受ける恐れがありました。なお、このリスクは当社の有価証券報告書に明記されており、新工場を日本海側に建設する大きな理由にも挙げられています。

第2の理由は、設備投資費用が重いことです。この影響のせいか、財務諸表をさかのぼって読むと、株主資本がそれほど増加していない点が気にかかりました。

■日東電工(6988)
投資家に人気のある企業なので、他言は無用かと思います。和製3Mという言葉がぴったりで、経営がうまくまわり、勢いの良さが感じられます。しかし昨年に2900円前後で購入するも、早々に3200円前後で売却しました。現在は4000円前後です。売却した理由として、利益が液晶関連の事業に偏重していることを考えましたが、当社の実績を鑑みれば、もう少し長い目で見て、売らずに保有すべきだったと感じています。株価がまた下がることがあれば、継続保有したいと考えています。

ただし、このような優良企業は全部は売らず、最後の一口(1単元)だけは残すようにしています。

■旭硝子(5201)
当社は液晶ディスプレイ用ガラスで世界シェア第2位につけており、寡占的な事業のため、利益率が高水準です。購入したのは1単元のみで600円、売却は570円なので売却損です。現在は640円です。

売却した理由は2つです。第一に、競合他社のコーニングを調べると、そちらのほうが有望かつ割安に思えたからです。ただし、同社の株式を買うには至っていません。第二は、利益水準と比して自動車関連の事業に関する設備投資が重いことです。これには中長期的な成長戦略が織り込まれているのかもしれませんが、うまく判断できませんでした。きちんと納得できなかったので、利益が出ていたとしてもいずれは売却したと思います。

■日本ガイシ(5333)
当社には投資していません。

■トライステージ(2170)
以前の投稿で触れたので、ここではとりあげません。

これ以外の「一口投資」としては、マニーに投資しました。数単元購入しましたが(2600円強)、日東電工と同じように、株価が若干上がったところで売却し、今は1単元だけの保有です。現在は3200円強です。売却した理由は、そもそもの自分の買値にもうひとつ納得できなかったからです。買値に自信が持てない最大の要因は、当社の顧客動向をきちんと理解していないことです。そのため、顧客との力関係や市場の成長性を、自信をもって判断できていません。当社に対しては、株価が大きく下がらないと本気になって勉強しない、という悪い面がでています。

2012年12月21日金曜日

チェスの名人たちを、目隠ししたまま相手にする(チャーリー・マンガー)

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現代の古典ともいえるチャーリー・マンガーの講演は少しばかり古いものが多いのですが、比較的近年のものが公開されていたのでご紹介します。以下のサイトから、Scribdへアップロードされたファイルにリンクされています。

Charlie Munger Lecture at the Harvard-Westlake School (Santangel's Review)

題名にでている「ハーヴァード・ウェストレイク高校」とは以前にとりあげたプレップ・スクールのことで(過去記事)、チャーリーが理事会に関わっている高校です。また、この講演にはオークツリーのハワード・マークスも同席していたようです。

今回から始まるこのシリーズでは、上記のテキストを全訳していきます。PDFファイルで10ページほどの文章ですが、毎度のことながら、のんびりペースで進めていくことをご容赦ください。

ハーバード・ウェストレイク高校におけるチャーリー・マンガーの講話
(2010年1月19日)
Charlie Munger at Harvard-Westlake School January 19, 2010

ジム・ギブソン:
チャーリー、なぜそんなにたくさんの頭脳明晰な人が過ちを犯したのでしょうか。[金融危機のこと]

チャーリー・マンガー:
ああ、それはすばらしい質問ですな。私自身もまったく同じ謎を明かしたいと、これまでかなりの時間を割いてきたものです。非常に優秀でしっかりした人たちが、よってたかってまるでおかしな判断を下し、災厄を招くことがあります。はっきりいって、これはいたるところで見かけられますね。その原因のいくつかは若いころに合点していましたが、この件にはすごく興味があったので、その頃に自分なりに悟りを開きました。6人ものチェスの名人を相手に、しかも目隠ししながら勝負を挑んで勝ちを得るなんて、できっこないと。神は、そのような力をチャーリー・マンガーには与えて下さらなかったのですね。「しょうがないな、わたしがずっと堅実にやっていくのだったら、そういう人たちのように愚かではいけないんですね」。そうしてきたのが、今の私です。

バークシャー・ハサウェイが注目されているのは、我々が何かコツをつかんだように見えることも、その理由のひとつかと思われます。しかしそれは、目覚ましいといったものではなく、単にバカなことを避けているだけのことです。結局は同じことでしょうと思うかもしれませんが、まあ、そうなのかもしれません。しかし我々のようにやってみれば、より深く理解してもらえると思います。つまり、賢い人たちを誘う愚かさの主だったものを見つけ出し、考えたり組み立てるパターンを体系化するのです。そうすれば、その手の愚かしさにはまり込むことはないと思います。さて、現在の状況は、きわめて聡明な人がそろっている場所にも関わらず、ものすごい認知上の誤りがあちこちで起きています。これは本当に興味深いことですね。

それでは、一連の事例をざっとながめていきましょう。まずは学術界による過ちです。最高水準の大学にいる教授連が、完璧にばかげたアイデアにとりつかれています。筆頭にくるのが効率的市場理論ですね。その昔、マッキンゼーに多大なる影響を及ぼした人が、ワシントン・ポストの株が1/5の値段で売られているときに同社に来て、こう発言しました。「株を買ってはなりません。効率的市場理論によれば、会社全体を買う金額の1/5で売られるということはありえないのですから」。当然ながら、こういった愚かな概念を信奉するような心の持ち主は、それを否定するような事実が出てきても、科学における伝統や心の中にある良識に、まるで従わないのです。彼らは何十年間にもわたって、このたわごとを我々の子供に教え込んできましたし、なんともまあ、今でも同じことをやっている人がたくさんいます。この概念は経済学の代表的な教科書にも載っており、ポール・サミュエルソンのような頭のいい人が信じているものです。彼は本当に頭脳明晰な人ですよ。では、賢い人がそのようなばかげた考えをずっと抱いてきたのはなぜでしょうか。もう少し事例をたどった後で、またこの主題に戻ることにします。

Jim Gibson:
Charlie, why did so many smart people get it wrong?

Charlie Munger:
Well, that is a marvelous question and it is such a marvelous question that I have devoted a big chunk of my life to studying that exact question. It was obvious to me for some reason, at an early age, that a great many very brilliant and disciplined people made perfectly screwy decisions that were disastrous -- and that it happened, frankly, wherever I looked. I found this extremely curious, and somehow early in life I got the idea that I would never be able to play chess blindfolded against six Grandmasters and win. God just did not give Charlie Munger any such skill. But I said, ‘Oh my gosh, I cannot be as asinine as all these other people if I just kind of work at it steadily for a long time,' and that is what I did.

I think part of the popularity of Berkshire Hathaway is that we look like people who have found a trick. It's not brilliance. It's just avoiding stupidity. You say it is the same thing just stated differently -- well, maybe it is the same thing just stated differently. But you understand it better if you go at it the way we do, which is to identify the main stupidities that do bright people in and then organize your patterns for thinking and developments, so you don't stumble into those stupidities. Of course, this present situation involves massive cognitive failure at a great number of places dominated by very, very bright people, and that is quite interesting.

Let's just go through the list, briefly. Academia failed. The professors at our greatest universities [have] perfectly asinine ideas -- first, about efficient market theory. One of those people influenced McKinsey [& Company] so much that McKinsey came to the Washington Post at the time it was selling at one-fifth of what it was plainly worth as a share of the total enterprise, and said, ‘You can't buy [the stock] in because, under efficient market theory, it can't be worth a fifth of what people would pay for the whole company.' Of course, the kind of mind that would keep a stupid idea like this when they have a fact that would clearly refute it -- it clearly violates traditions of science and mental decency. They taught this drivel to our children for decades and, by God, a lot of people are still doing it. It was in the major textbooks in economics and people as smart as Paul Samuelson [believed it] -- and that is a significantly smart man. How do smart people get such dumb ideas and hold them so long? I'll try to come back to that theme after I've enumerated more examples.

2012年12月19日水曜日

最高の商売に立ち返る(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる世知入門で、バークシャー・ハサウェイが買収したGEICO(ガイコ)の昔話です。このシリーズも今回が最終回になります。(日本語は拙訳)

特上たる事業を営んでいたGEICOはひどい災厄に陥りましたが、それでも商売を続けていました。成功に酔って天狗になってしまい、ばかげたことに踏み入ってしまったのです。これだけ大儲けできるのだから、なんでもやれると考えたのですね。そのツケがまわり、莫大な損失を抱えることになりました。

そんな彼らのすべきことは、やらかした愚行をすべて切り捨て、前からやっていた最高の商売に立ち返ることでした。なんとも単純なモデルだと思われるでしょうが、そのとおりです。過去を振り返れば、この手段は何度も繰り返されています。

我々がGEICOに投資し続けたことであげた利益を考えてみてください。同社のビジネスは素晴らしいものです。しかし一方で、とんでもない商売も抱えていました。容易に手放せたはずなのに、頭はいいけれど気難しい方々がいたおかげで、そうできなかったのです。これこそ、探し当てたい事例の典型といえるでしょう。

いろいろと話をしてきましたが、人生を通じてみれば2,3回は大当たりをみつけられるかもしれませんし、けっこうなものであれば20回や30回はみつけられると思います。

And GEICO had a perfectly magnificent business - submerged in a mess, but still working. Misled by success, GEICO had done some foolish things. They got to thinking that, because they were making a lot of money, they knew everything. And they suffered huge losses.

All they had to do was to cut out all the folly and go back to the perfectly wonderful business that was lying there. And when you think about it, that's a very simple model. And it's repeated over and over again.

And, in GEICO's case, think about all the money we passively made. It was a wonderful business combined with a bunch of foolishness that could easily be cut out. And people were coming in who were temperamentally and intellectually designed so they were going to cut it out. That is a model you want to look for.

And you may find one or two or three in a long lifetime that are very good. And you may find twenty or thirty that are good enough to be quite useful.

2012年12月17日月曜日

手つかずのまま眠っている(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの世知入門です。ディズニーの話題です。(日本語は拙訳)

どんな経営陣であろうが、値上げするだけで大幅に利益を向上できるビジネスというものが存在します。しかし、それが実施されていないとくれば、これこそ究極の「誰にでもわかる」投資先ですね。そのような企業には、手つかずのまま眠っている莫大な価格決定力があるわけですから。これは成長株モデルの一部をなすもので、人生を通じて何度か出会えるかもしれません。

たとえばディズニーはその力を有しています。孫を連れてディズニーランドへ行くのは非日常的なできごとで、それほど頻繁ではないでしょう。その上、たくさんの人が国中からやってきます。そこでディズニーは価格を大幅に上げられることに気づいたのです。その後も、来場者は増えつづけていきました。

ですから、アイズナーとウェルズがなした見事な業績は彼らの非凡さによるところも大きいですが、あとは値上げのおかげだったのです。ディズニーランドやディズニーワールド、それから昔のアニメ映画のビデオカセットですね。

Within the growth stock model, there's a sub-position: There are actually businesses that you will find a few times in a lifetime where any manager could raise the return enormously just by raising prices - and yet they haven't done it. So they have huge untapped pricing power that they're not using. That is the ultimate no-brainer.

That existed in Disney. It's such a unique experience to take your grandchild to Disneyland. You're not doing it that often. And there are lots of people in the country. And Disney found that it could raise those prices a lot, and the attendance stayed right up.

So a lot of the great record of Eisner and Wells was utter brilliance but the rest came from just raising prices at Disneyland and Disneyworld and through video cassette sales of classic animated movies.


値上げとディズニーの話題は、わずかですが過去記事でも触れています。この文章を踏まえていたのは、言うまでもありません。

2012年12月16日日曜日

合衆国憲法制定会議(アレグザンダー・ハミルトン伝)

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前回の投稿で、チャーリー・マンガーはアメリカ合衆国の憲法制定会議について触れていました。話の出所を調べようと思い、伝記作家ロン・チャーナウが書いた『アレグザンダー・ハミルトン伝』をあたってみたところ、内容が一致する箇所があったのでご紹介します。

また[草案を作る]この小委員会では、総じて秘密主義が好ましいという意見が優勢で、予備投票は記録されないことになった。さらに公正を期するため、小委員会は「議場での発言は、許可なく印刷されず、ないしは公表されたり伝達されてたりもしない」ことも決めた。(中略)

新しい憲章を作る会議に、このような非民主的な規則が用いられたのはなぜなのだろう。代表の多くは、自分たちのことを賢明な独立した市民だと考えており、彼らが気にかけていたのは、派閥などという唾棄すべきものではなく、公共の福利だった。「もし討議が公開で行なわれていたとしたら、派閥の怒号に邪魔されて満足な成果を出せなかっただろう」とハミルトンは述べている。「後になって討議の内容が明らかになっていたら、扇動的な雄弁に多くの材料を与えていたことだろう」。非公開の会議だったおかげで、活発で自由な議論が交わされ、史上屈指の啓発的な文書が生まれたのだ。だが同時に、この秘密主義のせいで、会議の内部事情は中傷的な伝説の材料となり、ハミルトンの後のキャリアに悪影響を及ぼすことにもなった。(p.450)


ベンジャミン・フランクリンが「生涯最高の威厳ある立派な会議」と絶賛したこれらの賢人は、いかなる人々だったのか。12邦の代表55名--ロードアイランドは変節して会議をボイコットした--は、アメリカを代表する人々とはあまり言えない。全員が白人で教育を受けた男性であるうえ、大半が裕福な資産家だった。過半数が弁護士で、そのため前例というものを気にしていた。プリンストンの卒業生(9名)が、イェール(4名)とハーヴァード(3名)よりも圧倒的に多かった。平均年齢は42歳で、32歳のハミルトンや36歳のマディソンは若いほうだった。(p.453)


さて、衆院選の投票に向かう時間です。

2012年12月14日金曜日

誤判断の心理学(27)質疑応答(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる「誤判断の心理学」は、今回が最後になります。25種類の傾向を示した後に、チャーリーは自問自答の形でいくつかの疑問に答えています。過去記事「(実例)旅客機からの脱出試験」が、今回の前段にあたる文章です。(日本語は拙訳)

3番目の質問も複合的なものです。これら一連の傾向をみてきましたが、現実問題として、この物事を考えるやり方[各種の傾向をチェックリストとして使う方法]にはどんなよさがあるのでしょうか。現実的なご利益は得られるのですか。そういった心理的傾向は広範な進化[遺伝的なものと文化的なものの組み合わせ]を通じて完璧なまでに人の心に組み込まれているので、取り除けないと思いませんか。では、この問いに答えましょう。これらの傾向は、おそらく悪性のものより良性のものが多いと思います。もし反対だったら、人間の状態や限定的な脳の容量から考えると、これらの傾向はきちんと働き、それゆえに人間はここまで到達していなかったと思われるからです。ですから、これらの傾向はただ自然に消失することはないでしょうし、そうなってはならないのです。にもかかわらず、これまで述べてきた心理学的な物事の考え方を正しく理解して使えば、知恵や良き行いを広めることができますし、また災難を避けるのにも役に立つでしょう。これらの傾向を宿命としてうけとめるのではなく、その実態を認識し、対応策を覚えておくことで、トラブルを未然に防ぐ一助となります。数はそれほどありませんが、次に挙げる例をみれば、基本的な心理学的知識があると非常に役に立つことが、改めて認識できるでしょう。

1. カール・ブラウン氏が実践してきたコミュニケーションのやりかた
[未訳出。コミュニケーションの際には、5W1Hを必須とするやりかた。なお同氏の話題は過去記事にもあり]

2. パイロットの訓練に使うシミュレーター

3. アルコホーリクス・アノニマス[断酒団体]が採用しているシステム
[過去記事]

4. メディカル・スクールにおける医療訓練の方法

5. 合衆国憲法制定会議における議事進行上の規則
この会議は完全に非公開とされ、予備的な投票の段階では投票者名は記録されませんでした。また会議末まではいかなるときでも票を覆すことができ、最終的には全会一致をもって決定としました。これは人の心理を重視した、非常に賢明なやりかたです。もし建国者たちがほかの手続きに従っていたら、さまざまな心理学的傾向に影響され、首尾の一貫しない、頑なな態度をとりつづける者が続出したことでしょう。エリートたる建国者たちが心理的な面において鋭敏だったことで、紙一重のところで建国がなしとげられたのです。

6. ばあちゃんのいいつけ
これは、やるべきことを抱えている人に対して動機づけを与え、よりよい成果を挙げるよう仕向けるものです。[過去記事]

7. ハーバード・ビジネス・スクールが強調する決定木の重要性
まだ若かったころの私はおろかにも、ハーバード・ビジネス・スクールのことをバカにしていました。「高校で習う代数を28歳にもなる人たちにむかって、実生活でどう使うのかを教えてるって、どういうこと?」。しかしのちになって私にも道理がわかり、それが非常に重要なことが理解できました。心理的な傾向から及ぼされる悪影響に対抗するためだったのですね。気がつくのが遅かったですが、そうでないよりはマシでしょう。[過去記事]

8. ジョンソン・アンド・ジョンソンにおける事後評価の実施
ほとんどの会社では、買収した会社が失敗だったとしても、おろかな買収に関係した人、事務作業、プレゼンテーションなどは全て、間をおかずに忘れ去られてしまいます。お粗末な結果に関わっていたと思われるので、誰も口にしないのです。しかしジョンソン・アンド・ジョンソンでは定められた規則によって、実施した買収が当初の予想とくらべてどれだけの成果をあげたのか振り返ることを、全員に課しています。これはとても賢明なやりかただと思います。

9. 確証バイアスを避けていたチャールズ・ダーウィンの卓越した先例
このやりかたを模倣したものとして、新薬の研究開発の例があります。これは、試験の際には「二重盲検法」に従うことがFDAによって義務付けられているものです。確証バイアスに対する究極の手段といえるでしょう。[過去記事]

10. 立会取引に対するウォーレン・バフェットのきめごと
参加しないこと。

My third question is also compound: In the practical world, what good is the thought system laid out in this list of tendencies? Isn't practical benefit prevented because these psychological tendencies are so thoroughly programmed into the human mind by broad evolution [the combination of genetic and cultural evolution] that we can't get rid of them? Well, the answer is that the tendencies are probably much more good than bad. Otherwise, they wouldn't be there, working pretty well for man, given his condition and his limited brain capacity. So the tendencies can't be simply washed out automatically, and shouldn't be. Nevertheless, the psychological thought system described, when properly understood and used, enables the spread of wisdom and good conduct and facilitates the avoidance of disaster. Tendency is not always destiny, and knowing the tendencies and their antidotes can often help prevent trouble that would otherwise occur. Here is a short list of examples reminding us of the great utility of elementary psychological knowledge:

One: Carl Braun's communication practices.

Two: The use of simulators in pilot training.

Three: The system of Alcoholics Anonymous.

Four: Clinical training methods in medical schools.

Five: The rules of the U.S. Constitutional Convention: totally secret meetings, no recorded vote by name until the final vote, votes reversible at any time before the end of the convention, then just one vote on the whole Constitution. These are very clever psychology-respecting rules. If the founders had used a different procedure, many people would have been pushed by various psychological tendencies into inconsistent, hardened positions. The elite founders got our Constitution through by a whisker only because they were psychologically acute.

Six: The use of Granny's incentive-driven rule to manipulate oneself toward better performance of one's duties.

Seven: The Harvard Business School's emphasis on decision trees. When I was young and foolish I used to laugh at the Harvard Business School. I said, “They're teaching twenty-eight-year-old people that high school algebra works in real life?” But later, I wised up and realized that it was very important that they do that to counter some bad effects from psychological tendencies. Better late than never.

Eight: The use of autopsy equivalents at Johnson & Johnson. At most corporations, if you make an acquisition and it turns out to be a disaster, all the people, paperwork, and presentations that caused the foolish acquisition are quickly forgotten. Nobody wants to be associated with the poor outcome by mentioning it. But at Johnson & Johnson, the rules make everybody revisit old acquisition, comparing predictions with outcomes. That is a very smart thing to do.

Nine: The great example of Charles Darwin as he avoided confirmation bias, which has morphed into the extreme anti-confirmation-bias method of the “double blind” studies wisely required in drug research by the F.D.A.

Ten: The Warren Buffett rule for open-outcry auctions: Don't go.

2012年12月12日水曜日

ほんまはこいつ賢いんちゃうか(山中伸弥教授)

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ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授の聞き語りが新刊で出ていたので、読んでみました。『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』という本です。そのなかで「逆から考える」好例が語られていたので、ご紹介します。

僕らはこの24個の中に、確信するほどではないものの、初期化に必要な遺伝子があるかもしれないと予想していました。そこで24個を1個ずつ、レトロウイルスという遺伝子の運び手を使って、皮膚の細胞(正確には繊維芽細胞)に送りこんでみました。しかし、皮膚の細胞は初期化せず、ES細胞のような細胞はできませんでした。途方に暮れていたところ、ぼくと一緒に奈良先端大から京大に移ってくれた高橋君が驚くべき提案をしました。

「まあ、先生、とりあえず24個いっぺんに入れてみますから」

これがなぜ驚くべきことかというと、遺伝子を外から細胞に送りこんでも、ちゃんとその細胞が取り込んでくれる確率はそんなに高くなく、だいたい数千個のうち1個くらいの割合です。もし遺伝子2個同時であれば取りこまれる確率はもっと低くなる。まして24個なんてできるはずがない。そう考えるのがふつうの生物学研究者です。その点、もともと工学部出身の高橋君はふつうの生物学研究者にはできない発想ができたのだと思います。

実際に24個すべて入れたところ、なんとES細胞に似たものができました。(p.113)


わたしだったら、頭ごなしに確率的に考えてしまい、このような柔軟な発想はできないと思います。24個いっぺんに入れることで、予期せぬ相互作用が生じたのでしょうか。ビジネスの世界では「やってみなけりゃわからない」という言葉をきくことが多いですが、複雑な状況が手詰まりのときには実は有効な選択肢なのかもしれませんね。

そしてもうひとつ、工学部出身にふさわしい秀逸なアイデアが続きます。

24個の中に初期化因子があることは間違いありませんでした。しかし、その中の1個だけではないことも明らかでした。それでは2個か。しかし24個から2個を選ぶ組み合わせの数は24 * 23 ÷ 2で276通りもある。もし3個なら、24 * 23 * 22 ÷ 6で2024通り。こんなにたくさん実験できません。そう考えあぐねていたところ、またしても高橋君が驚くべき提案をしてくれたのです。

「そんなに考えないで、1個ずつ除いていったらええんやないですか」

これを聞いたとき、「ほんまはこいつ賢いんちゃうか」と思いました。24個から1番目の遺伝子を抜いて23個を入れる、次に2番目の遺伝子を抜いた23個を入れるという具合に、1個ずつ抜いていきます。もし本当に重要な遺伝子なら1個欠けても初期化できなくなってしまう。まさにコロンブスの卵のような発想でした。まあ、ぼくも一晩考えれば思いついていたとは思いますが。(p.114)


組合せの回数を減らす取り組みとしては、品質工学(タグチ・メソッド)がよく知られていますが、この高橋さんのアイデアも美しいまでに実学的ですね。個人的な経験を振り返ってみれば、こういうアイデアはいったん頭を冷やした後や第三者からだと出やすいものと感じています。

ところで、新聞を読まないこともあって、山中教授の人となりを知りませんでした。が、本書を読んだかぎりでは、いい意味で普通のおじさんらしい印象を受けました。それほど歳がいっていないせいでしょうか、まだ大きな仕事が残っているとの強い意気込みが感じられる方です。

2012年12月10日月曜日

なかなか2回も当てられない(ハワード・マークス)

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前回に続いて、ハワード・マークスの著書『投資で一番大切な20の教え』の話題です。同氏は将来を確率的にとらえた上で意思決定するよう説いていますが、そのプロセスと結果のあいだに横たわる溝に対する見方を引用します。

多くの人は未来が不確実性で覆われていることを認めているが、少なくとも過去は既知で不動だと感じている。しょせん過去は歴史であり、絶対であり、不変だ。だが[ナシム・ニコラス・]タレブは、実際に起こったことは、起きる可能性があったことの小さな集まりに過ぎないと指摘している。したがって、ある計略あるいは行動が(実現した環境下で)良い結果をもたらしたとしても、その背景にあった決断が賢明であったとは限らないのだ。

もしかすると、最終的にその決断を成功に導いたのは、起きるとはまったく考えられていなかった出来事であり、運が良かっただけかもしれない。だとすれば、(結果的にうまくいった)その決断は軽率だった可能性もある。そして、数多くの「違った歴史」のどれかが実現していれば、その決断は誤ったものになっていたかもしれない。(p.237)


すぐれた決断というのは、論理的で知力に秀でた情報通の人が下した決断で、その時点、つまり結果がわかる前の段階において、すぐれているとみなされたものだ。(中略)

損失リスクの場合と同様に、ある決断が正しいものとなるかどうかを左右する多くの要因は、あらかじめ知ったり、数値化したりすることができない。堅実な分析に基づいて、すぐれた決断を下したにもかかわらず、異常事態によって不利益を被った者がいたのか、またヤマを張ったことで利益をあげた者がいたのかを確実に知るのは、事が起きたあとでも難しいかもしれない。つまり、誰が最良の決断を下したのかを知ることは困難なのだ。一方で、過去のリターンは容易に評価できるため、誰が最も儲かる決断を下したのかはわかりやすい。「すぐれた決断」と「儲かる決断」は混同されがちだが、洞察力のある投資家はその違いを十分に認識しているはずだ。

長期的には、すぐれた決断が投資利益をもたらすと信じるほかない。だが短期的には、すぐれた決断が投資利益につながらなかったとしても、冷静に振る舞わなければならない。(p.239)


「世界は、習熟することや予測することが可能な、秩序だったプロセスの中で動いている」と思い込んでいる投資家はプロ、アマを問わず多い。これらの投資家は、物事につきまとうランダム性と、将来の成り行きに関する確率分布を無視している。このため、自分が予測するたった一つのシナリオに基づいて行動する道を選ぶ。それでうまくいくこともあるが(その投資家は称賛されるだろう)、長期的な成功をもたらすほどの一貫した成果はあげられない。注目すべきは、経済予測でも投資戦略でも、その時々でみごとに的中させる者が必ずいるが、同じ人物が2回ということはまれだ。最も成功している投資家とは、大半の場合に「だいたい当たっている」者であり、それが他の投資家よりもはるかにすぐれた点なのだ。(p.310)


確率の話題は、本ブログで何度か取り上げています。たとえば、チャーリー・マンガーが勧めているやりかたは、将来のシナリオを描く際に順列・組み合わせを使うといったものです(過去記事)。

2012年12月8日土曜日

絶対に負けないはずだった(ハワード・マークス)

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ファンド・マネージャーのハワード・マークスを過去記事「投資の世界で生き残る公式」でとりあげましたが、コメント欄でisさんが彼の著作が翻訳されていることを教えてくださいました。その『投資で一番大切な20の教え』を読了しました。書かれている内容はオーソドックスですんなりと受けとめられるものばかりですが、重要なのは、投資業界の生存競争に生き残り、現時点で預かり資産800億ドル(日本円で6兆円超)の実績をあげている彼によって書かれたことでしょう。

今回ご紹介するのは、「リスク」を話題にした章であげられた逸話のひとつです。

「最悪の場合の」予測という言葉を何かと耳にするが、実際に起きた状況はそれよりもっと悪かったということがしばしばある。父からよく聞いた話を紹介しよう。いつも負けてばかりのギャンブラーがいた。ある日、馬が一頭しか出場しない競馬のことを知り、借金をつぎ込んでその馬に賭けた。しかし、馬はコースを半周したところでフェンスを越えて逃げてしまった。(p.88)

2012年12月6日木曜日

ソーセージ・マクバフェット(ウォーレン・バフェット)

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バークシャー・ハサウェイが買収した新聞社のサイトOmaha.comに、ウォーレン・バフェットの「食」に関する話題がでていました。ときにウォーレンは、ソーセージ・ビスケットを2つ買い、中身のパティを重ねて、ひとつにまとめて食べるとのこと。名付けて「ソーセージ・マクバフェット」(Sausage McBuffett)だそうです。

A traveling Buffett talks taxes, elephants - and less weighty topics (Omaha.com)

もうひとつ、こちらはまじめな話題です。買収候補として求める巨大企業のことを、ウォーレンは"elephant"と喩えています。市場価値が2000億ドル超[1兆6千億円]の企業が該当するようですが、これに関する一節を引用します。(日本語は拙訳)

「その規模の会社でしたら、全部わかります」、バフェットは司会のチャーリー・ローズに答えた。「つまり、すべての象を見張っているということです」。さらにバフェットはこう言った。もしCEOが会社を売りたいと連絡してきたら「5秒か10秒で」返答できます、と。

"I'm familiar with all the companies when you get to that size," Buffett told Rose. "I mean, I've seen all the elephants." If a CEO calls and says a company is for sale, Buffett said, he can make an offer in "five or 10 seconds."

過去記事「10秒ください」の発言と整合していますね。ところで、ソーセージ・ビスケットなる食べ物のことを初めて知りました。

2012年12月5日水曜日

若者の車離れはどうなるのか(GMO)

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ジェレミー・グランサムのGMOで、日本の情勢や日本株の見通しを概説したホワイト・ペーパーが公表されていました。このところグランサムは日本株を推していましたが、この文章でも日本企業の見通しは前向きです。

今回はそのなかで登場した日本の「若者の車離れ」について、一節を引用します。(日本語は拙訳)

Japan: After the Quake, After the Floods (GMO)

いくつかのデータによれば、若年層で自家用車の保有率が低下している原因として、低調な所得の伸び率(車を購入できない)、好ましからざる世帯構成(同居している親の車を借りる)、都市化の進展(駐車場不足)などが示されている。このことから、問題なのは車に対する興味ではなく、所得不足によるものであり、景気が上向いて若年層にも所帯を持つのに十分な蓄えができ、郊外へ転居するようになれば、この問題は解決するかもしれない。(p.4)

Some data hint at this, but any weakness in car ownership among younger people may also reflect factors such as weak income growth (cannot buy a car), weak household formation (living at the parents’ house and borrowing the parents’ car), and increased urbanization (no place to park a car). Rather than a lack of enthusiasm for cars, the problem may be a lack of income, solved once the economy picks up and the young have enough money to get married and move to the suburbs.


個人的には、少し楽観的かなという印象を受けました。たとえば、祖父母や両親からの生前贈与で自家用車を購入すると全額が所得控除される、というように税制が変更されれば、少しは消費動向が変わるかもしれませんね。すみません、ただの妄想です。

なお、総務省の「平成21年全国消費実態調査」と平成11年の同調査を比較したところ、たしかに30歳未満や30-39歳の世帯では、単身者および二人以上世帯のいずれも保有率は減少しています。

2012年12月3日月曜日

政府が応援してくれる(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの世知入門、今回はバイ・アンド・ホールドの核心部分で、税金の話です。(日本語は拙訳)

しかしながら平均してみれば、ビジネスの質にかけるほうが、経営者の質にかけるよりもよいでしょう。どちらをとるかと問われれば、勢いにのっているビジネスをとるべきで、すばらしい経営者のほうではありません。

ですが、ひどいビジネスを立て直そうとする優れた経営者についていくのが実は賢明だったということも、極めて稀には見られます。

効いてくるものとしてもう一点、単純なものですが、税金の影響が挙げられます。資産運用マネージャーか誰かがこのことを話し合っている姿は、ほとんどみたことがありません。さて、30年にわたって年率15%の複利で増えるものを買い、最後の時点で35%の税金を払う場合、税引き後では年率13.3%の利益になります。

一方同じ投資をしても、手にした利益15%から税金35%を毎年払うことになると、15% * 35%を15%から減ずるので、年率9.75%にとどまります。この差は3.5%強ですが、これが30年間もの保有期間にわたって効くので、まさに刮目すべき結果となります。すばらしい企業にずっと投資したままでいる。所得税の仕組みに過ぎないのですが、それゆえに大きな強みとなるのです。

However, averaged out, betting on the quality of a business is better than betting on the quality of management. In other words, if you have to choose one, bet on the business momentum, not the brilliance of the manager.

But, very rarely, you find a manager who's so good that you're wise to follow him into what looks like a mediocre business.

Another very simple effect I very seldom see discussed either by investment managers or anybody else is the effect of taxes. If you're going to buy something that compounds for thirty years at fifteen percent per annum and you pay one thirty-five percent tax at the very end, the way that works out is that after taxes, you keep 13.3 percent per annum.

In contrast, if you bought the same investment but had to pay taxes every year of thirty-five percent out of the fifteen percent that you earned, then your return would be fifteen percent minus thirty-five percent of fifteen percent - or only 9.75 percent per year compounded. So the difference there is over 3.5 percent. And what 3.5 percent does to the numbers over long holding periods like thirty years is truly eye-opening. If you sit on your ass for long, long stretches in great companies, you can get a huge edge from nothing but the way income taxes work.


しかし人生を通じてビジネス上の失策をずっと観察してきましたが、このことは言えます。税金を抑えることばかりに夢中になるのは、とんでもない過ちにつながる典型的な原因のひとつだ、と。税金対策ばかりに心を砕く人がひどい過ちをおかす様子は何度も見てきました。

ウォーレンも私も、個人名義で原油の油井を掘削するようなことはしていません。自分の税金はおさめてきましたし、そうしたあとでも好成績をあげることができました。私から申し上げられるのは、節税商品を勧める人がでてきても、そういうのは買わないことです。

But in terms of business mistakes that I've seen over a long lifetime, I would say that trying to minimize taxes too much is one of the great standard causes of really dumb mistakes. I see terrible mistakes from people being overly motivated by tax considerations.

Warren and I personally don't drill oil wells. We pay our taxes. And we've done pretty well, so far. Anytime somebody offers you a tax shelter from here on in life, my advice would be don't buy it.


すばらしい投資先をいくつかみつけて資金を投じ、ただじっとしている。こうすることで、個人投資家は大きな優位を手にしたことになります。ブローカーに払う手数料は抑えられますし、ろくでもない話を聞かされることもそうありません。さらには国の税制が働いてくれ、複利ベースでみたときの年率を1パーセント、いや2, 3パーセント上乗せしてくれるのです。

利益がでるのだから多額の税金を払うことになったとしても、投資アドバイザーの世話になればずっとうまくやれるだろうし、奮闘してくれるお礼に1パーセント分を払ってもよい、などとお考えですか? なるほど、それはうまくいくといいですね。

There are huge advantages for an individual to get into a position where you make a few great investments and just sit on your ass: You're paying less to brokers. You're listening to less nonsense. And if it works, the governmental tax system gives you an extra one, two, or three percentage points per annum compounded.

And you think that most of you are going to get that much advantage by hiring investment counselors and paying them one percent to run around, incurring a lot of taxes on your behalf? Lots of luck.


この文章の後は引用しませんでしたが、チャーリーは「すばらしい企業であっても、高すぎる買い物はいけません」と注意しています。

2012年12月2日日曜日

2012年の投資をふりかえって(1)失敗編

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今年の株式投資を、何度かにわけて総括します。今回は、損失を確定して資金を完全にひきあげた銘柄についてです。

<投資先企業>
トライステージ(2178) (Yahoo! Japan株価)

当社については、昨年から株式購入に前向きなことを何度か表明していました(過去記事など)。その頃の株価は1,000円前後で、現在も同じ水準です。しかし投資結果は損失確定でおわりました。購入平均単価が960円に対して、売却平均単価は850円前後で、株価が下落する最中に売却しています。

当社の株価に対して「安全余裕が十分にある」と判断し、少しまとまった資金を投じました。しかし継続保有せずに損失を出して資金をひきあげました。このような投資行動に、弁解の余地はありません。自分の意思決定がいかに粗末だったか、ふりかえってみます。

■背景
財務指標のよい企業の株価が下がっていると、なにはともあれ注視するところがあります。当社もその一例で、監視銘柄にあげていたところ、実績PERの低さが目にとまったのがはじまりでした。その後、以下のような理由をふまえて投資することにきめました。

・一株当たりの余剰流動資産が大きかったこと
資産の評価は過去記事で取り上げたとおりです。そのため一時的に業績が悪化しても配当は維持され、大きな株価下落は起こりにくいだろうと考えました。つまり、株価の底値の観点からみて安全余裕があると判断していました。

・現段階での高水準の利益率
当社はTV通販の企画屋ですが、経営陣の前職コネによって広告代理店の扱うCM枠を仕入れるルートを確保しています。業界のことをよくわからないながらも、これはひとつの参入障壁だと捉え、今後も利益率を支えてくれるものと考えました。ただし、これが永続するのかどうかは判断できませんでした。

またマーケットの観点については、インターネット広告が急成長しているのは明らかですが、TV通販は急激に消えるものではないと捉えました。TVを漫然と見る消費者層も依然として残るだろうと想定したからです。ただし、この観点についても事業の中長期的な将来性はうまく思い描けませんでした。

一方、主要なリスクとしては「少数ながら大口顧客があるため、そこを逃すと売上高が大幅(10%)に減少する」ことを想定しました。ただし事業自体の利益率が高いことから、1社を逸失しても致命傷にはならないと判断しました。

■実行した投資
株式の売買時期と平均単価は次の図のようになります。


図に示すように、株を売却したのは株価が下落している時期でした。これは、市場全体が下落している時期と重なります。他の銘柄の株価に魅力がでてきていたので、さらなる下落に備えて、余裕資金をふんだんに用意しておきたいという思いがありました。

そこで保有株式の売却を検討したところ、保有したいという思いがいちばん弱かったのが当社でした。財務面からみた割安度はかなり大きく、いずれ(3-5年後)はそれなりの利益が得られると想定していたのですが、一番足りなかったのは自信をもって当社に投資しつづける心構えでした。他の銘柄は全般的に自分なりに納得し、覚悟をきめているのですが、当社はそこまで至っていませんでした。中途半端で始めたものが中途半端に終わる典型で、事業に関する中長期的な見通しも、まったく出番はありませんでした。

わたしが売却した後も大株主のプロスペクトは買い増しを続け、株価は2011年秋の水準である1,000円近辺まで回復しました。また前年比月次売上も、10月からは回復傾向にあります。プロスペクトのほうが賢明な投資をしていると感じました。

■逆に考えてみると...
株価の動きが逆になって、もし含み益がでていたらどうしただろうか、と考えてみました。上がり幅にもよりますが、少なくとも株数の半分は継続保有していたと思われます。当社のことを納得できていないと書いているのに、利益が出ているといないでは方針が一転することになります。大きな矛盾を抱えているな、と自分自身も感じます。しかし、これが現時点での私の正直な姿です。

■教訓
1. 素晴らしいビジネスだと確信できなければ、半額程度の割安水準でも急いで買い進めないこと。
2. 納得できなかったり、どこまでも付き合う覚悟がもてない企業の株は、最初から買わないこと。

2012年11月30日金曜日

誤判断の心理学(25)ゾンビ的自由が待っている(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーによる最後の心理学的傾向です。原文の"Lollapalooza"という見慣れない単語は過去にも何度か登場していますが、語感の軽さをだそうと考え、「とびっきり」という訳をあてています。(日本語は拙訳)

(その25)とびっきりなことにつながる傾向 - ある特定の成果を志向する種々の心理学的傾向が結合することで、極端な結末が生じる傾向

Twenty-Five: Lollapalooza Tendency - The Tendency to Get Extreme Consequences from Confluences of Psychological Tendencies Acting in Favor of a Particular Outcome

私が一度でも紐解いてみた心理学の教科書には、 この傾向を少なくとも何かしらまとまった形でとりあげたものはありませんでした。しかしこれは日常生活ではありふれた傾向で、たとえばミルグラムが得た強烈な実験結果を裏付けています。また一部のカルト宗教でも同じことをやって、大きな成果をおさめています。実践を繰り返して進化するうちに、洗脳対象の信者を同時に説得するには、いろんな心理学的な傾向を使って圧力をかけるのがよいとわかったのです。洗脳対象者の感じ方はそれぞれ異なりますが、パブロフが晩年に行った研究で使われた犬のように、カルトからの圧力を受けることで「ゾンビ的自由が保障された生活」の枠におさまる者もでてきます。実際に、この洗脳現象は「snapping」[ぱちんとはめ込むの意]と呼ばれています。

いったい全体、心理学の教科書を執筆する者がこのことを長きにわたって徹底的に無視してきたのは、なぜでしょうか。物理学や化学の科目をとった新入生に対して、心理学的な傾向同士がいかに結びつき、どんな効果が生まれるのか考えるように指導していないのは、どうしてでしょうか。相互に関連する心理学的傾向を扱うといった複雑さを克服できていないのに、自分の心理学の研究が適切だと考えているのは、いかなるものでしょうか。単純すぎるアルゴリズムに頼ってしまう心理的傾向が、誤った認識につながることを学ぼうとするときに、教授のほうが単純すぎる概念を使うほど皮肉なことがあるでしょうか。

この現象について、私なりに説明してみましょう。おそらくですが、ずいぶん前にお亡くなりになった教授たちは、こんな風に考えていたのではないでしょうか。学内で実施できて、いちどにひとつの心理学的傾向を対象とする、狭い領域にとどまった再現可能な心理学的実験を行うことで、その学問全体が作れるだろうと。そうだとしたら、主題に迫るやりかたを限定したことで、とんでもない過ちをおかしたことになります。まるで物理学において、実験室でできないからという理由で天体物理学を無視し、さらにはあらゆるものの複合的効果も無視するようなものです。初期の心理学の教授たちがこのようなやりかたを選んだのは、どのような心理学的傾向が働いたせいでしょうか。ひとつ考えられるのが「手近なものを買いかぶる傾向」で、これは制御しやすいデータを好むことに根ざしています。制限を加えることはすなわち、「かなづちを手にした人の傾向」の行き過ぎた例を生み出すものです。また別のものとしては、「羨望・嫉妬する傾向」も考えられます。初期の心理学の教授は物理学を正しく理解せず、そのうらやむ様子はある種奇妙な様子を呈していました。このことからも、心理学という学問に羨望や嫉妬という概念を含めないのは良策ではないことがわかるかと思います。

先人に関する歴史的な謎を追究するのは、ここまでとします。

以上で、心理学における合理的な傾向についての手短な私見はおしまいです。

This tendency was not in any of the psychology texts I once examined, at least in any coherent fashion, yet it dominates life. It accounts for the extreme result in the Milgram experiment and the extreme success of some cults that have stumbled through practice evolution into bringing pressure from many psychological tendencies to bear at the same time on conversion targets. The targets vary in susceptibility, like the dogs Pavlov worked with in his old age, but some of the minds that are targeted simply snap into zombiedom under cult pressure. Indeed, that is one cult's name for the conversion phenomenon: snapping.

What are we to make of the extreme ignorance of the psychology textbook writers of yesteryear? How could anyone who had taken a freshman course in physics or chemistry not be driven to consider, above all, how psychological tendencies combine and with what effects? Why would anyone think his study of psychology was adequate without his having endured the complexity involved in dealing with intertwined psychological tendencies? What could be more ironic than professors using oversimplified notions while studying bad cognitive effects grounded in the mind's tendency to use oversimplified algorithms?

I will make a few tentative suggestions. Maybe many of the long-dead professors wanted to create a whole science from one narrow type of repeatable psychology experiment that was conductible in a university setting and that aimed at one psychological tendency at a time. If so, these early psychology professors made a massive error in so restricting their approach to their subject. It would be like physics ignoring (1) astrophysics because it couldn't happen in a physics lab, plus (2) all compound effects. What psychological tendencies could account for early psychology professors adopting an over-restricted approach to their own subject matter? One candidate would be Availability-Misweighing Tendency grounded in a preference for easy-to-control data. And then the restrictions would eventually create an extreme case of man with a hammer tendency. Another candidate might be envy/jealousy Tendency through which early psychology professors displayed some weird form of envy of a physics that was misunderstood. And this possibility tends to demonstrate that leaving envy/jealousy out of academic psychology was never a good idea.

I now quitclaim all these historical mysteries to my betters.

Well, that ends my brief description of psychology logical tendencies.


最後の一言は、あいかわらずのチャーリー節ですね。質疑応答があるので、このシリーズはもう少し続きます。

2012年11月28日水曜日

コモディティーの価格はどうなるか(ジェレミー・グランサム)

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GMOのマネー・マネージャーであるジェレミー・グランサムによるレター(2012年第3四半期)が公開されていました。題名は「ゼロ成長へ向かって」と、景気のよくない内容です。目新しいものはそれほどありませんが、今後のアメリカは低成長が続くだろうと、いくつかの要因から予測しています。労働人口の動態やサービス型経済に関する指摘も印象に残りましたが、主役の話題は資源問題でした。今回は、今後の商品市場に対する彼の見解を引用します。(日本語は拙訳)

On the Road to Zero Growth (GMO)

資源価格はまだ20%は割高だろうと私は確信しています。その背景として、短期的には供給が追いついてきたこと、一方ではその流れの中で賢明にも延期する動きがみられること、また投機筋の動向や、直近では中国の成長が鈍化していること、つまり中期的には年率5,6%といった低成長がみえてきたことが挙げられます。(この件については我が同僚のエドワード・チャンセラーが完全に当たっていましたが、彼の予測が早すぎたか、中国が現実を認めるのが遅すぎたかのどちらかでした)。私としてはこれを乗り切るために、あらゆる商品の価格がこれからさらに20%下落してもいいように、心の準備をしています。これには穀物も含まれますが、4シーズン連続で次も世界規模の作柄不良になるとは、私にはとても想像できません。しかし20%下落した後でも、商品価格は今後10年間で2倍になり、複利計算では年率7%増となるでしょう。これは全世界のGDP成長率よりずっと大きな数字ですし、アメリカや他の先進国の成長と比較すればひどく高いものです。私の見解では、年率で7%増加するということは、コスト面におけるパラダイムシフトになるとみています。

Today, I believe that resource prices probably still have about 20% fat in them, representing short-term supply catch-up, some judicious foot dragging in increasing supply, some speculation, and, more recently, a decline in Chinese growth, which seems very likely to settle onto a materially lower trend in the intermediate term of, say, 5% or 6% a year. (In this my colleague Edward Chancellor appears to have been completely right, although either he was early or the Chinese were slow to admit reality.) To capture this I am mentally allowing for a further decline of 20% in all commodities including grains, where I cannot get my brain around the idea of a fourth consecutive terrible global growing season! However, even after an imputed 20% markdown, the prices will still have doubled in 10 years or compounded at 7% a year. This is far higher than global GDP growth and painfully higher than growth in the U.S. or other developed countries. This 7% a year increase, in my opinion, represents a paradigm shift in costs.


ちなみにGMOが運用している預かり資産は1000億ドル、円換算では8兆円です。

2012年11月26日月曜日

纏足(てんそく)を誇る(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの世知入門です。今回は集中投資の話題です。(日本語は拙訳)

初めのころは、我々は「グレアム主義者」としてやっていました。それはうまくいっていたのですが、次第に私が言うところの「洞察を研ぎ澄ます」やりかたへと移りました。企業によっては、簿価の2倍や3倍の値段であっても大安売りのものがあるとわかったからです。それは、企業の立ち位置が生み出す勢いからくるものですが、ときにはシステムや個人などが、経営面で尋常でないほどの技量を持っていることもあります。

And so having started out as Grahamites - which, by the way, worked fine - we gradually got what I would call better insights. And we realized that some company that was selling at two or three times book value still be a hell of a bargain because of momentums implicit in its position, sometimes combined with an unusual managerial skill plainly present in some individual or other, or some system or other.


バークシャー・ハサウェイが得た利益のうちの何十億ドルかは、すぐれたビジネスから生み出されたものです。初期に得た2,3億ドルにはガイガー・カウンターを動かしてみつけたものが多かったですが、結局のところ利益の大半は優秀なビジネスによってあげられました。

And, by the way, the bulk of the billions in Berkshire Hathaway has come from the better businesses. Much of the first $200 or $300 million came from scrambling around with our Geiger counter. But the great bulk of the money has come from the great businesses.


[ほとんどの資産運用マネージャーは]様々なことをいろいろ知っているだろうと顧客から期待されるような世界で仕事をしています。一方、バークシャー・ハサウェイには我々を叩き出すような顧客はいません。ですから、そのような考えに縛られることはないのです。我々は間違った値段がついている投資先を見つけることを身上とし、自分たちの判断が正しいと確信できるときに買い込みます。これはなるべく分散させないやりかたですが、他と比べてずっと優れていると思います。

しかし公平に言えば、[たいていの資産運用マネージャーは]我々のやりかたでサービスをうまく売れるだろうとは思いません。ですが年金ファンドに40年間も投資するのでしたら、最後にはうまくいくのであれば、途中の道のりがでこぼこだったり、少しぐらい他の人と違うからといって、どんな違いがあるのでしょうか。すこしばかり余計に変動するからといって、どうなのでしょう。

今日の資産運用では、単に勝つだけでなくて、標準的な推移から大きく外れないことを誰もが望んでいます。ただし上側にずれるのは別の話ですが。これは極めて不自然で異常な考えですね。まるで中国の女性がやらされていた纏足の資産運用版です。足が不自由なことを誇る人を、ニーチェは批判したのですよ。

[Most investment managers are] in a game where the clients expect them to know a lot about a lot of things. We didn't have any clients who could fire us at Berkshire Hathaway. So we didn't have to be governed by any such construct. And we came to this notion of finding a mispriced bet and loading up when we were very confident that we were right. So we're way less diversified. And I think our system is miles better.

However, in all fairness, I don't think [a lot of money managers] could successfully sell their services if they used our system. But if you're investing for forty years in some pension fund, what difference does it make if the path from start to finish is a little more bumpy or a little different than everybody else's so long as it's all going to work out well in the end? So what if there's a little extra volatility.

In investment management today, everybody wants not only to win, but to have the path never diverge very much from a standard path except on the upside. Well, that is a very artificial, crazy construct. That's the equivalent in investment management to the custom of binding the feet of the Chinese women. It's the equivalent of what Nietzsche meant when he criticized the man who had a lame leg and was proud of it.


「いつでもなんでも全部知っています」というふりをするのではなく、自分がきちんと見通せるひとにぎりのものを買い込むほうが、理に適っています。見込みのあるものからとりかかるほうが、そうでないものよりもずっとうまくやれるものです。当たり前すぎると思いますが、どうですか。

では、みなさんにお聞きしますが、56個ものすばらしい洞察を得ていて、それらは等しく自信があるという人がいたら、手をあげて頂けますか。では同じように自信を持てるのが2つか3つの人はどうでしょうか。[挙手の状況を確認して]これで私の証拠提出は終わりですね。

And it makes sense to load up on the very few good insights you have instead of pretending to know everything about everything at all times. You're much more likely to do well if you start out to do something feasible instead of something that isn't feasible. Isn't that perfectly obvious?

How many of you have fifty-six brilliant insights in which you have equal confidence? Raise your hands, please. How many of you have two or three insights that you have some confidence in? I rest my case.

2012年11月25日日曜日

研究の世界で長年暮らしてわかったこと(物理学者近角聰信)

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少し前にご紹介した物理学者近角聰信氏の『日常の物理学』から、今回は研究者として求められる素養について書かれた個所を引用します。

研究者にとって最も注意すべき教訓は「逆は必ずしも真ならず」というよく知られた論理を守ることである。あるモデルが実験事実を説明するからといって、実験事実から結論されるのはそのモデルだけとはかぎらない。そんなことは当人は百も承知であろうが、研究者はどうしても自分が提唱したモデルにこだわりがちである。対立する他のモデルも公平に考慮することができれば立派なものである。

実験の解釈にしろ、モデルの提唱にしろ、そこには研究者の自己との戦いがからんでいる。栄誉心をおさえ、私心をなくして、公平な判断を下すには、研究能力のほかに人間としての修業が必要となってくる。(p.36)


研究とは自然を探求することであるが、同時に自己との戦いが必要である。研究者は一度立てた自説にこだわりがちである。しかし、実験がその説に合わない結果を示したときには、いさぎよく自説を否定しなければならない。しかし現実の問題となると、これはなかなかむずかしいことである。ことに論敵と公開の席上で議論を戦わせた後では、特にそうである。しかし、ここで自説を否定しないかぎり、科学は進歩しない。

研究の世界で長年暮らしてみると、このような仕掛けであいまいになっている問題がいかに多いかがわかる。そしてつくづくと研究者に必要なものは、能力よりもむしろ人格だということを知るようになる。(p.108)


この文章を読んで、投資家の素養についてウォーレン・バフェットが述べた有名な言葉を思い出しました。

投資というのは、IQが160だからといって、IQ130の人に勝てるというわけではありません。

Investing is not a game where the guy with the 160 IQ beats the guy with 130 IQ


また科学者のやりかたについては、過去記事「われわれが錯覚に捕らわれているとき」でファインマンも同じような発言をしていました。

2012年11月23日金曜日

誤判断の心理学(24)他人に何かを頼むとき(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの誤判断の心理学です。個人的にも、この傾向は日常的に役立つものと実感しています。(日本語は拙訳)

(その24) 理由を尊重する傾向
Twenty-Four: Reason-Respecting Tendency

進んだ文化のもとではよくみられますが、人間にはものごとを正しく認識することを好む性質があるため、それを訓練するのを楽しむところがあります。クロスワードなどのパズルやブリッジ、詰将棋のように、知性を必要とするあらゆるゲームが広く親しまれているのは、これによるものです。

となれば、この傾向が言わんとすることは明らかでしょう。ものを教えようとする人は、なぜやってほしいのかも言わずに命令口調で伝えるのではなく、本来の理由を説明するようにすれば、言われたほうもずっとうまく学べるようになるのです。理由のことをきちんと考えてから要求を言いわたし、さらには、要求する相手とは理由づけも含めてコミュニケーションすること。賢明なる心がけとはこういうものです。

There is in man, particularly one in an advanced culture, a natural love of accurate cognition and a joy in its exercise. This accounts for the widespread popularity of crossword puzzles, other puzzles, and bridge and chess columns, as well as all games requiring mental skill.

This tendency has an obvious implication. It makes man especially prone to learn well when a would-be teacher gives correct reasons for what is taught, instead of simply laying out the desired belief ex cathedra with no reasons given. Few practices, therefore, are wiser than not only thinking through reasons before giving orders but also communicating these reasons to the recipient of the order.


「なぜ」という疑問に答えるのに有用な考えを入れておく格子枠に対して、人生を通じて経験したり、読んだり聞いたりしたことを追加し続けることで、学んだことがもっとも容易に吸収され、また使われます。実のところ「なぜ」と疑問を持つことは、精神面の潜在能力を大きく広げてくれる、ロゼッタ・ストーンの役割を果たします。

しかし残念なことに「理由を尊重する傾向」は強力なものなので、説明される理由が意味のないものだったり、誤っていても、命令や要求に応じやすくする力があります。これを示した心理学の実験があります。コピー機に並ぶ人の列に来た実験担当者が「これをコピーしないといけないのです」と理由を説明することで、見事にも先頭へ割り込ませてもらったのでした。この「理由を尊重する傾向」が生み出す副産物は、理由というものの重要性が広く認知されているために起こる、ありがたくない条件反射なのです。当然ながら、幾多のくだらない理由があちこちで使われており、たとえばコマーシャルの中や、カルトにおいて「信者」が拒絶するものを受け入れされるときが、その例です。

In general, learning is most easily assimilated and used when, life long, people consistently hang their experience, actual and vicarious, on a latticework of theory answering the question: Why? Indeed, the question “Why?” is a sort of Rosetta stone opening up the major potentiality of mental life.

Unfortunately, Reason-Respecting Tendency is so strong that even a person's giving of meaningless or incorrect reasons will increase compliance with his orders and requests. This has been demonstrated in psychology experiments wherein “compliance practitioners” successfully jump to the head of the lines in front of copying machines by explaining their reason: “I have to make some copies.” This sort of unfortunate byproduct of Reason-Respecting Tendency is a conditioned reflex, based on a widespread appreciation of the importance of reasons. And, naturally, the practice of laying out various claptrap reasons is much used by commercial and cult “compliance practitioners” to help them get what they don't deserve.


格子枠の話題はおなじみとなってきましたが、以下の過去記事でとりあげています。

2012年11月21日水曜日

自社株買いの例、GEICO(ウォーレン・バフェット)

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今回は、ウォーレンによる1980年度の「株主のみなさんへ」から、自社株買いの話題を引用します。この話題は本ブログでよくとりあげます。それというのも、景気の見通しがよくない時期だからこそ、余剰資金がどう使われるのかみるのは、経営者の見識や才覚を判断するのに大いに役立つ、と考えるようになったからです。(日本語は拙訳)

われわれが投資している企業が自社株を買い戻してくれるのも、よくやってくれたと声援をおくりたくなることの多い、留保利益の使い道です。よいビジネスが本源的価値よりもずっと安く市場で取引されているときには、もっとも確実で利益のあがる資本の使い道といえば、その機会に乗じて株主全員の持分を大きくすること以外に何が考えられるでしょうか。企業買収というのは本質的に競争的なところがありますので、買収先をまるごと買うときには、まあ間違いなく満額あるいはもっと高くつくことになるでしょう。ところが証券市場という競売のしくみを通じて企業の一部を買うとなると、うまく経営されている企業なのに、同程度の利益をあげられる企業を相対で取得する際に払う金額の半額以下で買えてしまう、そんな機会がよくあるのです。

One usage of retained earnings we often greet with special enthusiasm when practiced by companies in which we have an investment interest is repurchase of their own shares. The reasoning is simple: if a fine business is selling in the market place for far less than intrinsic value, what more certain or more profitable utilization of capital can there be than significant enlargement of the interests of all owners at that bargain price? The competitive nature of corporate acquisition activity almost guarantees the payment of a full ‐ frequently more than full price when a company buys the entire ownership of another enterprise. But the auction nature of security markets often allows finely‐run companies the opportunity to purchase portions of their own businesses at a price under 50% of that needed to acquire the same earning power through the negotiated acquisition of another enterprise.


次に、GEICOの自社株買いについて。まだバークシャーの完全子会社ではない頃です。

あえて申し上げますが、われわれの持分と見込まれる1,700万ドルをGEICOの経営陣がそのまま保持していることに、わたしどもは満足しています。われわれの手にあっても同じようにやりますから。この2年間でGEICOは自社株買いを実行することで、発行株式数を3,420万株から2,160万株へ減らしました。これによって株主の持分は大幅に増加しました。しかもGEICOのビジネスは容易には真似できない、ときたものです。これほどまでに株主が厚遇されるのは、めったにないことだと思います。

We should emphasize that we feel as comfortable with GEICO management retaining an estimated $17 million of earnings applicable to our ownership as we would if that sum were in our own hands. In just the last two years GEICO, through repurchases of its own stock, has reduced the share equivalents it has outstanding from 34.2 million to 21.6 million, dramatically enhancing the interests of shareholders in a business that simply can't be replicated. The owners could not have been better served.

2012年11月19日月曜日

ぴくりとしたら、もうけもの(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの世知入門です。前回の続きで、投資で好成績を上げ続ける方法について、ベン・グレアムの登場です。(日本語は拙訳)

別の基本的なやり方として、ウォーレンや私が賞賛していたベン・グレアムがとっていた方法があります。価値というものについて彼はある見方をしていましたが、これは非公開企業の事業主に対するものと考えていた節もあります。つまり企業全体で見た時に何が売れそうか、とする考えです。事業の価値を計算する方法は、いろんなやりかたがありました。

そんな彼ならば、こう言うでしょう。株価に発行株式数を乗じた金額が売却価値の3分の1以下であれば、大いに勝ち目がある、と。アル中のお年寄りがやっている退屈な商売であっても、一株あたりの本来の価値はずっと大きいわけですから、どんなよいことが起きてもおかしくはありません。大きな超過価値を手にしているわけですから、非常に大きな安全余裕がとれているのです。

しかし彼が投資の商売をしていた時期はおおむね、世界中がショックに襲われた1930年代の頃でした。英語圏では過去600年間で最悪の景気後退となり、たとえばリバプールでは、インフレ調整後の小麦の値段が600年来の安値まで下落しました。しばらくの間、みんな茫然自失のままでした。そんな時期だったので、ベン・グレアムは大暴落で残骸となり果てた銘柄にガイガー・カウンターをあてて、たとえば[正味]運転資本以下の株価で売られている証券を見つけられたのです。

その当時、運転資本は実質的に株主のものでした。事業主にとって、従業員が役に立たないとなれば全員を放り出し、運転資本をひっつかんで自分のポケットにいれることができました。当時の資本主義とはそういうものだったのです。

The second basic approach is the one that Ben Graham used - much admired by Warren and me. As one factor, Graham had this concept of value to a private owner - what the whole enterprise would sell for if it were available. And that was calculable in many cases.

Then, if you could take the stock price and multiply it by the number of shares and get something that was one-third or less of sellout value, he would say that you've got a lot of edge going for you. Even with an elderly alcoholic running a stodgy business, this significant excess of real value per share working for you means that all kinds of good things can happen to you. You had a huge margin of safety - as he put it - by having this big excess value going for you.

But he was, by and large, operating when the world was in shell-shock from the 1930s - which was the worst contraction in the English-speaking world in about 600 years. Wheat in Liverpool, I believe, got down to something like a 600-year low, adjusted for inflation. People were so shell-shocked for a long time thereafter that Ben Graham could run his Geiger counter over this detritus from the collapse of the 1930s and find things selling below their working capital per share and so on.

And in those days, working capital actually belonged to the shareholders. If the employees were no longer useful, you just sacked them all, took the working capital, and stuck it in the owners' pockets. That was the way capitalism then worked.


いずれにせよ、私が呼ぶところの「古典的なベン・グレアムのやりかた」が通用していた問題も、その実態が次第に世に知られることになり、誰が見てもわかるような割安銘柄は底をついてしまいました。残骸の上にガイガー・カウンターをかざしても、もはやぴくりとも動かないでしょう。

しかし以前にも申し上げたように、かなづちを持つ人にはあらゆる問題が釘に見えるものです。ベン・グレアムを信奉する人たちはガイガー・カウンターを較正することで対応しました。つまり、割安の定義を変えたのです。そして同じ方式がずっと使えるように、定義のほうを変更し続けました。このやりかたは、かなりうまくいきました。ベン・グレアムの理知的なシステムはとても優れていたのですね。

At any rate, the trouble with what I call the classic Ben Graham concept is that gradually the world wised up, and those real obvious bargains disappeared. You could run your Geiger counter over the rubble, and it wouldn't click.

But such is the nature of people who have a hammer - to whom, as I mentioned, every problem looks like a nail - that the Ben Graham followers responded by changing the calibration on their Geiger counters. In effects, they started defining a bargain in a different way. And they kept changing the definition so that they could keep doing what they'd always done. And it still worked pretty well. So the Ben Graham intellectual system was a very good one.


しかし、ベン・グレアムがやっていた古典的グレアム方式に従ったままだったら、我々がこれまでに成したような実績はあげられなかったでしょう。ですがそれゆえに、我々のやってきたことをグレアムはやらなかったのです。

たとえば、グレアムは経営陣と話をしたいとは考えませんでした。卓越した教授が多数の聴衆へ教えるときのように、誰でもやれる方法で投資できるようにしたいと考えていたのですね。そのへんの普通の人が奔走して、経営者から話を聞き、何かを学ぶだろうとは思いもしませんでした。それに彼は、経営者は情報を巧みに表現するので、判断を誤りやすいという思いを抱いていました。もちろんそれは人の本性なのですが、結局は困難なことなのです。

However, if we'd stayed with classic Graham the way Ben Graham did it, we would never have had the record we have. And that's because Graham wasn't trying to do what we did.

For example, Graham didn't want to ever talk to management. And his reason was that, like the best sort of professor aiming his teaching at a mass audience, he was trying to invest a system that anybody could use. And he didn't feel that the man in the street could run around and talk to management and learn things. He also had a concept that management would often couch the information very shrewdly to mislead. Therefore, it was very difficult. And that is still true, of course - human nature being what it is.

2012年11月17日土曜日

誤判断の心理学(23)ミツバチも無駄話をする(チャーリー・マンガー)

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(2014/04/23) 和訳を修正しました。("straight up"を「奥まった」から「突き出した」へ)

チャーリー・マンガーの誤判断の心理学です。短いので、全文を引用しています。(日本語は拙訳)

(その23)無駄話をする傾向
Twenty-Three: Twaddle Tendency

人間は言語を授かった社会的動物であるゆえに、おしゃべりをしたり、真剣に働かなければいけないときでも、ぺちゃくちゃと無駄口をきいて少なからぬ害を及ぼしてしまうように生まれついています。しかしながら、とかく無駄話ばかりの人がいる一方、ほとんど無駄口をきかない人もいます。

ある興味深い実験によって、ミツバチが無駄口をきくとどんなトラブルをもたらすのか、明らかになっています。ミツバチは普通、巣を出て花の蜜をさがしだし、巣に戻ってきて他のハチに蜜のありかを知らせるためにダンスを踊ります。それをみて他のハチも出動し、蜜にたどりつくのです。さてB.F.スキナーばりに賢い科学者が「障害があったらハチはどうするだろうか」と考え、蜜の場所をひっぱりだして外のほうへ移してみました。自然の状態では蜜はそんなに飛び出していません。さて困ったミツバチには、この件をうまく伝える術は遺伝子には組み込まれていません。このミツバチが巣に戻ったら、隅っこに身を隠していたと思われるかもしれませんが、ちがいました。巣に戻ると、ちぐはぐなダンスを披露したのです。私の人生も、このハチと同じことをやる人間に対処することの連続でした。おしゃべりばかりの無駄話にふける人を、真剣に仕事をしている場から遠ざけておくのは、うまく管理していこうとする者にとって、大切な仕事のひとつです。カルテックの工学系で有名なること当然な教授が、かつて彼の流儀で、この件を気配りなしにずばり表現しています。「重要な人が働いているところを、そうでない人には邪魔させない。これは大学運営における肝心な仕事だ」。この教授が発言したことを私も自分なりの方法でやっていたのですが、反発を受け、ずっと悩んできました。多大なる努力の末、私もすこしはまともになりました。ですから、この発言を引用したのは、少なくとも以前と比べたら私も気配りできるだろう、という想いを込めているところがあります。

Man, as a social animal who has the gift of language, is born to prattle and to pour out twaddle that does much damage when serious work is being attempted. Some people produce copious amounts of twaddle and others very little.

A trouble from the honeybee version of twaddle was once demonstrated in an interesting experiment. A honeybee normally goes out and finds nectar and then comes back and does a dance that communicates to the other bees where the nectar is. The other bees then go out and get it. Well some scientist - clever, like B. F. Skinner - decided to see how well a honeybee would do with a handicap. He put the nectar straight up. Way up. Well, in a natural setting, there is no nectar a long way straight up, and the poor honeybee doesn't have a genetic program that is adequate to handle what she now has to communicate. You might guess that this honeybee would come back to the hive and slink into a corner, but she doesn't. She comes into the hive and does an incoherent dance. Well, all my life I've been dealing with the human equivalent of that honeybee. And it's a very important part of wise administration to keep prattling people, pouring out twaddle, far away from the serious work. A rightly famous Caltech engineering professor, exhibiting more insight than tact, once expressed his version of this idea as follows: “The principal job of an academic administration is to keep the people who don't matter from interfering with the work of the people that do.” I include this quotation partly because I long suffered from backlash caused by my version of this professor's conversational manner. After much effort, I was able to improve only slightly, so one of my reasons for supplying the quotation is my hope that, at least in comparison, I will appear tactful.


無駄話、たしかにその通りです。昨今はTwitter等が全盛ですが、さかのぼってみればショートメール、携帯電話、チャット、掲示板、電子メール、果ては喫煙所での世間話や井戸端会議と、メディアは変わりますが、やっていることはあまり変わりませんね。しかし改めて考えてみると、これをとりまくビジネスが大きくなっていることに、ある種の驚きをおぼえます。

ミツバチのダンスに関する補足的な話題は、過去記事「尻振りダンスだけではない(ミツバチの群れ)」で取り上げています。

ところでチャーリーの文章ですが、ドライなユーモアがあいかわらずです。

2012年11月16日金曜日

網目のように考える(物理学者近角聰信)

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前回に続いて物理学の話題です。科学者がやる考え方を参考にしようと少しずつ探っていますが、『日常の物理学』という随筆集で興味をひく文章を目にしたので、ご紹介します。本ブログで取り上げているチャーリー・マンガーの「多面的メンタルモデル」とよく似ています。なお著者の近角聰信(ちかずみそうしん)氏は、東京大学の物性研究所で教授を務めていた方です。

物理学者はそのものの考え方から、明らかに次の二種類に分類することができる。論理型と直観型とである。しかし、論理型の人が数学者の考え方と似ていることはいうまでもないが、論理と直観とは、どちらが優れているとか劣っているとか比較できるものではなく、むしろ、お互いに直交する考え方なのであろう。物理学においてはその両者の考え方が使われる。普通は、理論物理学者はむしろ論理を、実験物理学者は直観を重んずると考えがちであるが、その傾向は研究者によってまちまちである。むしろ、論理型の人は整理的な研究を、直観型の人は創造的な研究をする傾向があるといった方がよいかもしれない。

では、直観型とはどういう考え方をいうのであろうか?世の中で直観というと、ものをよく分析せず、勘でものごとを判断することを意味する場合が多いが、直観型の物理学者の考え方は、決してそのようなものではない。第一に、そのような当てずっぽうな推理で、科学を推進することができるはずはない。一口でいえば、直観的な考え方は網のようなものだということができる。論理的な考え方が一本のロープであるとすれば、直観的な考え方は多重連結で、縦横無尽に糸をはりめぐらせた網にたとえられるというわけである。(p.78)


また、ある現象が数学的に解けた場合に、ひとつひとつの法則に矛盾しないかをチェックすることも、その網目構造を丈夫にすることに役立つ。たとえば、重力場で投げた物体が放物線を描いて運動することがわかった場合、この解がエネルギー保存則を満足しているかとか、運動量保存則を満足しているかなどとチェックしてみるのもその一例である。(p.81)


私がなぜ数式に物理的イメージを肉づけし、多重連結の思考構造を好むかというと、それは単に趣味の問題だけではなく、物理学の研究にそれが必要だからである。(中略)したがって、不完全な情報をもとにしてモデルを組み立てることが必要になってくる。いわゆる暗中模索というやつである。このような考えをする場合に、頭の中に物理学が有機的に組み立てられていないとどうにもならない。ただ一筋の論理を追っていけば、結論が得られるなどという簡単なものではない。文字通り一筋縄ではいかないのである。(p.82)


以下は、「多面的メンタルモデル」に関する代表的な過去記事です。

2012年11月14日水曜日

物理学から学んだこと(チャーリー・マンガー)

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おなじみの『Poor Charlie's Almanack』ではチャーリー・マンガーの前半生が記されており、短い大学時代に接した物理学の話題にも触れています。短いですが、チャーリーらしさが凝縮されている一節をご紹介します。(日本語は拙訳)

戦火の激しさが大西洋のこちら側にも伝わってきた1941年に、チャーリーはセントラル高校を卒業し、オマハを離れてミシガン大学へ進んだ。数字を使った論理・論法に惹かれていたので、数学を専攻した。また彼は、科学の履修要件を満たすためにある基礎的な単位を登録したことで、物理学に出会った。そして物理学のもつ力やその際限のない広がりに魅了されていった。とくに影響を受けたのは物理学者が従っているプロセスで、アルバート・アインシュタインのような人が未知の物事に立ち向かうときに使うものだ。その後チャーリーは、問題解決をする際には、好んで物理学的なやりかたで取り組むようになった。この技能は、人生におけるさまざまな問題を整理して把握するのに役立つ、と彼は考えているのだ。彼は折にふれてこう述べている。成功したければ、物理学を勉強しなさい。そこに登場する概念や数式は、理にかなった理論が持つ威力の大きさを、あざやかにみせてくれますよ、と。

In 1941, as the war raged across the Atlantic, Charlie graduated from Central High School and left Omaha for the University of Michigan. There he chose mathematics as his major, drawn by the appeal of numerical logic and reason. He also discovered physics after enrolling in a basic course to fulfill an academic requirement for science. Charlie was fascinated by the power of physics and its boundless reach. In particular, he was impressed by the process followed by physicists, such as Albert Einstein, to address the unknown. Physics-like problem solving was to become a passion for Charlie and is a skill he considers helpful in framing the problems of life. He has often stated that anyone who wants to be successful should study physics because its concepts and formulas so beautifully demonstrate the powers of sound theory.

2012年11月13日火曜日

金持ちの知り合いはたくさんいます(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの世知入門、今回はセクター・ローテーションの話題です。(日本語は拙訳)

投資家が市場に勝つためには、いいかえれば平均以上の成績を長期にわたってあげるには、普通株の銘柄選定を行うものとしてはどのスタイルをとるべきでしょうか。耳目を集めているやりかたのひとつに、「セクター・ローテーション」と呼ばれるものがあります。何をするのかといえば、小売よりも原油銘柄のほうが株価が上がるのはいつだろうか、といったことを見極めるだけです。人気のあるセクターをそこそこ転々とすることで、他人よりもよいものを選ぶわけです。このやりかたは、長い目で見れば、まあ成功できるのではないでしょうか。

しかし、セクター・ローテーションで裕福になった人というのを、私は知りません。この方法では成功できない、とは言いません。たぶん誰かは成功しているのでしょう。しかし金持ちの知り合いはたくさんいますが、そうやって金持ちになった人は一人もいない、ということは申しておきましょう。

What style should the investor use as a picker of common stocks in order to try to beat the market - in other words, to get an above average long-term result? A standard technique that appeals to a lot of people is called “sector rotation.” You simply figure out when oils are going to outperform retailer, etc., etc., etc. You just kind of flit around being in the hot sector of the market making better choices than other people. And presumably, over a long period of time, you get ahead.

However, I know of no really rich sector rotator. Maybe some people can do it. I'm not saying they can't. All I know is that all the people I know who got rich - and I know a lot of them - did not do it that way.

2012年11月12日月曜日

少し先のことさえ、わかりません(ウォーレン・バフェット)

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今回は業績予想の話題です。ウォーレン・バフェットの2002年度「株主のみなさんへ」からの引用です。(日本語は拙訳)

業績予想や成長の見込みを吹聴する企業は疑ってかかるべきです。ビジネスを営む以上、平穏無事な状況はそうそう長続きしないため、利益は一本調子では上がっていきません。(そういうのは、投資銀行がだしてくる目論見書の中だけです)

来年はおろか、次の四半期でさえ、われわれの事業がどれだけ利益を挙げるのか、チャーリーにもわたしにも予測することはできません。ですからわたしどもは、将来が予測できると日常的に発言するようなCEOには、疑問を抱いています。宣言した目標をことごとく達成しているとしたら、絶対に信じられません。「これこれの数字を達成します」と常々約束するような経営者は、いずれは「数合わせ」をしたくなるからです。(PDFファイル20ページ目)

Finally, be suspicious of companies that trumpet earnings projections and growth expectations. Businesses seldom operate in a tranquil, no-surprise environment, and earnings simply don't advance smoothly (except, of course, in the offering books of investment bankers).

Charlie and I not only don't know today what our businesses will earn next year - we don't even know what they will earn next quarter. We are suspicious of those CEOs who regularly claim they do know the future - and we become downright incredulous if they consistently reach their declared targets. Managers that always promise to “make the numbers” will at some point be tempted to make up the numbers.


先行きが不透明になってきて、各社の業績予想も控えめになってきました。そうであっても先のことがわからない以上、細かな数字の差異にこだわるのはミスター・マーケットに任せておいて、事業の本質を的確に把握したり、じっと機会を待ち続けたりすることに、心を向けたいと思います。

2012年11月10日土曜日

誤判断の心理学(22)そこに目薬を差すのか(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの誤判断の心理学です。今回の逸話は楽しんで読めますが、われわれにも深く根ざしている傾向かと思います。(日本語は拙訳)

(その22) 権威によって、誤って影響される傾向
Twenty-Two: Authority-Misinfluence Tendency

ご先祖様もみな同じだったように、順位制の中で生きるということは、他人を従えることができる人はひと握りに限られているため、ほとんどの場合、人は指導者に従うように生まれつきます。人の社会というものは順位制によって成り立っており、考えずとも指導者に従うのを善とする文化が育まれています。

Living in dominance hierarchies as he does, like all his ancestors before him, man was born mostly to follow leaders, with only a few people doing the leading. And so, human society is formally organized into dominance hierarchies, with their culture augmenting the natural follow-the-leader tendency of man.


誤った影響には、こっけいなものもあります。チャルディーニが示した例によると、耳の治療をしている看護婦に対して、医師が文書で指示を残しました。「1日2回、2滴。'r. ear'」。それを読んだ看護婦は患者を反対向きにして、肛門へ目薬を差したのです[right earとrearを取り違えた]。

権威からくるわかりにくい指示が悲劇を招いた例もあります。第二次世界大戦中の、将軍付きのなりたてのパイロットの話です。自分のそばの副操縦士席に座っている将軍に気に入られようとするばかりに、彼がちょっと動いたことを誤って解釈し、ばかげたことをする命令ととらえました。そのせいで航空機は墜落し、パイロットは下半身不随となったのです。

当然ながらバフェットも上司の立場にある者として、このような事例を参考にしています。事業を経営する各パイロットのそばでは、静かすぎるぐらいほど口をつぐんでいます。

Some of the misinfluences are amusing, as in a case described by Cialdini. A physician left a written order for a nurse treating an earache, as follows: “Two drops, twice a day. 'r. ear.'” The nurse then directed the patient to turn over and put the eardrops in his anus.

Other versions of confused instructions from authority figures are tragic. In World War II, a new pilot for a general, who sat beside him in the copilot's seat, was so anxious to please his boss that he misinterpreted some minor shift in the general's position as a direction to do some foolish thing. The pilot crashed the plane and became a paraplegic.

Well, naturally, cases like this one get the attention of careful thinkers like Boss Buffett, who always acts like an overquiet mouse around his pilots.


コスタリカのリオ・コロラドで釣りをした時に、私についたガイドがあきれ顔で話をしてくれました。ターポン[大型の肉食魚]は初めてという釣り人が以前にこの川にやってきたときのことです。私と同じように付き添いのガイドが船を進め、釣りについて助言をしました。このガイドこそ、権威を持つ者の話をする上でぴったりの人物なのです。さて、その釣り人にも巨大なターポンが食いつき、「ガイド」という名の権威ある者が指示を出しはじめます。「上げて、下げて、リールを巻いて」、釣り人はそれに従って釣り竿を扱います。そしていよいよ釣り竿をたわませて、魚に対してもっと力をかける必要になった時に、ガイドが英語でこう言いました。ガイドの母国語はスペイン語だったのですが、釣り人のほうは英語だったのです。「さおを魚へ、さおを魚へ」。なんと、釣り人は高価な釣り竿を魚にむかって放りだしたのです。釣り竿はリオ・コロラドをくだり、海のほうへと流れていったのでした。この例は、権威を発揮する人によって生まれる傾向が、いかに強力で人の脳みそをぐだぐだにしてしまうか、よく示しています。

最後の例はビジネスからです。ある大企業のCEOに、心理学の博士号をとった人物が就任しました。やりたいほうだいの彼は、人里離れたところに大枚はたいて本社オフィスを建てました。しかも見事なワインセラー付きです。当然のことですが、しばらくすると彼の部下たちが、資金がつきかけていると異議を唱えました。それに対するCEOの返事は「減価償却引当金からなんとかしろ」。減価償却引当金は貸方の勘定科目ですから、そうするのは容易ではないでしょう。

このCEOやもっと悪い例が他にもいろいろあるように、権威というものを過剰に尊重しすぎると、その人たちは排除されて然るべきとわかっても、その後も長きにわたって重要な会社の手綱さばきを任せたまま、ということがあります。これが暗示していることはわかりやすいですね。権力を持たせる相手には注意せよ。というのは、権威によって誤って影響される傾向が働くために、権威をふるう者を取り除こうとしても難しいことがあるからです。

When I once fished in the Rio Colorado in Costa Rica, my guide, in a state of shock, told me a story about an angler who'd earlier come to the river without ever having fished for tarpon. A fishing guide like the one I had runs the boat and gives fishing advice, establishing himself in this context as the ultimate authority figure. In the case of this guide, his native language was Spanish, while the angler's native language was English. The angler got a big tarpon on and began submitting to many directions from this authority figure called a guide: tip up, tip down, reel in, etc. Finally, when it was necessary to put more pressure on the fish by causing more bending of the angler's rod, the guide said in English: “Give him the rod, give him the rod.” Well, the anger threw his expensive rod at the fish, and when last seen, it was going down the Rio Colorado toward the ocean. This example shows how powerful is the tendency to go along with an authority figure and how it can turn one's brain into mush.

My final example comes from business. A psychology Ph. D. once became a CEO of a major company and went wild, creating an expensive new headquarters, with a great wine cellar, at an isolated site. At some point, his underlings remonstrated that money was running short. “Take the money out of the depreciation reserves,” said the CEO. Not too easy because a depreciation reserve is a liability account.

So strong is undue respect for authority that this CEO, and many even worse examples, have actually been allowed to remain in control of important business institutions for long periods after it was clear they should be removed. The obvious implication: Be careful whom you appoint to power because a dominant authority figure will often be hard to remove, aided as he will be by Authority-Misinfluence Tendency.

2012年11月9日金曜日

EPSより大切な指標(ウォーレン・バフェット)

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企業分析の指標の一つとして、以前にROIC(投下資産利益率)をとりあげましたが(過去記事)、今回はそれと似ているようで少し違うROCE(使用資本利益率)の話題です。ウォーレン・バフェットの1979年度「株主のみなさんへ」から引用します。(日本語は拙訳)

なおウォーレンが営業上の成績をみるときには、以下の訳では「営業利益率」としていますが、保有証券を簿価評価した上で、期初の純資産を分母とする方式をあげています。これによって、証券の時価が変動するのを無視しています。

この基準によれば、1979年度の営業利益率は年初の純資産ベースで18.6%と、1978年度ほどではありませんが、十分な成績を収められました。EPSも20%ほど増加しましたが、この指標は注目すべきものではないとわたしどもは捉えています。1978年とくらべて1979年には使用できる資産が大幅に増加しました。しかしEPSは増加した一方で、資産を活かすという観点では前年ほどの成果は挙げられませんでした。EPSというものは、固定金利の利息を生む休眠口座や貯蓄債券ならば着実にあがります。得られた「利益」(ここでは利率)が継続的に元本に組み込まれて再投資されるからです。そのため「壊れた時計」でさえ、低配当率の成長株のようにみえてくるのです。

経営成績をはかる上で一番重要なのは、高いROCE[使用資本利益率]が達成されていることであって(過度な借入や会計操作などは除きます)、EPSが一貫して上昇していくことではありません。もし経営者や金融アナリストが、EPSやその年次変化ばかりを気にする姿勢を変えれば、株主だけでなく一般の人にも、いろんなビジネスのことをうまく理解してもらえるだろう、とわたしどもは考えています。

On this basis, we had a reasonably good operating performance in 1979 ‐ but not quite as good as that of 1978 ‐ with operating earnings amounting to 18.6% of beginning net worth. Earnings per share, of course, increased somewhat (about 20%) but we regard this as an improper figure upon which to focus. We had substantially more capital to work within 1979 than in 1978, and our performance in utilizing that capital fell short of the earlier year, even though per‐share earnings rose. “Earnings per share” will rise constantly on a dormant savings account or on a U.S. Savings Bond bearing a fixed rate of return simply because “earnings” (the stated interest rate) are continuously plowed back and added to the capital base. Thus, even a “stopped clock” can look like a growth stock if the dividend payout ratio is low.

The primary test of managerial economic performance is the achievement of a high earnings rate on equity capital employed (without undue leverage, accounting gimmickry, etc.) and not the achievement of consistent gains in earnings per share. In our view, many businesses would be better understood by their shareholder owners, as well as the general public, if managements and financial analysts modified the primary emphasis they place upon earnings per share, and upon yearly changes in that figure.


ROICとROCEの計算式は、分子はほぼ共通の(営業利益) - (各種税金)ですが、分母が以下のように異なっています。(引用元: Wikipedia)

ROIC; (有利子負債) + (株主資本) - (業務上、余剰な現金及び資産) (2012/11/11訂正)
ROIC; (総資産) - (業務上、余剰な現金及び資産)
ROCE; (総資産) - (流動負債) ≒ (固定負債) + (株主資本)

固定負債が少ない企業では、ROCEはROEに収束していくことになります。一方、ROEを向上させようとして株主資本の代わりに固定負債を増やしても、ROCEの値は変わりません。この2点については、ROCEはよくできた指標だと思います。ただし自己株式の取得が絡む場合、ひと工夫する必要があるかと思います。ROCEも、万能の指標というわけではありませんね。蛇足ですが、個人的にはROICとROCEを同じものだと思い込んでいました。

2012年11月7日水曜日

魚に売っているわけじゃない(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの世知入門、前回の続きで「投資先を集中して、絶好の機会をとらえる」ことについてです。ウォーレン・バフェットの有名な言い回しが登場しています。(日本語は拙訳)

ウォーレンがビジネススクールで話をするときには、彼はこう言っています。「金銭面において最終的に、より満足のいく成果があげられる方法をご紹介しましょう。このカードを差し上げます。穴を開けられるところが20ヶ所ありますが、これはみなさんが今後投資できる回数を示しています。全部の穴を開けたら、もうそれ以上は投資できません」。

彼は続けます。「この規則を守るようにすれば、自分がやろうとすることを慎重に考えるようになります。まさしくこれだと考えるものに乗らざるをえないので、投資の成績が向上するのです」。

繰り返しますが、私からすればこれは当たり前すぎる考えですし、ウォーレンも同じでしょう。しかしアメリカでは、ビジネスを教える講義でそのような説明をする人は他にはほとんどおらず、伝統的な知恵には至っていません。

勝者になるには厳選して賭けなければならない。これは明白なことで、私は物心ついた頃からそう考えてきました。ですが、大多数の人はそうは考えないようですね。なぜそうなのか、私には理解できません。

資産運用業界がそのような愚かな考えに浸かっているわけは、私が釣具屋の人と交わした会話が的確に表現していると思います。「なんとまあ、紫色とか緑色のルアーがあるけれど、そういうやつに本当に魚が食いつくのかね」。彼の返事はこうでした。「旦那、わたしゃそいつを魚に売っているわけじゃないんでさ」。

When Warren lectures at business schools, he says, “I could improve your ultimate financial welfare by giving you a ticket with only twenty slots in it so that you had twenty punches - representing all the investments that you got to make in a lifetime. And once you'd punched through the card, you couldn't make any more investments at all.”

He says, “Under those rules, you'd really think carefully about what you did, and you'd be forced to load up on what you'd really thought about. So you'd do so much better.”

Again, this is a concept that seems perfectly obvious to me. And to Warren, it seems perfectly obvious. But this is one of the very few business classes in the United States where anybody will be saying so. It just isn't the conventional wisdom.

To me, it's obvious that the winner has to bet very selectively. It's been obvious to me since very early in life. I don't know why it's not obvious to very many other people.

I think the reason why we got into such idiocy in investment management is best illustrated by a story that I tell about the guy who sold fishing tackle. I asked him, “My God, they're purple and green. Do fish really take these lures?” And he said, “Mister, I don't sell to fish.”

2012年11月6日火曜日

シーズ・キャンディーの秘密(Fortune)

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以前に、経済誌FortuneのWebサイトに掲載されたチャーリー・マンガーの記事をご紹介しましたが(過去記事)、今回はその本編に該当する記事から印象に残った箇所を引用します。あまりにも有名なバークシャー・ハサウェイの子会社、シーズ・キャンディーの話題です。(日本語は拙訳)

The secrets of See's Candies (Fortune)

・製品の値上げについて

創業以来91年間、同社はほとんど変わっていない。間接費をおさえる一方、同社ブランドを愛してくれる顧客のおかげで、毎年5%までなら値上げすることができる。同社のWebサイトに書き込まれたお菓子に関するレビューを読むと、シーズに対する熱烈な想いが伝わってくる。これはバフェットも例外ではない。彼はこう言っている。「16歳のころに女の子とデートしたときには、ご両親か彼女への手土産として、チョコレートの箱詰めを持っていったでしょう。カリフォルニアでは、ラッセル・ストーバー[競合製品]を持っていくとひっぱたかれますが、シーズを持っていくとキスをうけるのですよ」

The company has changed very little in 91 years, incurs low overhead, and can raise prices by up to 5% each year, thanks to brand loyalty. People are fanatical about See's (read the reviews of any of its candies on its website), and Buffett is no exception. "When you were a 16-year-old, you took a box of candy on your first date with a girl and gave it either to her parents or to her," he says. "In California the girls slap you when you bring Russell Stover, and kiss you when you bring See's."


・2005年からの新CEOについて

キンストラーが初めて職についたのは、バークシャーが1970年に始めたオマハの保険会社コーンハスカー損保[Cornhusker]だった。1991年にはカリフォルニア州サン・マテオにあるサイプレス保険の経営に携わり、そこで9年間勤めた後、今度はシンシナティにあるバークシャーの子会社、制服メーカーのフェックハイマー・ブラザーズへ移った。2005年になって彼は、カリフォルニアへ戻ってシーズの指揮をとるよう、バフェットとマンガーから指名をうけた。そのビジネスのことをほとんど知らなかったと言うキンストラーは、「ただでチョコが食べられるとわかったので、早速...」

Kinstler began his career at Cornhusker Casualty, an Omaha insurance company Berkshire opened in 1970. In 1991 he went to run Cypress Insurance in San Mateo, Calif., for nine years before moving on to Fechheimer Brothers, a Berkshire-owned, Cincinnati-based uniform maker. In 2005, Buffett and Munger tapped him to move back to California and take over See's. Kinstler says he knew little about the business, but jokes, "As soon as I found out I get free candy ..."


・新規開店について

[規模拡大の]計画は野心的なものだが、計数はきちんと把握されている。店舗を新設するときは30万ドル[2400万円]以内に収めることになっているが、キンストラーが言うには「バークシャーの会計では、小数点以下を丸めることさえしません」。3年間で開く新規店舗が30店強であっても、彼はことを慎重に進める。規模を拡大していく際には、新たに進出したマーケットで先行する各店の業績がどうなっているのか、注視するのだ。「これならいけると安心できるまでは、アクセルではなくブレーキの方に足を置いています」。

While the plan is ambitious, it is measured. With each store requiring less than $300,000 to build out, "it's not even a rounded decimal point in Berkshire's financials," Kinstler says. Even as he tries to open more than 30 new stores in three years, he'll do it cautiously, watching how the stores perform in each new market before opening more: "Until I'm very comfortable and convinced, the foot's always ready to be on the brake as opposed to the gas."


・設備投資について

シーズは「保存料無添加」を売り物にしてきた。ゴディバの製品は陳列棚に入れてからも長持ちするね、とはシーズの従業員がよく口にする言葉(この件について、ゴディバからの返答はない)。シーズは昔ながらのよさを訴えることで新たな顧客へアピールしているが、自動化設備と手作りの作業が共存している製造現場の様子は、ちょうどそれに合っている。エプロンとゴーグルを身につけた男たちが、蒸気の立ち込める巨大な釜の中に入ったキャラメルをかきまぜる。平らに伸ばしたラム・ヌガーのかたわらに立つ男は、裁断機に付着しないように植物油を流している。いくらかの機械は使い始めて100年近くになるが、まだ現役だ。1919年に導入された「tinner」がその例で、タフィーチョコを缶に詰める処理を行う。別の工程では新型の機械が大きな音を立てて稼働している。例えばピーナッツ・ブリットルを製造する真新しいロボットは、片方がブリットルをうすく伸ばし、もう片方がそれを裏がえす。2台につけられたあだ名は、Tweety[カナリア]とSylvester[やられ役のネコ]だ。

See's pushes the "no added preservatives" line hard. Employees like to point out that Godiva boxes can stay on shelves much longer (Godiva declined to comment for this article). That See's would try to appeal to new customers by stressing old values matches up nicely with its plants, which run on a balance of automation and live labor. Men in aprons and goggles churn at giant, steaming cauldrons of caramel. Someone stands and shoots vegetable oil onto a sheet of rum nougat so that it won't stick to the slicer. A handful of the machines are nearly 100 years old and still going, like the "tinner" that sorts Toffee-ettes into tins, which is from 1919. In other sections brand-new machines roar along, like the flashy robots that make peanut brittle -- one stretches out the sheets of brittle, the other flips them -- and are nicknamed Tweety and Sylvester.


・規模拡大について

妥当な質問だ。熱烈なファンがついている製品ではよくあるように、シーズに魅力があるのは、あまり売っていないという点が大きい。しかしキンストラーはそれほど心配していない。これまでよりもさまざまな場所で買えるようになることで、いくばくかの顧客が離れたとしても、新規の顧客がそれを補って余りあるだろう、と。彼はクアーズを例にあげる。「わたしがまだ子供だった頃にはコロラドに行かないと買えなかったのですが、それがすごくかっこよかったんですよね」「でもクアーズはその後ずっと大きくなってどこでも手に入るようになりましたが、今のほうがうまくやっていると思います」。

It's a fair question. Like many products with a fervent fan base, the scarcity of See's provides a large part of its appeal. Kinstler isn't too worried. He thinks that if the company does lose some customers as it becomes more readily available, the exposure to new people will be worth it. He points to Coors as an example: "When I was growing up, you had to go to Colorado to get it, and that made it very cool," he says. "But I think Coors is much better off today, now that they expanded and are widely available."

2012年11月4日日曜日

自分のために働いてくれる(ウォーレン・バフェット)

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少し前にウォーレン・バフェットがCNBCのインタビューに応じていました。不安なニュースに直面して持ち株をどうすべきか、助言してくれています。聞き手のベッキー・クイック女史はよく見かける顔です。(日本語は拙訳)

Warren Buffett's Timeless Advice: 'Don't Make This Mistake'
??映像もあります)

基本的に[株式を]保持しておくのがいいと思います。欧州のニュースや景気減速などいろいろありますが、たとえばよい農地を所有していて借地人がうまく運営しているのに、「また新しい問題がギリシャで起きていますよ」というような話を聞いたからといって、手放したりはしないですよね。それと同じです。

もし自分の経営しているアパートがあって、立地がよく、賃料をあげられそうで、その上うまく経営できていれば、その物件を売ろうなどとは夢にも思わないでしょう。

同様に、マクドナルドのフランチャイズ店を開いているような、よいビジネスを自分で所有しているのであれば、事業を売り買いすることを毎日のように考えることもないでしょう。

株を買うということは、ビジネスの一部、それもすばらしいビジネスを所有するということです。しかも、世界で最高のビジネスを買うことができます。

直近のニュースに心動かされて、買ったり売ったりするのは馬鹿げています。手にしているのはすばらしいビジネスです。自分のために、いろんな人が働いてくれています。5年後や10年後にはもっとうまくいっているのですから、ニュースによって動きまわるのを魅力的なゲームだと考えるのは、ひどく間違ったことだと思います。

ですから、すばらしいビジネスの一部を手に入れて、あとはじっとしていましょう。

I say, basically, 'hold.' The idea that the European news or slowdown in this or that or anything like that, that would not cause you to, if you owned a good farm and had it run by a good tenant, you wouldn't sell it because somebody says, 'Here's a news item,' you know, 'This is happening in Greece' or something of the sort.

If you owned an apartment house and you got to raise the rents a little and it was well located and you had a good manager, you wouldn't dream of selling it.

If you had a good business personally, a local McDonald's franchise, you wouldn't think of buying or selling it every day.

If you own stocks, you own pieces of businesses, and they're wonderful businesses. You can pick the best businesses in the world.

And to buy or sell on current news is just crazy. You're in a wonderful business. You've got people running it for you. You know you're going to do well over five to ten years. And to think news events should cause you to dance in or out of something that's a wonderful game is a terrible mistake.

So, get into a bunch of wonderful businesses and stay with them...

2012年11月2日金曜日

資産で買って、利益で売れ(スティーブン・ローミック)

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「慎重派」ファンド・マネージャーのボブ・ロドリゲスの発言は参考になるところが多く、何度か取り上げています。一方、彼の率いるファンドFPAの他のマネージャーにも注目しています。今回は、次席に位置するマネージャーのスティーブン・ローミック氏の四半期報告から引用します。コモディティー事業に関する株式売買の基準についてです。(日本語は拙訳)

引用元ファイル
FPA Crescent Fund Quarterly Commentary (September 30, 2012)

コモディティーを扱う事業に投資する際には、我々は次のことを目安としています。「資産をみて買い、利益をみて売ること」

多額の設備投資を要する循環的な事業は、所属する業界が不振な時期には(各社が赤字か、平時に期待される水準まで利益がとどかない時)、原資産の価値より割安で取引されることがよくあります。しかし利益が回復すれば、市場参加者はその事業が循環的だったことを忘れてしまいます。次にやってくる不調が視野に入っていないと、投資家は利益を以って値踏みし始めるのです。我々がエンスコ社(Ensco)[原油・ガスの海洋掘削会社]の株を買った平均単価は、減価償却済再調達価額より割安にリグを買ったことを意味します。それからのち、リグの賃借料や利益と同じように株価も上昇しました。現在では、同社はPER基準によって評価され始めています。また同時に、既存の契約と堅実な需要環境が続くとの見込みを反映し、原資産であるリグの価値が再調達価額で評価されてきました。我々は安全余裕が縮小したと捉え、当初からの主張やこの手の業界に投資する際の方針にしたがって、同社への投資規模を縮小しました。(PDF4ページ目)

Our goal when investing in commodity businesses is to ‘buy assets and sell earnings.'

Capital intensive, cyclical businesses often trade at discounts to the value of the underlying assets when their respective industry is in distress (companies are either losing money or earning less than what's expected in a more normal environment). When earnings rebound, the market seems to forget that the businesses are cyclical. Investors begin to value them on earnings as if another downturn isn't in the cards. Our average cost in Ensco reflects rigs purchased at a discount to a fully depreciated replacement value. Since then, its stock price has increased, along with day rates (and earnings). The company is now beginning to be considered more on a P/E basis, while at the same time, the value of the underlying rigs has begun to trade through their replacement value, reflecting the value of existing contracts and hope for a continued robust demand environment. As our margin of safety has declined, we have reduced our exposure, consistent with our initial thesis and the manner in which we invest in such industries.


なお、同氏がCNBCのインタビューに応じた映像はこちらにあります。ナイスガイです。

2012年10月31日水曜日

誤判断の心理学(21)老化が悪影響をもたらす傾向(チャーリー・マンガー)

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今回の話題は、年をとることについてです。今度の1月でチャーリー・マンガーは89歳になります。アメリカ史上最大の実業家ジョン・D・ロックフェラーは、97歳で没しました。最近では、ウォルター・シュロスの95歳が記憶に残っています。参考までに、日本人の平均余命はこちらです。(日本語は拙訳)

なお誤判断の心理学(その20)は「薬物」の話題ですが、チャーリー自身が数行しか触れていないため、本ブログでは取り上げるのを省略しました。

(その21) 老化が悪影響をもたらす傾向
Twenty-One: Senescence-Misinfluence Tendency

年老いるにしたがって、始まる時期や進み具合は人それぞれながら、認識力が自然と衰えていきます。かなりの年になると、ほぼどんな人でも複雑な技能を新たに身につけるのが難しくなります。しかし人によっては、ずっと昔に鍛練して身につけた技能を、晩年になるまでうまく維持できることもあります。ブリッジのトーナメント戦に出た人なら、よく見かけるでしょう。

私のような年寄りは、特にあれこれしなくても、年齢からくる衰えを隠す技を身につけています。というのは、衣服のような社会的慣例が、いろんな衰えを隠してくれるからです。

みずから楽しみながら継続的に思索や学習に取り組んでいれば、不可避なことでも、ある程度は遅らせることができます。

With advanced age, there comes a natural cognitive decay, differing among individuals in the earliness of its arrival and the speed of its progression. Practically no one is good at learning complex new skills when very old. But some people remain pretty good in maintaining intensely practiced old skills until late in life, as one can notice in many a bridge tournament.

Old people like me get pretty skilled, without working at it, at disguising age-related deterioration because social convention, like clothing, hides much decline.

Continuous thinking and learning, done with joy, can somewhat help delay what is inevitable.

2012年10月30日火曜日

すでに恐れおののく1年目(ジェレミー・グランサム)

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慎重派ファンド・マネージャーのジェレミー・グランサムが、チャーリー・ローズのインタビューに応じていました。トランスクリプトがBusinessweekに掲載されていたので、一部を引用します。株式市場の騰落と大統領選周期の関連についての話題です。(日本語は拙訳)

なおチャーリー・ローズは有名人を相手にインタビューすることが多い、本人自身も有名な司会者です。全盛期の久米宏さんのような人物、といったところでしょうか。ウォーレン・バフェットも何度か対談しています。

Charlie Rose Talks to Jeremy Grantham (Businessweek)

私は大統領選サイクルを崇めてきました。1932年にさかのぼってみると、大統領の任期1年目と2年目だけをみれば、市場からのリターンは実質ベースでゼロになります。リターンはすべて、多大なる3年目とまずまずの4年目に集中しているのです。我々はこの周期を10月1日から数えはじめるので、すでに恐れおののく1年目に突入しています。共和党はきわめて脆弱な経済に財政上の制約を加えようとしていますし、ヨーロッパの状況もあります。そして中国は、驚くほどゆっくりと失速しているところです。自重するのにぴったりの年だと思います。

I've hero-worshipped the presidential cycle. Going back to 1932, if you take the first and second year together, they've had no real return in the market. All of the return has been compressed into a gigantic Year Three and a respectable Year Four. For us, the cycle years start on October 1st. So now we're in the dreaded first year. And we have Republicans threatening to add fiscal constraints into a very fragile economy. We have the European situation. We have China stumbling in an incredible slow-motion style. I think it's a really good year to keep your head down.

この発言をみかけて、初めてグランサムの文章を読んだ時のことを思い出しました。2004年のことですから、大統領選のあった年です。世間知らずの自分にとっては、なるほどと感心した文章でした。以下の図が、大統領任期の各4年間の成績を示したものです。2004年時点の資料なのでデータは少し古いですが、上記のグランサムの発言のもとになっているものと思われます。


この図の引用元は、GMOのサイトに掲載されている、以下のPDFファイルの8ページ目です。ファイルをみるには、まずユーザー登録してログインし、[Library]-[Jeremy Grantham's Letters and Articles]から次のファイル名を探してください。

Skating on Thin Ice(Jeremy Grantham - Published 1/15/2004)

2012年10月29日月曜日

株式投資と競馬(チャーリー・マンガー)

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チャーリー・マンガーの世知入門です。以前にも何度か取り上げてはいますが、今回の話題はチャーリーの投資スタイルの真髄をなすものです。(日本語は拙訳)

株式市場でおきていることをわかりやすく説明するのに私が好んで使うモデルは、競馬場で採用されているパリミュチュエル方式です。なんだかよくわからなければ、パリミュチュエル方式とは市場のことだと考えてください。賭けをしたい者が集まって勝負をしますが、どのように賭けられたかでオッズが変動します。まさに、株式市場でやっていることと同じですね。

たとえば目の覚めるような勝率を誇る馬が、乗せる騎手は軽く、馬番もよく...といった具合であれば、散々な記録の上に騎手は重く...といった馬よりも勝ち目があるのは、どんなまぬけでもわかります。ですが、もし悪い方の馬のオッズが100倍に対して、いい方の馬が1.5倍だとしたら、フェルマーとパスカルの数学[確率]を使ってどれが最高の賭けかたかと考えても、よくわからなくなります。このように金額が変動するため、なかなか儲からない仕組みになっています。

その上、競馬場が17%の上前をはねていきます。ですから他の賭け手を出し抜くだけでなく、胴元に17%を渡しても手元に残るように、平均して大きなマージンをもって出し抜かなければならないのです。(中略)

しかし賢明なる勝負師のみせる手際は、残念ながらシーズン中の成績を17%の損から10%ぐらいの損に下げるぐらいが関の山でしょう。ですが、まるまる17%払った後でも勝っている人が、なかにはいます。

私が若かった頃にポーカーをしていた相手に、繋速[けいはや; 競馬の一種で、馬車をひく]へ賭けることで生計の大半を立てていた人がいました。普通の競馬とくらべるといろいろ深くは知られていないので、繋速は比較的非効率な市場といえます。私のポーカー相手は、繋速を自らの主たる職業と考えていました。そして間違った値段がついているのをみつけたときだけ賭けに出ました。そうすることで、おそらく17%ぐらいを胴元に全部払った後でも、十分に暮らしていけたのです。(中略)

いつ、いかなるときでもすべてのことを知り尽くしているなど、そんな人はいやしません。しかし懸命に努力し、誤った賭けがないか丹念に探し求める人には、いつか見つけられるでしょう。

そして賢明な人は、そのような機会が自分の前に現れた時に、大きく賭けに出るのです。自分に勝ち目があるときに大きく賭け、それ以外の時は賭けない。それだけのことです。

これはとても単純なやりかたです。しかしパリミュチュエル方式にかぎらず、他での経験をふまえて考えてみれば、至って当然のことだと思います。

The model I like - to sort of simplify the notion of what goes on in a market for common stocks - is the pari-mutuel system at the race track. If you stop to think about it, a pari-mutuel system is a market. Everybody goes there and bets, and the odds change based on what's bet. That's what happens in the stock market.

Any damn fool can see that a horse carrying a light weight with a wonderful win rate and a good post position, etc., etc., is way more likely to win than a horse with a terrible record and extra weight and so on and so on. But if you look at the damn odds, the bad horse pays 100 to 1, whereas the good horse pays 3 to 2. Then, it's not clear which is statistically the best bet using the mathematics of Fermat and Pascal. The prices have changed in such a way that it's very hard to beat the system.

And then the track is taking seventeen percent off the top. So not only do you have to outwit all the other bettors, but you've got to outwit them by such a big margin that on average, you can afford to take seventeen percent of your gross bets off the top and give it to the house before the rest of your money can be put to work.

Unfortunately, what a shrewd horseplayer's edge does in most cases is to reduce his average loss over a season of betting from the seventeen percent that he would lose if he got the average result to maybe ten percent. However, there are actually a few people who can beat the game after paying the full seventeen percent.

I used to play poker, when I was young, with a guy who made a substantial living doing nothing but bet harness races. Now, harness racing is a relatively inefficient market. You don't have the depth of intelligence betting on harness races that you do on regular races. What my poker pal would do was to think about harness races as his main profession. And he would bet only occasionally when he saw some mispriced bet available. And by doing that, after paying the full handle to the house - which I presume was around seventeen percent - he made a substantial living.

It's not given to human beings to have such talent that they can just know everything about everything all the time. But it is given to human beings who work hard at it - who look and sift the world for a mispriced bet - that they can occasionally find one.

And the wise ones bet heavily when the world offers them that opportunity. They bet big when they have the odds. And the rest of the time, they don't. It's just that simple.

That is a very simple concept. And to me it's obviously right - based on experience not only from the pari-mutuel system, but everywhere else.


以下は、参考となる過去記事の例です。

2012年10月26日金曜日

とある本屋の上の階で(テッド・ウェシュラー)

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ウォーレン・バフェットは、バークシャー・ハサウェイでの資産運用部門の後継者として2人のマネージャーを登用しましたが、その1人であるテッド・ウェシュラーの記事がBloombergに掲載されていたので、ご紹介します。リンク先には当人の写真がありますが、温厚そうな雰囲気はウォーレンと通じるものがあります。(日本語は拙訳)

Weschler Rise From Grace Leads to Role Advising Buffett (Bloomberg)

彼が始めたヘッジファンドはペニンシュラ・キャピタル・アドバイザーズという名前で、国内株式に20億ドルを投資していた。シャーロッツビルにある事務所は、とある本屋の上の階に2部屋を占めていた。かつての仕事仲間で、現在はオハイオ州アクロンでヘッジファンドを営んでいる友人マイケル・デイヴィッドによれば、彼は半袖シャツにショートパンツという格好でよく仕事をしていた。また何度かBMWを運転していたことがあったが、買った車には7,8年間は乗り続けていた。(中略)

「とんでもない金持ちになったことに、彼はいまだにあっけにとられているようです」。2002年にシャーロッツビルで"The Hook"という週刊紙を始めたときに、ウェシュラーから支援を受けたホーズ・スペンサーは言う。「彼が腕にロレックスをはめている姿を見かけたら、めまいがするでしょうね」。(中略)

ウェシュラーはバフェットと同じように、企業の発行する報告書や各種出版物をよく読んで分析することで、優位に立てるものを探していた。デイヴィッドは、彼がこう言ったのをおぼえている。投資候補をみつけても、調査や検討に500時間はかけなければ、投資に踏み切ることはない、と。

デイヴィッドは言う、「彼は休暇先に向かうときにも、10-Kや10-Qを持参していました」。証券取引委員会が株式公開企業に提出を義務づけている年次及び四半期の報告書のことだ。「それは今でも変わりません」。

He ran his hedge fund, Peninsula Capital Advisors LLC, which had about $2 billion in U.S. stockholdings, from a two-room office above a bookstore in Charlottesville. His work attire often was a short-sleeve shirt and shorts, according to Michael David, a former colleague and friend who now runs a hedge fund in Akron, Ohio. And while he has driven BMWs for some time, he keeps the cars for seven or eight years, David said.

“He's still stunned by the fact that he's become incredibly wealthy,” said Hawes Spencer, whom Weschler backed when he started a weekly paper in Charlottesville called the Hook in 2002. “If I saw a Rolex on his wrist, I would faint.”

Like Buffett, Weschler sought an edge by studying company filings and dozens of other publications. The former hedge-fund manager once told David that he didn't make an investment unless he had spent 500 hours studying the idea.

“He'd go on vacation and take 10-Ks and 10-Qs with him,” said David, referring to the annual and quarterly reports publicly traded companies file to the U.S. Securities and Exchange Commission. “He still does.”

2012年10月24日水曜日

狼狽しないこと(ジョン・テンプルトン)

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ジョン・テンプルトンの「投資で成功するための16のルール」から、今回はルールその10「狼狽するな」の説明文をご紹介します。引用元はこちらです。(日本語は拙訳)

(ルールその10)狼狽するな

みんなが株を買っている局面で売らずに保有したままでいると、1987年におきたような大暴落に見舞われることもあるでしょう。たった1日で15%も下がるのです。いや、もっとひどいかもしれません。

そんな場合でも、次の日に売りいそぐべきではありません。売るのは暴落する前にやっておくことで、後になってからではないのです。それではどうすればいいかというと、自分のポートフォリオを見なおして、こう考えること。それらの株式を保有していないとしたら、暴落後の価格で買いたくなるだろうか。たぶん、そう考えると思います。手もちの株を売ってよいのは、他にもっといい株が見つかった時だけです。そうでなければ、持株はそのままにしておくことです。

No.10 DON'T PANIC

Sometimes you won't have sold when everyone else is buying, and you'll be caught in a market crash such as we had in 1987. There you are, facing a 15% loss in a single day. Maybe more.

Don't rush to sell the next day. The time to sell is before the crash, not after. Instead, study your portfolio. If you didn't own these stocks now, would you buy them after the market crash? Chances are you would. So the only reason to sell them now is to buy other, more attractive stocks. If you can't find more attractive stocks, hold on to what you have.


同じ話題が、ケントマンさんのブログでもちょうど取り上げられていました。

その行動が結果を決める。株価が下落したときにどう行動するべきか(ちょっと知りたい「賢明な株式投資」)